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特集の理解を深めるための30題


問題1

スクリーニングを評価するのにふさわしくない基準はどれか.

A
過剰診断の頻度と,過剰診断によってもたらされる害はどの程度か?
B
精密検査と治療によってもたらされる害はどの程度か?
C
高度先進医療機関に限定された最先端の検査を用いているか?
D
スクリーニングを行わない場合,どの程度健康が損なわれるか?
E
偽陽性の頻度と,偽陽性によってもたらされる害はどの程度か?

問題2

次のうち,臨床判断値でないものを2つ選べ.

A
正常値
B
治療閾値
C
基準範囲
D
カットオフ値
E
予防医学的閾値

問題3

以下のうち,正しい記述を2つ選べ.

A
本邦で行われる健康診断はすべて法令に基づいて行われており,結果値に対しての指導区分もすべて法令で決められている.
B
一部の健康診断では指導区分のための判断基準が法令で決められているが,ほとんどの健康診断では担当した医師の判断で指導区分が決められている.
C
総合健診(人間ドック)や一般定期健康診断で使用される判断基準は,全国共通であり,これに従って指導区分が決定される.
D
特定健康審査では,判断基準(階層化の基準)が法令で規定されているが,その値は基準範囲から作成されたものである.
E
健康診断で用いられる判断基準は,偽陰性を減らすために「異常なし」の範囲を基準範囲よりも狭く設定していることがある.

問題4

わが国の健診でよく行われている項目のうち,米国予防医学専門委員会(USPSTF)の推奨として,グレードA/Bの推奨でないものはどれか.

A
血圧測定
B
視力・聴力測定
C
喫煙習慣の聴取
D
飲酒習慣の聴取
E
身長・体重測定

問題5

正しいのはどれか.

A
鉄欠乏性貧血は日本で問題になることは少ない.
B
貧血の基準(WHO)は赤血球数で規定されている.
C
小球性貧血で血清鉄低値であれば鉄欠乏性貧血と診断できる.
D
鉄欠乏性貧血と診断した場合,出血源の精査を必ず行う.
E
慢性疾患に伴う貧血(ACD)ではほとんどの場合,鉄剤の補充で改善する.

問題6

『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版』による脂質異常症のリスク区分別管理目標値として,誤っているものはどれか.

A
一次予防の低リスク:HDL-C 40 mg/dL以上
B
一次予防の中リスク:non-HDL-C 170 mg/dL未満
C
一次予防の中リスク:TG 150 mg/dL未満
D
一次予防の高リスク:LDL-C 140 mg/dL未満
E
二次予防:LDL-C 100 mg/dL未満

問題7

次の項目のうち,糖尿病の診断に際して用いることができる検査項目の組み合わせはどれか.
①空腹時血糖値,②ブドウ糖負荷試験1時間値,③ブドウ糖負荷試験2時間値,④HbA1c,⑤尿糖

A
①②③
B
①③④
C
①④⑤
D
②③④
E
③④⑤

問題8

70歳男性が検診で血尿を指摘され来院.20本/日の喫煙歴あり.以前に1度肉眼的血尿を認めたことがあるが,自然と改善したため病院には行っていないとのことだった.特に症状はない.尿検査を再検したところ,赤血球20~25/HPFであった.蛋白尿,変形赤血球は認めなかった.尿細胞診3回,腹部エコー施行したが,いずれも癌を示唆する所見は認めなかった.次に行うべき対応はどれか.

A
腎生検
B
膀胱鏡を考慮して泌尿器科へ紹介
C
次回の検診まで経過観察
D
尿細胞診を繰り返す
E
CT尿路造影

問題9

以下のうち,正しいものはどれか.

A
肝酵素測定によるウイルス性肝炎のスクリーニングは米国予防医学専門委員会(USPSTF)で推奨されている.
B
肝酵素測定によるアルコール多飲のスクリーニングはUSPSTFで推奨されている.
C
肝酵素測定によるNAFLD・NASHのスクリーニングはUSPSTFで推奨されている.
D
膵癌のスクリーニングを行わないことをUSPSTFは推奨している.
E
上記すべて誤りである.

問題10

血清癌胎児性抗原(CEA)値に影響を及ぼす因子を2つ選べ.

A
運動
B
加齢
C
喫煙
D
月経
E
食事

問題11

血清中の抗核抗体が陰性の場合,除外できる膠原病疾患はどれか.

