HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧51巻6号(2014年6月号) 特集の理解を深めるための29題
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特集の理解を深めるための29題


問題1

炎症性腸疾患の疫学について正しいものはどれか.2つ選べ.

A 近年,本邦における潰瘍性大腸炎の患者数は増加し続けている.
B 近年,本邦におけるCrohn病の患者数は減少傾向にある.
C 炎症性腸疾患の罹患率・有病率は,欧米では少ない.
D 禁煙すると,潰瘍性大腸炎を予防できる.
E 喫煙は,Crohn病のリスク因子である.


問題2

ゲノムワイド関連研究でCrohn病でのみ関連が認められているCrohn病特異的疾患関連遺伝子はどれか.2つ選べ.

A NOD2 遺伝子
B JAK2 遺伝子
C IL23R 遺伝子
D ATG16L1 遺伝子
E HNF4A 遺伝子


問題3

潰瘍性大腸炎とCrohn病の免疫異常に関する研究について,正しいものはどれか.1つ選べ.

A 報告されている疾患感受性遺伝子は両疾患でまったく異なる.
B Crohn病はTh2型の疾患である
C 潰瘍性大腸炎はTh1型の疾患である.
D 両疾患でIL-17を産生するTh17の関与が注目されている.
E 腸内細菌は病態に無関係である.


問題4

図1の内視鏡像と生検像から正しい診断を1つ選べ.

図1 内視鏡像(a)と生検像(b)

A コラーゲン性大腸炎
B 感染性腸炎や薬剤起因性腸炎などのnon-IBD
C 潰瘍性大腸炎
D 腸管Behçet病
E 放射線性大腸炎


問題5

Crohn病について正しいものはどれか.2つ選べ.

A 縦走潰瘍を呈する.
B 排便回数は重症度判定に重要である.
C 治療抵抗性の時にはサイトメガロウイルス(CMV)感染の合併を考慮する.
D 壊死性膿皮症の合併が多い.
E 肛門病変が腹部症状に先行することがある.


問題6

粘血便をきたすことが稀な疾患はどれか.2つ選べ.

A アメーバ性大腸炎
B 偽膜性腸炎
C カンピロバクター腸炎
D サルモネラ腸炎
E ビブリオ腸炎


問題7

次のうち,Crohn病に特徴的なX線所見として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A 敷石像
B 消化管の広範囲に認めるアフタ
C 連続性病変
D 縦走潰瘍
E 偏側性変形


問題8

19歳男性,1カ月前から血性下痢が出現.最近,6行/日と増悪したため初診となった.初診時腹痛,発熱はなかった.大腸内視鏡で横行状結腸~直腸にかけて図1に示す所見を認めた.まず行う治療はどれか.1つ選べ.

図1 内視鏡所見

A ステロイド
B 抗TNF-α製剤
C 血球成分除去療法
D 5-ASA製剤
E ステロイド注腸


問題9

小腸内視鏡検査に関する記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A カプセル内視鏡は鎮静下に実施する.
B カプセル内視鏡では瘻孔や壁外病変の評価も容易である.
C Crohn病ではカプセルの腸管内滞留リスクは低い.
D バルーン内視鏡では生検や内視鏡治療を行うことはできない.
E Crohn病ではバルーン内視鏡挿入に伴う腸管損傷や穿孔に注意する.


問題10

Crohn病の画像診断において正しいものはどれか.1つ選べ.

A CT enterographyは経口造影剤と経静脈造影剤を併用して造影CTスキャンを行う撮影方法である.
B CT enterographyでは,Crohn病による炎症を起こしている腸管壁は虚血になるため造影されない.
C CT enterographyでは,Crohn病では腸間膜に変化は見られない.
D MR enterographyはCrohn病患者で短期間に反復して検査することはできない.
E 体外式腹部超音波検査では潰瘍性大腸炎とCrohn病の鑑別は不可能である.


問題11

Crohn病の診療ガイドラインについて正しいものはどれか.2つ選べ.

