HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧51巻9号(2014年9月号) 特集の理解を深めるための28題
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特集の理解を深めるための28題


問題1

53歳男性,健診で心雑音を指摘され受診.自覚症状は特にない.聴診所見でI音の大きな分裂と胸骨左縁,右縁,心尖部でLevine3/6の収縮期雑音を聴取するが心尖部が最強であった.血圧130/70 mmHg,脈拍74/分,整.これまで定期的に健診は受けていないが学校健診では異常を指摘されたことはない.
収縮期雑音の鑑別に有用な診察手技と診断の組み合わせで正しいものはどれか.1つ選べ.

A 鎖骨の聴診で雑音を聴取せず―僧帽弁逆流
B 鎖骨の聴診で雑音を聴取―僧帽弁逆流
C 鎖骨の聴診で雑音を聴取せず―大動脈弁狭窄
D 鎖骨の聴診で雑音を聴取―大動脈弁狭窄
E 上記のいずれでもない.


問題2

胸痛を訴える患者の鑑別疾患のなかで,緊急性が高くないものはどれか.1つ選べ.

A 急性冠症候群
B 急性大動脈解離
C 肋軟骨炎
D 肺塞栓症
E 緊張性気胸


問題3

動悸を訴える患者さんに関して間違っているものはどれか.1つ選べ.

A 突然始まり,突然停止する頻脈の場合,発作性上室性頻拍が最も疑われる.
B 動悸にめまい・失神発作を伴う場合は,心房細動は除外される.
C 動悸発作が記録されない時には,長時間あるいは植込み式の心電図が有効である.
D 心悸亢進では,心臓以外の動悸の原因をまず考える.
E 動悸の鑑別には,非発作時の心電図も診断に役立つ.


問題4

1月中旬,23時に68歳女性が「息苦しい」ため,救急外来に来院した.車椅子に,もたれかかり,顔面蒼白で肩で息をしており,喘鳴が聴こえた.途切れ途切れに会話はできた.意識は明瞭であった.5日前までは平常の生活(外出,階段の昇降,小走り,家事,入浴)ができていた.5日前から心窩部に不快感があり,悪心を伴っていた.呼吸時の痛みはなかった.持続は15分くらいで,繰り返していた.触診で手指は冷たく湿っていた.脈拍は微弱で脈拍数は56回/分,整であった.呼吸数20回/分.頸静脈怒張あり.III音を認めた.
どの病態が最も疑われるか.1つ選べ.

A 慢性心不全の急性増悪
B 急性冠症候群(acute coronary syndrome)
C 大動脈解離
D 肺血栓塞栓症
E 緊張性気胸


問題5

失神に関する記載のうち,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A 一過性脳虚血発作は,失神発作の原因の一つである.
B 失神発作では,後遺症なく数分で自然に意識が回復する.
C 失神の原因で最も予後不良とされるのは心原性失神である.
D 失神の原因で最も多くを占めるのは血管迷走神経性失神である.
E 患者本人のみに問診を行うのではなく,目撃者からの情報収集も行う.


問題6

健康診断で,V1誘導で高いR波もしくはR/S>1を呈する53歳男性の心電図をみた.問診では,心筋梗塞として加療されたことはなく胸痛の既往もないという.まず行うべき正しい対応はどれか.1つ選べ.

A 冠動脈造影を施行する.
B 肺動脈性肺高血圧症と診断し薬物療法を開始する.
C 正常亜型であり経過観察とする.
D 心エコー図検査を行う.
E 運動負荷心電図検査を行う.


問題7

重症急性肺塞栓症で最も高率かつ長期間にわたり認める心電図異常はどれか.1つ選べ.

A 肺性P波
B S1Q3T3パターン
C 低電位
D 前胸部誘導の陰性T波
E 時計方向回転


問題8

脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP),トロポニン測定について正しいものはどれか.1つ選べ.

A これらバイオマーカの測定のみで,心不全や心筋梗塞の診断が可能である.
B NT-proBNPにも生理活性がある.
C BNPの数値は腎機能,年齢の影響を受けない.
D 心筋梗塞においてトロポニンは従来法でも超急性期から上昇する.
E トロポニンは重症心不全患者で検出されることがある.


問題9

心エコー図について正しいのはどれか.1つ選べ.

A 通常の断層心エコー図心尖4腔像で左室は左側に描出される.
B 左室後壁~心尖部にかけて,全周性にわたり心嚢液貯留が認められる場合,貯留量はおよそ500 mLである.
C 米国心エコー図学会(ASE)の推奨する壁運動判定のためのsegment数は19である.
D 僧帽弁狭窄症の重症度で高度狭窄の弁口面積は1.0 cm2以下である.
E 左房粘液腫の付着部は,心房中隔右房側に多い.


