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特集の理解を深めるための25題


問題1

動脈硬化性疾患の二次予防において,最大用量のスタチンを用いてもLDLコレステロールの低下効果が不十分な場合,まず追加投与が推奨される薬剤はどれか.

A
レジン
B
エゼチミブ
C
PCSK9阻害薬
D
フィブラート系薬剤
E
n-3系多価不飽和脂肪酸

問題2

72歳男性.2型糖尿病と高血圧症に対してメトホルミン250 mgを2錠,イミダプリル5 mgを1錠内服治療中で,HbA1c値は7%前後,診察室血圧は収縮期145~155 mmHg,拡張期85~95 mmHgでコントロールされている.この患者の血圧管理についてモニタリングが十分にできる環境である場合に推奨されるのはどれか.

A
現在の治療を継続する.
B
診察室血圧120/80 mmHg未満を目安に降圧薬を増量する.
C
診察室血圧120~139/80~89 mmHgを目安に降圧薬を増量する.
D
家庭血圧120~139/80~89 mmHgを目安に降圧薬を調整する.
E
家庭血圧120/80 mmHg未満を目安に降圧薬を調整する.

問題3

ω3脂肪酸の心血管イベントなどに関連した以下の選択肢について,正しいものを選べ.

A
エイコサペンタエン酸(EPA)は心血管イベントを抑制する.
B
EPAはプラークを退縮しない.
C
心血管イベント抑制効果はフィブラート系と同等である.
D
EPA/AA比(AA:アラキドン酸)は低いほどイベントを抑制する.
E
EPAのサプリメントでも同等の効果である.

問題4

適切な運動習慣の継続によって得られる効果のうち誤りはどれか.

A
がんの罹患リスクを減らす.
B
認知症の罹患リスクを減らす.
C
高齢者の転倒に関連する骨折などの外傷リスクを減らす.
D
余命を減らす.
E
心血管疾患の罹患リスクを減らす.

問題5

未来の循環器予防の戦略を劇的に変える可能性があるものを2つ選べ.

A
デバイス治療
B
デジタル医療
C
再生医療
D
血管内手術
E
ワクチン

問題6

次の因子のなかで血漿BNP値を病態に比して上昇させにくくするのはどれか.

A
加齢
B
心肥大
C
腎機能障害
D
全身性炎症
E
肥満

問題7

心不全急性期の利尿薬使用において,早期の効果判定に用いられる指標を以下から二つ選べ.

A
利尿薬投与2時間後の尿中Na濃度50~70 mEq/L以上
B
利尿薬投与6時間までの時間尿量100~150 mL/時以上
C
24時間尿量3~5 L/日以上
D
6分間歩行距離300 m以上
E
BNP値100 pg/mL以下

問題8

左室駆出率の低下した心不全における至適薬物治療について誤っているものはどれか.

A
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とβ遮断薬を導入する.
B
ACE阻害薬とβ遮断薬後に,症候性かつ左室駆出率35%未満の場合は,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を追加する.
C
忍容性のある最大投与量まで増量する.
D
高度腎機能障害例では,薬剤の減量や慎重な腎機能のモニタリングが推奨される.
E
ガイドラインが推奨する至適薬物の副作用は稀であるため,減量や中止を検討する必要はない.

問題9

以下のうちで正しいものはどれか.

A
サクビトリル・バルサルタンは心不全の収縮能にかかわらず予後改善のエビデンスを有する.
B
SGLT2阻害薬はどの種類であっても,多施設ランダム化研究にて心血管イベント低下を示した.
C
無症状の心不全かつ非糖尿病であってもダパグリフロジンは心不全入院を減少した.
D
サクビトリル・バルサルタンはACE阻害薬もしくはARBからの切り替えのエビデンスしかない.
E
サクビトリル・バルサルタンの副作用として症候性低血圧があり導入の際に注意を要する.

問題10

HFpEFに関する以下の記述のうち正しいものはどれか.

A
アンジオテンシン-ネプリライシン阻害薬はHFpEF患者の心血管イベントを一様に減少させた.
B
HFrEFと同様に,β遮断薬はHFpEFの予後も改善させることが一貫して証明されている.
C
利尿薬はHFpEF患者の心不全入院を減少させる可能性がある.
D
心房細動を合併したHFpEF患者へのアブレーションの予後改善効果を示す報告はない.
E
肥満を合併したHFpEF患者に対する運動の効果は明らかになっていない.