A 軽症例の治療に5-ASA製剤を用いる.
B 寛解維持に経口ステロイドを用いる.
C 痔瘻の治療に抗TNF-α抗体薬を用いる.
D 腸管切除後に薬物療法は不要である.
E 腸管狭窄は可能な限り腸管切除を行う.


問題12

中等症の遠位型潰瘍性大腸炎に対する5-ASA製剤による治療として最も推奨されるものはどれか.1つ選べ.

A 通常量経口5-ASA製剤
B 高用量経口5-ASA製剤
C 5-ASA製剤注腸
D 高用量経口5-ASA製剤+5-ASA製剤注腸
E 5-ASA製剤坐剤


問題13

炎症性腸疾患におけるステロイド治療に関して正しい記載はどれか.1つ選べ.

A 潰瘍性大腸炎におけるステロイド治療は,維持療法にも有用である.
B 中等症のCrohn病では,ステロイド治療に先んじて,抗TNF-α抗体製剤による加療(Top-Down療法)を行うべきである.
C 潰瘍性大腸炎のステロイド治療において効果が不十分な際に,血球成分除去療法を併用すると有効なことも多い.
D 潰瘍性大腸炎のステロイドの大量静注療法では,効果が出るまで高用量を継続投与してよい.
E 炎症性腸疾患では罹患患者が若年者であるため,ステロイドの副作用について他疾患ほど留意しなくてよい.


問題14

潰瘍性大腸炎について正しいものはどれか.2つ選べ.

A 5年累積手術率は約20%である.
B サイトメガロウイルス再活性化を引き起こしていることがある.
C しばしばデスモイド腫瘍を合併する.
D 病変は通常腸管壁全層に及ぶ.
E 生物学的製剤使用の際は結核合併の鑑別が必須である.


問題15

炎症性腸疾患の治療におけるチオプリン製剤(AZA/6-MP)について正しいものはどれか.1つ選べ.

A 治療効果の発現は速やかで,寛解導入に有効である.
B 痔瘻や外瘻に対する治療効果はない.
C ステロイド漸減と寛解維持効果に優れる.
D 免疫抑制作用は強力でないため,ほかの治療薬との併用はあまり有用でない.
E 悪心,下痢,肝酵素作用上昇,骨髄抑制などの副作用は投与開始早期に出現することが多く,定期的な血液モニタリングは必ずしも必要ない.


問題16

潰瘍性大腸炎におけるタクロリムス治療について不適切なものはどれか.2つ選べ.

A タクロリムスの重篤な副作用として腎障害,感染症がある.
B タクロリムスを潰瘍性大腸炎に対して投与する場合,投与開始後2週間の目標血中トラフ濃度は5~10 ng/mLである.
C タクロリムスの潰瘍性大腸炎に対する保険適用は,中等症~重症の難治例(ステロイド抵抗性,依存性)である.
D タクロリムスは,マクロファージからのtumor necrosis factor(TNF)α産生を抑えることで免疫を抑制する.
E タクロリムス投与を受けている患者の約30%で振戦が認められる.


問題17

わが国において,炎症性腸疾患(Crohn病と潰瘍性大腸炎)治療に用いることができる生物学的製剤はどれか.2つ選べ.

A ベバシズマブ
B アダリムマブ
C トシリズマブ
D セツキシマブ
E インフリキシマブ


問題18

Crohn病で成分栄養剤が最も有用である病態はどれか.1つ選べ.

A 広範な活動性の小腸病変(縦走潰瘍多発)を有する小腸型Crohn病.
B 腹腔内膿瘍を有する小腸型Crohn病.
C 高度の肛門病変を有する小腸大腸型Crohn病.
D 頻回の下痢を有する大腸型Crohn病.
E 軽度の腸管狭小化を有する小腸型Crohn病.


問題19

回腸嚢炎の治療法について適切でないのはどれか.1つ選べ.

A メトロニダゾール投与
B シプロフロキサシン投与
C ステロイド強力静注
D 免疫調節薬投与
E 抗TNF-α抗体投与


問題20

Crohn病の肛門病変に関して誤っているものはどれか.1つ選べ.

