HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧53巻2号(2016年2月号) 特集の理解を深めるための28題
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特集の理解を深めるための28題


問題1

わが国における脳卒中の最近の動向について,正しいものはどれか.

A 脳卒中は死因の第2位を占める.
B 脳卒中の発症率は,男性に比べ女性は高い.
C 脳出血に比べ,脳梗塞の発症率は高い.
D 脳梗塞臨床病型のなかで,心原性脳塞栓が占める割合は減っている.
E 脳出血の発症率は,欧米諸国に比べ低い.


問題2

脳卒中の医療連携に関する以下の記載のうち,正しいものはどれか.

A 地域連携では,その地域の急性期病院とリハビリテーション病院とで密接な連携がとれていればよい.
B 脳卒中地域連携クリティカルパスは,連携病院や診療所でのリハビリテーション施行日時を記録しておくものである.
C 脳卒中の早期受診行動のためには,市民への啓発活動が重要である.
D 救急隊が脳卒中を判定するための病院前脳卒中スケールとしてCincinnati Prehospital Stroke Scale(CPSS)が指定されている.
E 他院からt-PAを静注しながら救急車で脳卒中専門病院へ転送し,その後カテーテル治療まで行う病院間搬送(法)をDrip and Ship法と呼ぶ.


問題3

35歳で脳梗塞を発症し,発症後2年が経過したが,右片麻痺が後遺症として残っている患者への支援として,誤っているものを2つ選べ.発症前は会社員として勤めていたが,発症後休職期間を経て現在は失業中.2級の身体障害者手帳をもっている.

A 家事をできないので,介護保険を利用してホームヘルパーの派遣を依頼する.
B 障害者総合支援法に基づく介護給付として,ホームヘルパーの派遣を依頼する.
C 再就職先をハローワークで探す.
D 介護保険による訪問リハビリテーションを受ける.
E 障害年金の申請をする.


問題4

脳出血の予防に科学的根拠の十分でないものを2つ選べ.

A 血圧管理
B 節酒
C 禁煙
D 血糖管理
E 野菜摂取


問題5

若年性脳梗塞の超急性期において,rt-PA療法が推奨されないのは次のうちどれか.

A 大動脈解離からの進展右内総頸動脈解離
B 全身性エリテマトーデス・慢性腎臓病
C Fabry病による心筋症・心房細動例
D 大動脈炎症候群・両側総頸動脈狭窄症
E 卵円孔開存・下肢深部静脈血栓症症例


問題6

Cincinnati Prehospital Stroke Scale(CPSS)とLos Angeles Prehospital Stroke Screen(LAPSS)において,LAPSSのみで評価されるものを2つ選べ.

A 痙攣の既往
B 顔面の麻痺
C 手の麻痺
D 上肢の麻痺
E 言語障害


問題7

脳出血により意識障害をきたしている患者に,下内方に向かう垂直性眼球共同偏倚が観察された.可能性が最も高い病巣はどこか.

A 大脳皮質下
B 被殻
C 視床
D 橋
E 小脳


問題8

脳梗塞の早期虚血性変化に含まれないものはどれか.

A MRI拡散強調画像での高信号
B 頭部単純CTでのレンズ核陰影の不明瞭化
C CTA-SIでの皮質の造影効果不良
D 中大脳動脈高吸収所見(hyperdense MCA sign)
E 脳溝の狭小化


問題9

次のうち,early CT signではないものはどれか.

A 島皮質の不明瞭化
B 脳溝の消失
C レンズ核の不明瞭化
D hyperintense vessel sign
E hyperdense MCA sign


問題10

61歳女性.後頸部から背部の痛みを伴う突然の左上下肢の麻痺が出現し,発症60分で救急搬送された.診察上,明らかな脳神経症状はみられなかった.アルテプラーゼ静注療法の適応を検討するうえで,頭部MRIに加えて行うべき検査を2つ選べ.

A 髄液検査
B 頸椎MRI
C 脳灌流MRI
D 胸部造影CT
E 脳血管造影検査


問題11

脳卒中の診療体制について,正しいものを2つ選べ.

