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特集の理解を深めるための28題


問題1

標準量のプロトンポンプ阻害薬(PPI)を8週間内服しても胃食道逆流(GER)による症状が改善しないPPI抵抗性胃食道逆流症(GERD)の場合,まず最初に考慮する対応はどれか.1つ選べ.

A
外科治療
B
PPIのオンデマンド療法
C
PPI倍量,分割投与
D
食道インピーダンス・pHモニタリングによる病態評価
E
経過視察

問題2

68歳の女性.変形性膝関節症があり,市販の鎮痛薬を常用していた.心窩部痛と吐血を主訴に救急外来へ搬送された.
身体所見:血圧98/60 mmHg,脈拍110/分.
血液所見:白血球4,800/μL,赤血球380万/μL,Hb 11.8 g/dL,血小板16万/μL.血液生化学所見:BUN 31 mg/dL,Cr 0.56 mg/dL,CRP 0.8 mg/dL.
直ちに行うべきではない処置はどれか.

A
血管確保
B
緊急上部消化管内視鏡検査
C
直腸診
D
腹部CT検査
E
プロトンポンプ阻害薬(PPI)の静注

問題3

機能性ディスペプシアの必須条件として,基準に含まれない項目を1つ選べ.

A
つらいと感じる食後のもたれ感
B
心窩部に限局した中等症以上の痛みあるいは灼熱感が週に1回以上ある.
C
早期膨満感
D
心窩部痛
E
症状の原因となりそうな器質的疾患(上部内視鏡検査を含む)が確認できない.

問題4

下記のうち正しいものはどれか.2つ選べ.

A
NSAIDsや抗血栓薬による上部消化管潰瘍と診断された場合は,全例被疑薬の中止が必要である.
B
上部消化管潰瘍治療の第一選択薬であるPPIは,内視鏡検査で診断する前の投与は控える.
C
Helicobacter pylori 菌の診断方法は,培養法,鏡検法,迅速ウレアーゼ試験,抗体法,尿素呼気試験法が挙げられる.
D
Helicobacter pylori 除菌治療中は喫煙を控えることが望ましい.
E
胃潰瘍に対して診断治療を行った後は,内視鏡検査のフォローは必要ない.

問題5

カンピロバクター腸炎の治療で使用する抗菌薬を以下のなかから1つ選べ.

A
セフトリアキソン
B
セフォチアム
C
セファゾリン
D
シプロフロキサシン
E
クラリスロマイシン

問題6

Clostridioides difficile (旧名Clostridium difficile )感染症(CDI)について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
CDIのなかでも下部消化管内視鏡検査にて偽膜を認めないものも存在する.
B
便検査にてCD抗原(GDH)陽性・トキシン陰性ではCDIの診断も除外もできない.
C
CDIと診断すれば耐性菌のことを考え重症度に関わらず初回治療はメトロニダゾールを用いる.
D
抗菌薬使用歴のある入院患者の下痢は発熱がなくてもCDI検査の適応となる.
E
CDIの再発患者には積極的にバンコマイシンを用いる.

問題7

「潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針」のなかの「潰瘍性大腸炎外科治療指針」において,絶対的手術適応でないものを2つ選べ.

A
大量出血
B
重症型,劇症型で強力な内科治療が無効な例
C
内科的治療で十分な効果がなく,日常生活,社会生活が困難なQOL低下例
D
大腸合併症:狭窄,瘻孔,low-grade dysplasia(UC-Ⅲ)のうち,癌合併の可能性が高いと考えられる例
E
中毒性巨大結腸症

問題8

Crohn病の診断と治療において正しいのはどれか.

A
Crohn病の診断は大腸内視鏡で可能である.
B
Crohn Disease Activity Index(CDAI)が150以下であれば,Crohn病の活動性病変はない.
C
狭窄病変の治療は手術を行う.
D
抗TNF-α製剤の二次無効例では薬剤変更を優先する.
E
Crohn病患者には禁煙を指導するべきである.

問題9

慢性の腹痛と便通異常を認め,過敏性腸症候群(IBS)を疑う症例はどれか.2つ選べ.

A
15歳女子.1年前から授業中にたびたび腹痛を起こし,よくトイレに行く.
B
56歳男性.半年前の健診便潜血検査が陽性のまま放置し,最近血便を繰り返す.
C
34歳女性.下腹部を触診すると手拳大の腫瘤を認める.
D
28歳男性.通勤電車内ですぐにトイレに行きたくなってしまう.
E
62歳男性.9年前に大腸癌の手術歴があり.血液検査で鉄欠乏性貧血を認める.

問題10

大腸憩室炎について正しいのはどれか.

A
日本では横行結腸に憩室が発生することが多い.
B
高齢者の大腸憩室炎は右側結腸に発症することが多い.
C
膿瘍を伴う大腸憩室炎の治療として,膿瘍の大きさが10 cmであればドレナージは必要ではない.
D
大腸憩室炎の際に使用する抗菌薬は,キノロン系抗菌薬が最も良い適応である.
E
大腸憩室炎で汎発性腹膜炎を起こしている場合は速やかに外科にコンサルトする必要がある.

