特集の理解を深めるための23題
問題1
70代男性.3日前から両下肢のしびれ感,背部痛がみられていた.両下肢のしびれ感は徐々に上行し,1日前から歩行が困難となったため,救急要請した.神経診察では脳神経と上肢に特記所見は認めなかった.本症例の感覚障害の分布を図1に示す.局在診断のために重要となる検査はどれか.
- A
- 頭部MRI
- B
- 頸胸髄MRI
- C
- 腰髄MRI
- D
- 神経伝導検査
- E
- 針筋電図
問題2
ペナンブラについて,正しいものはどれか.
- A
- ペナンブラの特徴は「選択的細胞死」である.
- B
- ペナンブラはいったん梗塞に至っているものの,血流の回復により機能改善を期待できる領域を指す.
- C
- 慢性炎症はペナンブラにおける血流の回復を促進する.
- D
- 急性期脳梗塞の治療目的は「ペナンブラを救う」ことである.
- E
- 画像所見によるペナンブラの評価は,今ではほとんど行われていない.
問題3
脳圧に関する記述で,正しいものを2つ選べ.
- A
- 脳灌流圧は「平均動脈圧-頭蓋内圧」で規定され,目標脳灌流圧は20~30 mmHgである.
- B
- 頭蓋内高血圧患者の頭部は15~30°挙上し,正中位とする.
- C
- 血圧管理のためにニトログリセリンなどの血管拡張薬を使用する.
- D
- マンニトールは高張食塩水と比べ,低血圧や脱水の患者で使用しやすい.
- E
- 悪性中大脳動脈梗塞に対する発症48時間以内の外減圧は機能的予後を改善する.
問題4
次のうち,小葉辺縁構造でないものはどれか.
- A
- 胸膜
- B
- 肺静脈
- C
- 細気管支
- D
- 小葉間隔壁
- E
- 肺動脈
問題5
61歳女性(身長160 cm,体重60 kg).呼吸苦を主訴に救急受診し,肺炎の診断で,低酸素血症から挿管人工呼吸器管理が開始され入院となった.人工呼吸器設定としては,アシストコントロールの従圧式管理,吸気圧10 cmH2O,PEEP 5 cmH2Oで,人工呼吸器グラフィックに表示されている気道内圧は15 cmH2Oである.呼吸様式としては促迫しており,呼吸補助筋を使用した強い自発呼吸が出ている.このときに“肺そのもの”にかかっている圧(経肺圧)はどれか.
- A
- 15 cmH2O
- B
- 10 cmH2O
- C
- 5 cmH2O
- D
- 少なくとも15 cmH2O以上
- E
- 0 cmH2O
問題6
次のうち,誤った選択肢を2つ選べ.
- A
- 肺外性低換気による低酸素血症は酸素投与が有効である.
- B
- 拡散障害による低酸素血症は酸素投与が有効である.
- C
- 拡散障害による低酸素血症は運動で増悪する.
- D
- シャントによる低酸素血症は酸素投与が有効である.
- E
- シャントによる低酸素血症は運動で増悪する.
問題7
慢性高CO2血症の患者に高濃度O2を投与するとCO2濃度がさらに上がる機序について,関連しないものはどれか.
- A
- CO2ドライブ
- B
- O2ドライブ
- C
- 肺胞気-動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)開大
- D
- 換気血流比不均等(V/Qミスマッチ)
- E
- Haldane効果
問題8
次のうち,適切でないものはどれか.
- A
- 大動脈弁は,右冠尖,左冠尖,無冠尖から成る.
- B
- 僧帽弁は前尖,後尖の二尖から成る.
- C
- 大動脈弁と肺動脈弁の弁輪部膿瘍では完全房室ブロックの合併が多い.
- D
- 心房中隔欠損症において最も多いのは二次孔欠損型である.
- E
- 心室中隔欠損症において最も多いのは膜性部欠損型である.
問題9
体循環における血管の記述として誤っているものはどれか.
- A
- 血管系において大動脈は血流速度が最も速い.
- B
- 血圧は血管抵抗と血流量で規定される.
- C
- 細動脈は抵抗血管,毛細血管は容量血管と呼ばれる.
- D
- 平均循環充満圧はstress volume(Vs)と静脈コンプライアンス(C)で規定される.
- E
- Poiseuilleの法則は血管抵抗を理解するうえで重要である.
問題10
次の説明文で誤っているものはどれか.
- A
- 心不全治療で呼気終末陽圧(PEEP)をかけると,静脈還流量が少ない場合は心拍出量を減少させる.
- B
- 心不全治療でPEEPをかけると心臓壁内圧較差が減少し,後負荷が軽減する.
- C
- 交感神経活性化は心収縮力・静脈還流量を増加し,心拍出量を増加させる.
- D
- 血管拡張薬は後負荷を軽減することで心拍出量を増加させる.
- E
- 心不全で,頻脈時に最も影響を受けるのは収縮期であり,収縮時間の短縮で心拍出量が減少する.
問題11
ショックの生理学について述べた以下のうち,正しいものはどれか.
- A
- 循環血液量減少性ショックでは,1回拍出量(SV)は上昇する.
