HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 53巻7号(2016年6月号) 特集の理解を深めるための20題
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特集の理解を深めるための20題


問題1

肺炎球菌性肺炎およびペニシリンGについて正しいものを選べ.

A 同じ肺炎球菌の株であっても髄膜炎のときと肺炎のときとでは感受性の判断基準が異なる.
B ペニシリンGは100万単位当たりナトリウムが1.53 mEq含まれるためナトリウム負荷に注意しなければならない.
C ペニシリンアレルギーによるアナフィラキシーの頻度はおよそ100人に1人である.
D 小児では肺炎球菌の定着によって肺炎球菌尿中抗原検査が陽性となることがある.
E 日本の肺炎球菌は耐性が多いため,肺炎球菌性肺炎をペニシリンGで治療することはできない.


問題2

次のなかで誤っているものを1つ選べ.

A マイコプラズマ肺炎の治療の第一選択薬はキノロンである.
B マイコプラズマ肺炎は菌による気道上皮の障害と菌体成分に対する宿主の免疫応答がかかわっている.
C マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎が疑われたらミノマイシン®の治療を考慮する.
D CF,PA法による血清学的検査はペア血清が望ましい.
E 近年,菌体成分を検出するキットがコマーシャルベースで使用できるようになった.


問題3

レジオネラ肺炎の診断,治療について,以下のなかから正しいものを2つ選べ.

A 日本ではレジオネラ肺炎のほとんどがLegionella pneumophila 血清型1によるものであり,尿中抗原検査が陰性であれば否定できる.
B 尿中抗原検査が陰性であっても,臨床的に疑わしい場合には,培養検査やLAMP法などの他の検査結果を待たずに治療を開始したほうがよい.
C レジオネラ肺炎の治療には,レボフロキサシンやシプロフロキサシンといった比較的古い薬剤よりも,シタフロキサシン,ガレノキサシンなどのより新しい薬剤を優先して使用すべきである.
D マクロライド系抗菌薬による治療では,エリスロマイシンやクラリスロマイシンといった比較的古い薬剤よりも,アジスロマイシンのほうが望ましい.
E レジオネラ肺炎の診断が確定していない症例でも,キノロン系薬であれば,肺炎球菌,結核といった感染症のカバーもできるため,マクロライド系薬より優先的に使用したほうがよい.


問題4

次のうち,抗菌薬が必要なものはどれか.すべて選べ.

A かぜ/鼻水
B 気管支炎/せき・たん(もともと元気な成人/こども)
C 百日咳
D インフルエンザ
E 溶連菌咽頭炎
F 咽頭炎(溶連菌以外)
G 滲出性中耳炎
H 尿路感染症


問題5

以下から正しい選択肢をすべて選べ.

A non-HIV-PCPはHIV-PCPと比較して診断に難渋することが多い.
B PCPでは胸部CTですりガラス影をきたさない例はほとんどない.
C non-HIV-PCPに対するステロイド投与の明確なエビデンスはない.
D ペンタミジン吸入はPCP治療の第二選択として用いられることが多い.
E ペンタミジンの主な有害事象として悪心,肝腎機能障害などがある.


問題6

感染性心内膜炎診療において,正しいものを1つ選べ.

A 血液培養でViridans streptococcus groupが2セットすべてで検出されたが,経胸壁心エコーで異常がなかったので感染性心内膜炎を否定した.
B ペニシリンGの感受性が良好なViridans streptococcus groupの感染性心内膜炎の治療で,全身状態が比較的良好であったので1,200万単位/日に減量して持続投与した.
C 以前に指摘されていなかった心雑音を聴取するViridans streptococcus groupの菌血症症例に対し,経胸壁心エコーで異常がなかったので経食道心エコーまで行った.
D Viridans streptococcus groupの感染性心内膜炎患者がペニシリン系抗菌薬のアレルギー歴(詳細不明で軽症なもの)を申告したため,βラクタム系は諦めバンコマイシンのみで治療した.


問題7

黄色ブドウ球菌の血流感染で,合併症の存在と関連がないとされるものはどれか.

A 最初に陽性となった血液培養から3日後に採った血液培養が再度陽性
B 市中発症
C 手指先端の出血斑
D 最初の血液培養陽性から3日後も発熱が持続
E MRSA


問題8

1年前に胃癌にて手術を受けた64歳男性.2日前からの咳嗽と発熱,本日朝からの意識障害があるため,救急外来に搬送された.初期マネジメントとして適切でないものを1つ選べ.

A 血液培養
B 髄液検査
C 腹部CT検査
D 抗菌薬投与
E 詳細な既往歴とワクチン接種歴の確認


問題9

クリプトコッカス髄膜炎の初期治療で第一選択となる抗真菌薬の組み合わせはどれか.2つ選べ.

A アムホテリシンBリポソーム製剤+生食
B アムホテリシンBリポソーム製剤+5%ブドウ糖
C フルシトシン(5-FC)
D フルコナゾール
E ボリコナゾール


問題10

特に基礎疾患のない60歳の男性が3日間の経過で悪化する左下腿の腫脹・発赤,発熱を主訴に来院した.外傷,動物咬傷歴,海水や淡水への曝露はないとのこと.
診察時は,体温38.5℃,血圧134/76 mmHg,脈拍数100回/分,呼吸数18回/分,SpO2 98%.右下腿に腫脹と境界不明瞭な発赤を認め,同部位に圧痛を認めた.発赤部の一部に約3 cmの波動を触知した.発赤部以外の部位には圧痛は認めなかった.アレルギー歴はない.入院のうえ,治療をする方針となったが,今後の治療方針をどうするか,以下のうちから正しいものを選べ.

