HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 55巻11号(2018年10月号) 特集の理解を深めるための30題
目次詳細・ご注文はこちら  電子ジャーナルはこちら

特集の理解を深めるための30題


問題1

終末期患者の痛みや鎮痛薬について正しい説明はどれか.2つ選べ.

A
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のなかでも,選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)-2阻害薬は腎機能障害が少ない.
B
腎機能障害がある場合,モルヒネよりもオキシコドンやフェンタニルを優先的に使用する.
C
がんに起因しない慢性痛に対してもオピオイドを優先して使用する.
D
がんによる神経障害性疼痛にはプレガバリンを優先的に使用する.
E
オピオイド鎮痛薬の不適切使用はせん妄の原因になる.

問題2

呼吸困難・咳嗽の症状緩和に関して,正しいものを1つ選べ.

A
呼吸困難と呼吸不全は同義である.
B
呼吸困難を訴える患者には酸素投与が積極的に推奨される.
C
eGFR 60 mL/分/1.73 m2以下の場合はモルヒネを呼吸困難の治療に用いることはできない.
D
非薬物療法として部屋を暖かくすることが症状緩和につながる.
E
湿性咳嗽を緩和するために輸液の減量を考慮する.

問題3

エンド・オブ・ライフ期の消化器症状について誤りを2つ選べ.

A
転移性脊椎腫瘍は便秘の原因となりうる.
B
慢性心不全末期の患者では,浣腸の適応は慎重に考慮する.
C
悪性消化管閉塞に対するオクトレオチド投与の推奨度はコルチコステロイドより高い.
D
非がん性腹水の病態にはレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化が関与している.
E
電解質異常などの有害事象を避けるため,腹水穿刺の排液量は1回5L以下にするのがよい.

問題4

がん患者の進行した悪液質の状態において亢進している(顕著にみられる)と考えられるのはどれか.2つ選べ.

A
骨格筋の減少
B
食欲
C
安静時エネルギー消費量
D
栄養療法への反応性
E
飢餓状態

問題5

皮下投与が不可能な薬剤はどれか.1つ選べ.

A
アミノ酸製剤
B
モルヒネ
C
維持液(3号液)
D
フェンタニル
E
ミタゾラム

問題6

次のうち正しいものを選べ.

A
不眠は疼痛などの身体的苦痛を増強するため,不眠時の疼痛に対しては,まず不眠の治療が優先される.
B
BZD(benzodiazepine derivative)では依存の問題が指摘されており,長期使用を考慮する際はゾルピデム,エスゾピクロン,ゾピクロンなどの依存が問題とならない薬剤の使用が推奨される.
C
むずむず脚症候群の治療では,フェリチン<50 ng/mLの場合,鉄剤による鉄補充が推奨される.
D
重篤な不眠症を認めた場合,身体因子や物質的因子,生活リズムの障害などを検討し,それらが存在しないときに薬物療法を検討するべきである.
E
不眠管理においては,ステロイドなどの覚醒作用を有する薬剤投与を行う際は,血中濃度の上昇を抑えるために,1回の投与量を減らし,夜間も含め複数回に分けて投与することが推奨される.

問題7

がん患者のうつ病・適応障害に関する記述で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
抑うつ状態は一般に認められるにもかかわらず見逃されがちである.
B
うつ病,適応障害では,うつ病のほうが患者に与える苦痛は大きい.
C
抗うつ薬を選択する場合には,忍容性に配慮をすることが重要である.
D
抑うつと痛みは相互に悪影響を与える.
E
告知のようなバッドニュースの後に自殺率が高まるため注意が必要である.

問題8

エンド・オブ・ライフケアにおける不安に対して最も重要なことは何か.

A
アセスメント
B
チームによるサポート
C
薬物治療
D
非薬物治療
E
専門科への紹介

問題9

正しいものを2つ選べ.

A
スピリチュアルな苦痛は,身体・心理・社会的苦痛とは独立したものである.
B
アセスメントに基づいてケアの目標を立て,多職種で対応する.
C
スピリチュアルな苦痛を,時間存在,関係存在,自立存在の3側面から理解する考え方がある.
D
スピリチュアル・ケアは,心理療法士やチャプレンなど,専門家が主に行うケアである.
E
スピリチュアルな苦痛に対する心理療法は,エビデンスが確立していない.

問題10

終末期(予後が限られていると主治医が判断する状況)に発症するせん妄について,正しいものを2つ選べ.

A
せん妄は意識障害を本態とし,複合要因からなることが多い.
B
終末期に生じるせん妄は改善が困難なため,原因検索は無意味であり,環境改善などのケアに注力すべきである.
C
代表的なD2受容体拮抗薬のハロペリドールは,至適用量で比較的十分な催眠作用がある.
D
終末期に生じるせん妄であっても,夜間の良眠や日中の覚醒を意図して投薬治療することは合理的である.
E
せん妄が改善困難な場合,主治医が家族に説明したうえで,間欠的鎮静や適切な深度の持続鎮静を行うことは適切である.

