●できる医師のプレゼンテーション-臨床能力を倍増するために | ||||||||||||||||
第5回テーマ プレゼンテーションのフォーマット(各論2)
川島篤志(市立堺病院・総合内科)
■身体所見前回お話ししましたが,準備しておくことがきわめて大切です。後述する検査所見は誰かがオーダーしているかもしれませんし,客観的なデータとして残りますが,身体所見は自分自身が取っていないと,しゃべろうにもしゃべれません。病院/施設ごとに身体所見のフォーマットがあると,初期/後期研修(+スタッフ)の期間を通じて,共通の認識で所見を取ることが可能になるかもしれません。あまりフォーマットにこだわり過ぎるのも良くないかもしれませんが,身体所見における「必要最低限」が指導医も研修医も理解できていない状況であれば,存在価値は大きいと思います。 身体所見のプレゼンテーションの順番は,バイタルサインを述べて,そのあと頭頸部から順に胸部,腹部,四肢,神経学的所見と進むのが一般的です。病院ごとのフォーマットがあればその流れに沿うのがいいと思います。全身状態や意識レベルが大切な症例ではバイタルサインの前後に交えると効果的です。 指導医は病歴のプレゼンテーションから各種の鑑別診断を思い浮かべています。そして,その鑑別診断と重症度判定に関連する,チェックすべき,または予想される身体所見のプレゼンテーションを待っているものです。 表1にあるように,複数の臓器にまたがっているものがありますので,フォーマットに順番があるにしても,ある程度まとまったものは一気に述べるほうが効果的に伝わります。その際に「○○に関してですが」と題名をつけると,わかりやすいものです。
病歴のなかでも,大事な陰性所見がありましたが,身体所見でも同様です。「○○を示唆する所見はありません」と述べることによって,考えたけどもない,ということが伝わります。ただ,自信を持って「ない」というのはなかなか難しいものです。筆者自身も「心音のIII音は聴取しません」と言うためには,III音がある可能性を意識し,聴きやすい体位を取ってもらったうえで聴診をしますが,それでも「ないと思います」,という表現にとどめると思います。 また以前も話をしましたが,身体所見を取ることができなかった場合,患者が非協力的であった場合や,自分自身で解釈できなかった場合は,はっきり述べることが大切です。プレゼンテーションをしている人がわからない所見の表現を,診ていない聴衆が鮮明に理解することは至難の技です。「○○の所見はないと思うのですが,わからないので一緒に診てください」,という表現が適しています。 身体所見の各論を話しているときりがないのですが,日本の医学教育のなかで抜けていると思われるポイントを少し述べます。 バイタルサインのなかでは,血圧,脈拍,体温とありますが,呼吸数とSpO2を入れる癖をつけましょう。呼吸数が含まれていないSpO2は意味がありません(SpO2が94%でも,呼吸16回/分と呼吸40回/分では意味が違う)。 おざなりにされているのが,体位による血圧/脈拍の変化,頸静脈の評価,直腸診,眼底の評価であると思います。各施設での徹底度はいかがでしょうか? (つづきは本誌をご覧ください)
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