特集の理解を深めるための30題
問題1
わが国の成熟リンパ系腫瘍に関する以下の記述で,誤っているものはどれか.
A 悪性リンパ腫による死亡者数は年々増加している.
B 多発性骨髄腫による死亡者数は年々増加している.
C 悪性リンパ腫の年齢調整罹患率はこの10年間変化していない.
D 多発性骨髄腫の年齢調整罹患率はこの10年間変化していない.
E 悪性リンパ腫の年齢調整罹患率は日本人よりも欧米人で高い.
問題2
リンパ腫が疑われる患者の診察において,誤っているものを2つ選べ.
A リンパ節は硬く,圧痛を認めたため感染性リンパ節炎を疑った.
B 頸部リンパ節腫脹を主訴に受診した患者に対して,肝脾腫や皮疹の有無も確認した.
C 発熱を主訴に受診したが,リンパ節腫脹を認めなかったため,悪性リンパ腫を除外した.
D 可溶性インターロイキン-2レセプターが高値だったため,悪性リンパ腫と診断した.
E 急速に増大するリンパ節腫脹を認めたため,直ちに専門医へ紹介した.
問題3
リンパ腫の病型と染色体転座の組み合わせで誤っているものはどれか.
A BCL2-IGH……濾胞性リンパ腫
B BCL1-IGH……マントル細胞リンパ腫
C BCL6-IGH……びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫
D NPM-ALK……Hodgkinリンパ腫
E IGH-MYC……Burkittリンパ腫
問題4
リンパ腫の治療終了時の効果判定としてPET-CTを実施する場合,正しい時期はどれか.2つ選べ.
A 化学療法終了後1週間
B 化学療法終了後6週間
C 化学療法終了後3カ月
D 放射線療法終了後6週間
E 放射線療法終了後3カ月
問題5
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫について正しいものはどれか.
A 好発年齢は若年者と高齢者の二峰性分布を示す.
B 病変はリンパ節が主体で,節外病変の合併は稀である.
C 無治療での予後は月単位である.
D 限局期の治療は放射線療法である.
E 化学療法が奏効するが高率に再発し,予後不良である.
問題6
Hodgkinリンパ腫でABVD療法と縦隔に対する放射線療法を施行し完全寛解となった症例(38歳,女性).外来での経過観察で間違っているものはどれか.
A 定期的な血液内科外来の受診
B 年1回の専門家による乳がん検診
C リンパ腫病変評価のための定期的なPET-CT検査
D 定期的な血液検査
E 生活習慣病に関する指導
問題7
60歳の男性.数年前から頸部・腋窩・鼠径部に1~2 cmの腫瘤を自覚するも,疼痛がなく,1年前にいったん縮小したこともあり,放置していた.しかし,半年前から頸部リンパ節の再増大を認め,生検にて濾胞性リンパ腫grade 1と診断された.CT検査では,頸部・腋窩・縦隔・腸間膜領域に径1~2 cmのリンパ節および腹部大動脈周囲に長径10 cmの病変を認め,尿管圧排による右水腎症もみられた.なお,B症状は認められない.最も適切な治療レジメンはどれか.
A watchful waiting
B リツキシマブ単剤
C 放射線免疫療法
D R-CHOP療法
E 造血幹細胞移植(自家移植+大量化学療法)
問題8
MALTリンパ腫について,誤っているものはどれか.
A MALTリンパ腫では浸潤臓器別に特徴的な病因・病態が存在する.
B 限局期胃MALTリンパ腫ではH. pylori 感染の有無を確認する. C びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫への組織進展の除外診断に,病理組織検査が必要である.
D t(11;18)/API2-MALT1 遺伝子異常を有する症例では,H. pylori 除菌療法が著効する. E 限局期眼窩MALTリンパ腫に対する初回同種造血幹細胞移植の施行は推奨されていない.
問題9
慢性リンパ性白血病(CLL)について,正しいものはどれか.
A CD10・CD23を共発現する.
B 染色体17p欠失/TP53 遺伝子異常は予後不良因子である. C リンパ球増加は治療開始基準の1つである.
D CLLの染色体異常の解析にはGバンド法が推奨される.
E 染色体(11;14)転座はヘアリー細胞白血病との鑑別に有用である.
