HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧51巻4号(2014年4月号) 特集の理解を深めるための27題
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特集の理解を深めるための27題


問題1

わが国の虚血性心疾患の疫学について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A 急性心筋梗塞の年齢調整発症率に時代的変化はほとんどない.
B 超高齢者の急性心筋梗塞発症率は時代とともに減少した.
C 肥満,脂質異常症,糖尿病といった代謝性疾患が増加した.
D 急性心筋梗塞発症者の5年生存率は時代とともに改善した.
E わが国の虚血性心疾患の死亡率は欧米に比べ低い.


問題2

血小板について誤っている記述はどれか.

A 骨髄中の巨核球から産生される.
B 健康状態では,ほとんど5 μm以下である.
C 生体内での寿命は2週間前後である.
D 主に脾臓で破壊される.
E 止血のみならず,炎症にも重要である.


問題3

以下の記述で誤っているものはどれか.2つ選べ.

A 生直後においても冠動脈分岐部では,約30%に内膜適応病変が認められ,その後のプラーク形成に関連している.
B Mönckeberg型硬化症は高齢者や血液透析患者に多くみられ,主として中膜に生じる石灰化を特徴とする.
C 冠動脈ステントはバルーン形成術と比較して,拡張後に生じる血管壁のリコイル反応を防止するが,より多大な新生内膜の増生を引き起こす.
D 薬剤溶出性ステントは通常の金属ステントと比較して,再狭窄率を大幅に低下させるため,長期予後にも有意な改善がみられる.
E 薬剤溶出性ステント留置後の抗血小板薬の投与期間は,通常の金属性ステントのそれに準じる.


問題4

狭心症に対する問診・身体診察で正しいものはどれか.1つ選べ.

A 狭心症症状など,詳細な病歴,身体所見,心電図所見,心筋マーカーに焦点を絞った早期リスク層別化は20分以内に行う.
B 狭心症には必ず胸部症状が伴う.
C 心エコー図検査ができれば,身体診察は不要である.
D 20分以上持続する胸痛,肺水腫,新規発症のIII音,ラ音,僧帽弁閉鎖不全症の逆流音などは高リスクの指標となる.
E 心電図モニターがあれば,バイタルサインのチェックは不要である.


問題5

急性冠症候群(ACS)における心電図変化またはその対応に関して,誤りを1つ選べ.

A V2,V3誘導でのST上昇のカットオフ値は女性より男性のほうが高い.
B 多数の誘導のST低下に加え,aVRでのST上昇を伴う際は高率に重症虚血が存在する.
C II,III,aVF誘導でST上昇を認めたので,V4R誘導の記録を行った.
D 左前胸部圧迫感を訴える糖尿病治療中の80歳男性の心電図が正常範囲内で,トロポニンT定性も陰性であったが,入院を指示した.
E II,III,aVF誘導でST低下を認めたので,右冠動脈領域の虚血を疑った.


問題6

病態と観察されうる心エコー所見の対応が誤っているものを1つ選べ.

A 左前下行枝の閉塞―右室および左室下壁の壁運動低下
B 乳頭筋断裂―腱索に近接する塊状エコー
C 左回旋枝の閉塞―側後壁の壁運動低下
D 左室自由壁破裂―血腫エコー
E 心室瘤―瘤内壁在血栓


問題7

急性冠症候群の診断マーカーに関する記述のうち,誤りを1つ選べ.

A 血清CK-MBは心筋梗塞の診断とその重症度判定に役に立つ.
B CKは健常人でも検出され心筋特異性が低いのに対し,心筋トロポニンは心筋特異性が高い.
C 心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は心筋梗塞の診断の感度が高いため,心筋梗塞の早期診断に役に立つ.
D 左室機能を反映するBNPは,梗塞範囲の進展と左室拡張能を反映し,ST上昇心筋梗塞後の予後推定に役立つ.
E 心筋梗塞二次予防を達成するには数々の手段があるが,一般療法は,生活スタイルを是正して冠危険因子を除去することおよび高血圧や糖尿病などの合併症を治療することである.


問題8

心筋血流シンチグラフィについて誤っているものを1つ選べ.

A 負荷方法には,薬剤負荷と運動負荷がある.
B 禁忌がなければ運動負荷を行うべきである.
C 冠動脈造影にて狭窄を認めた場合,機能的な虚血の評価を行うべきである.
D 心事故などの予後の評価は不可能である.
E 負荷心筋血流シンチグラフィは虚血評価におけるエビデンスが豊富である.


