HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 56巻9号(2019年8月号) 特集の理解を深めるための26題
目次詳細・ご注文はこちら  電子ジャーナルはこちら

特集の理解を深めるための26題


問題1

70歳男性.糖尿病性腎症に伴う末期腎不全により,30年前から1回5時間・週3回(月・水・金)の維持透析を施行中.シャントは人工血管内シャント(AVG).金曜日の透析で発熱・全身倦怠感が出現.体動困難になっているのを家族が発見して救急搬送され,グラフト感染に伴う敗血症性ショックと診断され入院となった.
入院後に行う対応として,誤っているものはどれか.

A
短期留置カテーテルの挿入を行う.
B
採血と胸部X線を確認し,緊急透析の必要性を検討する.
C
グラフト穿刺を行い,透析を行う.
D
患者のバイタルサインや採血結果を踏まえて,持続的血液濾過透析(CHDF)なども検討する.
E
必要な薬剤以外は中止する.

問題2

68歳男性.糖尿病性腎症を原疾患とする慢性腎臓病で定期外来に通院していた.腎機能障害が徐々に進行し,GFR<15 mL/分/1.73 m2となったため,担当医から血液透析(腹膜透析や腎移植についても)の説明を十分に受け,患者・家族ともにその内容を理解し,適応があれば透析療法を受けることに同意をしていた.身体所見は,眼瞼結膜に軽度の貧血を認める以外は特記すべき所見はない.酸素飽和度は98%(room air)で採血結果はHb 10.2 mg/dL(エリスロポエチン製剤使用下),Cr 5.5 mg/dL,推算GFR 9.0 mL/分/1.73 m2,BUN 72 mg/dL,Na 134 mEq/L,K 5.6 mEq/L,Cl 105 mEq/L,補正Ca 8.2 mg/dL,P 5.2 mg/dL,HCO3- 17 mmol/Lであった.
この患者において適切な対応はどれか.

A
緊急入院して緊急透析を導入する.
B
緊急入院して慢性腎臓病保存期の管理を強化する.
C
すぐに入院の予約をして,慢性透析導入を検討する.
D
引き続き慢性腎臓病保存期の管理を行いつつ,自覚症状について問診を強化する.
E
引き続き慢性腎臓病保存期の管理を行いつつ,患者からの何らかの訴えがあるまで保存的加療を継続する.

問題3

一般的に腹膜透析中の患者に対して,処置・検査前に抗菌薬の予防投与が必要ではないものはどれか.

A
上部消化管内視鏡検査
B
下部消化管内視鏡検査
C
抜歯
D
婦人科的処置
E
腹膜機能検査

問題4

50歳男性.糖尿病性腎症により末期腎不全に至り,2年前に腎代替療法として腹膜透析(PD)を選択し導入.現在もPD治療中.腹部に違和感が出現し排液の混濁を認め,同日救急外来を受診した.受診時,局在する腹部の圧痛点は認めないが,腹部全体の痛みを訴える.嘔気・嘔吐や下痢はなし.PD排液の混濁も確認された.次に行う検査として適切なものはどれか.

A
透析液排液のグラム染色を行う.
B
透析液排液の培養結果を待って抗菌薬を選択・投与する.
C
カテーテル出口部を確認する.
D
発熱もなく血液検査でCRPが陰性であれば,腹膜炎は否定してもよい.
E
抗菌薬はタッチコンタミネーションを第一に考え,セファゾリン単剤で開始する.

問題5

25歳女性.1時間ほど前に自殺目的で以下の薬剤を内服したものと考えられ,救急搬送された.
フルニトラゼパム(1 mg)30錠,ブロマゼパム(2 mg)80錠,総合感冒薬(A社)130錠,総合感冒薬(B社)50錠,総合感冒薬(C社)60錠.
意識レベル(Japan Coma Scale)Ⅲ-300,血圧82/52 mmHg,脈拍55/分,BUN 6 mg/dL,Cr 0.67 mg/dL,AST 15 IU/L,ALT 11 IU/L.
総合感冒薬に含まれる推定アセトアミノフェン量は24 gと考えられた.次のうち,すぐに考慮すべき治療法を2つ選べ.

A
胃洗浄
B
血液透析
C
N-アセチルシステインの投与
D
エタノールの投与
E
ヨウ化プラリドキシム(PAM)の投与

問題6

以下,透析の検査に関する記述のうち,誤っているもの2つ選べ.

A
本邦において,血液透析患者の定期採血は中2日に行うのが一般的である.
B
Kt/Vは蛋白異化率の指標である.
C
本邦において,最低限確保すべき透析量としてsingle-pool Kt/V urea(spKt/V)1.2以上が推奨されている.
D
透析後の血液検査は行うべきでない.
E
血液透析患者と非透析患者とでは正常値が異なる場合がある.

問題7

透析回診について,誤っているものはどれか.

