特集の理解を深めるための29題
問題1
診療所で診療報酬を算定するには管理栄養士の直接雇用が必須だが,栄養ケア・ステーションとの連携でも算定できる項目はどれか.1つ選べ.
A 入院栄養食事指導料
B 外来栄養食事指導料
C 集団栄養食事指導料
D 在宅患者訪問栄養食事指導料
E 栄養管理実施加算
問題2
悪液質の診断基準に含まれない項目はどれか.1つ選べ.
A 体重減少
B 疲労
C 食思不振
D 筋力低下
E 脂肪量減少
問題3
サルコペニアに関して正しいものはどれか.1つ選べ.
A サルコペニアの診断には握力の低下が必須条件である.
B サルコペニアの骨格筋組織の変化の特徴として,遅筋線維優位の筋萎縮がある.
C サルコペニアの栄養療法として,蛋白摂取量は1.0~1.3/kg/日程度を推奨している.
D サルコペニアの筋肉量の指標として,除脂肪体重が用いられる.
E サルコペニア肥満よりもサルコペニア単独のほうが,よりIADL低下が著しい.
問題4
immunonutrition(免疫栄養法)について,その効果が最も発揮されると考えられる適応はどれか.1つ選べ.
A 消化管出血のある患者
B バイタルサインの安定しない患者
C 重症敗血症患者
D 待機手術患者
E 腸閉塞患者
問題5
以下の記述で正しいものはどれか.1つ選べ.
A サプリメントは法律上食品ではなく医薬品に含まれる.
B 抗酸化サプリメントには動脈硬化を抑制する働きが証明されている.
C サプリメントのなかには医薬品との相互作用を有するものがある.
D 患者がサプリメントを利用している場合,直ちにやめさせる.
E サプリメントには重大な副作用はみられない.
問題6
症例:妊娠16週.つわりがひどく,15 kgの体重減少を認めた.今回,呼吸困難,下体浮腫,意識レベルの低下を主訴に来院.失見当識,失調歩行を認めた.妊娠6週から始まった重症妊娠悪阻で10%糖液をベースとした点滴療法のみでビタミン補給はされていなかった.神経学的所見は妊娠15週となって現れた.ビタミンB1濃度14 ng/mLでありWernicke脳症と診断し,入院当日からB1 500 mg/日の連日静注投与を開始した. 治療後も長期に残存すると考えられる症候はどれか.1つ選べ.
A 下腿浮腫
B 心不全症状
C 失見当識
D 眼振
E 失調歩行
問題7
亜鉛の欠乏症でみられる症状はどれか.2つ選べ.
A 味覚障害
B Kayser-Fleischer角膜輪
C Parkinson病様の症状
D 創傷治癒遅延
E 肝機能障害
問題8
近年広まりつつある,enhanced recovery after surgery(ERAS)プロトコルについて正しいものを1つ選べ.
A どのような手術術式であっても,縫合不全を予防するために,術前の腸管前処置は必須である.
B 手術前日は絶食にしなければならない.
C 術後早期の経口摂取は縫合不全の危険があり,行うべきではない.
D 周術期の輸液はオーバーバランスで管理したほうが合併症が少ない.
E 大腸手術だけではなく,多領域の手術に適応されつつあるプロトコルである.
問題9
refeeding syndromeの病態とその対応法について正しいものはどれか.1つ選べ.
A 飢餓状態だった患者に十分量の栄養投与を行わないと発生する.
B わが国のような先進国での発生は,中枢性摂食異常症を除けば稀である.
C 低P血症などの電解質異常は,本症発症の危険因子である.
D 昨今の総合ビタミン剤入り高カロリー輸液製剤は本症に考慮してビタミンB1などがあらかじめ添加されているので,これを投与すれば,発生することは稀である.
E 本症は,複雑で,かつ特殊な病態なので,発生の予測と対応は困難であり,専門医へのコンサルトが推奨されている.