問題9

全身状態が安定した急性期症状を訴える患者で,症状からは虚血性心疾患が疑われるが,心電図や生化学検査からは急性冠症候群の診断が確定できない場合の治療方針決定において,有用な非侵襲的検査法は次のうちどれか.

A 心エコー図
B 201T1心筋血流イメージング
C 冠動脈CT
D 心臓MRI
E 上記すべて


問題10

歩行時に左側の下肢のだるさと張りを訴える男性.上肢左右の血圧および両下肢の足背動脈,後脛骨動脈の収縮期血圧をドプラ血流計で測定したところ,以下の数値を得た.この症例のABPI値はどれか.

A 右 1.14,左 0.49
B 右 1.14,左 0.53
C 右 1.08,左 0.25
D 右 1.23,左 0.53
E 右 1.17,左 0.25


問題11

急性冠症候群の初期診療に関して正しいものを2つ選べ.

A トロポニンTは心筋特異性が高く,発症2時間以内の超急性期における急性心筋梗塞の確定診断に有用である.
B 急性下壁心筋梗塞の場合は,通常の12誘導心電図に加えて背側部誘導の記録を行うべきである.
C ST上昇型心筋梗塞に対する硝酸薬の投与は,胸部症状の改善に有用である.
D 胸痛を伴わない急性心筋梗塞患者は,胸痛を伴う患者に比べて院内死亡率が高い.
E 急性冠症候群の鑑別診断としてもっとも重要なのは,急性大動脈解離ならびに大動脈弁狭窄症である.


問題12

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中に起こりうる合併症のうち,特に急性心筋梗塞に対する緊急PCIの際に起こりやすいものはどれか.2つ選べ.

A 塞栓症
B 心室性不整脈
C no reflow現象
D 冠動脈穿孔
E 腎機能障害


問題13

STEMIに関して誤った記述はどれか.1つ選べ.

A STEMIに伴う心原性ショックに対しては,予後改善のために早期血行再建が重要である.
B 機械的合併症に対しては,血行動態を維持し,早急な外科的修復を考慮する必要がある.
C STEMIでは心室性不整脈が合併することが多く,リドカインの予防的投与が必須である.
D 下壁梗塞に伴う完全房室ブロックに対しては一時的経静脈ペーシングを用いるが,全例が永久ペースメーカーの適応となるわけではない.
E 血行再建に成功した合併症のない症例では,早期リハビリが推奨される.


問題14

地域医療連携システムで正しい記載はどれか.下記から1つ選べ.

A 全国各地で構築され運用されている.
B 各地で救急隊を中心に運用されている.
C 医療機関同士の連携が重要である.
D 救急医療には欠かせない考え方である.
E 東京都CCUネットワークは,医療機関と消防庁で運営されている.


問題15

地域医療支援の取り組みとして誤りはどれか.1つ選べ.

A 質の高い継続医療を提供するために,連携先と深い信頼関係を構築することが非常に重要である.
B 病院間の患者の『やりとり』が連携ではなく,患者の治療のストーリーに責任をもつことが重要である.
C 地域連携の体制において,前方連携,空床の確保,後方連携がカギとなる.
D 熊本県では2004年から急性心筋梗塞患者のレジストリーが行われている.
E 地域医療は,各病院がそれぞれ独自の医療を提供することで成り立つ.


問題16

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012」に定める動脈硬化性疾患のリスク評価と管理目標に関して,正しいものはどれか.1つ選べ.

A 慢性腎臓病(CKD)は冠動脈疾患既往と同等のリスクであり,2次予防扱いとなる.
B 糖尿病は冠動脈疾患既往と同等のリスクであり,2次予防扱いとなる.
C 末梢動脈疾患(PAD)は冠動脈疾患既往と同等のリスクであり,2次予防扱いとなる.
D 家族性高コレステロール血症(FH)はきわめて冠動脈疾患のリスクが高いことから2次予防に相当すると考え,LDL-Cの管理目標値は100 mg/dL未満とすることが望ましい.
E 絶対リスク評価に用いられるNIPPON DATA80にはLDL-CやHDL-Cの情報がないため,総コレステロール(TC)がリスク判定に使用され,今回の改訂から低HDL-C血症のリスクは考慮されなくなった.