A
透析患者では敗血症の症状が乏しいため,問診と身体診察を行い,必要に応じて血液培養を採取する.
B
透析スタッフからの情報は重要である.
C
他施設や他科から処方された薬剤について,常に把握することが必要である.
D
アレルギーや既往歴は,かかりつけ透析施設の医師による紹介状のみを参考にする.
E
代務の透析回診であっても,通常の臨床プラクティスを実践する.

問題8

60歳男性,血液透析患者.身長165 cm,体重60 kg.早朝の心不全発作で入院した既往がある.2週間前から下肢のむくみが出現し,透析療法にてドライウェイト(DW)を下げる方針で加療していた.現在までの2週間でDWを3 kg下げて経過をみている.透析間の体重の増加は5%以上のことも多い.現在の透析前血圧は170/90 mmHgで,透析終了間際に血圧が低下することをしばしば認めている.家庭内血圧測定は仕事が忙しく,できていない.現在,下腿の浮腫は消失し,心胸郭比(CTR)は50%である.hANPは40 pg/mL,P 6.0 mg/dL.最近,日中に眠気を感じてあくびをすることが多い.家族からはいびきが大きくなったと指摘されている.
次のうち,行うべきでないことはどれか.

A
DWを下げる.
B
家庭内血圧測定を行う.
C
高血圧の原因検索を行う.
D
睡眠ポリグラフ検査を行う.
E
食事指導を行う.

問題9

肺葉虚脱と紛らわしい所見は多くあるが,右上葉虚脱と紛らわしい所見を呈するものはどれか.

A
漏斗胸
B
副裂
C
蛇行する大動脈
D
心外膜下脂肪
E
奇静脈葉

問題10

60歳男性.糖尿病性腎症が悪化し3カ月前から透析開始になった.1カ月前から発熱と頸部リンパ節腫脹が出現し,リンパ節生検で結核性リンパ節炎と診断された.薬剤感受性試験では抗結核薬への耐性は認めなかった. この患者に抗結核薬を開始するにあたり,腎機能に合わせた減量が必要ない薬剤を2つ選べ.

A
イソニアジド
B
リファンピシン
C
エタンブトール
D
ピラジナミド
E
レボフロキサシン

問題11

73歳男性.糖尿病性腎症による腎不全で血液透析中(週3回,1回4時間).DW 57.8 kg,透析間の体重増加量は1.5~3 kg.今週になり透析後半や透析終了後に収縮期圧100 mmHg未満の血圧低下を起こすようになった.2カ月前と比較して心胸郭比(CTR)は54%から51%に低下している.透析前血液検査所見では,BUN 58.5 mg/dL,Cr 11.6 mg/dL,TP 6.8 g/dL,Alb 3.8 g/dL,Na 139 mEq/L,K 4.9 mEq/L,Cl 101 mEq/L,Ca 8.8 md/dL,P 5.6 mg/dL,RBC 366万/μL,Hb 11.3 d/dL,Ht 33.8%で,先月と大きな変化はない.透析中に胸部症状や不整脈は認めておらず,黒色便も出ていない.定期処方で,アムロジピン5 mg,アルファカルシドール0.25 μg,炭酸ランタン750 mg,ビキサロマー2,250 mgが連日投与されている.
この患者への対応として,優先度が高いものを2つ選べ.

A
DWを下げる.
B
降圧薬を減量する.
C
内視鏡検査で消化管出血の検索を行う.
D
心エコー検査を行う.
E
アルブミン製剤の投与を行う.

問題12

胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)にて用いる止血処置はどれか.

A
クリッピング術
B
高張ナトリウム-エピネフリン局注法(HSE)
C
アルゴンプラズマ凝固法(APC)
D
内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)
E
内視鏡的硬化療法(EIS)

問題13

以下の抗血栓薬のなかで,本邦の医薬品情報において,重度の腎障害患者(クレアチニンクリアランス15 mL/分以下)にも使用可能(慎重投与も含む)な抗血栓薬を2つ選べ.

A
アスピリン
B
ワルファリン
C
チカグレロル
D
アピキサバン
E
リバーロキサバン

問題14

72歳男性.血液透析歴11年.CKD-MBDへの薬物治療として,炭酸ランタン(P吸着薬)とアルファカルシドール(活性型ビタミンD製剤)を内服している.今回,肺炎のため入院となった.入院後,血清P値は徐々に低下し,透析前の値が2.1 mg/dLとなった.CKD-MBDの管理として正しいものを2つ選べ.

A
炭酸ランタンの減量,中止
B
アルファカルシドールの中止
C
Ca受容体作動薬の開始
D
P制限の緩和
E
ビスホスホネートの開始

問題15

腎性貧血について,正しいものはどれか.

A
診断には内因性エリスロポエチンが基準値よりも低下していることが必要である.
B
赤血球造血刺激因子(ESA)製剤の静脈注射投与では,副作用として赤芽球癆の頻度が高い.
C
ESA製剤を使用していると平均赤血球容積(MCV)は低下する.
D
ESA低反応性は予後と関連がない.
E
血液透析患者では腎性貧血の頻度が高い.