問題10
64歳男性.高血圧でかかりつけの近医において施行された採血検査で貧血の指摘をされ,精査目的に当院血液内科紹介受診.問診では,四肢末端のしびれをここ約1カ月間自覚するようになっていたが日常生活には問題がなく,経過をみていた.診察上,腱反射の軽度減弱を認め,舌乳頭の萎縮がみられる.受診時に行った採血検査では,赤血球数241万/μL,Hb 9.6 g/dL,Ht 29.8%であった. 上記の内容から,この患者に最も適切だと考えられる治療はどれか.1つ選べ.
A 鉄剤の投与
B ビタミンB12の投与
C 葉酸の投与
D 副腎皮質ステロイドの投与
E 抗腫瘍剤による化学療法
問題11
肥満症治療に対する食事療法として間違っているものはどれか.1つ選べ.
A 低エネルギー食,あるいは超低エネルギー食を用いる.
B ビタミン・微量ミネラルは十分量補充する.
C 蛋白質は制限する.
D フォーミュラ食は有用である.
E 肥満外科治療後は,栄養障害やリバウンドを予防するような栄養管理が必要である.
問題12
糖尿病の食事療法において,摂取エネルギー量を決定するために必要な情報はどれか.1つ選べ.
A 性別
B 年齢
C 身体活動量
D 実測体重
E ストレス係数
問題13
脂質異常症の食事療法として適切なものはどれか.1つ選べ.
A BMI 25 kg/m2を維持する摂取エネルギー量とする.
B 摂取カロリー中の炭水化物エネルギー比率を増やす.
C 摂取カロリー中の飽和脂肪酸エネルギー比率を増やす.
D 摂取カロリー中の蛋白質エネルギー比率を減らす.
E n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やす.
問題14
高尿酸血症に対する栄養療法において特に重視されるのはどれか.1つ選べ.
A 適正なエネルギー摂取
B プリン体の過剰摂取制限
C フルクトースの過剰摂取制限
D 飲酒制限
E 十分な飲水
問題15
以下のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.
A 腎疾患患者では,低蛋白・高カロリーが好ましく,高齢者であっても積極的に治療用特殊食品を使用して腎機能悪化を抑制するべきである.
B 血清カリウム高値の際は,代謝性アシドーシスの評価も行い,その補正を行うことにより血清カリウム値の改善も期待できる.
C 腎機能の悪い患者は体液過剰になりやすく,飲水制限が好ましい.
D 腎疾患患者の周術期(特に術後)には,高カリウムや高リン血症の予防や腎機能改善効果を目指して,蛋白制限を積極的に行っていくべきである.
E 腎疾患患者では,塩分摂取は少なければ少ないほど良い.
問題16
膵内外分泌機能を評価するのに有用でないものはどれか.1つ選べ.
A 血清膵アミラーゼ・リパーゼ値
B 脂肪便の有無
C pancreatic function diagnostant(PFD)試験
D グルカゴン負荷試験
E 血清アルブミン値
問題17
36歳,男性.Crohn病のため度重なる手術を受け,短腸症候群となり中心静脈栄養を行っていたが,最近,脱毛,口や目の周囲に丘疹,味覚や嗅覚の異常を認めるようになった.欠乏していると考えられるものはどれか.1つ選べ.
A 必須脂肪酸
B 亜鉛
C セレン
D マグネシウム
E 銅
問題18
以下のうち,適切なものはどれか.1つ選べ.
A 一般的な生活習慣ではビタミンD不足に陥ることが多い.
B ビタミンB12はI型コラーゲンの成熟に必要な補酵素である.
C ビタミンKの不足は腸管からのカルシウム吸収を低下させる.
D 乳製品からのカルシウムの過剰摂取は心筋梗塞のリスクを高める.
E 骨折抑制のためには1日400単位のビタミンD補給が推奨される.
問題19
COPDの栄養状態について正しいものはどれか.1つ選べ.
A COPDは肺の炎症性疾患であるので,全身併存症としての栄養障害は頻度が少ない.
B COPDは運動が大切なので,その効果を上げるために運動後すぐ食事をとるとよい.
C 米国静脈経腸栄養学会はCOPDの栄養治療の成分組成は脂質が多いものを推奨している.
D 肺が過膨張になっているCOPDでは,分食が勧められる.