A 切開排膿はせず,メロペネムを投与して様子をみる.
B 切開排膿はせず,バンコマイシンを投与する.
C 切開排膿のうえ,ペニシリンGを投与する.
D 切開排膿のうえ,セファゾリンを投与する.
E 切開排膿のうえ,グラム染色で確認して抗菌薬を検討する.


問題11

骨髄炎の診断において最も有用な画像検査はどれか.

A 単純X線検査
B CT検査
C MRI検査
D FDG-PET/CT検査
E ガリウムシンチグラフィー


問題12

前立腺炎の治療に用いる抗菌薬はどれか.すべて選べ.

A ペニシリン
B セファゾリン
C フルオロキノロン
D アミノグリコシド
E スルファメトキサゾール・トリメトプリム


問題13

以下の梅毒に関する文章のうち正しい組み合わせを選べ.
(1)近年,世界的に梅毒の報告が増加している.日本では20~40代の男性の報告が多いが,最近では女性の報告も増加している.
(2)定量の非トレポネーマ抗原による検査は梅毒の活動性の評価,治療効果判定に有用であり,トレポネーマ抗原による検査は感度,特異度に優れ,非トレポネーマ抗原陽性が真の陽性か偽陽性かを確認する目的で使用される.
(3)髄液検査で髄液VDRLが陰性だった場合は神経梅毒を除外できる.
(4)梅毒の治療にはペニシリン,セフトリアキソン,ドキシサイクリンなどの選択肢があり,どの薬剤でも効果は同様である.
(5)梅毒はほかの性感染症と重複していることが多く,梅毒を認めた場合にはHIV等のほかの性感染症の評価およびパートナーの評価も行うことが望ましい.

A (1)(2)(3)
B (1)(2)(5)
C (1)(4)(5)
D (2)(3)(4)
E (3)(4)(5)


問題14

特に既往歴のない30代男性.半年以上前から咽頭痛と口内炎を繰り返し歯科受診している.微熱と体重減少を訴え外来受診した.口腔内の写真()を示す.この患者の診断に有用な検査はどれか.2つ選べ.

写真は本誌をご覧ください

 口腔内写真

A 口腔粘膜生検
B 白苔塗抹グラム染色検鏡
C 血清HIV抗原抗体検査
D 抗核抗体
E 血清HTLV-1抗体検査


問題15

重症急性膵炎に対する持続動注療法について正しいものを選べ.

A 重症度判定で重症と判断された場合は速やかに開始されるべきである.
B 明確な予後改善効果が認められている.
C カルバペネム系抗菌薬は最も良い選択肢である.
D 動注療法の有効性は複数のRCTで証明されておらず,有効性は確立していない.
E 膵壊死への感染が予防できれば死亡率は改善される.


問題16

市中発症のS状結腸穿孔症例に対し,治療対象とするべき菌種はどれか.2つ選べ.

A 大腸菌
B 腸球菌
C MRSA
D 真菌
E 黄色ブドウ球菌


問題17

犬・猫咬傷の創感染の起因菌として典型的な病原微生物でないのはどれか.

A Capnocytophaga canimorsus
B Pseudomonas aeruginosa
C Staphylococcus aureus
D Pasteurella multocida
E Streptococcus species


問題18

次の文章で正しいのはどれか.1つ選べ.

A サイトメガロウイルス感染症の診断は臨床症状とサイトメガロウイルス抗原血症の証明のみで十分である.
B サイトメガロウイルス感染症の好発臓器は肺,腸管,網膜,髄膜である.
C サイトメガロウイルス感染症治療の第一選択薬はガンシクロビルである.
D ガンシクロビル,バルガンシクロビルは腎機能による投与量調整が必要だが,ホスカルネットでは不要である.
E ガンシクロビルの有害事象として腎障害,ホスカルネットの有害事象として骨髄抑制の頻度が高い.


問題19

周術期の抗菌薬に関する記載のうち誤っているのは以下のうちどれか.2つ選べ.

A 術中の大量出血が認められた場合は,追加投与を考慮する必要がある.
B 腎機能にかかわらず,術中の追加投与は一般に半減期の2倍の間隔で行う.
C 72時間以上の予防抗菌薬使用は耐性菌検出リスクとなり,推奨されない.
D 帝王切開では,新生児への抗菌薬曝露の懸念から臍帯クランプ後が推奨される.
E β-ラクタム薬は皮膚切開の1時間前以内に投与を開始することが推奨されている.


問題20

以下のなかから正しいものを1つ選べ.

A E. faecalis (GM MIC>500 mg/dL)による感染性心内膜炎に対しGMを併用使用した.
B 好中球減少症患者の重症グラム陰性桿菌感染に対し,院内のアンチバイオグラムで10%以上のグラム陰性菌がGM耐性であったため,培養感受性結果がでるまで初期治療としてセフェピムにAMKを併用した.
C Septic shock患者にβラクタム薬にGMを併用しようとしたがCre 0.94 mg/dLと軽度腎機能障害があるため,禁忌と考えて使用を避けた.
D 重症筋無力症既往のあるアルコール依存症の患者が低栄養(低K,P,Mg血症あり)で入院.尿路感染が疑われたが,不穏による点滴抜針のリスクを考え,GM筋注使用とした.
E 感染性心内膜炎治療に対しGM使用中の患者.耳の聞こえの悪さとめまい感を自覚.GM使用中止にしたところ速やかに改善したため,GMによる副作用と考えられた.


(解答は本誌掲載)