A 裂肛は通常例に比べて幅が広く,肛門上皮を越えて裂創を形成する.
B 痔瘻では,瘻管の走行が複雑で多発することが特徴的である.
C Crohn病による痔瘻と通常型痔瘻の鑑別が困難なことが多い.
D 痔瘻癌を疑う病変の生検結果が陰性ならば痔瘻癌は否定的である.
E 潰瘍性大腸炎で痔瘻を発症することは稀ではない.


問題21

潰瘍性大腸炎の手術適応で多いのはどれか.1つ選べ.

A 狭窄
B 膿瘍
C 難治
D 重症
E 出血


問題22

Crohn病にみられない病態はどれか.1つ選べ.

A 難治性痔瘻
B 蛋白漏出性腸症
C 関節炎
D 胃の竹の節様所見
E 陰部潰瘍


問題23

潰瘍性大腸炎患者に合併するC. difficile 腸炎について正しいのはどれか.1つ選べ.

A 合併患者数は増加している.
B 抗菌薬投与を契機に発症する.
C 患者の多くは高齢者である.
D 血便は認めない.
E 重症例ではバンコマイシンンの経静脈投与を行う.


問題24

Crohn病の腸管狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術に関して誤っているのはどれか.2つ選べ.

A 悪性狭窄は禁忌である.
B 反復可能である.
C 深い潰瘍を伴っていても安全に施行できる.
D 主な偶発症は穿孔と出血である.
E 症状が再燃するのは10%未満である.


問題25

次のなかで不適切な記載はどれか.2つ選べ.


A 潰瘍性大腸炎(UC)患者は一般に罹病期間が長くなると背景人口と比べて大腸癌にかかりやすくなる.
B サーベイランス内視鏡で発見された大腸癌の予後が良いという無作為化比較試験の報告がある.
C 色素内視鏡はサーベイランス内視鏡において病変の発見に有用である.
D Crohn病に合併する大腸癌の分布はわが国と欧米で異なる点がある.
E わが国ではCrohn病のサーベイランス方法についての推奨方針はまだない.


問題26

IBD患者の妊娠・出産に関する次の記述のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.

A 妊娠中はステロイド治療を行うべきではない.
B IBD治療薬で不妊率を上昇させる薬剤はない.
C 抗TNFα抗体製剤は乳汁中に移行するため,母乳哺育を避けさせる.
D サラゾスルファピリジン内服患者に妊娠希望がある場合,葉酸内服補充を行う.
E チオプリン製剤は米国食品医薬品局(FDA)分類でDであり,妊娠女性には禁忌となる.


問題27

小児の炎症性腸疾患の特徴はどれか.1つ選べ.

A 小児の潰瘍性大腸炎は成人より軽症例が多い.
B 小児の潰瘍性大腸炎の治療では,内科治療が中心で大腸全摘術はほとんど不要である.
C 小児のCrohn病では生物製剤の早期導入が勧められる.
D 小児の炎症性腸疾患では成長発達に留意する必要がある.
E 小児の炎症性腸疾患では免疫調節薬は控えるべきである.


問題28

高齢者炎症性腸疾患の特徴で正しいものはどれか.1つ選べ.

A 若年者よりも再燃しやすい.
B 入院患者の死亡退院率は年齢と無関係である.
C 若年者よりも全大腸炎型潰瘍性大腸炎の頻度が高い.
D Crohn病では腸管狭窄や瘻孔を合併しやすい.
E 日和見感染のリスクが高い.


問題29

炎症性腸疾患(IBD)診療において正しいものはどれか.1つ選べ.

A 潰瘍性大腸炎(UC)患者でステロイドを使用しながら寛解を保てていれば,専門医にコンサルトする必要はない.
B 一度専門医に紹介したら,もう自分はその患者の診療にかかわるべきではない.
C IBDの診断では,病理所見は参考程度にとどめ,症状経過や内視鏡所見を重視する.
D IBDは難病なのでQOLが多少悪いのは当たり前である,と患者を教育しなければならない.
E Crohn病に対する抗TNFα抗体は強力かつ投与プロトコールが決まっているので,使用開始したのち専門医にコンサルトする場面はほとんどない.


(解答は本誌掲載)