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特集の理解を深めるための24題


問題1

83歳女性.脳梗塞の既往があり,高血圧に対して降圧薬を服用している.介護施設に居住している.発熱と意識障害を主訴に救急搬送された.
身体所見:体温38.9℃,血圧78/42 mmHg,脈拍118/分,意識状態Japan Coma Scale(JCS)Ⅲ-100,口腔内乾燥,右下肺野に肺雑音を聴取.
血液所見:Na 164 mEq/L,K 5.1 mEq/L,Cl 123 mEq/L,BUN 59 mg/dL,Cr 1.8 mg/dL.
この患者に対する初期輸液として適切なものはどれか.1つ選べ.

A
5%ブドウ糖液
B
1/2生理食塩水
C
生理食塩水
D
アルブミン製剤
E
輸血

問題2

生理食塩水の輸液が望ましい状況はどれか.2つ選べ.

A
高Cl性代謝性アシドーシス
B
嘔吐を伴う代謝性アルカローシス
C
敗血症性ショック
D
頭蓋内疾患
E
頭蓋内疾患以外の術中

問題3

利尿薬について誤っているものどれか.1つ選べ.

A
トルバプタンの副作用として高Na血症が知られている.
B
ループ利尿薬の代表であるフロセミドのbioavailabilityは10~100%と個人差が大きい.
C
NSAIDsは利尿薬抵抗性の原因となる.
D
心不全患者では利尿薬を高用量に投与しても最大利尿効果が得られない状態となる.
E
トルバプタンでは飲水をより一層制限する.

問題4

酸・塩基の定義(Brønsted-Lowryの定義)で塩基となるものはどれか.

A
HCO3
B
HPO42-
C
NH4
D
NH3
E
HSO4

問題5

40歳男性.糖尿病と高血圧のため,メトホルミン1,000 mg,エナラプリル5 mgを近医から処方されている.片頭痛の既往があるが市販薬を頓用している.数カ月前から職場での悩みがあり,抑うつ状態だった.本日,自宅にて興奮状態で倒れているところを家族に発見されて救急搬送された.嘔吐を認め,耳鳴りを訴えている.
身体所見:血圧160/100 mmHg,脈拍120/分,体温37.6℃,呼吸数30/分,SpO2 96%(room air),瞳孔左右3 mm大,対光反射正常,四肢振戦あり.血液所見:Hb 14.4 g/dL,血小板23万/μL,白血球6,300/μL,血糖144 mg/dL,Alb 4.2 g/dL,BUN 14 mg/dL,Cr 1.0 mg/dL,CRP 0.03 mg/dL,血清浸透圧320 mOsm/kg.
尿所見:ケトン陰性.
血液ガス分析:pH 7.51,pCO2 20 mmHg,pO2 96 mmHg,Na 145 mmHg,K 3.6 mEq/L,Cl 109 mEq/L,HCO3 16 mmol/L,乳酸1.0 mmol/L.
頭部CT:異常なし.
考えられるのはどれか.1つ選べ.

A
メトホルミン過量服用
B
アスピリン中毒
C
アルコール中毒
D
敗血症
E
ケトアシドーシス

問題6

以下の利尿を促進する薬剤のなかで,代謝性アルカローシスをきたさないものはどれか.2つ選べ.

A
ループ利尿薬
B
K保持性利尿薬
C
V2受容体拮抗薬
D
炭酸脱水酵素阻害薬
E
サイアザイド系利尿薬

問題7

進化の過程で尿の濃縮能力をもち始めたのはどの生物からか.

A
魚類
B
両生類
C
爬虫類
D
鳥類
E
哺乳類

問題8

副腎不全による低Na血症に副腎皮質ホルモンを投与した際に注意すべき徴候はどれか.1つ選べ.

A
尿量低下による血清Na低下
B
尿量低下による血清Na上昇
C
尿量増加による血清Na低下
D
尿量増加による血清Na上昇
E
血糖上昇による血清Na低下

問題9

53歳女性.2年前から口腔乾燥症状を自覚している.最近になり下肢の脱力発作を認めるため来院した.下痢は認めない.利尿薬の使用や手術歴はない.
身体所見:体温36.0℃,脈拍58/分,血圧115/72 mmHg,呼吸数16/分.
血液生化学所見:TP 7.3 g/dL,Alb 3.8 g/dL,BUN 6.0 mg/dL,Cr 0.8 mg/dL,Ca 8.5 mg/dL,P 2.4 mg/dL.
血液ガス分析:pH 7.237,pCO2 25.0 mmHg,Na 143 mEq/L,K 2.8 mEq/L,Cl 120 mEq/L,HCO3 12.7 mEq/L.
尿生化学所見:pH 7.0,Na 88 mEq/L,K 32 mEq/L,Cl 97 mEq/L,Ca 10 mg/dL,P 21 mg/dL,Cr 39 mg/dL.
この患者のアシデミアの原因はどれか.1つ選べ.

