HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 53巻6号(2016年5月号) 特集の理解を深めるための24題
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特集の理解を深めるための24題


問題1

非頭部外傷性意識障害患者の血圧に関して正しいものを2つ選べ.

A 収縮期血圧<90 mmHgの場合,意識障害の原因が頭蓋内病変である尤度比(LR)が0.04以下.
B 収縮期血圧<120 mmHgの場合,意識障害の原因が頭蓋内病変であるLRが0.04以下.
C 収縮期血圧>170 mmHgの場合,意識障害の原因が頭蓋内病変であるLRが6.09以上.
D 収縮期血圧>140 mmHgの場合,意識障害の原因が頭蓋内病変であるLRが6.09以上.
E 意識障害の原因が頭蓋内病変である場合,収縮期血圧は診断に役立たない.


問題2

呼吸困難に関して,次のうち正しいものはどれか.

A 呼吸困難をきたす原因は,臓器別に肺由来と心臓由来とに2つに分けることができる.
B 頸静脈怒張は急性の呼吸困難の原因となりうる心タンポナーデ,肺塞栓,緊張性気胸にてみられることがある.
C 挿管後,自院で管理ができない場合は,挿管を行う前に転院先の病院を確保する必要がある.
D 呼吸困難とは,血液中の酸素飽和度が下がった状態を言う.
E 自分の病状理解が難しい認知症のある身寄りのない高齢者には,挿管の適応はない.


問題3

次の心電図所見のうち,急性心筋梗塞では通常みられないものはどれか.

A 左脚ブロックの出現
B aVRを除く全誘導でのST上昇
C aVR誘導でのST上昇
D T波の増高
E 完全房室ブロック


問題4

ショックについて述べた次の文章のうち,誤っているものはどれか.

A ショックは低血圧で定義される.
B ショックの4分類では,心原性ショックの場合に大量補液より昇圧薬を優先することが多い.
C ショックの直前に薬剤を使用した場合はアナフィラキシーを疑う.
D 血液分布異常性ショックの鑑別の1つに,副腎不全がある.
E 敗血症性ショックを疑った場合は血液培養2セットを施行する.


問題5

次のうち,正しい記述はどれか.

A 下血は主に下部消化管出血を示唆する所見である.
B 出血性ショックでは早急に昇圧剤を用いる.
C 出血が悩ましい場合には,胃管を留置して経過観察することが有用である.
D BUN/Cre比の上昇は,上部消化管出血の可能性を示唆する所見である.
E 消化管出血疑いの患者に対して,内視鏡検査が可能な施設では,全例緊急に内視鏡を施行すべきである.


問題6

カテーテル挿入時の方法や注意点として適切と考えられるものを2つ選べ.

A カテーテル挿入部位は感染症予防の観点では,鎖骨下静脈を第一選択とする.
B 挿入に当たって予防的抗菌薬投与をする.
C 皮膚消毒に0.5%クロルヘキシジンアルコールや10%ポビドンヨードを用いる.
D 穿刺に先立ってカミソリで局所の剃毛をする.
E フィルム型ドレッシングはガーゼ型ドレッシングよりもカテーテル関連血流感染症のリスクが低い.


問題7

74歳男性.7カ月前の脳梗塞の既往がある.今回で2回目となるけいれん発作を起こした.現在,けいれんは消失している.血液検査,心電図,頭部画像所見では新規の異常所見を認めない.今後のけいれん予防のために適切な対応はどれか.

A バルプロ酸投与
B カルバマゼピン投与
C ジアゼパム投与
D チアミン投与
E 予防薬の投与は必要がない


問題8

急性腹症の診断について,正しいものを2つ選べ.

A 閉鎖孔ヘルニアでは大腿内側に腫瘤を触知する.
B 腹部X線検査による腸閉塞の診断感度は約50%である.
C 鎮痛薬の使用は身体所見の過小評価や誤診につながりやすいため,推奨されない.
D 糖尿病性ケトアシドーシスによる腹痛は,アシドーシスの程度と関連している.
E CPK,LDHの上昇と代謝性アシドーシスがなければ,絞扼性腸閉塞は否定的である.


問題9

高齢患者でせん妄が疑われる場合,最も適切な検査はどれか.

A 頭部CT
B 頭部MRI
C 脳波検査
D PET
E 血算


問題10

以下の皮疹をきたす疾患と,その治療の組み合わせで誤っているものを選べ.

A アナフィラキシーショック─アドレナリン筋注
B 帯状疱疹─バラシクロビル内服
C 接触性皮膚炎─ステロイド外用剤塗布
D 類天疱瘡─レボフロキサシン内服
E 疥癬─イベルメクチン内服


問題11

絞扼性イレウスを疑う所見はどれか.

A 嘔気を伴わない嘔吐
B 空腹時の嘔気・嘔吐
C 持続的な腹痛を伴った嘔気・嘔吐
D 腸雑音の亢進を伴った嘔気・嘔吐
E 開眼すると増悪する嘔気・嘔吐


問題12

80歳男性.胃がん術後.肺炎で入院中.肺炎は改善したが廃用症候群をきたしたため,本日からリハビリが開始された.リハビリ中に胸のつかえるような感じを自覚.次第に呼吸困難となった.酸素投与,静脈路確保などを行い,胸部X線,心電図,採血などの検査では明らかな原因の同定ができなかった.
体温36.8℃,血圧112/70 mmHg,SpO2 92%(酸素5Lマスク),心拍数130回/分,呼吸数32回/分.次の検査のうち,診断のために最も適切と思われる検査方法を2つ選べ.