- B
- 心原性ショックでは,後負荷(SVR)は低下する.
- C
- 閉塞性ショックでは,左室前負荷が低下する.
- D
- 血液分布異常性ショックでは,SVRは低下する.
- E
- 敗血症性ショックの病態は血液分布異常性ショックだけで説明できる.
問題12
左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)において,全例で導入が推奨されている薬剤を2つ選べ.
- A
- β遮断薬
- B
- ACE阻害薬,ARB
- C
- スピロノラクトン
- D
- トルバプタン
- E
- ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)
問題13
70歳男性.肺炎で入院した際に,モニター心電図で図2に示す不整脈が多発した.下壁陳旧性心筋梗塞の既往がある.心機能は良好.下記のうち,間違いはどれか.
- A
- 陳旧性心筋梗塞患者の心室細動は,しばしばこの不整脈から始まる.
- B
- この不整脈が多発していることは不良な予後を示している.
- C
- Ⅰ群抗不整脈薬の投与によりこの不整脈は減少することが予想される.
- D
- この患者にはⅠ群抗不整脈薬を投与するべきである.
問題14
SGLT2阻害薬について,誤っているものはどれか.
- A
- 近位尿細管に作用する.
- B
- 腎イベント抑制作用を示す.
- C
- 1型糖尿病の症例には使えない.
- D
- 尿中ナトリウム排泄が減少する.
- E
- 尿細管糸球体フィードバックの増強による糸球体過剰濾過を抑制する.
問題15
血管透過性に重要なグリコカリックスを障害する因子として,誤っているものはどれか.
- A
- 虚血再灌流障害
- B
- 敗血症
- C
- 体液過剰
- D
- 低アルブミン血症
- E
- 高血糖
問題16
下記のうち,低カリウム血症の原因となるものを2つ選べ.
- A
- インスリン
- B
- アニオンギャップ非開大性代謝性アシドーシス
- C
- サイアザイド系利尿薬
- D
- アルドステロン拮抗薬
- E
- β遮断薬
問題17
腸管(囊腫性)気腫症について,誤っているのはどれか.
- A
- 特発性と続発性に分類される.
- B
- 治療法に高濃度酸素療法がある.
- C
- 腹腔内遊離ガス像は絶対的手術適応である.
- D
- 腹部単純X線検査でぶどう房状のガス像を認める.
- E
- 門脈ガス血症を認めることもある.
問題18
栄養の消化と吸収について,正しいものを2つ選べ.
- A
- 食物は管腔内の消化酵素のみで消化される.
- B
- 糖質はすべてグルコースに分解されて吸収される.
- C
- 蛋白質はアミノ酸にまで分解されないと吸収されない.
- D
- 脂質の吸収には胆汁酸による乳化とミセル形成が重要である.
- E
- 大腸に到達した胆汁酸は分泌性下痢の原因になる.
問題19
次の糖尿病治療薬のうち,脂肪細胞からのアデイポネクチン分泌を促進するものはどれか.
- A
- シダグリプチン
- B
- グリメピリド
- C
- レパグリニド
- D
- ピオグリタゾン
- E
- ミグリトール
問題20
non-thyroidal illness(NTI)について正しいものはどれか.
- A
- 身体が侵襲下に置かれたときに生じる生体防御反応である.
- B
- 基礎に視床下部-下垂体-甲状腺系の機能異常がある患者に生じる.
- C
- 甲状腺ホルモンの変化として最も初期に起きるのはT4の低下である.
- D
- 甲状腺ホルモンが変化した場合,正常のフィードバック機構が働く.
- E
- NTIによる甲状腺ホルモンの低下が生じた場合はホルモンの補充が必要である.
問題21
特に既往のない32歳女性.3日前に右背部痛を自覚し,来院当日朝に左背部痛も出現した.同時期より動悸,冷汗,気分不良が認められ救急要請となった.来院時バイタルサインは軽度見当識障害あり,血圧74/40 mmhg,心拍数101/分・整,呼吸数28回/分,体温37.4℃.簡易血糖測定器にて血糖値40 mg/dLと低下を認めた.腹部造影CT検査では造影されない低濃度の両側副腎腫大,周囲の脂肪組織混濁が認められた.
この病態の背景疾患として,頻度が低いものを選べ.
- A
- 本態性血小板増多症
- B
- 関節リウマチ
- C
- ヘパリン誘発性血小板減少症
- D
- 抗リン脂質抗体症候群
- E
- 敗血症性ショック
問題22
次の選択肢のうち,誤っているものを2つ選べ.
- A
- プロトロンビンは肝臓で産生される.
- B
- プロテインCはビタミンK依存性因子である.
- C
- プラスミノゲンはフィブリンを分解する.
- D
- トロンボモジュリンは血小板凝集を増強する.
- E
- 血管内皮細胞はプロスタグランジンI2を産生する.
問題23
脾臓摘出後に感染しやすい微生物として,誤っているものはどれか.
- A
- 肺炎球菌
- B
- インフルエンザ桿菌
- C
- 髄膜炎菌
- D
- カプノサイトファーガ
- E
- 緑膿菌
(解答は本誌掲載) |