HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧52巻2号(2015年2月号) 特集の理解を深めるための31題
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特集の理解を深めるための31題


問題1

HBV関連ウイルスマーカーの測定結果で,肝細胞内のB型肝炎ウイルス量が増加している状態とは言えないものはどれか.

A HBV-DNA量の増加
B HBコア関連抗原量の増加
C HBs抗原量の増加
D HBs抗体価の上昇
E HBe抗原量の増加


問題2

次の選択肢から正しいものを2つ選べ.

A 感冒様症状は急性肝炎の前駆症状の1つである.
B 成人のB型急性肝炎は慢性化しない.
C C型肝炎ウイルスに感染すると終生免疫が得られる.
D 急性A型肝炎の診断はIgM型HA抗体の測定で行う.
E A,E型肝炎ウイルスは血液を介して感染する.


問題3

肝線維化の進行に伴ってみられる現象で,間違っているものはどれか.

A 血小板数低下
B IV型コラーゲン7S値高値
C Fibroscan®によって測定された肝硬度高値
D APRI(AST tp platelet ratio index)値高値
E ALT値高値


問題4

B型肝炎の自然経過について正しいものはどれか.

A 無症候性キャリアからの発癌は認められない.
B HBe抗原が陰性化,HBe抗体が陽性化すれば,臨床的治癒と考えられる.
C HBV-DNA量が多いほど,発癌リスクは増大する.
D B型肝炎ウイルスは,肝細胞癌の原因の約3分の2を占める.
E B型肝炎における発癌リスクはジェノタイプに左右されない.


問題5

C型肝炎の自然経過について,正しいものを2つ選べ.

A C型急性肝炎の慢性化率は,約30%である.
B C型急性肝炎の約1%は,劇症化する.
C C型慢性肝炎においては,肝硬変に至るまでに感染から約10年を要する.
D 肝硬変に至ったC型慢性肝炎の発癌率は,年率7~8%と推定されている.
E 近年は,高齢者を中心に女性や肝線維化の軽い例など,従来低リスクと考えられてきた集団での発癌が増加している.


問題6

肝炎ウイルスの肝外病変の説明として,正しいものを2つ選べ.

A C型肝炎と糖尿病の因果関係はない.
B B型肝炎は膜性腎症の原因となりうる.
C A型肝炎に肝外病変の併発はみられない.
D C型肝炎によって引き起こされるクリオグロブリン血症は,肝外病変と密接な関係がある.
E C型肝炎ウイルス(HCV)を排除することは肝外病変の改善にはつながらない.


問題7

47歳の男性.C型肝炎を指摘され,C型肝炎の治療のために来院.
身体所見:身長170 cm,80 kg.
生活歴:飲酒(焼酎3合/日).
血液・血清生化学所見:WBC 12,000/μL,Hb 10.2 g/dL,MCV 110 fL,PLT 18×104/μL,AST 68 IU/L,ALT 60 IU/L,TG 493 mg/dL,TC 296 md/dL,FBS 178 mg/dL,HbA1c 8.2%.
C型肝炎に対する抗ウイルス療法の開始前に施行すべき治療・指導として,誤っているものを選べ.

A 食事指導,運動療法
B 経口糖尿病薬の投与
C 鉄剤の投与
D スタチン系薬剤投与
E 禁酒指導


問題8

肝炎ウイルス感染について,正しいものはどれか.

A 先進国では,2000年以降にA型肝炎の集団発生の報告はない.
B 数年前から高齢者に対するA型肝炎ワクチン接種の需要が増加して,ワクチンの入手が困難になった.
C 生で貝類を摂取しても,E型肝炎ウイルス感染の心配はない.
D B型肝炎ウイルスの母子感染予防対策である現在のセレクティブワクチネーションを継続することで,将来的にB型の劇症肝炎は撲滅できる.
E 理容店や美容院における器具の消毒法を定めた法律では,C型肝炎ウイルスの感染予防にも有効な消毒法の施行を義務づけている.


問題9

発症から20日経過しても改善傾向を示さない急性肝炎の患者が来院した.劇症化を予知するうえで,有用なものはどれか.

A 肝障害の原因
B ALP
C γ-GTP
D コリンエステラーゼ
E AST


問題10

B型慢性肝炎・肝硬変の診断・治療について誤っているものを1つ選べ.

A 肝硬変症例でも血小板数が正常のことがある.
B ALT正常,HBV-DNA量低値であれば治療適応はない.
C インターフェロン治療のほうがHBs抗原陰性化の観点からは有利な治療である.
D インターフェロン治療中または治療後にALT上昇をきたす症例がある.
E 核酸アナログ製剤の第1選択はエンテカビルまたはテノホビルである.


問題11

B型慢性肝炎に対するペグインターフェロン治療で,効果が得られやすいのはどれか.

A ビリルビン高値
B HBV-DNA高値
C ALT高値
D 高齢
E HBs抗原量高値


問題12

B型慢性肝炎に対する核酸アナログ治療について,正しいものを2つ選べ.