問題11

57歳男性.受診2日前に胸痛を自覚.受診日にも胸痛を自覚したため来院した.来院時の胸痛は10段階評価中3,経過観察中に改善.血圧134/62 mmHg,脈拍82 bpm,体温36.0℃,SpO2(room air)99%,呼吸数14回/分.心電図・X線:異常所見なし.Labo:D-dimer 0.3 μg/mL,その他,特記所見なし.高感度トロポニンは19 ng/L,1時間後は23 ng/Lだった.動脈硬化リスク;高血圧,脂質異常症,喫煙者.
本症例への対応として正しいものはどれか.

A
問題ないとして帰宅させ,かかりつけ医を受診するよう指示.
B
抗血小板薬,β遮断薬を処方したうえ,1週間以内に外来再診
C
抗血小板薬,β遮断薬を処方したうえ,1か月以内に外来再診
D
入院させて緊急カテーテル検査
E
入院させて待機的カテーテル検査

問題12

65歳男性.健診で高血圧,脂質異常症を指摘されていたが放置していた.半年ほど前から労作時に限定した胸部絞扼感があり前医を受診した.症状出現閾値は変化なく,安静時症状の自覚もない.前医で冠動脈CTが行われ,左冠動脈回旋枝に75%程度の狭窄を疑う所見を認め当科紹介となった.現段階で最も適切な診療方針を2つ選べ.

A
即日入院とし,冠動脈造影を行う.
B
負荷心筋シンチグラムなどの負荷検査を行う.
C
抗血小板薬2剤併用療法を開始する.
D
鎮痛薬を開始する.
E
高血圧,脂質異常症の治療を開始する.

問題13

PCIによるステント留置後に出血リスクの高い症例に対してできるだけ避けるべき抗血栓療法を2つ選べ.

A
short DAPT(PCI後1~3カ月)
B
long DAPT(PCI後1年超)
C
心房細動合併症例におけるP2Y12阻害薬と抗凝固療法の2剤投与
D
心房細動合併症例におけるステント留置1年以降の抗凝固療法単独
E
心房細動合併症例における長期のDAPTと抗凝固療法の3剤投与

問題14

以下のケースのなかで,望ましくないと考えられるものはどれか.

A
狭心症に対し冠動脈にステント治療歴のある患者.予後が半年程度と考えられる胃癌にて加療中.内服後に膨満感を有するためにスタチンの投与を中止した.
B
ADLが保たれており,併存症のない陳旧性心筋梗塞患者に対し,問題なく内服してきたスタチンを75歳と高齢となったため,中止した.
C
冠動脈3枝病変に対し,冠動脈バイパス術後で糖尿病を有する60歳男性.現在,ストロングスタチンを内服中.CK350 mg/dLと軽度の高値が持続しているが,無症候であり,内服を継続とした.
D
スタチンを開始後1年を経過したが,最近,筋肉の痛みを強く訴える患者に対し,スタチン不耐を考慮し,採血検査を予定した.
E
70歳の陳旧性心筋梗塞の患者.通常用量のストロングスタチンを内服してLDLコレステロール90 mg/dL程度のコントロールであった.今回,狭心症を発症し,新規に生じた冠動脈プラークに対しカテーテル治療を行った.治療強化のため,ストロングスタチンを最大用量まで増量した.

問題15

以下の虚血性心疾患が疑われる患者のうち,早期の冠動脈造影検査と血行再建が必須でなく,まずは薬物療法で経過をみることも妥当と考えられる症例を2つ選べ.

A
70代男性,労作時胸痛で受診,冠動脈CTにて左冠動脈前下行枝に75%狭窄疑い
B
70代女性,心不全で入院,前壁を中心に左室機能低下,左室駆出率30%
C
60代男性,心電図異常(左室肥大)で受診,特に症状なし,冠動脈CTにて左冠動脈主幹部75%狭窄疑い
D
60代男性,労作時胸痛で受診,心筋シンチグラムで中等度~重度の虚血所見
E
60代男性,労作時胸痛の頻度が高くなり冷汗を伴うようになったため受診,冠動脈CTにて右冠動脈に90%狭窄疑い

問題16

次のうち正しい記載はどれか.2つ選べ.