問題10

胸部単純X線写真(正面像)について正しいものはどれか.2つ選べ.

A 成人の心臓胸郭比は50%までは正常としてよい.
B 小児の心臓胸郭比は50%までは正常としてよい.
C 通常,立位では肺血管は上肺野側が太く描出される.
D 正常例では,右心室は心陰影ラインの構成要因である.
E 心横隔膜角には脂肪が沈着しやすく,心陰影が不明瞭となる.この現象はシルエットサインと呼ばれる.


問題11

急性冠症候群を疑う心電図所見として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A 新規左脚ブロックの出現
B T波増高
C 陰性U波
D V1のR波増高
E QRS幅短縮


問題12

ST上昇型急性心筋梗塞における初期診療に関して誤っているのはどれか.2つ選べ.

A PCIを選択した場合,first medical contactから180分以内に初回バルーンを拡張することが目標である.
B Killip分類は聴診と胸部X線写真で判断する.
C 純後壁梗塞では,心電図で背側部誘導(V7~V9誘導)の記録が診断に有用である.
D クレアチンキナーゼ(CK)は発症後3~8時間で上昇する.
E 冠動脈ステント留置を行うことが予想される患者では,投与禁忌がない場合,事前のアスピリンとチエノピリジン系抗血小板薬の2剤併用療法が推奨される.


問題13

74歳の男性.2週間前より持続する動悸と労作時息切れを主訴に来院された.12誘導心電図で頻脈性心房細動(心拍数130回/分)を認めた.胸部単純写真では,心拡大を認め,心臓超音波検査では左室駆出率(LVEF)の低下を認めた.
初期治療として最も不適切なのはどれか.1つ選べ.

A ジゴキシン
B アミオダロン
C ランジオロール持続注射
D ピルシカイニド
E 抗凝固療法


問題14

カルシウム拮抗薬のベラパミル静注では治療できない不整脈はどれか.1つ選べ.

A QRS幅の狭い頻拍として来院した房室結節回帰性頻拍症
B QRS幅の狭い頻拍として来院した房室回帰性頻拍症(Wolff-Parkinson-White:WPW症候群)
C QRS幅の狭い頻拍として来院した房室伝導比2:1の心房粗動
D 動悸を主訴に来院した心房細動によってQRS幅の狭い頻脈をきたした症例
E 心房細動と顕性WPW症候群が合併し,QRS幅の広いRR間隔の不整なpre-excited atrial fibrillation(いわゆるpseudo ventricular tachycardia)を呈している患者


問題15

持続性心室頻拍の薬物治療に関する記載で正しいのはどれか.1つ選べ.

A アミオダロン静注薬は即効性の高い薬剤である.
B アミオダロン静注薬の副作用として頻度が高いのは間質性肺炎である.
C ニフェカラントは心機能抑制作用のない薬剤である.
D ニフェカラントの副作用として頻度が高いのは徐脈である.
E リドカインは持続性心室頻拍に対する第一選択薬である.


問題16

急性心不全における評価・治療について正しいものはどれか.1つ選べ.

A 急性心不全における血圧上昇は,予後不良の因子である.
B 脈圧の意義はいまだに不明な点が多いため診療上役に立たない.
C クリニカルシナリオ分類は,治療中の病態変化の把握に有用である.
D Nohria/Stevenson分類による病態把握には,血圧測定も必要である.
E 初期治療において,後負荷軽減のため可及的速やかに血圧低下させる.


問題17

急性肺血栓塞栓症(以下,本症)に関する下記の記述のうち正しいものはどれか.1つ選べ.

A マルチスライス造影CTでは,本症の塞栓源の検索はできない.
B Dダイマーは,本症を診断するための特異度が高い検査である.
C 肺動脈造影検査は,本症の確定診断のために必ず行う必要がある.
D 心エコーにて,本症の右心負荷の指標である肺動脈圧の推定ができる.
E 肺換気血流シンチグラフィは,本症の急性期に多く用いられる特異度の高い検査である.


問題18

一般的には緊急降圧の必要がない状態はどれか.1つ選べ.

A 急性左心不全,血圧200/130 mmHg
B 急性大動脈解離,血圧150/80 mmHg
C 血栓溶解療法を行わない超急性期脳梗塞,血圧200/100 mmHg
D 意識障害を伴う若年者の急性糸球体腎炎,血圧150/110 mmHg
E 妊娠24週,血圧170/130 mmHg


問題19

狭心症の診断・評価に用いられる検査に関して正しいものはどれか.2つ選べ.

