●研修おたく海を渡る |
第13回テーマ ボード-生涯勉強! 今回はボードと呼ばれる専門医試験制度について,記憶の新しいうちに書きとめさせてください。レジデンシー修了が受験の条件で,それ以降内科の場合は10年に一回の更新が必要です。 レジデンシー最終学年になる少し前から,MKSAP(http://www.acponline.org/catalog/ そのほかにも,ボードレビューと呼ばれる短期講習会がハーバード,メイヨークリニックや各地の大学で開かれます。毎年,かなりの数の人が更新するので需要があるのでしょう。予備校の直前講習を受けるようなものでしょうか。試験さえ通ればいいので,必ずしも講習会を受ける必要はないのですが,短期間で,ポイントを押さえたアップデートができるため,受講料が高くても人気はあるようです。更新のために受講した指導医も,話はうまく,よくまとまっていて損はなかったと言っていました。 それらの講習会を,DVDにしたものも出回っています。このDVDはなかなかお勧めです。循環器,腎臓,感染症,総合内科などの各分野の専門家が,内科医として知っておきたいこと,また最近の流れを語ってくれます。もちろん講師によって,話の上手い下手があったり,「スニーカーで古釘を踏んだら,緑膿菌!」ともろに試験対策的なところもあります。ただテンポのいい話を,好きなときに好きなだけ,流しっぱなし,つまみ食いできるのはDVDのいいところです。 こうした準備を進めながら,僕はペーパーテスト最後の年となった2005年にアトランタで受験しました。巨大な見本市会場に,数百人集められ,2日間にわたって試験を受けました。久々の長丁場の試験,飛行機代をケチって,チャールストンからアトランタまで片道6時間ドライブしたことを後悔しました。「また来年,1000ドル払って受験したらええわ。」と弱気にもなりました。結局,その年の内科のボードは,全米で8715人が受験し81%が合格したようです。ちなみに2006年からは内科のボードは,1日になり,コンピュータでの試験に変わっています。試験もあちこちで受けることができるようになりました。 ボードの更新制度ができたのは,アメリカでも10数年前のことです。更新制度ができる前にボードを取った人は更新の必要がありません。それなのに70歳を超えても,ただ自分の力試しのために数年に一回ボードに挑戦している指導医がいました。廊下でMKSAPを片手に歩いているその先生を見ると,「生涯勉強!」と感心させられます。フェロー修了後に待っている血液内科と腫瘍内科の2つのボードに戦々恐々としている僕にはまだまだ遠い境地です。
白井敬祐
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