HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 54巻2号(2017年2月号) 特集の理解を深めるための28題
目次詳細・ご注文はこちら  電子ジャーナルはこちら

特集の理解を深めるための28題


問題1

血尿と蛋白尿について,誤った記述はどれか.

A
尿潜血陽性の場合には,尿沈渣で赤血球の存在を確認する.
B
血尿・蛋白尿の両者が陽性の場合は,腎臓専門医へ紹介する.
C
尿中にグロブリンがあれば,尿蛋白は陽性になる.
D
急性糸球体腎炎症候群では,血尿の頻度が高い.
E
顕微鏡的血尿では,泌尿器科的疾患も考慮する.

問題2

次のうち,正しいものはどれか.

A
浮腫は細胞内液量の増加を示す所見である.
B
慢性腎臓病の体液過剰では,1日塩分摂取量3 g以下の厳格な食事療法が勧められる.
C
体重の約20%が細胞外液量である.
D
浮腫を認めた際は直ちに治療介入を要する.
E
体液過剰は必ず希釈性の低Na血症を伴う.

問題3

体液量減少をきたし,生理的食塩水の輸液が必要な症例を2つ選べ.

A
激しい嘔吐と下痢が2日間続いている25歳男性.
B
暑い屋外を歩行後にふらつきを覚え,血圧100/50 mmHg,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)内服中の75歳女性.
C
激しい喉の渇きを覚え,血清Na 150 mEq/Lを認めた70歳女性.
D
腹部膨満感を認め,体重増加5 kg,血圧150/90 mmHg,肝硬変の50歳男性.
E
起立性低血圧を認め,ネフローゼ症候群を呈する,多発性骨髄腫の65歳女性.

問題4

急性腎障害(AKI)の診断基準(KDIGOガイドライン)について正しいものを2つ選べ.

A
尿量低下だけではAKIと診断できない.
B
血清クレアチニンの基礎値がわからなければAKIは診断できない.
C
主として推算糸球体濾過量(eGFR)を基準に用いている.
D
48時間で血清クレアチニンが0.32 mg/dL上昇したため,AKIと診断した.
E
血清クレアチニンの基礎値が1.02 mg/dLの患者が3日後に1.56 mg/dLまで上昇したことから,AKIと診断した.

問題5

次のうち,正しいものはどれか.

A
死亡診断書では「慢性腎不全」という診断名を用いてはいけない.
B
1年以上腎機能が低下し続ける状態を慢性腎不全という.
C
アミノグリコシド系抗菌薬は慢性腎不全の原因となる.
D
慢性血液透析を必要とするのは慢性腎不全のみである.
E
GFRが50 mL/分以上あれば,慢性腎不全は治癒したと考えてよい.

問題6

35歳の女性.3日前から38.5℃の発熱および頭痛,咽頭痛,鼻汁があり,市販の感冒薬を服用していた.今朝,尿の色が濃褐色であることに気づき来院した.5年前より会社の検診で尿蛋白と尿潜血を指摘されていたが,放置していた.
身体所見:身長160 cm,体重50 kg,血圧130/70 mmHg.黄疸なし,皮疹なし,心肺所見異常なし,腹部所見異常なし,浮腫なし.
尿検査:蛋白2+,蛋白定量210 mg/dL,糖(-),潜血3+,尿クレアチニン定量70 mg/dL.
血液生化学検査:TP 7.2 g/dL,Alb 4.1 g/dL,BUN 17 mg/dL,Cr 1.2 mg/dL,eGFR 42.3 mL/分/1.73 m2
この患者のCKD重症度分類として妥当なのはどれか.

A
G1A3
B
G2A1
C
G3aA2
D
G3bA3
E
G4A3

問題7

「糖尿病性腎症病期分類2014」において,第2期(早期腎症期)に該当するものはどれか.

A
尿中アルブミン値30 mg/gCr未満で,eGFRが60 mL/分/1.73 m2の患者
B
尿蛋白定性±で,eGFRが45 mL/分/1.73 m2の患者
C
尿中アルブミン値150 mg/gCrで,eGFRが45 mL/分/1.73 m2の患者
D
尿中アルブミン値100 mg/gCr未満で,eGFRが20 mL/分/1.73 m2の患者
E
尿中アルブミン値300 mg/gCr以上で,eGFRが45 mL/分/1.73 m2の患者

問題8

62歳男性.腎機能障害のため紹介受診となった.次のうち高血圧性腎硬化症に合致しない検査結果を2つ選べ.

A
腎長径:右腎8.5 cm/左腎8.5 cm
B
尿蛋白定量:3.5 g/gCr
C
尿中α1-MG:15 mg/L
D
赤血球円柱:10~20/HPF
E
シスタチンC:1.3 mg/L

問題9

Class ⅢやClass Ⅳ(ISN/RPS分類)のループス腎炎で,活動性病変を示唆する腎病理所見を2つ選べ.

A
糸球体硬化
B
線維性半月体
C
内皮下沈着物(ワイヤーループ)
D
メサンギウム増殖
E
管内性細胞増殖

問題10

ANCA関連血管炎に伴う腎疾患の特徴で,誤っているものはどれか.