A tissue plasminogen activator静注療法において,発症から治療開始までの時間が短いほど予後が良い.
B 脳梗塞に対する機械的血栓回収療法において,発症から治療開始までの時間は予後に影響を与えない可能性が高い.
C 脳梗塞の救急対応を画一化するのは,自由度が減り,予後に悪影響を及ぼす可能性が高い.
D 脳梗塞患者来院時,救急外来では脳神経内科医だけで,すべての判断をすべきである.
E 脳梗塞患者来院時,救急外来では医師のリーダーシップは大切であるが,チーム医療が患者予後に好影響を及ぼす可能性が高い.


問題12

脳卒中超急性期患者の合併症や随伴症状のうち,患者の転帰に影響しない因子はどれか.

A 感染症
B 消化管出血
C けいれん
D 嚥下障害
E 頭痛


問題13

発症3時間後の心原性脳塞栓症の治療として,推奨されている治療法を以下より2つ選べ.

A オザグレルナトリウム点滴静注
B t-PA静注による血栓溶解療法
C ワルファリン内服
D シロスタゾール内服
E エダラボン点滴静注


問題14

t-PA静注療法に関して,正しいものはどれか.

A 発症6時間以内の急性期脳梗塞例に対して,有効性が証明されている.
B t-PA静注療法のnumber needed to treat(NNT)は発症から20分経過するごとに1増加する.
C 軽症例に対するt-PA静注療法の有効性は否定されている.
D t-PAの投与量は症例によって0.6 mg/kgか0.9 mg/kgかを選択する.
E 睡眠中発症例の発症時間は,画像診断で判定する.


問題15

血栓回収療法の有効性が示されていないランダム化比較試験はどれか.

A ESCAPE
B EXTEND-IA
C IMS-Ⅲ
D MR CLEAN
E SWIFT PRIME


問題16

脳出血の病態と治療に関して,正しいものを2つ選べ.

A 高血圧性脳出血では,急性期から積極的な降圧療法を行う.
B 抗血栓薬を内服中に発症した脳出血では,脳梗塞などの再発リスクを考慮して,ワルファリン内服中においてはPT-INR 1.6以下にすることが望ましい.
C 増大傾向のある脳出血では,血小板輸血あるいは血液凝固因子を含めた血液製剤を用いて止血を図る.
D 若年者の脳出血では初めに内科的治療を行い,併せて高血圧性以外の病態を鑑別する.
E ヘルニア兆候を示し,深昏睡に至るほどの大きな脳出血に対しては血腫除去術が勧められる.


問題17

くも膜下出血(SAH)を疑った場合の初期治療について,正しいものはどれか.

A 意識障害のある患者では,強い刺激を加えてでも覚醒を促し,意識レベルおよび後部硬直の有無を確認する.
B 脳灌流圧維持のため,収縮期血圧220 mmHg未満を目標に血圧を管理する.
C 頭部CTでSAHを認め,CT angiographyで明らかに動脈瘤を認めない場合は,脳血管撮影を行い,動脈瘤やそのほかの原因についても確認する必要がある.
D 嘔吐を伴う激しい頭痛を主訴に来院した患者が,来院時に症状が改善していれば,頭部画像評価は後日を予定してもかまわない.
E 血管内治療は直達手術に比べて低侵襲であるため,破裂脳動脈瘤に対する治療は血管内治療を選択する.


問題18

本邦で非心原性脳梗塞の二次予防において,使用が推奨されている抗血栓薬として間違っているものを2つ選べ.

A ジピリダモール
B シロスタゾール
C クロピドグレル
D アスピリン
E ダビガトラン


問題19

心原性脳塞栓症の治療について正しい記載はどれか.