問題11

急性膵炎の治療として正しいものはどれか.2つ選べ.

A
細胞内液を選択し急速輸液を開始した.
B
急速輸液を開始し12時間が経過したが,自尿が得られなかったのでフロセミドを投与した.
C
腹部痛に対しペンタゾシンを投与したが除痛が得られず,フェンタニルを開始した.
D
発症後24時間で成分栄養剤を選択し胃管より経腸栄養を開始した.
E
治療開始後7日間が経過したので2回目の重症度判定を行った.

問題12

慢性膵炎患者の疼痛治療に有用でないのは次のうちどれか.1つ選べ.

A
ロキソプロフェンNa
B
フロプロピオン
C
パロキセチン
D
パンクレリパーゼ
E
成分栄養剤(elemental diet)

問題13

特に既往歴も既存症もない60歳男性.食後からの持続的な右季肋部痛を主訴に救急外来を受診した.急性胆嚢炎(成因は胆嚢結石)の診断に至り,重症度はGradeⅡ(中等症)と判定した.薬物アレルギーはない.eGFRは75 mL/分/1.73 m2.施設のアンチバイオグラムで,Escherichia coli の35%がアンピシリン(ABPC)に耐性を示している.その後の対応として適切なものはどれか.2つ選べ.

A
血液培養を採取する.
B
侵襲を伴う胆嚢摘出術を避け,保存加療を試みる.
C
アンピシリン/スルバクタム(ABPC/SBT)1.5 gの点滴静注を開始し,以後6時間ごとに投与する.
D
セフメタゾール(CMZ)1 gの点滴静注を開始し,以後8時間ごとに投与する.
E
セフメタゾール2 gの点滴静注を開始し,以後24時間ごとに投与する.

問題14

76歳男性.1日前より上腹部痛,38℃後半の発熱,嘔吐が持続するため,救急外来を受診した.
既往歴,内服薬:なし.
身体所見:上腹部全体に圧痛あり.血圧90/61 mmHg,脈拍98/分 整,体温39.2℃,呼吸数21/分,酸素飽和度92%(room air).
血液検査:白血球20,400/μL,血小板7.5万/μL,TB 4.8 mg/dL,AST 254 IU/L,ALT 202 IU/L,LD 340 IU/L(基準120~230),ALP 948 IU/L(基準115~330),γ-GTP 733 IU/L(基準9~27),PT-INR 1.65,FDP 26 μg/mL(基準0~5),AMY 785 IU/L(基準43~116),BUN 36 mg/dL,Cr 2.29 mg/dL,eGFR 29 mL/分,CRP 20.56 mg/dL.
超音波検査:肝内胆管および胆嚢の腫大を認めた.肝外胆管は描出不可能であった.単純CT:十二指腸主乳頭部付近に5 mm程度の高吸収域を認めた.膵全体が腫大し,周囲脂肪織の濃度上昇を伴っていた.
対応として正しいものを1つ選べ.

A
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)は急性膵炎を増悪させるため,保存的加療を行う.
B
中等症の急性胆管炎と診断し,シプロフロキサシンを投与する.
C
解熱鎮痛目的に,ジクロフェナクナトリウムの坐剤を使用する.
D
播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断し,遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモデュリンを投与する.
E
重症の急性胆管炎と診断し,胆管ドレナージ後にセフェピムを2週間投与する.

問題15

ウイルス性急性肝炎症例において慢性化への注意を要するのはどれか.2つ選べ.

A
HAV
B
HBVゲノタイプA
C
HBVゲノタイプB
D
HCV
E
HEV

問題16

B型肝炎に対する診療で正しいものはどれか.1つ選べ.

A
22歳女性.新婚で挙児希望あり.血小板25万/μL,AST 89 IU/L,ALT 118 IU/L,HBe抗原(+),HBV-DNA 5.8 logIU/mL.エンテカビル(ETV)を投与した.
B
40歳男性.血小板18万/μL,AST 120 IU/L,ALT 141 IU/L,HBe抗原(+),HBV-DNA 6.2 logIU/mL,ゲノタイプA,HIV抗体(+).テノホビル・ジソプロキシルフマル酸(TDF)を投与した.
C
52歳男性.5年前よりHBe抗原(+)の慢性B型肝炎に対しETVを内服している.ALTおよびHBV-DNAの低下を認めたが,陰性化は得られていない.現在,血小板11万/μL,AST 66 IU/L,ALT 58 IU/L,HBe抗原(-),HBV-DNA 3.9 logIU/mLである.ETV治療を継続した.
D
51歳男性.血小板16万/μL,AST 78 IU/L,ALT 96 IU/L,HBe抗原(-),HBV-DNA 6.4 logIU/mLであり,テノホビル・アラフェナミド(TAF)の投与を開始した.治療1年後ALT 44 IU/L,HBV-DNA 3.1 logIU/L.TAF治療を継続した.
E
62歳女性.HBe抗原(+)慢性B型肝炎と診断され,7年前よりTDFを服用している.治療開始後ALTは正常化,HBe抗原,HBV-DNAも陰性化している.血清クレアチニンが治療開始時0.8 mg/dLであったが現在1.4 mg/dLに上昇していた.TDFを中止しETVに変更した.

