特集の理解を深めるための28題
問題1
気管支喘息発作の治療で正しい項目はどれか.2つ選べ.
A β2刺激薬の吸入を20分ごとに繰り返し吸入する.
B 抗IgE抗体を皮下注射する.
C 抗コリン薬をネブライザーで吸入する.
D 吸入ステロイド(ICS)を増量する.
E ステロイド投与はゆっくりと点滴静注で行う.
問題2
吸入ステロイド薬(ICS)について正しいものを1つ選べ.
A 毎日軽い喘息発作を起こしている未治療の患者では,低用量から治療を開始する.
B 妊娠中も喘息治療の第一選択となる.
C 粒子径が大きい程効果が高い.
D 発作が収まったらできるだけ早く中止する.
E 定量噴霧式吸入器(MDI)製剤は,吸気流速が遅くても吸入でき,特に吸入指導をしなくても吸入が可能で高齢者に向いた吸入器である.
問題3
アレルギー性鼻炎と喘息の両者に対して単剤で有効性を示すのはどれか.1つ選べ.
A 吸入ステロイド(ICS)
B 長時間作用性β2刺激薬(LABA)
C テオフィリン徐放製剤
D ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
E 長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
問題4
喘息治療におけるオマリズマブ(ゾレア®)の選択基準で不適切なものを選べ.
A 総IgE値は30~1,500 IU/mLの範囲にある.
B 通年性吸入抗原に陽性である.
C 治療ステップ4の治療にもかかわらず日常生活に支障がある.
D 定期通院はしていないが,しばしば発作のため救急受診をする.
E 週1回以上,日常生活が障害される小児の患者.
問題5
65歳男性,COPDで加療が必要である.数分歩くと息切れのため立ち止まってしまう.% FEV1は42%であった.GOLDで推奨される第一選択薬はどれか.2つ選べ.
A 短時間作用性抗コリン薬(SAMA)単剤
B 短時間作用性β2刺激薬(SABA)単剤
C ICS+LABA
D LABA単剤
E LAMA単剤
問題6
COPD安定期の薬物療法について,正しいものを1つ選べ.
A 中等症以上の第一選択薬は,短時間作用性気管支拡張薬である.
B LAMA薬は,単剤で使用しないほうがよい.
C 中等症以上の治療として,LABAは推奨されていない.
D LAMAは,増悪予防効果がある.
E LAMAの気管支拡張効果は,LABAより弱い.
問題7
安定期COPD治療におけるβ2刺激薬の位置づけについて誤っているものを1つ選べ.
A LABAは,COPD患者の症状,QOLおよび運動耐容能の改善,増悪の予防に有用である.
B SABAは,すべての病期のCOPD患者に対し,体動時などの必要時の使用が推奨される.
C 最新のガイドライン(第4版)では,LABAは,LAMAが使用できない場合の第二選択あるいは追加薬として考慮すべき薬剤であるとされている.
D インダカテロールは,作用発現までの速さおよび持続時間の長さによる優れた臨床効果により,従来のLABAを凌駕し,ウルトラLABAとも称される.
E 吸入薬の使用が困難な高齢者に対しては,貼付剤であるツロブテロール(ホクナリン®テープ)が臨床的に有用であることが多い.
問題8
COPD患者において吸入ステロイド薬(ICS)投与が適応とならないのはどれか.1つ選べ.
A 過去1年の間に,COPD急性増悪で入院治療を受けた患者.
B GOLD stage 3程度の重症気流閉塞があるが,過去に増悪を発症したことのない患者.
C LAMAが禁忌で使用できない患者.
D たびたび咳嗽,喀痰,喘鳴を訴えて救急外来を受診する患者.
E 喘息-COPDオーバーラップ症候群が疑われる患者.
問題9
COPDの治療として正しいものを2つ選べ.
A テオフィリンの気管支拡張薬作用に必要な有効血中濃度は10~20 μg/mLである.
B 喀痰調整薬やマクロライド系抗菌薬は,COPDの急性増悪を抑制する可能性がある.
C 重症例や栄養障害が高度なCOPD患者のみに栄養療法を行う.