E 栄養剤も薬物同様副作用に注意すべきであるが,味は我慢して摂取してもらう.
問題20
肝硬変における就寝前捕食療法(LES)について,誤りはどれか.1つ選べ.
A 倦怠感などの自覚症状が改善する.
B 非蛋白呼吸商が0.85未満の症例が適応である.
C 目標とする総投与カロリーに約200 kcalの軽食を上乗せする.
D 肝不全用経腸栄養剤の併用は栄養素の燃焼比率の改善に有効である.
E 肥満や耐糖能の悪化に注意する.
問題21
急性期栄養療法において正しいものはどれか.1つ選べ.
A 下痢を有効に利用することで水分出納を容易にしようとする.
B 吸収が不安定な経腸栄養よりも出納が確実にわかる経静脈栄養を重視する.
C 全身性の効果を期待するのではなく,下痢や便秘の抑制を目的とする.
D 重症病態における蘇生が完了するまで経腸栄養は行わない.
E 急性期栄養療法を進めるうえで一番の問題は下痢である.
問題22
75歳の男性.4カ月前より,易疲労感を認め,2カ月前より食欲不振,少しずつ経口摂取不良となり,来院.膵体部がんと診断された.身長170 cm,体重53 kg(平常時:59 kg),浮腫なし,筋力低下あり,Hb 11.8 g/dL,Alb 2.4 g/dL,CRP 5.1 mg/dLであった. この患者の現在までの病態について誤っているのはどれか.1つ選べ.
A マラスムス
B クワシオルコル
C サルコペニア
D 飢餓
E 悪液質
問題23
2010年度から始まった栄養サポートチーム加算に専任の職種として必要でないのはどれか.1つ選べ.
A 医師
B 臨床検査技師
C 看護師
D 薬剤師
E 管理栄養士
問題24
摂食嚥下リハビリテーションにおける代償的アプローチはどれか.2つ選べ.
A 構音訓練
B 嚥下体操
C 口腔ケア
D 下向き嚥下
E 食物形態の調整
問題25
以下の選択肢のなかから正しいものをすべて選べ.
A 加齢とともに血清アルブミン値は低下する.
B 加齢とともに消化吸収能が低下する.
C 高齢者低アルブミン血症の原因は魚由来の蛋白質摂取の低下による.
D 鶏卵のプロテインスコアは低い.
E 低アルブミン血症の高齢者は脳梗塞発症率が高い.
問題26
84歳女性,脳梗塞後遺症による摂食嚥下障害に対してPEG造設が行われた.バルーン・チューブ型のカテーテルが留置された.その後順調な経過であったが,4カ月後に,胆汁,栄養剤の混じらない吐物を嘔吐し始めた.胃瘻カテーテルはきつく回転が困難であった.考えられる病態を1つ選べ.
A 胃瘻カテーテルの腹腔内逸脱
B バンパー埋没症候群
C ボールバルブ症候群
D イレウス(腸閉塞)
E 肺炎
問題27
以下の栄養剤のうち,在宅で胃瘻など経管栄養を使用する時に在宅成分栄養経管栄養法指導管理料を算定できるものはどれか.1つ選べ.
A ラコール®
B ツインライン®
C エンシュア®
D エネーボ®
E いずれでも算定できない
問題28
高齢者の誤嚥性肺炎に関連して誤っているものはどれか.1つ選べ.
A 50歳台から誤嚥性肺炎の発症の割合が増え始める.
B 胃からの逆流による誤嚥では重症化しやすい.
C 反復嚥下テスト2回以下では嚥下障害ありと考える.
D 口腔ケアは誤嚥性肺炎の予防に効果がある.
E 誤嚥性肺炎を起こした高齢者には栄養目的に胃瘻が必須である.
問題29
認知症患者への栄養について,正しいものはどれか.1つ選べ.
A 認知症が進行したので,誰にも相談することなく栄養を中止した.
B 認知症患者への栄養療法は,必ず行うべきである.
C 生存期間の延長は,認知症であっても最も大切である.
D 人工的水分栄養療法に関する法的整備は必要である.
E 認知症患者なので,栄養治療は行うべきではない.
(解答は本誌掲載) |