A 心房細動が確認できない場合には抗血小板療法を投与してもよい.
B 脳梗塞発症リスクの低い症例では抗血小板療法も推奨される.
C アジア人は頭蓋内出血が多いので,直接阻害型経口抗凝固薬も投与量を控えたほうが安全である.
D 同じ推奨レベルであれば,抗凝固薬の選択は直接阻害型経口抗凝固薬を優先させるべきである.
E CHADS2スコアが0点の症例は,抗血栓療法は不要である.


問題20

わが国の脳卒中の特徴として,正しいものを2つ選べ.

A 発生頻度は欧米諸国と比べ,非常に高い.
B 発生頻度の最も高い病型は脳出血である.
C 脳出血死亡率は,ここ数十年間ほぼ横ばいである.
D 妊娠分娩に伴う脳卒中においては,出血性卒中が7割を占める.
E 妊娠分娩に伴う脳出血の原因は,脳動脈瘤の破裂が最も多い.


問題21

頸部頸動脈狭窄症において,頸動脈内膜剥離術(CEA)より頸動脈ステント留置術(CAS)のほうが適していると考えられるものはどれか.

A 若年者
B 全周性石灰化
C 不安定プラーク
D 放射線治療の既往例
E 血管の著しい屈曲蛇行


問題22

無症候性脳梗塞について,正しいものはどれか.

A 抗血小板薬の積極的な投与が推奨される.
B 24時間を通した血圧管理が病変増加の予防に重要となる.
C MRI画像でラクナ脳梗塞を認めるが,24時間以内に神経症状が消失する.
D MRI T2画像にて脳実質高信号病変の最大径が10 mm以上,20 mm未満のものである.
E 無症候性脳梗塞が多発,融合,拡大すると大脳白質病変となる.


問題23

脳卒中診療を進めるにあたって,日常生活動作(ADL)を評価するために汎用される評価尺度を2つ選べ.

A Mini-Mental State Examination(MMSE)
B Functional Independence Measure(FIM)
C Manual Muscle Test(MMT)
D National Institute of Health stroke scale(NIHSS)
E modified Rankin Scale(mRS)


問題24

77歳の右利き女性.2日前の入浴後から急に不可解な発言をするようになり,落ち着きがなくなった.奇妙な言動が続いているため,心配した家族に伴われて来院.以前に高血圧と不整脈を指摘されたことがある.
覚醒は良好であり,血圧160/70 mmHg,脈拍71/分,不整.発熱はなく,項部硬直は認めない.脳神経系に異常はなく,四肢運動感覚障害も認めない.
発話量は多く流暢だが,質問と無関係なことを答え,会話の内容も滅裂であった.「右手を挙げてください」と指示を与えても,まったく別の動作をしてしまい,内容が理解できていないようであった.また,復唱をさせようとしてもまったく違う言葉を発し,読み書きもできなくなっていた.
この患者の病態として,正しいのはどれか.

A Broca失語
B Wernicke失語
C 伝導失語
D 超皮質性運動失語
E 偽性球麻痺性構音障害


問題25

微小脳出血(CMB)について,間違っているものはどれか.

A MRI T1強調画像により検出可能である.
B 将来的な脳出血の予測因子である.
C 深部やテント下のCMBは高血圧,ラクナ梗塞,大脳白質病変に関連している.
D CMBを多数有する症例では,治療の基盤として厳格な血圧管理が必要である.
E 脳深部に複数のCMBを有するNVAF患者については,慎重なワルファリン管理が望まれる.


問題26

脳卒中後のけいれん合併率が最も高い病態はどれか.

A 脳幹のラクナ梗塞
B 深部白質の血栓性脳梗塞
C 脳室穿破を伴う視床出血
D 皮質領域を含む脳出血
E 脳内血腫を伴わないくも膜下出血


問題27

次の頭部MRI所見のうち,脳小血管病ではないものはどれか.

A 微小出血
B 白質病変
C ラクナ梗塞
D くも膜下出血
E 脳出血


問題28

脳梗塞後の機能回復促進療法として,科学的根拠が確立しているものはどれか.

A ステロイド療法
B 血液希釈療法
C 低体温療法
D 高圧酸素療法
E 上記のいずれでもない


(解答は本誌掲載)