D 高炭酸ガス血症を伴う場合は呼吸商の小さい蛋白質を主体とする栄養剤の投与を考慮する.
E リンの補給は最小限とする.
問題10
COPDの増悪について正しいのはどれか.2つ選べ.
A COPDの予後を悪化させる.
B SAMAの吸入が第一選択である.
C 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の成功率は約30%である.
D ICSの増量が有効である.
E 増悪の予防にインフルエンザワクチンは有効である.
問題11
以下のうち正しいものを2つ選べ.
A オセルタミビルとザナミビルは,作用機序が同じであり,使い分ける必要はない.
B オセルタミビルは,腎機能低下者に投与する場合には減量が必要である.
C 抗インフルエンザ薬は,発病早期に投与することが望ましい.
D 抗インフルエンザ薬は,妊婦に投与してはならない.
E オセルタミビルは,RNAポリメラーゼ阻害薬である.
問題12
以下で正しいものを1つ選べ.
A HIV感染者のニューモシスチス肺炎は,非HIV感染者のそれと比較して,急激に進行し予後が不良である.
B サイトメガロウイルス肺炎は,確定診断を得てから治療を開始することが多い.
C ST合剤は,腎機能障害を伴わない血清クレアチニン値の上昇を認めることがある.
D 治療効果判定が困難になるため,ニューモシスチス肺炎とサイトメガロウイルス肺炎の治療を同時に行うべきではない.
E ガンシクロビルの副作用としては腎機能障害が,ホスカルネットでは骨髄抑制が問題となることがある.
問題13
NHCAPガイドラインの入院管理を必要とするが耐性菌リスクがないB群において,エンピリックに使用する抗菌薬の選択に含まれていないのはどれか.1つ選べ.
A セフトリアキソン(CTRX)
B スルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC)
C パニペネム/ベタミプロン(PAPM/BP)
D スルファメトキサゾール・トリメトプリム(SMX/TMP)
E レボフロキサシン(LVFX)
問題14
膿胸の穿刺液所見として不適当なものはどれか.1つ選べ.
A pH 7.1
B 糖80 mg/dL
C LDH 2,000 IU/L
D 細菌培養陰性
E ADA 100 IU/L
問題15
55歳男性.2カ月前から発熱,咳嗽が始まり,胸部X線所見で空洞が多数あり,喀痰から結核菌(RFP,INH,EB,PZAに感受性あり)を認めた.合併症として糖尿病が認められた.どの薬剤の組み合せでいつまで化学療法を行うか.1つ選べ.
A リファンピシン(RFP),イソニアジド(INH),エタンブトール(EB)を9カ月間
B RFP,INH,EB,ピラジナミド(PZA)を2カ月,その後RFP,INH 4カ月間
C RFP,INH,PZA,EBを2カ月間,その後RFP,INHを7カ月間
D RFP,ストレプトマイシン(SM),PZA,EBを2カ月間,その後RFP,EBを9カ月間
E RFP,INH,PZA,EBを2カ月間,その後RFP,EBを10カ月間
問題16
42歳の女性.小児期に慢性副鼻腔炎の手術歴がある.数年前から咳嗽,喀痰と,時に喘鳴が出現するようになった.1年前から近医で治療されていたが最近,咳嗽,喀痰が増強し,労作時呼吸困難が出現してきたため来院した.胸部の聴診ではcoarse cracklesとrhonchiが聴取され,胸部X線写真では両側びまん性の粒状影が認められた.喀痰からはムコイド型の緑膿菌が検出され,大気下の動脈血ガス分析ではpH 7.42,PaO2 74 torr,PaCO2 40 torrであった.肺の高分解能CTスキャンでは小葉中心性の粒状病変が特に胸膜下の肺の周辺領域に多発し,両側下葉では細気管支-気管支の中等度の拡張が認められた.
この患者に対する初期治療として適切なものはどれか.1つ選べ.