A
混合性結合組織病(MCTD)
B
皮膚筋炎/多発筋炎
C
Sjögren症候群
D
全身性エリテマトーデス
E
全身性強皮症

問題12

75歳女性.半年前から軽いうつ症状と認知機能の低下を認める.健診にてBMI 25でT-Cho 270 mg/dL,LDL 155 mg/dL,HDL 45 mg/dL,TSH 8.7 μIU/mLを指摘された.食事は,昆布を好んで食べる.次に行うべきことを2つ選べ.

A
L-サイロキシン25 μg/日開始
B
スタチン系薬剤開始
C
軽い昆布摂取制限
D
2~3カ月後に再検
E
抗うつ薬開始

問題13

次のうち,一般住民に心電図検査を行った場合に最も多く見つかるのはどれか.

A
Brugada症候群
B
WPW症候群
C
QT延長
D
心房細動
E
早期再分極症候群

問題14

健康診断の胸部X線検査について,誤っているものはどれか.

A
肺結核のスクリーニングとして始まった.
B
現在では,肺結核よりも肺癌の検索が主な目的となってきている.
C
健康診断の胸部X線検査の有所見率は6.5%程度だが,要精検率は1.2%と低い.
D
労働安全衛生法では,すべての労働者に対して例外なく年1回の胸部X線検査を義務づけている.
E
健康診断における胸部X線の有効性に関するエビデンスは十分でない.

問題15

腹部エコー検査が科学的根拠を持って推奨される疾患を有する対象臓器はどれか.

A
肝臓
B
腎臓
C
膵臓
D
胆囊
E
大動脈

問題16

次のうち,特定保健指導の対象となるものを2つ選べ.

A
男性:腹囲90 cm,血圧140/90 mmHg,HbA1c 5.8%,中性脂肪180 mg/dL
B
男性:腹囲80 cm,BMI 20,血圧130/75 mmHg,HbA1c 5.6%,HDL-C 78 mg/dL
C
女性:腹囲100 cm,血圧150/85 mmHg,HbA1c 6.2%,中性脂肪120 mg/dL
D
女性:腹囲95 cm,血圧120/70 mmHg,降圧薬内服中,HbA1c 6.1%,HDL 45 mg/dL
E
女性:腹囲80 cm,BMI 21,血圧120/70 mmHg,HbA1c 7.6%,中性脂肪265 mg/dL

問題17

COPD検診について,正しいものはどれか.

A
COPD検診を受ける群と受けない群のアウトカムを比較したランダム化比較試験が存在する.
B
COPD検診の利益と害の根拠は不十分である.
C
COPD検診はわが国では行われていない.
D
COPD検診において利益相反について考える必要はない.
E
COPD検診においてインフォームド・コンセントは必要ない.

問題18

医療機関への受診が推奨されるCKD検診結果を2つ選べ.

A
36歳.尿蛋白(-),eGFR 55 mL/分/1.73 m2
B
65歳.尿蛋白(-),eGFR 68 mL/分/1.73 m2
C
52歳.尿蛋白(1+),eGFR 68 mL/分/1.73 m2
D
78歳.尿蛋白(±),eGFR 62 mL/分/1.73 m2
E
47歳.尿蛋白(-),eGFR 49 mL/分/1.73 m2

問題19

認知機能検査の実施と判定にあたって,留意すべきことはどれか.

A
年齢
B
聴力
C
視力
D
運動機能
E
上記すべて

問題20

結核についての記載で,正しいものはどれか.

A
日本は結核の低蔓延国である.
B
日本では抵抗力の弱い若年者の結核が多い.
C
外国出生の結核患者が全年齢層で多い.
D
インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)は活動性結核の診断にも有用である.
E
結核の有病率の低い集団では,IGRAの陽性的中率は低下し,偽陽性が増える.

問題21

健康増進法に基づく肝炎ウイルス検査の測定項目を2つ選べ.

A
HBs抗原
B
HBs抗体
C
HBe抗原
D
HCV抗体
E
HBc抗体

問題22

高血圧で定期通院中の45歳男性.職場健診で行った梅毒血清検査の結果が非トレポネーマ抗原検査(RPR)陰性,トレポネーマ抗原検査(TPHA)陽性であったため,定期受診日に心配した患者から相談があった.検査結果の解釈,その後のアクションとして正しいものを2つ選べ.