A エンテカビル(ETV)やテノホビル(TDF)は耐性株出現率が高く,第一選択薬とはならない.
B 核酸アナログは,肝細胞中の核にあるHBVのcccDNAを直接排除できる.
C 重症肝炎の治療ではETVのみの投与は望ましくない.
D 核酸アナログは肝細胞癌の発癌を直接抑えることができる.
E HBcrAg量やHBsAg量は核酸アナログ治療中のHBV増殖の良い指標となる.


問題13

免疫抑制薬や抗癌剤を使用する患者で,ただちに核酸アナログの投与を考慮すべき状態はどれか.

A HBs抗原陽性
B HBs抗体陽性
C HCV RNA陽性
D ALT>300 IU/L
E 抗核抗体陽性


問題14

B型慢性肝炎(肝硬変は除く)で核酸アナログの投与を考慮すべき状態はどれか.

A HBV-DNA 4.0 log copies/mL以下かつALT 31 IU/L以下
B HBV-DNA 4.0 log copies/mL以下かつALT 31 IU/L以上
C HBV-DNA 4.0 log copies/mL以上かつALT 31 IU/L以下
D HBV-DNA 4.0 log copies/mL以上かつALT 31 IU/L以上


問題15

次の薬剤のうち,B型肝炎の治療で最も薬剤耐性変異を生じにくいものはどれか.

A ラミブジン
B アデフォビル
C エンテカビル
D テノフォビル
E テラプレビル


問題16

C型慢性肝炎の治療で正しいものはどれか.

A 日本におけるgenotype 1型・高ウイルス量の初回治療例に対するシメプレビル,ペグインターフェロン(Peg-IFN),リバビリン(RBV)併用療法のウイルス学的著効(SVR)率は約60%である.
B genotype 1型の症例に対するIFNを使用しないダクラタスビルとアスナプレビル併用療法は,IFN不適格・不耐容例またはIFN無効例が適応である.
C うつ病をもつ症例には,Peg-IFNとRBV併用療法は安全に使用できる可能性が高い.
D genotype 2型・高ウイルス量症例の初回治療例ではテラプレビル,Peg-IFN,RBV併用療法が適応になっている.
E ALT値正常症例に対しては,治療は必要ない.


問題17

ペグインターフェロン(Peg-IFN)/リバビリン(RBV)併用療法について,正しいものはどれか.

A IFN単独療法に比し,治療効果は改善し副作用も軽減した.
B genotype 1型で治療開始12週までにHCV-RNA陰性化しても延長投与(72週)を行う.
C genotype 2型で治療開始4週までにHCV-RNA陰性化しても標準投与(24週)を行う.
D genotype 1型のHCV-RNA陰性化にはRBV投与量が重要である.
E genotype 1型の治療後の再燃率低下にはPeg-IFN投与量が重要である.


問題18

HCV genotype 1型・高ウイルス量症例に対するペグインターフェロン,リバビリン療法における治療抵抗性因子として不適切なものはどれか.

A IL28B 遺伝子多型がメジャータイプ
B HCVコア領域の70,91番目のアミノ酸が変異型
C 女性
D 肝線維化進展
E LDL-コレステロールが低値


問題19

以下のうち,正しいものはどれか.

A HCVプロテアーゼ阻害薬併用インターフェロン(IFN)療法により,IFN前治療無効例であっても,80%近い著効(SVR)率を得られるようになった.
B IFNと併用することにより,DAAs耐性ウイルスは出現しない.
C HCVプロテアーゼ阻害薬は単剤での使用も可能である.
D HCVプロテアーゼ阻害薬とPeg-IFN/リバビリンの3剤併用療法では,初回治療例,前治療再燃例において70~90%近くの高いSVR率が得られる.
E プロテアーゼ阻害薬で出現する耐性変異は,薬剤にかかわらずすべて同じである.


問題20

C型慢性肝炎に対するダクラタスビル+アスナプレビル併用療法において,治療効果に影響を及ぼす因子を2つ選べ.

A 性別
B IL28B遺伝子型
C 薬剤耐性株の有無
D HCV遺伝子型
E 年齢


問題21

C型慢性肝炎の治療について,以下の記述で誤っているものはどれか.

A 現在DAAsとしてNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬,NS5A阻害薬,およびNS5Bポリメラーゼ阻害薬が臨床導入されている.
B 直接塩基配列決定法により,NS5A阻害薬に対する耐性変異はDAAs未治療例の約18%の症例に検出される.
C 治療不成功により生じたNS5A阻害薬に対する耐性変異は,治療終了後24週以内に消失する.
D 治療不成功により生じたDAAs耐性変異は,同じクラスのDAAsに対し交叉耐性を示す.
E DAAs耐性変異ウイルスはインターフェロンに対して感受性である.


問題22

高齢者のC型肝炎ウイルス感染者で,間違っているものを1つ選べ.