A プレドニゾロン60 mg/日 内服
B シクロホスファミド100 mg/日 内服
C プロピオン酸フルチカゾン800 μg/日 吸入
D エリスロマイシン600 mg/日 内服
E ST合剤2錠/日 内服
問題17
52歳の女性.特記すべき既往歴のない非喫煙者であった.数週間続く胸背部の鈍痛を訴えて来院した.胸部X線撮影にて右上肺野末梢に2 cm大の結節影を認めた.躯幹部CT検査では右肺上葉末梢に2 cm大の結節と両肺に多発小結節を認めたが,リンパ節腫大は認めず,腹部臓器にも異常はなかった.しかし痛みの部位に一致する胸椎10番に骨融解像を認めた.気管支鏡での右肺上葉結節の病理診断結果から,肺腺癌,EGFR遺伝子変異陽性,と診断された.脳MRI検査では異常は認めなかったが,骨シンチグラフィで胸椎10番に集積を認めた.
この患者の治療で正しくないものを1つ選べ.
A シスプラチン+エトポシド併用療法
B エルロチニブ内服療法
C シスプラチン+ペメトレキセド併用療法
D カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法
E 胸椎10番への放射線照射
問題18
患者へ悪い知らせを伝える方法の一つであるSPIKESにおいて,不適切なものはどれか.
A 患者の感情について探索する.
B 初診の患者へ自己紹介をする.
C 医師の感情について患者へ説明する.
D 病状に関する患者の認識を把握する.
E 治療の選択肢を挙げ,医師の推奨を基に話し合う.
問題19
特発性間質性肺炎(IIPs)の治療について正しいものはどれか.1つ選べ.
A 特発性肺線維症(IPF)において,有効性が確立した治療薬はない.
B 特発性肺線維症の治療の第一選択薬はステロイド薬である.
C 非特異性間質性肺炎の治療の第一選択薬はピルフェニドンである.
D 特発性器質化肺炎では,ステロイド薬が第一選択薬である.
E 急性間質性肺炎はステロイド薬が著効する.
問題20
73歳,男性.1年前に,特発性肺線維症(IPF)と臨床的に診断された.初診時,安静時動脈血酸素分圧(PaO2)78 Torr,6分間歩行時の経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)93%,予測肺活量(%VC)78%にて,無治療で定期観察されていた.2カ月前より労作時呼吸困難が出現,PaO2 71 Torr,6分間歩行時SpO2 88%,%VC 73%と臨床所見の悪化がみられた.胸部高解像度CT上,一部®胞の拡大は認められたが,新たな陰影の出現は認めなかった.感染,心不全等は否定され,原病の進行と判断された.この時点で積極的に推奨されない対応はどれか.2つ選べ.
A 特定疾患の申請
B ステロイド投与
C 免疫抑制薬投与
D ピルフェニドン投与
E N-acetylcysteine(NAC)吸入
問題21
膠原病に伴う間質性肺炎について間違っているものはどれか.1つ選べ.
A 皮膚筋炎/多発性筋炎では抗ARS抗体症候群に関連する間質性肺炎のとき,抗核抗体は細胞質型(cytoplasmic pattern)を呈することが多い.
B 関節リウマチに関連する間質性肺炎では,通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia:UIP)パターンが最も多く,治療反応性が乏しいことが多い.
C 強皮症に伴う間質性肺炎は致命的になりうるため,1 mg/kg程度の高用量ステロイド使用が推奨されている.
D 筋症状を欠く皮膚筋炎(clinically amyopathic dermatomyositis:CADM)の診断では皮膚潰瘍,フェリチン高値,抗核抗体でのspeckled pattern陽性が参考になる.
E 経口シクロホスファミドを使用する際は発がん性や出血性膀胱炎が問題となることがあり,近年静注シクロホスファミドが好まれることが多い.
問題22
過敏性肺炎について正しいのはどれか.1つ選べ.
A 急性過敏性肺炎は喫煙者に多い.
B KL-6やSP-Dの上昇は軽度である.
C 鳥関連過敏性肺炎の原因抗原はトリコスポロンである.
D ステロイドと免疫抑制薬の併用が治療の第一選択である.
E 夏型過敏性肺炎で再燃を繰り返す症例では,改装と転居を考慮する.
問題23
重症肺炎に伴うARDS患者に対して行うべきではないのはどれか.1つ選べ.