問題10
生来健康な63歳男性.家族から物忘れが顕著になったと指摘されたことを契機として,症候性原発性マクログロブリン血症と診断された.Hb値は10.3 g/dL,血小板数10.5×104/μL,M蛋白は4.1 g/dLであった.また,網膜血管にソーセージ様変化を認めた.適切な治療はどれか.
A 経過観察
B 赤血球輸血
C リツキシマブ単剤による治療
D 血漿交換
E 血小板輸血
問題11
ALK 遺伝子領域を含む染色体転座が高頻度にみられるのはどれか.
A 未分化大細胞リンパ腫
B 濾胞性リンパ腫
C マントル細胞リンパ腫
D Burkittリンパ腫
E MALTリンパ腫
問題12
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)は予後因子および臨床病態から,「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」に分類されるが,積極的な治療が推奨されるのは次のどれか.
A 「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」すべてにおいて推奨される.
B 「急性型」「リンパ腫型」において推奨される.
C 「急性型」「リンパ腫型」に加え,予後不良因子(LDH,アルブミン,BUNいずれか1つ以上が異常値)をもつ慢性型に推奨される.
D 現段階では臨床試験が実施中であり,明確な基準はない.
問題13
NK/T細胞リンパ腫について,正しいものはどれか.
A 全体の1/3で鼻腔とその周辺に病変に限局性病変を有する.
B Helicobacter pylori 感染に関連する疾患である. C 標準化学療法はCHOP療法である.
D 鼻腔(周辺)限局期では同時化学放射線治療が有効である.
E 進行期ENKL(節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型)の初回治療奏効割合は10%である.
問題14
悪性リンパ腫に対する造血幹細胞移植について,正しいものを2つ選べ.
A 濾胞性リンパ腫に対する同種移植は,根治を目指して第1寛解期に実施する.
B 形質転換した濾胞性リンパ腫の再発例に対する救援化学療法が奏効した場合,造血幹細胞移植による地固め療法は不要である.
C マントル細胞リンパ腫は,初発時のリスクにかかわらず,初回治療として自家造血幹細胞移植まで実施する.
D 救援化学療法の治療効果が安定と判定された末梢性T細胞リンパ腫に対し,同種移植を実施してはならない.
E 自家移植後再発をきたしたHodgkinリンパ腫に対する治療としてブレンツキシマブ ベドチン投与および同種移植が有望である.
問題15
リンパ腫診療におけるB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化対策について,正しいものはどれか.
A リンパ腫以外の造血器腫瘍においては,HBV再活性化は発症しない.
B リスク評価においては,HBs抗原およびHBc抗体の測定で十分である.
C HBs抗原陽性の場合,原則として核酸アナログの予防投与はしない.
D HBc抗体単独陽性の場合,HBV再活性化リスクは低い.
E HBs抗原陰性かつHBV-DNA陽性例は,原則として核酸アナログの予防投与を行う.
問題16
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)について,正しいものはどれか.
A 骨病変を伴うことがある.
B 年間10%程度が骨髄腫に進展する.
C レナリドミドが第一選択薬である.
D 骨髄腫への進展には染色体異数体である高二倍体が関与する.
E 血清遊離軽鎖(free light chain)κ/λ比の異常は病気の進行に関与する.
問題17
多発性骨髄腫の染色体異常について,正しいものはどれか.
A 多発性骨髄腫の染色体異常はGバンドで検出する.
B t(14;16)転座は予後良好染色体異常である.
C 多発性骨髄腫の染色体異常には,免疫グロブリン遺伝子に関連するものがある.
D 多発性骨髄腫の予後を予測するには,染色体異常より次世代シーケンサーが有用である.
E ボルテゾミブなどの新規薬剤により,染色体異常による予後の違いはなくなった.
問題18
骨髄腫診断事象(MDE)でないものはどれか.
A 高カルシウム血症
B 腎障害
C 貧血
D 年に2回以上の感染症
E 骨病変
問題19
国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)の治療効果判定基準で,“非常に良い部分寛解”(very good partial response:VGPR)の基準は,下記のうちどれか.2つ選べ.
A 免疫電気泳動でM蛋白が陰性.