A
呼吸性アシドーシス
B
糖尿病性ケトアシドーシス
C
近位尿細管性アシドーシス(pRTA)
D
遠位尿細管性アシドーシス(dRTA)
E
高K血症を伴うdRTA(Ⅳ型RTA)

問題10

32歳女性.全身脱力感を主訴に来院した.身体所見:血圧118/70 mmHg.
血液所見:Alb 4.0 g/dL,Na 138 mEq/L,K 2.3 mEq/L,Cl 96 mEq/L,Ca 9.6 mg/dL,P 3.4 mg/dL,Mg 1.2 mg/dL,BUN 12 mg/dL,Cr 0.6 mg/dL.
血液ガス分析:pH 7.465,pO2 98 Torr,pCO2 46 Torr,HCO3 32 mEq/L.
24時間尿生化学所見:Na 110 mEq/日,K 50 mEq/日,Cl 104 mEq/日,Ca 82 mg/日.
本症例の低K血症の原因として考えられるものはどれか.1つ選べ.

A
下痢
B
Gitelman症候群
C
ループ利尿薬服用
D
原発性アルドステロン症
E
遠位型尿細管性アシドーシス

問題11

低K血症や高K血症の鑑別診断の際に,尿中K排泄が上昇しているかを判断するための検査として信頼性が高いものはどれか.2つ選べ.

A
TTKG(transtubular K gradient)
B
スポット尿のK/Cr比
C
24時間蓄尿による尿中K排泄量
D
K排泄分画(FEK
E
スポット尿のK濃度

問題12

50歳男性.2型糖尿病で加療中であったが,外来を自己中断していた.
受診時所見:血糖700 mg/dL,血清K 5.2 mEq/L,pH 7.4,尿ケトン陰性.
この患者に対する対応として適切なものはどれか.1つ選べ.

A
グルコース・インスリン(GI)療法
B
陽イオン交換樹脂の内服
C
利尿薬の投与
D
KCl入りの点滴
E
1時間後に血清K値の再検

問題13

Naについて正しいものはどれか.1つ選べ.

A
Na 1 gはNa 17 mEqに相当する.
B
血清Na濃度異常はNaバランスの異常によって起こる.
C
effective osmolarityとは体液の各コンパートメント間での移動が制限される溶質(effective osmoles)の濃度のみを反映する.
D
心不全患者では飲水制限を行うことが重要である.
E
Adrogué-Madias式は輸液後の血清Na濃度の変化をすべての病態で正確に予想可能である.

問題14

82歳女性.高血圧に対し,近医からアムロジピン5 mg,トリクロルメチアジド1 mgを処方されており,2週間の経口摂取不良,活気不良で来院した.診察上,口腔内粘膜乾燥・ツルゴール低下を認め,血液検査でBUN 20 mg/dL,Cre 0.6 mg/dL,Na 118 mEq/L,K 3.5 mEq/L,血漿浸透圧252 mOsm/kgだった.
利尿薬内服による有症状の低Na血症に対し,生理食塩水100 mL/時の投与を開始したところ,入院6時間後Na 120 mEq/Lとなり,時間尿量50 mLから200 mLへの急激な増加を認めた.体液量は補正され,利尿薬の効果が切れたと考えられた.
来院時と尿量増加時の尿所見として考えられる組み合わせで正しいものはどれか.1つ選べ.

写真は本誌をご覧ください
A
①→②
B
①→③
C
②→④
D
②→③
E
③→④

問題15

わが国での低Na血症の診断・治療について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
血清Naが過補正された場合にはNa濃度を再低下させることを考慮する.
B
高ガンマグロブリン血症は偽性低Na血症の原因となる.
C
トルバプタンは低Na血症治療に保険適用がない.
D
鉱質コルチコイド反応性低Na血症(MRHE)では体液量は増加する.
E
中枢性塩類喪失症候群(CSWS)では体液量は減少する.