A 起炎菌に対して有効な抗菌薬の投与
B 呼吸状態に応じた人工呼吸療法
C 合併したショックに対する大量輸液
D 発症後2日間の大量ステロイド投与
E 合併した播種性血管内凝固(DIC)に対する抗凝固療法
問題24
サルコイドーシスの治療に関して正しいものを2つ選べ.
A サルコイドーシスの肺病変が確認された場合,無症状であってもプレドニゾロン0.5 mg/kg/日から治療を開始して漸減する.
B メトトレキサート(MTX)は,肝機能障害などの副作用が現れなければ,妊娠予定であっても継続服薬することに問題ない.
C サルコイドーシスの症状は肉芽腫による臓器障害の症状によるものであり,関節痛,胸痛,疲れなどの全身症状はたまたま患者が訴える不定愁訴と考えて治療対象とはしない.
D 高度房室ブロックを呈するサルコイドーシス心臓病変症例でペースメーカーによって症状がまったく治まっていても,ステロイドや免疫抑制薬で治療を行ったほうがよい.
E 神経麻痺(神経病変),骨の痛み(骨病変),鼻腔閉塞(上気道病変),涙腺腫脹(涙腺病変)などで患者のQOLが損なわれている場合には,症状に応じた量でステロイド治療を開始して漸減する.
問題25
20歳,男性.大学の水泳部の夏合宿に参加.5日間のきつい練習も問題なく終了し,打ち上げで大量の飲酒と初めての喫煙をした.合宿終了後5日目より38℃の発熱,咳が出現し,徐々に息苦しさが増強したため,発熱より3日目(合宿終了8日目)に救急外来受診.
脈拍:94回/分.呼吸数:23回/分.SpO2:86%.胸部X線:両側びまん性すりガラス陰影,両側下肺野1~1.5 cmの線状陰影,肋骨横隔膜角:鈍.心電図:洞性頻脈のほか異常なし.末梢血白血球数:8,200/μL,分画異常なし.CRP:4.6 mg/dL.
最も疑わしい疾患はどれか.
A 非定型肺炎
B 過敏性肺炎
C サルコイドーシス
D 急性好酸球性肺炎
E 癌性リンパ管症
問題26
シロリムスの副作用として最も頻度の高いものはどれか.1つ選べ.
A 薬剤性肺障害
B 脂質異常症
C 口内炎
D ざ瘡
E 頭痛
問題27
42歳女性.2年前より労作時呼吸困難が出現し,徐々に進行してきたため,半年前に近医を受診した.心音はII pの亢進を認め,胸部単純X線写真では肺野に異常はなく,心陰影の拡大と左第2弓の突出を認めた.心臓超音波検査では,心室中隔の圧排が認められ,三尖弁圧較差が52 mmHgと上昇していた.右心カテーテル検査では平均肺動脈圧が38 mmHgと上昇しており,呼吸器疾患,心疾患,膠原病,門脈圧亢進症などは伴っておらず,肺動脈性肺高血圧症の診断にてシルデナフィル20 mg 3錠分3で処方開始となった.自覚症状は一時的に改善をみたものの,再度増悪してきたため,紹介受診となった.
今後の治療に関して検討するために最も重要な検査はどれか.
A 心臓超音波検査
B 右心カテーテル検査
C 心肺運動負荷試験
D 胸部造影CT
E 肺換気血流シンチグラフィ
問題28
生物学的製剤と薬剤性肺障害の診断・治療について,正しいものを1つ選べ.
A 生物学的製剤による薬剤性肺炎の発症頻度は既存の間質性肺炎の程度が軽いほうが発症頻度も低い.
B 感染性肺炎も疑われた場合は,感染の増悪を避けるため気管支肺胞洗浄(BAL)は避けたほうがよい.
C 被疑薬の再投与は薬剤性肺炎の診断確定のために必ず行う.
D 家族歴は薬剤性肺障害の診断に重要であるため,家族が同種同効薬を使用していないかを詳しく聴取する.
E 発症以前との画像比較が有用なため,無症状でも生物学的製剤使用前に胸部画像検査を行う.
(解答は本誌掲載) |