問題11

死前喘鳴について正しいものを1つ選べ.

A
死前喘鳴は死亡前の1週間程度に出現する徴候と言われている.
B
スコポラミン(ハイスコ®)は副作用として興奮作用がある.
C
輸液量は痰の量に影響しない.
D
非薬物療法として,吸引を頻回に行うとよい.
E
家族に繰り返し,状況説明を行い,受け入れる準備を整えていくことが重要である.

問題12

緩和的鎮静について正しいものはどれか.1つ選べ.

A
緩和的鎮静は,治療可能な苦痛に対しても適応となる.
B
緩和的鎮静は生命予後を著明に短縮する.
C
緩和的鎮静を判断する際は,適宜専門家にも相談しながら行うことが望ましい.
D
一般人口を対象とした調査では,ほぼ全員が病状を受け止められなくても鎮静について早く説明してほしいと感じている.
E
鎮静薬の投与は呼吸抑制がみられても増量して構わない.

問題13

次のうち正しいものはどれか.

A
日本では,2040年前後に高齢者数がピークを迎える.
B
日本では死亡診断の際に,すべての家族が立ち会うことを希望している.
C
看取りに関する考え方や価値観はアジアや欧米諸国などを問わず,全世界共通である.
D
中国系の患者は医療者が遺体をきれいにすることが多く,一方でアフリカ系の患者は家族自身で遺体を入浴させることが多い.
E
患者の終末期に家族が十分に悲嘆できる時間を確保することや患者への接し方を教えることは,医療者には求められていない.

問題14

下記の予後予測ツールのなかで,実施可能性は高いが,他と比較して予測精度が低いのものはどれか.1つ選べ.

A
PiPS-A
B
PiPS-B
C
PPI
D
PaP
E
D-PaP

問題15

終末期の患者に生じた症状や病態の可逆性の判断について誤っているものを1つ選べ.

A
がん患者の終末期に生じたせん妄は20~40%程度で回復する可能性がある.
B
Palliative Prognostic Score(PaP Score)は終末期の患者の病態について,可逆性を判断するための指標である.
C
疾患トラジェクトリーとは,終末期の患者の一般的な経過を表している.
D
可逆性の正確な判断は難しいため,最も予後に影響しそうな因子を把握し,その経過の仮説を立て,実際の経過を繰り返し評価することが重要である.
E
治療方針の決定に際しては,患者・家族と話し合い,共に方針決定を行うこと(shared decision making)が重要である.

問題16

エンド・オブ・ライフにおけるがん診療で注意すべき点として誤りはどれか.1つ選べ.

A
進行がん患者の診療に当たっては,まず治療のゴールが何かを明確にし,それをメンバーと共有することが重要である.
B
延命・症状緩和目的の化学療法において,全身状態が悪化したときは化学療法中止の1つのタイミングである.
C
進行がん患者の化学療法を中止するに当たっては,もうできる治療は何もないということを患者に十分に説明する.
D
がん治療医と診療上タッグを組む相手として,緩和ケア医の不足する日本において一般内科医やプライマリ・ケア医が適任者となる可能性がある.
E
がん診療の医学的評価を行う際には,罹患したがんの一般的知識,これまでの治療歴と今後の治療選択,予後の予測が方針決定の一助となる.

問題17

心不全のエンド・オブ・ライフケアについて正しいものを選べ.

A
末期心不全はがん同様に緩和ケアチームが介入できる.
B
心不全予後予測リスクモデルでは1年予後の陽性的中率は8割を超える.
C
心不全の終末期ではモルヒネを使って鎮静をすることが重要である.
D
意思統一を図るためいかなる場合も循環器専門家に意思決定権を集約するのがよい.
E
心不全患者は予防医学の発展に伴い減少に転じている.

問題18

慢性閉塞性肺疾患(COPD)で生命予後因子とならないのはどれか.1つ選べ.

A
1秒量低値
B
吸気容量と全肺気量の比の上昇
C
BMI(body-mass index)低値
D
身体活動性の低下
E
CT上の気腫進展度(low attenuation area:LAA%)高値

問題19

日本における維持透析患者の死因として,多いものはどれか.以下のうちから2つ選べ.

A
悪性腫瘍
B
心臓関連死
C
感染症
D
尿毒症
E
脳血管障害

問題20

筋萎縮性側索硬化症(ALS)において誤りはどれか.2つ選べ.

A
病初期からの嚥下障害の発症は予後不良の場合が多い.
B
急変が予測される場合として,嚥下障害,呼吸障害,自律神経障害などの進行が挙げられる.
C
気管挿管や補助換気などの処置については十分に協議しておくことが望ましい.
D
呼吸困難の緩和には酸素療法,補助換気などのほかモルヒネの使用も重要であるが,保険適用外である.
E
認知症の合併が約5%にみられる.