問題17

以下のうち正しい記述はどれか.1つ選べ.

A
C型慢性肝疾患治療はインターフェロン注射を主体として1年間施行する.
B
透析患者への抗HCV治療[直接作用型抗ウイルス薬(direct-acting antiviral:DAA)]は禁忌である.
C
DAA治療期間は一律12週間であり,治療終了時にHCV-RNA陰性であれば治療成功である.
D
DAA治療でHCV-RNAが陰性化すればその後は定期的な通院は不要である.
E
DAA治療不成功例では薬剤耐性変異の出現を念頭に置き,次治療を検討する.

問題18

腹水に関して誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
腹水アデノシンデアミナーゼ(ADA)は結核性腹膜炎の指標となる.
B
特発性細菌性腹膜炎の診断には,腹水の好中球数の測定が有用である.
C
肝硬変に伴う腹水の第一選択薬はフロセミドである.
D
低アルブミン血症を伴う肝硬変の腹水の治療ではアルブミン製剤の投与を検討する.
E
トルバプタンはバソプレシンV2受容体拮抗薬である.

問題19

肝性脳症に対する抗菌薬投与で推奨されるものはどれか.1つ選べ.

A
セフジニル
B
リファキシミン
C
レボフロキサシン
C
クラリスロマイシン
D
アモキシシリン

問題20

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する治療法として不適切なものはどれか.1つ選べ.

A
7%以上の減量
B
ビタミンE投与
C
常用量のウルソデオキシコール酸投与
D
2型糖尿病合併患者に対するピオグリタゾン投与
E
高血圧症合併患者に対するアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)投与

問題21

以下のオピオイドのうち,チトクロムP450により代謝されるものはどれか.2つ選べ.

A
モルヒネ
B
オキシコドン
C
フェンタニル
D
タペンタドール
E
ヒドロモルフォン

問題22

慢性便秘症の原因として最も適切でないものはどれか.1つ選べ.

A
加齢
B
うつ病
C
オピオイド
D
刺激性下剤
E
甲状腺機能亢進症

問題23

漢方薬を使用するうえで誤りはどれか.1つ選べ.

A
副作用はほとんどない.
B
1剤で多くの効果が得られることがある.
C
西洋薬との併用は問題ない.
D
漢方薬の第一選択は,FDでは六君子湯,IBDでは桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)である.
E
「証」を考えて使用すると効果的である.

問題24

妊娠中の使用により実際にヒトで明らかな児への影響が報告されている薬剤は以下のどれか.1つ選べ.

A
ドンペリドン
B
メトクロプラミド
C
ファモチジン
D
ミソプロストール
E
センノシド

問題25

進行胃がんの化学療法で適切なものはどれか.

A
S-1+シスプラチンは外来治療が可能なレジメンである.
B
パクリタキセルは前投薬なく使用可能である.
C
イリノテカンの副作用として神経障害の頻度が高い.
D
トラスツズマブは心エコーを定期的に行う.
E
三次治療はbest supportive care(BSC)と比較し,予後延長は証明されていない.

問題26

大腸がんにおいて抗EGFR抗体薬の効果予測因子となるものはどれか.2つ選べ.

A
年齢
B
喫煙の有無
C
原発巣の部位
D
転移臓器
E
RAS 遺伝子変異

問題27

UDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1 )遺伝子多型で有害事象の頻度が類推できる抗腫瘍薬はどれか.1つ選べ.

A
ゲムシタビン
B
オキサリプラチン
C
イリノテカン
D
シスプラチン
E
フルオロウラシル

問題28

60歳男性.
7年前,糖尿病を指摘され,その際の腹部超音波検査では脂肪肝を認めた.HBs抗原(-),HCV抗体(-).以後,一般内科開業医で定期通院していた(月1回).今回,会社の検診で行った腹部超音波検査で肝腫瘍を指摘された.
胸腹部ダイナミックCT検査を施行すると,門脈左枝に腫瘍栓を伴う肝細胞がんであった(最大腫瘍径25 mm,腫瘍数3個,いずれも内側区域に存在).肺転移あり(最大腫瘍径10 mm,両肺に計10個).リンパ転移,腹水,肝性脳症とはない.PS 0.
血液検査:総ビリルビン0.5 mg/dL,AST 35 IU/L,ALT 42 IU/L,アルブミン3.8 g/dL,PT 82%,血小板9.0万/μL.ICG 15分値8.0%.AFP 18,000 ng/mL(基準<10).PIVKA-Ⅱ 350,000 mAU/mL(基準<40).肝細胞がんの指摘は初めてである.推奨される治療選択肢を1つ選べ.

A
肝動脈化学塞栓療法(TACE)と放射線治療の併用
B
ラジオ波焼灼術(RFA)と放射線治療の併用
C
分子標的治療薬による単独治療(ソラフェニブまたはレンバチニブ)
D
肝移植
E
緩和医療(がんに対する積極的な治療選択肢なし)

(解答は本誌掲載)