●できる医師のプレゼンテーション-臨床能力を倍増するために | |||||||||||||||||||||||||||
第1回テーマ
例のように,1人の患者さんに対する臨床経過は,臨床医としてさまざまな場所で状況に応じて,誰かに,プレゼンテーションしなければいけません。 グループでのベッドサイド回診,多くの医師や看護師などが出席するカンファレンスでの発表もプレゼンテーションの1つです。 また上級医だけでなく研修医であっても,勉強会での指導を任される=人前でプレゼンテーションをする機会を与えられるときがあります。 今回,プレゼンテーションに関して連載する機会をいただきましたので,まずプレゼンテーションについての総論,続いて基本的なオーラルケースプレゼンテーションについての各論,場に応じたプレゼンテーション,カンファレンスやレクチャー,教育環境などについて,それぞれのコツを交えて話をしていきたいと思います(最後のページに今回の連載の目次を掲載しています)。 さて,第1回は「なぜプレゼンテーションが必要か?」についてお話します。
そのなかで聞き手の「眼の前にいない」患者さんについて,聞き手が必要としている情報を,限られた時間で,過不足なく伝えることによって,有益な提言を得ることが求められます。この提言の蓄積によって,医師は成長することができますし,より良い医療が提供できるのではないかと考えます。逆に適切な情報を提供できなければ,有益な提言を得ることができず,自分自身の成長を妨げるだけでなく,患者さんのケアにおいても支障をきたす可能性もあるのです。 この「伝える能力」が,臨床医として求められる重要な能力の1つと思います。 ■臨床能力って何?研修医の立場からすると,「できる」研修医とは何でしょうか?臨床能力とは,何で測られているのか,何を基準としているのか,というとはっきりしたものはありまん。 事務的な処理が速いことであったり,カテーテル挿入などの手技の得手不得手であったり,さまざまな検査結果を巧みに考察することであったり,カンファレンスでの適切な発言であったり,いろいろあると思います。 プレゼンテーションについてはどうでしょうか? 「今日の回診を“乗り切った”」という表現はあっても,「あのようなプレゼンテーションができるように頑張ろう」という発言はなかなか聞かれないものでないかと思います。臨床能力というより,その場を乗り切る処世術というふうに取られているかもしれません。 他方,指導医の立場から「できる」研修医とは何でしょうか? 前述のような,手技・知識・解釈の部分もあるかもしれません。しかし,気がつくと上手にプレゼンテーションできる研修医に信頼を置いているということはないでしょうか? 逆にプレゼンテーションが上手にできない研修医を指導医はどう感じているでしょうか?「聞いててもわからないから,自分で見にいこう」となるのではないでしょうか? 適切なプレゼンテーションをするためには,患者さんからなどの「情報収集」力,必要な情報を集める/解釈するための「病態の理解」力,頭の中での「整理」力と伝えるための「表現」力が必要とされています(詳細は第3回)。 病歴聴取や身体所見はキッチリ取るのは結構時間がかかり,慣れてきても面倒と感じることもあります。が,時間のかかることや面倒なことも行う「誠実さ」や,できていないこと,やっていないこと,をできていない,やっていないと報告できる「素直さ」も指導医は同時に確認していると思います。 指導医は知らず知らずのうちに,プレゼンテーションを通じて研修医を評価しているものです。 このようにプレゼンテーション能力は眼に見えにくいけれども,重要な臨床能力の1つなのです(プレゼンテーションが重要という指導医の認識がないことや研修指導の文化が構築されていないことが大きな問題かもしれませんが,この部分は次号でお話します)。 ■場面に応じたプレゼンテーションプレゼンテーションは皆さんが接する人と状況の数だけ,種類があるものです。 下記に思い当たる状況を書き上げてみると
やり取りのなかでは,相手が望んでいるもの,相手に望んでいるもの,を,与えられた時間で,重要な点をタイミングよく,職種に合わせた言葉・キーワードを用いながら,プレゼンテーションすることが望まれています。 それぞれのプレゼンテーションにポイントがありますが,はじめの数回は,プレゼンテーションの基本となる「新入院症例を上級医~同僚を含めたチーム内にオーラルケースプレゼンテーションする」ことに重点をおいて,話を進めたいと思います。 以後,上記の状況を網羅していく予定です。
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