A 心臓超音波検査
B 上部消化管内視鏡
C 心臓カテーテル検査
D 気管支鏡検査
E 胸部造影CT


問題13

心筋梗塞の既往のある70歳の女性.肺炎の診断で入院後,生理食塩水による点滴とロセフィン®(セフトリアキソン)とジスロマック®(アジスロマイシン)による抗菌薬の静注投与を受けていた.心筋梗塞の既往に対し,アスピリン,リシノプリル,メトプロロールを内服中.入院数日で発熱と呼吸状態はいったん改善したものの,昨日より再び呼吸状態の悪化がみられた.看護師の報告では,昨日からの尿量は約500 mL/日とのこと.
身体所見:血圧120/65 mmHg,脈拍100回/分,呼吸数30回/分,体温37.0℃.頸静脈怒張あり.頸静脈圧(JVP)15 cmH2O.
血清生化学所見:Na 130 mEq/L,K 4.2 mEq/L,Cl 92 mEq/L,HCO3 24 mEq/L,BUN 45 mg/dL,Cr 2.2 mg/dL,BNP 1,045 pg/mL.
最も適切な治療は,次のうちどれか.

A 生理食塩水500 mLを全開で静注
B ラシックス40 mg静注投与
C リシノプリル増量
D アスピリン中止
E 抗菌薬の変更


問題14

米国心臓協会が推奨している心肺蘇生法で,正しいものはどれか.

A 気管挿管ができていない場合,胸骨圧迫と人工呼吸の回数は30:2である.
B 心電図モニター上,波形がasystole(心静止)であれば除細動を行う.
C 除細動を行った後,ただちに脈の確認を行う.
D 心肺停止時に,アトロピンを使用する.
E 心肺蘇生(ROSC)後,収縮期血圧が90 mmHg以下の場合,大量輸液は避けて血管収縮薬を用いる.


問題15

投与中の薬剤と重篤な副作用の組み合わせで,間違っているものはどれか.

A グリメピリド─低血糖
B アトルバスタチン─横紋筋融解症
C ベラパミル─房室ブロック
D ブロチゾラム─悪性症候群
E リバーロキサバン─脳出血


問題16

扁平呼吸(platypnea)をきたす疾患を2つ選べ.

A 細菌性肺炎
B 心房中隔欠損症
C 肺癌
D 気管支喘息重積発作
E 肝肺症候群


問題17

救急診療において有用なエコーのプローブと診断できる疾患について,適切でない組み合わせは次のうちどれか.

A 心エコー(セクタ型)─心嚢液貯留
B 腹部エコー(コンベックス型)─水腎症
C 体表エコー(リニア型)─骨折
D 心エコー(セクタ型)─気胸
E 腹部エコー(コンベックス型)─胆石症


問題18

インフォームドコンセントについて,正しいものはどれか.

A 患者の自己決定権を尊重する.
B 一度同意すると撤回できない.
C 医師の決定に従うように求める.
D 事前の意志が不明な意識障害の患者に救命処置をしてはいけない.
E 家族の決定を最優先する.


問題19

地方の中小病院で入院中の高齢患者が急変し,高次医療機関へ転院搬送が必要になった時の対応で正しいものはどれか.

A 患者家族の情報が不明のため,ケアマネジャーから情報を得る.
B 救急車の出動は消防本部へ,ドクターヘリの出動は直接ドクターヘリ基地病院へ要請する.
C 転院搬送時は必ず医師の同乗が必要である.
D 緊急事態のため,診療情報や画像情報は搬送時に持参しなくてもよい.
E 転院先の選定は,実際に患者を診察している医師が決め,家族の希望は勘案しなくてよい.


問題20

救急医療の院内教育について正しいものを2つ選べ.

A 外来の予診係となる受付看護師には,トリアージの考え方を身につけさせる.
B 救急カートの薬剤は五十音順に配列すべきである.
C 救急カートに収納する物品・薬剤の定数や収納箇所は,外来用と入院用とで統一しないほうがよい.
D 経験症例の検討会は講義形式で行うよりグループワーク形式で行うほうが学習効果が高い.
E マンパワーの限られた小規模病院においても専属のmedical emergency team(MET)を構成することは可能である.


問題21

低血糖に対する記述で,正しいものはどれか.

A スルホニル尿素(SU)薬による低血糖は高齢者に多いことが特徴である.
B SU薬による低血糖は遷延しないため,意識レベルの改善があれば帰宅可能である.
C インスリンによる低血糖に対してグルカゴン注射は禁忌である.
D 運動による低血糖の予防のためには,運動前に単純糖質の摂取を勧める.
E 運動による血糖低下効果は,運動中か直後に現れ,6時間以上経過して発現することはない.


問題22

腸閉塞について,正しい記載を2つ選べ.

A エコーでのto and froの所見は,絞扼性腸閉塞を積極的に示唆する所見である.
B エコーにてkeyboard signを認めた場合,麻痺性イレウスは否定的である.
C 単純X線における,鏡面形成像(ニボー像)は小腸閉塞に特異的な所見である.
D 淡血性の腹水の存在は,腸管の虚血を示唆する所見である.
E 絞扼性かの判断では,乳酸値の上昇が有用である.


問題23

訪問診療で患者が急性疾患を発症した場合,何を考慮して治療方針を決定するか.誤っているものを選べ.

A 疾患の重症度
B バイタル
C ADL
D 同居家族の有無
E 介護体制


問題24

離島のような資源・マンパワーの不足した地域において,救急患者の病院間搬送で考えるべき特徴的な項目を2つ選べ.

A 薬剤師の有無
B 天気・波の高さ
C フェリーの時間
D 放射線技師の有無
E 検査技師の有無


(解答は本誌掲載)