B 血清および尿の免疫固定法ではM蛋白陽性だが,蛋白電気泳動でM蛋白陰性.
C 血清M蛋白が90%以上減少し,かつ24時間尿中M蛋白が100 mg未満.
D 血清および尿の免疫固定法でM蛋白が陰性だが,血清遊離軽鎖(free light chain:FLC)κ/λ比が正常ではない.
E 血清M蛋白が50%以上減少し,かつ24時間尿中M蛋白が90%減少または200 mg未満まで減少.
問題20
移植適応多発性骨髄腫の寛解導入療法として推奨されない薬剤はどれか.
A メルファラン
B ボルテゾミブ
C サリドマイド
D レナリドミド
E デキサメタゾン
問題21
MPB療法の主な副作用として,正しいものを2つ選べ.
A 心筋障害
B 末梢神経障害
C 間質性肺炎
D 口腔粘膜障害
E 出血性膀胱炎
問題22
再発・難治性多発性骨髄腫の治療方針として正しいものはどれか.
A 自家移植後の再発症例は,奏功期間にかかわらず同種移植の適応となる.
B 初回治療に用いた新規薬剤は無効であるため,他剤への変更が必須である.
C 治療目標は奏功の深さであり,再治療では新規薬剤を必ず最大量で用いる.
D 初回治療の結果や自家移植の適応の有無から再治療法を選択する.
E 初回治療が無効な場合は速やかに緩和医療に変更する.
問題23
ボルテゾミブの末梢神経障害予防について,誤っているものを2つ選べ.
A ボルテゾミブの投与間隔を週2回→週1回に減らす.
B ボルテゾミブの投与経路を静注から皮下注に替える.
C ボルテゾミブの注射部位を毎回変える.
D ボルテゾミブ投与時にステロイド薬を併用する.
E 末梢神経障害の症状が出現または増悪時は,ただちにボルテゾミブを減量・中止,あるいは投与スケジュールを変更する.
問題24
デノスマブについて,誤っているものを2つ選べ.
A RANKL(破骨細胞分化因子)の受容体であるRANKを発現する破骨前駆細胞にも作用し,破骨細胞の生存を強力に阻害する.
B 副作用として,低カルシウム血症,顎骨壊死がある.
C マウス型モノクローナル抗体である.
D デノスマブは,腎排泄されるため,腎機能障害を有する患者には投与不可である.
E 半減期が長く,皮下注射で投与する.
問題25
POEMS症候群の診断基準において必須項目となるものを2つ選べ.
A 血管内皮増殖因子(VEGF)上昇
B 多発神経炎
C モノクローナルな形質細胞増加
D 内分泌異常
E 臓器腫大
問題26
次のうち,正しい組み合わせはどれか.
A fostamatinib……PI3キナーゼ(PI3K)阻害
B ibrutinib……Bruton型チロシンキナーゼ(BTK)阻害
C idelalisib……脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害
D MYD88……C481S変異
E BTKL265P……ibrutinib耐性
問題27
悪性リンパ腫における遺伝子異常について,間違っているものはどれか.
A 濾胞性リンパ腫(FL)において,エピゲノム関連因子の変異をしばしば認める.
B ヘアリー細胞白血病(HCL)におけるBRAF V600E変異の検出は,診断に有用である.
C びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)において,NFκB経路関連因子の変異をしばしば認める.
D Bruton型チロシンキナーゼ(BTK)は,慢性リンパ性白血病(CLL)の治療標的として重要である.
E B細胞性腫瘍においてMYD88 L265P変異が陽性であれば,原発性マクログロブリン血症(WM)と確定診断できる.
問題28
多発性骨髄腫に用いられる薬剤を2つ選べ.
A レナリドミド
B ボルテゾミブ
C ゲフィチニブ
D リツキシマブ
E イマチニブ
問題29
免疫チェックポイント阻害薬で出現する可能性のある副作用を2つ選べ.
A 脱毛
B 皮疹
C 血管炎
D 便秘
E 肝酵素上昇
問題30
CD19 CAR-T療法の対象として,最も適切な疾患はどれか.
A 急性骨髄性白血病
B 急性リンパ性白血病
C 慢性骨髄性白血病
D 再生不良性貧血
E 骨髄異形成症候群
(解答は本誌掲載) |