A 安静時心電図でのST低下所見は虚血性心疾患の存在を示す.
B 安定狭心症患者において,高感度トロポニン検査は,心イベントリスクの層別化に有用であるという報告が多い.
C 冠攣縮性狭心症の診断において,Holter心電図にて自然発作時にST上昇を認めた症例においては,次に薬物負荷を用いた心臓カテーテル検査が必要である.
D 薬物治療で症状がコントロールされている安定狭心症においては,負荷心筋シンチグラフィ検査による虚血の評価は必要ない.
E 冠動脈CT検査において,冠動脈の強い石灰化病変では,通常狭窄の判断は困難である.


問題20

急性冠症候群で冠動脈ステント留置後における,アスピリンとクロピドグレルによる2剤抗血小板療法(DAPT)は,基本的に何カ月間継続することが望ましいか.正しいものを1つ選べ.

A 1カ月間
B 3カ月間
C 6カ月間
D 12カ月間
E 24カ月間


問題21

冠動脈疾患の二次予防において,正しいものはどれか.1つ選べ.

A メタボリックシンドロームには抗肥満薬を投与する.
B 古典的冠動脈危険因子の管理は再発予防に無効である.
C LDLコレステロールの管理目標値は140 mg/dL以下である.
D 冠動脈疾患の二次予防に心臓リハビリテーションは有用である.
E 再喫煙に対する禁煙指導は,精神的ストレスを高めるため行わない.


問題22

多発性心室性期外収縮を有する心筋梗塞後患者に対して生命予後を改善する抗不整脈薬はどれか.2つ選べ.

A フレカイニド
B メキシレチン
C メトプロロール
D アミオダロン
E ベプリジル


問題23

83歳の男性.高血圧症と糖尿病で近医より処方を受けている.朝から食欲がなく,活気がないため家族が心配して往診を依頼した.検脈で徐脈を指摘され,精査のため紹介搬送となった.
来院時の血圧94/50 mmHg,SpO2 93%(room air),体温36.6℃,心電図を図1に示す.以下の選択肢で正しいものはどれか.1つ選べ.

図1 心電図
V36 は右側胸部誘導(通常とは左右対称の右胸部)

A 心電図は徐脈性心房細動で,高齢者に多く心配はない.
B 心電図は洞調律で,上室性期外収縮がみられ,心配はない.
C 心電図は洞性徐脈で,高齢者に多く心配はない.
D 心電図は洞調律で,完全房室ブロックを合併している.
E 心電図は洞調律で,一過性に2:1房室ブロックを呈している.


問題24

心房細動の薬物療法に関して誤りはどれか.1つ選べ.

A レートコントロール(心拍数調整治療)を目的とした投薬は必須である.
B 運動時のレートコントロールに対しては,ジギタリス製剤の有効性はβ遮断薬と比較して低い.
C 器質的心疾患を有さない症例でのレートコントロール目標は自覚症状がなければ安静時心拍数を110拍/分以下とするのが妥当である.
D 抗不整脈薬によるリズムコントロール治療はレートコントロールと比較して発作性心房細動症例のQOLの改善に有効である.
E 抗不整脈薬が無効な心房細動患者ではカテーテルアブレーションが有効なことがある.


問題25

心房細動を有する患者に対する脳塞栓症予防を考えるとき,最もリスクが高いのはどれか.1つ選べ.

A 高齢者
B 心不全
C 糖尿病
D 一過性脳虚血発作の既往
E 高血圧


問題26

慢性心不全患者のリハビリテーションについて誤っているものはどれか.1つ選べ.

A 1カ月前に肺うっ血のため入院歴があり,現在は症状のない中等度の大動脈弁閉鎖不全症の患者は運動療法の適応である.
B 安定した慢性心不全患者の運動強度の目安はBorg指数で11~13のレベルである.
C 運動療法は慢性心不全に併発する抑うつを改善する.
D ICD植え込み後の患者では運動療法は禁忌である.
E 心不全患者には水泳は推奨されない.


問題27

フロセミドの副作用はどれか.1つ選べ.

A 高Na血症
B 高K血症
C 下腿浮腫の増悪
D 肺動脈圧の上昇
E 腎機能障害


問題28

左室駆出率が低下した慢性心不全患者の生命予後を改善するエビデンスを有する薬剤はどれか.2つ選べ.

A ループ利尿薬
B ジギタリス
C α遮断薬
D β遮断薬
E ACE阻害薬


(解答は本誌掲載)