A
高齢者に多い.
B
急速進行性糸球体腎炎を呈する.
C
肺出血,間質性肺炎などの肺腎症候群を呈する例が多い.
D
日本ではPR-3-ANCA関連血管炎に伴う腎疾患が多い.
E
治療は臨床的重症度により免疫抑制療法を行う.

問題11

血栓性微小血管症(TMA),またはTMAに含まれる疾患に関する以下の文のうち,誤っているものはどれか.

A
TMAは,微小血管症性溶血性貧血,消耗性血小板減少,毛細血管内血小板血栓による臓器機能障害の3主徴を示す広い疾患概念である.
B
ADAMTS13活性が50%以下の場合にはTTPと診断される.
C
STEC-HUSでの治療の基本は症例に応じた体液管理,透析療法などの支持療法である
D
aHUSの確定診断を行うためには,遺伝子検査,抗H因子抗体検査が必要である.
E
悪性貧血はTMAによく似た病態を示すことがある.

問題12

急性糸球体腎炎(A群β溶血性連鎖球菌感染後)に非典型的な臨床所見はどれか.

A
発熱
B
乏尿
C
高血圧
D
尿潜血陽性
E
低補体血症

問題13

急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を疑った場合,最も参考になる検査所見はどれか.

A
蛋白尿・血尿と尿沈渣異常
B
血清ANCA値陽性
C
血清クレアチニン値上昇
D
血清CRP値高値
E
腎臓超音波所見

問題14

IgA腎症の腎予後に与える影響が低いものはどれか.

A
診断時の尿蛋白量
B
診断時の尿中変形赤血球の割合
C
血圧
D
腎生検所見
E
経過中の尿蛋白量

問題15

以下の疾患でネフローゼ症候群を呈する場合,副腎皮質ステロイド治療が適応とならないものを2つ選べ.

A
微小変化型ネフローゼ症候群
B
糖尿病性腎症
C
アルポート症候群
D
ループス腎炎
E
巣状分節性糸球体硬化症

問題16

45歳の女性.全身倦怠感を主訴に来院した.1週間前に抜歯を行った際,抗菌薬と非ステロイド性抗炎症薬を5日間服用した.その後,全身倦怠感が続いている.
現症 体温 36.3℃,血圧 125/73 mmHg,脈拍 75/分.浮腫はない.
検査所見 尿所見:蛋白(1+),潜血(-).末梢血液検査:Ht 36%,Hb 12.5 g/dL.血液生化学所見:BUN 25 mg/dL,Cr 1.6 mg/dL.
入院後に行った腎生検では,腎間質に白血球の浸潤を認める.
この疾患について正しいのはどれか.2つ選べ.

A
高浸透圧尿となる.
B
尿に好酸球を認める.
C
両側腎臓は萎縮している.
D
尿に白血球円柱を認める.
E
尿中β2ミクログロブリンが低下する.

問題17

常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)について,正しい記載を2つ選べ.

A
囊胞形成抑制のため,水分制限を行う.
B
脳動脈瘤の合併率は一般に比べて高い.
C
PKD1 家系よりPKD2 家系のほうが,進行が速い.
D
患者の子どもが2人の場合,どちらか1人に遺伝する.
E
トルバプタンの適応基準には,両側総腎容積(TKV)とその増大速度,腎機能が含まれる.

問題18

病院受診歴のない58歳男性.数週間前から倦怠感があり,数日前から食思不振であった.1日800 mL程度飲水していたが,来院当日に数回の嘔吐があり来院した.20歳から1日30本の喫煙歴がある.
来院時,意識JCS(Japan Coma Scale)1,血圧は臥位で130/80 mmHg,立位で110/70 mmHg,脈拍90回/分,腋窩は乾燥していた.
血液・尿検査:BUN 30 mg/dL,Cr 0.9 mg/dL,Na 110 mEq/L,K 3.9 mEq/L,Cl 80 mEq/L,浸透圧245 mOsm/kg,尿Na 15 mEq/L,尿K 7 mEq/L,尿浸透圧290 mOsm/kg.
胸部X線検査:左肺門部に腫瘤影を認める.
詳細な発症時期は不明だが,症候性低Na血症と診断し0.9%NaCl 60 mL/時の投与を開始した.6時間後には嘔気は改善し,尿量80 mL/時程度,検査結果はNa 115 mEq/L,尿Na+K 45 mEq/L,尿浸透圧100 mOsm/kg.
次に選択すべき輸液はどれか.

A
3%NaCl
B
0.9%NaCl
C
1号液
D
5%ブドウ糖液
E
何も投与しない

問題19

高K血症の治療で,血清K低下作用が期待できない治療はどれか.