問題16

58歳の男性.糖尿病腎症のため,3年前に血液透析導入となった.導入前は混合型インスリン製剤(朝食前6単位,夕食前4単位)で血糖コントロールされていたが,導入後はHbA1c 6%前後であるため,インスリン中止となった.直近の採血で随時血糖値260 mg/dL,グリコアルブミン25.3%であった.
本症例に適切な薬物療法はどれか.

A
リナグリプチン(トラゼンタ®)1回5 mg・1日1回
B
ナテグリニド(スターシス®)1回90 mg・1日3回(毎食直前)
C
シタグリプチン(ジャヌビア®)1回50 mg・1日1回
D
メトホルミン(メトグルコ®)1回500 mg・1日2回
E
グリメピリド(アマリール®)1回1 mg・1日1回

問題17

透析患者の皮膚搔痒感について,正しいものを2つ選べ.

A
原因は単一的であることが多い.
B
抗ヒスタミン薬が第一選択である.
C
前希釈オンライン血液透析濾過(HDF)は搔痒感の改善に有効である.
D
オピオイドのうちμオピオイド系は搔痒を抑制する.
E
保湿剤はC線維自由神経終末の表皮内伸長を改善して搔痒感を低下させる.

問題18

透析患者に対して使用できる抗凝固薬はどれか.

A
ダビガトラン
B
低分子ヘパリン
C
エドキサバン
D
フォンダパリヌクス
E
ワルファリン

問題19

透析患者に対して最初に行う基本的心理的ケア・治療の方法として,誤っているものはどれか.

A
身体的苦痛がないか評価する.
B
使用できる社会的資源を活用する.
C
良好な治療関係の構築に努める.
D
向精神薬を使用する.
E
支持的精神療法やエンパワーメントアプローチなどを用いる.

問題20

透析患者を周術期に絶食させた際に注意すべき電解質異常はどれか.

A
低Na血症
B
高Na血症
C
低K血症
D
高K血症
E
低Ca血症

問題21

透析患者の血便において,診療時に注意すべき点として正しいものを2つ選べ.

A
輸血を行う場合は,必ずK吸着フィルターを使用すべきである.
B
止血が得られるまでは抗凝固薬としてナファモスタットの使用を検討する.
C
透析で常に抗凝固薬を使用しているため,原因が非閉塞性腸管虚血(NOMI)である可能性は低い.
D
出血源同定のために造影CTを施行した場合は,必ず同日に透析を施行しなければならない.
E
消化管出血がある場合,血液の吸収に伴い高K血症になることがある.

問題22

腹膜透析関連腹膜炎の治療について正しいものを2つ選べ.

A
腹痛を伴わない場合,腹膜炎は否定的である.
B
経験的治療として,第1世代セファロスポリンと第3世代セファロスポリンを投与する.
C
腹膜炎の原因菌として,グラム陰性桿菌が最も多い.
D
腹膜炎は,腹膜機能低下の原因となる.
E
排液のグラム染色が陰性の場合,腹膜炎は否定的である.

問題23

透析患者の心不全について正しいものはどれか.

A
溢水状態と心不全とは区別して捉える.
B
血圧の管理にはβ遮断薬が第一選択である.
C
心不全への薬物療法の有用性は明らかである.
D
急性心不全と慢性心不全とを区別して管理する.
E
心不全進展ステージC以上では薬物療法が推奨される.

問題24

以下の記述のうち,正しいものを2つ選べ.

A
維持透析は頭部外傷による急性の頭蓋内出血発症との関連がある.
B
維持透析は慢性硬膜下血腫発症との関連がある.
C
透析患者は健常者と比較して骨折のリスクが高い.
D
シャントからの出血は動脈性の出血となるため,ターニケットによる駆血が有効である.
E
透析患者の骨密度の評価にはdual energy x-ray absorptiometry(DEXA)を用いる.

問題25

血液透析患者が大腸癌に対するS状結腸切除術を受けることになった.最終飲食は前日19時である.他患者の緊急手術のため,手術開始時刻が午後になる予定になった.最も注意すべき電解質異常はどれか.

A
ナトリウム(Na)
B
カリウム(K)
C
クロール(Cl)
D
カルシウム(Ca)
E
無機リン(P)

問題26

以下の文章のうち,正しいものを2つ選べ.

A
血液透析患者の脳出血では,血圧コントロールを急性期から積極的に行う.
B
血液透析患者の脳出血では,可能な限り早急に十分な血液透析を行う.
C
血液透析患者の脳梗塞では,血圧コントロールを急性期から積極的に行う.
D
血液透析患者の脳梗塞であっても,条件が合えば血栓溶解療法の適応となる.
E
血液透析患者の脳梗塞予防のために,直接経口抗凝固薬(DOAC)を可能な限り用いる.

(解答は本誌掲載)