問題21

高齢者の衰弱/認知症パターンの自然経過として正しいのはどれか.1つ選べ.

A
急性増悪を繰り返しながら機能が低下していき,最後は比較的急な経過で死亡する.
B
がんと比べると,予後を予測しやすい.
C
緩徐な経過で身体機能が低下していき,年単位~10年以上の経過で死に至る.
D
老衰/認知症終末期は医学的に定義されている.
E
身体機能は比較的長期間保たれるが,最後の2カ月前後で急速に機能が低下する.

問題22

救急外来で死別を経験したスタッフへのストレスを軽減するのにふさわしくない方法はどれか.1つ選べ.

A
患者家族との死別の認識のずれを確認する.
B
家族へデブリーフィングを行う.
C
スタッフへデブリーフィングを行う.
D
医師からスタッフに患者家族への対応を丸投げする.
E
患者や家族の意思を尊重することを確認する.

問題23

SHAREプロトコールのなかで,正しいものを2つ選べ.

A
S:setting the room
B
H:how to deliver the bad news
C
A:additional information
D
R:repeating
E
E:environment support

問題24

ACPに関して重要ではない選択肢はどれか.1つ選べ.

A
患者の価値観・死生観
B
急変時の対応
C
終末期に過ごしたい場所
D
医師の訴訟リスク回避
E
治療の選択肢の選定

問題25

75歳の男性.非小細胞肺がんの骨転移に対して,化学療法をセカンドラインまで継続してきた.今回,CTにて新規に肝転移を指摘され,治療の効果が認められないことがわかった.患者のPerformance Statusは1であり,主治医はサードラインとして免疫チェックポイント阻害薬の使用を検討している.治療の説明をしているとき,患者から主治医に「治療はいつまでできますか.緩和ケアのことも考えておいたほうがいいのですか?」と質問があった.そのとき,主治医としてとるべき行動で間違っているものはどれか.1つ選べ.

A
心配している内容を聞き,継続して相談にのることを約束する.
B
ソーシャルワーカーとの面談を設定する.
C
緩和ケア病棟について情報を提供する.
D
在宅医療や介護保険について情報を提供する.
E
「まだ治療できるのだから,緩和ケアの準備は早い」と回答する.

問題26

乳がん,骨転移,脳転移で放射線化学療法を受けていた65歳の女性が,意識障害で入院となった.脳転移の増悪と高カルシウム血症を認め,残された時間は2~3週間と予測されている.意識障害が徐々に進行するなか,ときおり「さみしい,娘に会いたい」と訴えている.家族は夫が半年前に亡くなり,20代の娘1人である.娘は3日に1度,仕事が終わって面会に来ている.最近,面会時の娘の表情が冴えず,つらそうな様子である.家族に対するケアとして適切なものはどれか.1つ選べ.

A
患者にとって娘は大切な存在なので,できるだけ面会を増やすように提案した.
B
半年前に父を亡くしたばかりなので,その話題は堀りさげないように看護師と共有した.
C
死別に備えて急変時の医療行為に対する家族の意思を確認するため面談を設定した.
D
娘の不安や気がかりなどを確認するため,看護師と一緒に面談を設定した.
E
娘1人で介護し疲労しているので,他に頼れる人に相談するよう提案した.

問題27

複雑性悲嘆に関する記述として,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
症状の持続期間と強度が通常の範囲を超えている.
B
うつ病やPTSDが併存することも多い.
C
複雑性悲嘆のリスクの低減がビリーブメントケアの目標の1つである.
D
一般人口での有病率は5%に満たない程度である.
E
DSM-5において公式な精神疾患として採用された.

問題28

次のうち正しいものはどれか.1つ選べ.

A
積極的安楽死とは,生命維持治療の不開始・差し控え(withholding)や中止(withdrawals)により,結果として死をもたらすことである.
B
一般的に用いられる“安楽死”は消極的安楽死を指すことが多い.
C
日本でも積極的安楽死や医師による自殺幇助が合法化されている.
D
倫理的な問題が生じた場合には主治医が方針を決定する.
E
臨床倫理4分割表を用いた倫理カンファレンスでは,①医学的適応,②患者の意向,③QOL,④周囲の状況の4項目を挙げ,その情報に基づいて総合的に議論を行う.

問題29

バーンアウトの対義語は何か.

A
共感疲労
B
倫理的葛藤
C
ジョブエンゲージメント
D
ウエルネス
E
マインドフルネス

問題30

終末期の治療に関する話し合いにおいて,優先度の低いものを1つ選べ.

A
患者とその家族の感情を承認する.
B
患者の不安を認識する.
C
敬意を示す.
D
急いで決断をしてもらう.
E
支持(サポートの姿勢)を示す.

(解答は本誌掲載)