●できる医師のプレゼンテーション-臨床能力を倍増するために | |||
第2回テーマ
■ないない尽くしのPresentation前回,お話したように,プレゼンテーション能力は,臨床能力を反映すると考えられます。それにもかかわらず,「プレゼンテーションに自信がない」「うちの研修医のプレゼンテーションは駄目だ」ということをよく耳にします。言葉を置き換えると,「臨床能力に自信がない」「うちの研修医の臨床能力は駄目だ」ということです。とても残念なことですが,どうしてプレゼンテーション能力が伸びていかないのでしょう?私見ですが,研修医個人だけの問題ではなく,多くの要因(表1)が関係していると思います。あまりにも「悪いもの=ないもの」が多過ぎるので,ちょっとやそっとの改善では上達しないのかもしれません(上達のコツは第7・8話でお話します)。今回はそれぞれについての問題点・改善点を検討していきます。
■卒前教育?:プレゼンテーションについての教育がない自分自身が学生であったときには,プレゼンテーションのフォームを正式に教わったという記憶がありません(単に自分自身が不真面目であっただけかもしれませんが)。実際,2005年に当院の研修医24名(1/2年目15人,3/4年目9人:2005年度)に取ったアンケートでは,卒前教育でプレゼンテーションの教育を受けていないと答えたのは22名で,受けたと答えた人はわずかに2名でした。 プレゼンテーションの仕方,というものを授業で教わる,というのは難しいかもしれません。やはり臨床実習のなかで,継続したプレゼンテーションの機会が設けられることによって,訓練されていくものではないかと思います。現在の縦割りの科の中では,研修医に対する共通の継続した教育は難しいのかもしれませんが,臨床実習として,学生を主体とした発表の場を用意することは,まだ可能ではないでしょうか? ■研修医?:病歴・身体所見が十分に取れない,病態と結びつけられない,プレゼンテーションのフォーマットを知らないプレゼンテーションを行うには,事前の情報収集が大切となります(詳細は次号)。例は極端かもしれませんが,研修医では,病歴や身体所見と病態を結びつける知識と経験が不足しています。
身体所見も同様です。どういった所見が重症度・鑑別疾患を判断するのに必要なのか,ということが理解できていない場合もあります。 一方,すでに「誰か」によって指示された華やかで客観的な検査所見の解釈は,日を重ねるごとに上手になっていきます。各検査の感度/特異度や特殊検査の解釈は習得していくかもしれませんが,なぜその検査が必要なのか,病歴・身体所見から得られた検査前確率はどうなのか,といった思考について検討される機会は少ないのかもしれません。 プレゼンテーションのフォーマットを知らないことも問題です。現在ではプレゼンテーションに関する書籍も増えてきていますが,施設として共通のフォーマットを研修医に手渡しているところは,まだ少ないのではないかと思います。今回の連載も医学生だけでなく,初期研修医や後期研修医,さらにはスタッフの先生方にもお役に立てれば……と思います。 (つづきは本誌をご覧ください)
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