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●研修おたく海を渡る

第32回テーマ

がんプロ(3)
ひとり勉強法

白井敬祐(サウスカロライナ医科大学)


 今回はインターネットを駆使して,がんプロに近づく方法を紹介します.

 多くのサイトで学会速報や,論文のサマリーを見つけることができます.また新しい知見を学びながらContinuing Medical Education(CME)クレジットという医師免許を維持するために必要な単位を取得できるプログラムもあります.

 がん関係にしぼっていくつかのサイトを挙げましょう.

 ちまたで行われている臨床治験の様子を知りたければ,clinicaltrial.govです.臓器別,層別,目的別に検索することができます.自分の施設で開始できそうな治験をチェックし,これだと思えば,PI(Primary investigator)と呼ばれるリーダーに連絡を取ります.がんセンターとしては,受診するすべての患者さんに臨床治験というオプションを提供できるのが理想とされるのです.

 前回紹介したNCCNのほかにもASCO(全米臨床腫瘍学会)ACS(American Cancer Society)NCI(National Cancer Institute)は信頼のおけるサイトです.患者さん向けのページもあり,玉石混交の情報の中,安心して勧められます.

 それでは僕らフェローの間で人気のあるサイトをいくつか並べましょう.

 なんといっても,今はやりなのが,The smartest oncologist in Americaでしょう.毎日,がん関係の選択問題が5つ出されます.スピードと正解率で,全米中での順位がわかるのです.ぼくも朝早起きしたときには,名前が載っていることもあります.おたくな質問もありますが,正当派の問題が多く,ためになります.Medscape,新しい情報と,レビューが充実しています.clinical options,スライドが提供され,レクチャーに参加したような気分です.いずれもメールアドレスを登録するとニュースを配信してくれます.次はLung cancer update,ここではMP3形式で対談をダウンロードすることができます.肺がんだけではなく他の腫瘍ものぞけます.議論の進め方と英語のヒアリングの勉強にはもってこいです.TumorBoardの雰囲気はこんな感じでしょうか? Adjuvant onlineといって,乳癌,大腸癌,肺癌の術後療法に特化したページもあります.術後療法によってどれだけ効果が得られるのかを棒グラフで示してくれます.患者さんに説明するときによく使います.

 製薬会社のページでは,分子標的薬の作用機序を動画で見ることができます.もっとも合成音がついたりしてあまりにもドラマチックですが…….

 最後に禁断の方法をお教えします.検索上手なぼくの同級生も「使える!」と絶賛してくれた方法です.もう当たり前の方法だったらごめんなさい.

 がんの種類をキーワードとして,さらに“ppt pdf”を検索boxに入れてGoogle(「ぐぐる」=検索する)のです.例えば“Breast cancer ppt pdf”といった感じです.ppt(パワーポイント形式),pdf(PDF形式)を付け加えるところがみそです.その道のリーダーの発表から,そこらへんのフェローや学生の発表までわんさか出てきます.スライドをぱらぱらめくってbig picture(概要)をとらえるのにはうってつけです.同僚がイントレーニングイグザム前に使っていた勉強法です.どのプレゼンにも出てくるのは,最重要課題といってもいいでしょう.ただ鵜呑みにしないで元文献にも当たってくださいね.


白井敬祐
1997年京大卒.横須賀米海軍病院に始まり,麻生飯塚病院,札幌がんセンターと転々と研修をする.2002年ついに渡米に成功,ピッツバーグ大学でレジデンシー修了,2005年7月よりサウスカロライナ州チャールストンで血液/腫瘍内科のフェローシップを始める(Medical University of South Carolina Hematology/Oncology Fellow).米国内科認定医.