A
梅毒感染の可能性はないため,「経過観察でよい」と説明する.
B
梅毒感染の可能性があるため,感染症専門医へ紹介する.
C
病歴(梅毒の治療歴,最後の性交渉についてなど)を聴取する.
D
身体診察(皮疹や無痛性陰部潰瘍の有無など)を行う.
E
梅毒のごく初期の感染の可能性を考え,抗菌薬治療を開始する.

問題23

循環器領域のスクリーニング検査についての以下の記述で,正しいものはどれか.

A
米国予防医学専門委員会(USPSTF)で提唱されている低侵襲のリスク評価・検診ツールは,冠動脈石灰化スコア,心エコー,高感度トロポニンの3つである.
B
冠動脈石灰化スコアは,動脈硬化疾病リスクが高い患者群に対する冠動脈疾患のスクリーニングとして有用である.
C
冠動脈石灰化スコアは,造影剤を使わない単純CTの画像でも算出可能である.
D
足関節上腕血圧比(ABI)検査は下肢閉塞性動脈硬化症の早期発見には有効だが,その他の動脈硬化性疾患との相関は乏しい.
E
心エコー検査は低侵襲であり,無症状の患者にもスクリーニングとして施行することが推奨されている.

問題24

来院した患者に骨粗鬆症の検査を受ける必要があるかどうかを質問された.骨密度検査を勧めるうえで,優先順位の低い患者背景はどれか.

A
67歳女性
B
喫煙
C
毎日ビール350 mL摂取
D
母親の大腿骨近位部骨折の既往
E
BMI(body mass index)16.5

問題25

下記のうち,誤っているものを2つ選べ.

A
脳ドックは日本特有のシステムで,自由診療である.
B
未破裂脳動脈瘤が発見される頻度は3~6%台である.
C
頸動脈狭窄症は,見つかり次第,狭窄度が低いうちに外科的治療を行うことが望ましい.
D
脳ドックが推奨されるのは中・高齢者や家族歴・生活習慣病などの危険因子がある人たちである.
E
利便性を考え,脳ドックの結果は対面でなく郵送で通知することが望ましい.

問題26

対策型大腸癌検診について,誤っているものはどれか.

A
検診法には,便潜血検査免疫法2日法を用いる.
B
検体は回収後,原則として24時間以内に測定する.
C
便潜血陽性の場合,再検査はしてはならない.
D
便潜血検査と併せて行う問診の結果のみで「要精検」とはしない.
E
プロセス指標数値の基準値で,要精検率の許容値は5.0%以下である.

問題27

胃癌検診について,正しいものを2つ選べ.

A
胃内視鏡検診と胃X線検診は,対策型検診・任意型検診として推奨されている.
B
胃内視鏡検診の検査医が日本消化器内視鏡学会専門医であれば,撮影画像のダブルチェックは不要である.
C
Helicobacter pyloriH.pylori)抗体とペプシノゲン検査を併用したABC検診は,対策型検診として推奨されている.
D
H.pylori除菌症例に対してABC検診による胃癌リスク評価は有効である.
E
日本消化器がん検診学会は,「胃がん検診専門技師」による読影補助認定制度を設けた.

問題28

前立腺癌について,正しい記載はどれか.

A
人種差,地域差はほとんどない.
B
前立腺特異抗原(PSA)測定群と未測定群では,前立腺癌死亡率に有意な差が認められる.
C
PSA測定は,年齢などを問わず全男性に施行する意義がある.
D
欧米先進国では前立腺癌罹患率は増加傾向にある.
E
前立腺癌においては,過剰治療の可能性はほとんどない.

問題29

NLST試験の結果で,正しいものの組み合わせはどれか.
①感度は胸部X線よりも低線量CTで高い.
②特異度は胸部X線よりも低線量CTで高い.
③肺癌発見率は胸部X線よりも低線量CTで高い.
④陽性的中率は胸部X線よりも低線量CTで高い.
⑤陰性的中率は胸部X線よりも低線量CTで高い.

A
①,②,③
B
①,③,⑤
C
③,④,⑤
D
①~⑤すべて

問題30

乳癌検診が有効な根拠として,正しいものはどれか.

A
乳癌検診で多くの乳癌が見つかった.
B
検診で発見された乳癌患者の5年生存率が,有症状で診断された乳癌患者より高かった.
C
検診で発見された乳癌患者は,有症状で診断された乳癌患者よりステージが低かった.
D
検診を受けた集団全体の乳癌死亡率が低下した.
E
乳癌検診で非浸潤癌が多く見つかった.

(解答は本誌掲載)