A
グルコース-インスリン静注
B
重炭酸ナトリウム静注
C
グルコン酸カルシウム静注
D
フロセミド静注
E
β2刺激薬吸入

問題20

75歳女性.1~2週間前からの倦怠感を自覚して受診となった.併存疾患として高血圧,変形性関節症,骨粗鬆症,腰部脊柱管狭窄症の診断で近医にてテルミサルタン・ヒドロクロロチアジド配合剤(ミコンビ®),アセトアミノフェン(カロナール®),エルデカルシトール(エディロール®),アレンドロン酸(ボナロン®),リマプロスト(オパルモン®)が処方されていた.そのほかの内服はない.身体所見に特記事項なし.受診時の採血検査を以下に示す.
RBC 414万/μL,Hb 12.8 g/dL,WBC 7,800/μL,Plt 21.2万/μL,血糖140 mg/dL,Alb 4.0 g/dL,BUN 25 mg/dL,Cr 1.18 mg/dL,T-Bil 0.2 mg/dL,AST 13 U/L,ALT 5 U/L,Na 140 mEq/L,K 4.0 mEq/L,Cl 95 mEq/L,Ca 12.2 mg/dL,P 3.5 mg/dL.
この患者の倦怠感の原因として考えられる内服薬を2つ選べ.

A
テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド配合剤
B
アセトアミノフェン
C
エルデカルシトール
D
アレンドロン酸
E
リマプロスト

問題21

次のうち,血清リン濃度を下げるものを2つ選べ.

A
高リン食
B
活性型ビタミンD
C
副甲状腺ホルモン(PTH)
D
線維芽細胞増殖因子23(FGF23)
E
慢性腎臓病

問題22

マグネシウム(Mg)について,正しいものはどれか.

A
高カルシウム血症や高カリウム血症をみたら低Mg血症を考える.
B
血清Mgが正常であれば,低Mg血症は否定される.
C
点滴でMgを投与する際は,リン酸を含まない輸液を用いる.
D
高Mg血症をきたすことは稀である.
E
高Mg血症では腱反射が亢進する.

問題23

亜鉛(Zn)について,正しいものはどれか.

A
高齢者はZn過剰になりやすい.
B
溶血時にはZnは低下する.
C
中心静脈栄養にZnは含まれていない.
D
プロポフォールではZn欠乏となりやすい.
E
Znはフィチン酸で吸収が高まる.

問題24

50歳男性.数日前からの全身倦怠感と1カ月での8 kgの体重減少を認め受診した.健康診断は10年程度受けておらず,BMI 28と肥満があり,家族歴に濃厚な糖尿病があった.
身体所見:身長170 cm,体重72 kg(普段は80 kg),体温36.4℃,脈拍125/分,血圧101/65 mmHg,呼吸数38/分,SpO2 99%(室内気),浮腫なし.
尿検査:尿蛋白(2+),尿潜血(-),尿糖(3+),尿ケトン(+).
血液検査:白血球8,500/μL,Hb 16.8 g/dL,Plt 18.5万/μL,BUN 25 mg/dL,sCr 1.2 mg/dL,Na 135 mEq/L,K 3.7 mEq/L,Cl 98 mEq/dL,血糖780 mg/dL.
血液ガス分析:pH 7.18,PaO2 150 Torr,PaCO2 22 Torr,HCO3 9 mEq/L.
この患者に対して適切でない治療はどれか.

A
ボーラスでのインスリン投与
B
持続でのインスリン投与
C
炭酸水素ナトリウム
D
生理食塩水での補液
E
カリウムの持続静脈内投与

問題25

尿路結石とその原因の組み合わせとして間違っているものはどれか.

A
シュウ酸Ca結石─シュウ酸
B
シュウ酸Ca結石─マグネシウム
C
シュウ酸Ca結石─尿酸
D
尿酸結石─尿酸
E
リン酸マグネシウムアンモニウム結石─尿路感染

問題26

以下のうち,正しいものはどれか.

A
透析患者の心不全に対しては,心電図や心エコー評価に先立ち,透析による除水治療を最優先する.
B
維持透析患者の死因第1位は感染症である.
C
維持透析患者はeGFRで腎機能を評価し,薬剤投与量を調整する必要がある.
D
維持透析患者には薬剤を減量する必要があるため,効果が減弱する.
E
維持透析患者へのヨード造影(CTや冠動脈造影)後に透析を行う必要はない.

問題27

下記の薬剤のうち,カルシニューリン阻害薬(CNI)の血中濃度を上昇させるものを2つ選べ.

A
カルバマゼピン
B
フルコナゾール
C
エリスロマイシン
D
リファンピシン
E
イソニアジド

問題28

腎機能障害(CKD stage Ⅲb,血清クレアチニン1.20 mg/dL,eGFR 36.3 mL/分/1.73 m2)のある60歳女性に,右側胸部神経支配域の広範な水疱性発疹と疼痛が生じ,帯状疱疹と診断された.症状が出てから2日目である.帯状疱疹に対しバラシクロビルの投与を考慮した.次のどれが適切か.

A
発症2日目では抗ヘルペスウイルス薬の効果は期待できず,腎障害も伴っているので投与すべきではない.
B
帯状疱疹の症状が高度であるため,バラシクロビル3 g・分3を7日間(フルドーズ)処方
C
バラシクロビル1 g・分2を5日間処方
D
バラシクロビル0.5 g・分2を3日間処方

(解答は本誌掲載)