A
無症候性心房細動の検出率は,モニタリング期間の長さとは関係がない.
B
心房細動の検出には,65歳以上の高齢者における定期的な検脈および心電図検査が強く推奨される.
C
脳梗塞既往患者における体外式長時間心電図モニターは,現時点ではあまり推奨されていない.
D
脳梗塞の既往はないが,CHADS2スコア高スコアの患者には植込み型心電計による心房細動の検出が積極的に勧められる.
E
植込み型心電計は,脳梗塞が疑われ,問診や身体診察,各種画像検査を施行しても原因が特定されない場合に適応が検討される.

問題17

以下のうち補正可能な出血の危険因子はどれか.2つ選べ.

A
安定した冠動脈心疾患に対する抗血小板薬の併用
B
肝硬変
C
管理不良な高血圧
D
高齢
E
維持透析

問題18

CABANA試験の結果について正しい記載は次のうちどれか.

A
薬物療法群からのクロスオーバー例が多かった.
B
QOLは改善しなかった.
C
心房細動の再発率は両群で差がなかった.
D
全死亡を含む生命予後は劇的に改善した.
E
登録されたほとんどが発作性心房細動であった.

問題19

植込み型除細動器(ICD)のショック作動を減少するために行う治療設定はどれか.2つ選べ.

A
単心房(AAI)ペーシング
B
房室間隔の延長
C
治療遅延
D
高心拍数
E
リスクの層別化

問題20

冠動脈疾患に伴う持続性心室頻拍または心室細動に対して植込み型除細動器(ICD)の適応とならないものはどれか.2つ選べ.

A
急性冠症候群の急性期(発症48時間以内)に出現する心室細動
B
心筋梗塞の既往を有し,虚血や電解質異常など可逆性の要因がない心室細動
C
心筋梗塞の既往を有し,虚血や電解質異常など可逆性の要因がない持続性心室頻拍で左室駆出率35%以下
D
持続性心室頻拍がカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合
E
患者の余命が12カ月以上期待できない場合

問題21

以下の身体所見に関する記載のうち正しいものはどれか.

A
大動脈弁狭窄症(AS)の収縮期雑音の最強点は右第二肋間で聴取する.
B
ASの収縮期雑音の大きさと重症度は一致する.
C
重症ASでは遅脈が必ず認められる.
D
慢性僧帽弁閉鎖不全(MR)において傍胸骨拍動・心尖拍動の評価は有用である.
E
機能性MRでは器質性MRより雑音が大きいことが多い.

問題22

経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が推奨される有症候性重症大動脈弁狭窄症(AS)症例は次のうちどれか.

A
70歳の透析患者
B
90歳でクリニカルフレイリティスケール7の患者
C
60歳の先天性大動脈二尖弁患者
D
80歳の低心機能〔左室駆出率(LVEF)40%〕患者
E
75歳で予後半年の悪性疾患を有する患者

問題23

本邦で保険診療として認められていない成人先天性心疾患領域におけるインターベンション(カテーテル)治療はどれか.2つ選べ.

A
経皮的心房中隔欠損閉鎖術(心房中隔欠損症)
B
経皮的心室中隔欠損閉鎖術(心室中隔欠損症)
C
経皮的肺動脈弁留置術(肺動脈弁逆流症)
D
経皮的動脈管閉鎖術(動脈管開存症)
E
経皮的卵円孔開存閉鎖術(卵円孔開存症)

問題24

78歳の男性.5年前から糖尿病性腎症にて血液透析されている.心電図上,V5~6にST低下を認め精査目的に外来紹介となった.半年前から坂道歩行にて軽度息切れはあるが,症状の変化はない.
 身長168 cm,体重60 kg.血圧160/90 mmHg,脈拍80/分,整.胸部X線検査はCTR 56%,肺野に異常を認めない.心エコー検査では軽度左室肥大を認めるが,左室壁運動異常はなく,EF 64%と保たれている.心筋トロポニンは陰性.造影剤アレルギーや気管支喘息の既往はない.この患者に対して,次に行う検査はどれか.

A
冠動脈造影
B
運動負荷試験
C
負荷MRI検査
D
冠動脈CT検査
E
アデノシン負荷心筋シンチグラフィ

問題25

拡張型心筋症の遅延造影MRI所見はどれか?

A
左室心内膜下の高信号
B
中隔の肥厚部位,右室接合部の高信号
C
心筋中層の高信号(mid-wall fibrosis)
D
中隔基部の菲薄化に一致した高信号
E
左室肥大と心内膜下の淡い高信号

(解答は本誌掲載)