問題16

以下のうち,2番目に多く細胞内に存在する陽イオンはどれか.

A
Na
B
K
C
Ca
D
P
E
Mg

問題17

54歳男性.近医で高Ca血症と腎機能障害を指摘され,当院紹介受診となった.活性型ビタミンD製剤やCa製剤は内服していない.
血液所見:Alb 4.2 mg/dL,BUN 24 mg/dL,Cr 1.6 mg/dL,UA 7.2 mg/dL,Na 142 mEq/L,K 4.6 mEq/L,Cl 104 mEq/L,Ca 11.4 mg/dL,P 2.6 mg/dL,ALP 486 U/L,intact PTH 212 pg/mL,PTHrP<1.1 pmol/L.
本症例で考えられるものはどれか.1つ選べ.

A
原発性副甲状腺機能亢進症
B
二次性副甲状腺機能亢進症
C
三次性副甲状腺機能亢進症
D
ミルク・アルカリ症候群
E
液性悪性腫瘍性高Ca血症

問題18

66歳男性.痙攣発作.2年前に近医で逆流性食道炎と診断され,オメプラゾール20 mgの内服を開始した.1年前に虚血性心疾患の精査入院をした際に,血清Ca 8.6 mg/dL,血清K 4.0 mEq/Lであった.今回,四肢の痙縮で救急受診し,血液検査で血清Ca 6.3 mg/dL,血清K 3.3 mEq/Lであった.
本症例で疑うべき電解質異常はどれか.1つ選べ.

A
低Na血症
B
高Na血症
C
低Mg血症
D
高Mg血症
E
高P血症

問題19

敗血症の初期対応として正しいものはどれか.1つ選べ.

A
初期輸液としてアルブミン製剤の使用を積極的に推奨する.
B
初期輸液としてhydroxyethyl starch(HES)の使用を積極的に推奨する.
C
腎不全では初期輸液として1号液を用いる.
D
カテコラミンとしてはノルアドレナリンが第一選択である.
E
抗菌薬は来院後3時間以内に投与開始する.

問題20

61歳男性.慢性心不全の既往がある.2週間前から下肢の浮腫を自覚し,徐々に増悪傾向であった.3日前から夜間に呼吸困難感を自覚し,その頃から座位で生活するようになり,呼吸困難感を主訴に救急外来に受診となった.普段はフロセミド40 mg内服している.
身体所見:意識は清明,血圧162/96 mmHg,SpO2 96%(2 L nasal),心拍14/分.
血液所見:Na 140 mEq/L,BUN 54 mg/dL,Cr 1.3 mg/dL.
胸部X線:心拡大と両側胸水を認める.
エコー所見:心臓に明らかな壁運動の低下はない.
食欲はないが水分摂取は可能な状況である.同日入院となり絶食のうえ,フロセミド60 mgの静脈投与を開始した.
本症例における適切な治療はどれか.1つ選べ.

A
維持輸液1,500 mL/日で補液開始する.
B
生食1,000 mL/日で補液開始する.
C
維持輸液500 mL/日とアルブミン製剤500 mL/日で補液開始する.
D
末梢静脈を確保し,飲水制限1,000 mL/日までで経過観察する.
E
中心静脈を確保し1,500 mL/日の中心静脈栄養を開始する.

問題21

経口補水液(ORS)がスポーツドリンクと比べて低いものはどれか.1つ選べ.

A
価格
B
Na濃度
C
K濃度
D
Cl濃度
E
糖分

問題22

次の急性腎障害(AKI)患者のうち,フロセミド投与が有効でないと最もいえるものはどれか.

A
高K血症を合併した非乏尿性AKI
B
高Ca血症を合併した非乏尿性AKI
C
ICU入室直後のショックの乏尿性AKI
D
輸液などによりショックを離脱した後の乏尿性AKI
E
中心静脈圧(CVP)の高い心腎症候群1型

問題23

ネフローゼ症候群において有効循環血液量減少を示唆するパラメータとして特に有用なものはどれか.

A
体重増加率
B
血清Alb値
C
血清Cr値
D
蛋白尿量
E
Na排泄分画(FENa

問題24

フロセミドについて正しいのはどれか.1つ選べ.

A
糸球体を濾過する.
B
アルブミンとの結合率は50%以下である.
C
HenleループのNa/K/2Cl共輸送体に作用する.
D
作用時間は24時間である.
E
レニン・アンジオテンシン系を不活化する.

(解答は本誌掲載)