問題17

冠動脈ステント留置後の抗血小板2剤併用療法(DAPT)で正しいのはどれか.1つ選べ.

A ベアメタルステント(BMS)留置に対し,14日間のDAPTを行う.
B 抜歯前の抗血小板薬は2剤とも中止する.
C 出血リスクが低ければ12カ月のDAPTを行う.
D 心房細動合併症例に対してワルファリンは不要である.
E 第2世代薬剤溶出性ステント(DES)のDAPTは1カ月で十分である.


問題18

虚血性心疾患の薬物治療で正しいのはどれか.2つ選べ.

A すべてのβ遮断薬に左室収縮不全による慢性心不全の予後改善効果がある.
B ARBは,忍容性の面からACE阻害薬に替わる第一選択薬となりつつある.
C 器質的狭窄に加えて冠攣縮性狭心症を有する症例にβ遮断薬を使用する際は,カルシウム拮抗薬を併用する.
D 高度心機能低下例にβ遮断薬を投与する場合,維持量はできるだけ少量にする.
E 急性心筋梗塞例に対して,発症後24時間以内にACE阻害薬を投与する.


問題19

硝酸薬を投与する際に禁忌となる併用薬はどれか.1つ選べ.

A β遮断薬
B Ca拮抗薬
C PDE-5阻害薬
D ACE/ARB
E インスリン


問題20

運動療法の効果のうち確実にあるとされるのは下記のどれか.1つ選べ.

A 左室収縮能の改善
B 左室拡張機能の改善
C 冠動脈血管内皮依存性拡張反応の改善
D 冠狭窄病変の進展抑制
E CRP,炎症性サイトカインの減少


問題21

腎不全患者の冠動脈疾患の危険因子としても重要な,慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の管理において最も優先されるのはどれか.1つ選べ.

A Ca
B P
C Fe
D PTH
E ALP


問題22

PCIでの血行再建を行ううえで,大動脈バルーンポンピング(IABP)/経皮的心肺補助(PCPS)の補助循環を考慮する必要があるのはどのような場合か.不適切なものを1つ選べ.

A 血圧65/40 mmHg,多枝病変の症例
B 多枝病変,EF 30%の症例
C 多枝病変で,重症大動脈弁逆流を合併する症例
D 非保護左冠動脈主幹部+多枝病変の症例
E 多枝病変で,治療対象病変が多量の血栓性病変である症例


問題23

冠動脈治療について誤りを2つ選べ.

A すべての冠動脈狭窄はPCIの治療対象である.
B 薬物溶出性ステントは再狭窄を抑制する.
C PCI後,一定期間の抗血小板2剤併用療法が必要である.
D 治療方針はハートチームで決定することが望ましい.
E 撓骨動脈アプローチの選択で合併症リスクは増加する.


問題24

冠動脈バイパス術でグラフトとして通常使用されない血管はどれか.1つ選べ.

A 内胸動脈
B 橈骨動脈
C 肋間動脈
D 右胃大網動脈
E 大伏在静脈


問題25

低出力体外衝撃波治療について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A 基礎研究において,血管増殖因子の発現亢進や血管新生効果が確認されている.
B 低出力の衝撃波を用いるため,治療に際して麻酔や鎮静剤の投与は不要である.
C 狭心症患者において,狭心症発作の頻度が軽減する.
D 狭心症患者において,運動耐容能の改善が報告されている.
E 悪性腫瘍を併存する症例も適応になりうる.


問題26

心臓内に投与した場合に想定されるリスクが少なく,すでに心不全患者に対して臨床応用され,今後,大規模臨床試験を通じた安全性と有効性の確立が期待されているものはどれか.2つ選べ.

A 骨格筋芽細胞
B 骨髄由来細胞
C 心臓幹細胞
D ES(胚性幹)細胞
E iPS(誘導多能性幹)細胞


問題27

ヒト心臓幹細胞について,正しい記載はどれか.2つ選べ.

A 成人の心臓に内在する組織幹細胞である.
B 1980年頃には存在が明らかにされていた.
C 成人の心筋は再生しないため,心筋梗塞の治療には適さない.
D すでに心不全患者に対する細胞治療として臨床応用されている.
E 心臓内への投与に伴って想定されるリスクが大きい.


(解答は本誌掲載)