A 新しいDAAs(direct acting antivirals)による治療でも,若年者よりウイルス駆除率は低い.
B 発癌率は高い.
C C型肝炎に関連した死亡(肝癌,肝不全など)は半分以下である.
D ウイルス駆除後も慎重な経過観察が必要である.
E genotype 1型の高齢化が著しい.


問題23

慢性肝炎における肝線維化の評価に関係のないものはどれか.

A 年齢
B 性別
C 肝生検
D 血清AST値
E 血小板数


問題24

肝庇護療法について正しいものはどれか.

A C型慢性肝炎に対するウルソ®の推奨投与量は300 mg/日である.
B C型慢性肝炎に対する肝庇護療法ではALT値を80 IU/L以下に安定化することが推奨される.
C 強力ネオミノファーゲンC®(SNMC)は,20~40 mL/日の連日または間歇投与が望ましい.
D C型肝炎治療ガイドラインでは,肝庇護療法としてウルソデオキシコール酸(UDCA)内服とSNMC注射,および両剤の併用を推奨している.
E 小柴胡湯による間質性肺炎の頻度は,250人に1人と高率である.


問題25

インターフェロン(IFN)少量長期療法に関して正しいものはどれか.

A C型肝炎は肝機能値の持続異常や高齢化に伴い肝細胞癌の発症頻度が上昇することから,早期にIFN少量長期療法を導入することが望ましい.
B IFN少量長期療法は,肝硬変患者や高齢者には勧められない.
C IFN少量長期療法は,肝機能障害やAFPの改善に関せず,長期投与することで肝癌の発症を抑制することができる.
D 肝発癌予防の治療において,IFN非適応例およびIFN少量長期療法でALT値・AFP値の改善が得られない症例は肝庇護剤(強力ネオミノファーゲンC,ウルソデオキシコール酸),鉄過剰が疑われる症例では瀉血療法を単独あるいは組み合わせて治療する.
E C型肝炎・肝硬変で治癒目的の抗ウイルス療法(IFN療法を含む)が無効であった症例には,IFN少量長期療法は不適格である.


問題26

瀉血が最も有効な慢性肝疾患はどれか.

A B型慢性肝炎
B C型慢性肝炎
C 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
D 自己免疫性肝炎(AIH)
E 原発性胆汁性肝硬変(PBC)


問題27

抗癌剤や免疫抑制療法による肝炎ウイルス再活性化に関して,正しいものはどれか.

A B型肝炎ウイルス再活性化による死亡は稀である.
B 抗癌剤や免疫抑制療法前にHBs抗原陰性の場合,HBc抗体およびHBs抗体の測定を行う.
C HBs抗原陽性の場合,原則として核酸アナログの予防投与はしない.
D HBc抗体単独陽性の場合,B型肝炎ウイルス再活性化リスクは低い.
E C型肝炎ウイルス再活性化は劇症化することが多い.


問題28

35歳男性.B型急性肝炎のため入院した.感染経路として男性間性交渉が疑われたため,承諾をとったうえでHIV抗体の測定を行ったところ,陽性であった.この時点での対応として誤っているものはどれか.

A HIV感染症であることを本人に告知する.
B HIV抗体精密検査を行う.
C CD4リンパ球数の測定を行う.
D 日和見感染の合併の有無を確認する.
E 抗HIV療法の適応,時期について専門医に相談する.


問題29

ウイルス性肝硬変に対する肝移植に関して,正しいものはどれか.

A HBc抗体陽性ドナーからグラフト肝の提供を受けたレシピエントでは,de novo B型肝炎が発症することはない.
B C型肝硬変に対する肝移植では,移植直後(1カ月以内)から抗C型肝炎ウイルス(HCV)治療を施行するのが標準治療である.
C B型肝硬変に対する肝移植後では,HBワクチン接種により高率に能動免疫誘導が可能で,核酸アナログ製剤や抗HB免疫グロブリンを離脱できる症例が多い.
D シメプレビルはほかの免疫抑制薬と相互作用の少ないプロテアーゼインヒビターである.
E C型肝硬変に対する肝移植後の再発HCV肝炎に対して,インターフェロン+リバビリンによる抗ウイルス治療はきわめて有効で,ウイルス学的著効(SVR)達成率は約70%である.


問題30

肝硬変患者について正しいものはどれか.

A 安静時エネルギー消費量は低下する.
B 糖質のエネルギー基質としての利用率が上昇する.
C 肥満患者は減少している.
D 呼吸商は低下する.
E 血清分岐鎖アミノ酸(BCAA)値は上昇する.


問題31

わが国のB型肝炎(hepatitis B:HB)ワクチン接種について正しいものはどれか.

A 医療従事者のHBワクチンは公費で接種可能である.
B genotype Bの急性肝炎が増加中のため,HBワクチンのユニバーサル化が必要である.
C ユニバーサルワクチネーションによりB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)には感染しない.
D 父親がHBVキャリアであっても子どもに感染しない.
E HBs抗原陽性の母親からの新生児は,誕生後できるだけ早期(12時間以内)に抗HBs抗体グロブリン(HBIG)とHBワクチン投与が必要である.


(解答は本誌掲載)