特集の理解を深めるための28題
問題1
健康診断で指摘された以下の心電図異常に対し,経過観察で問題ないと思われるものはどれか.2つ選べ.
A 58歳女性.心電図で単発の心房期外収縮を初めて指摘された.
B 49歳男性.動悸症状が普段からある.心電図で心室期外収縮の二段脈を指摘された.
C 40歳男性.失神の既往・突然死の家族歴はなく,心電図のV1~2誘導でsaddleback typeのST上昇を指摘された.
D 55歳男性.高血圧・糖尿病に対して近医で投薬を受けている.心電図で無症状の心房細動を初めて指摘された.
E 33歳男性.失神の既往はないが,叔父が20歳台で原因不明の突然死をしている.心電図のV1~2誘導でcoved typeのST上昇を指摘された.
問題2
「突然脈が速くなり,しかもバラバラな感じ」と訴える患者で考えやすい不整脈は何か.1つ選べ.
A 心室性期外収縮
B 発作性心房細動
C 発作性上室性頻拍
D 心室頻拍
E 房室ブロック
問題3
不整脈の疫学について,正しいものはどれか.2つ選べ.
A 心房細動の有病率は70歳台で最も高い.
B 女性は男性よりも心房細動有病率が高い.
C 全国の心房細動有病数は10万人程度である.
D 脂質異常症は心房細動発症の危険因子である.
E 高血圧は心房細動発症の危険因子である.
問題4
イベントレコーダーについて誤っているものはどれか.1つ選べ.
A イベントレコーダーでは記録ボタンを押した時点より前の記録はできない.
B イベントレコーダーでは不整脈の検出を目的とした場合,単一誘導で十分である.
C イベント心電図ではR波が減高傾向,T波が増高傾向に記録されることが多い.
D イベント心電図は電話やインターネットを用いて伝送することができる.
E イベントレコーダーは防水型でないため,入浴中の症状の把握ができない.
問題5
心電図V1誘導のみ示す(図1).正しい診断を1つ選べ.
A 第2度I型(Wenckebach型)房室ブロック
B 第2度II型(Mobitz型)房室ブロック
C 心房期外収縮
D 洞房ブロック
E アーチファクト
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図1 V1誘導 |
問題6
Holter心電図について正しいものはどれか.1つ選べ.
A 陳旧性心筋梗塞では心機能にかかわらずHolter心電図による突然死のリスクの評価が有用である.
B 心室期外収縮と心房期外収縮の自動解析の精度は同等である.
C 高分解能Holter心電図では心疾患の予後の予測指標の解析が可能である.
D 瞬時心拍数トレンドグラムによる代償性心室期外収縮と間入性心室期外収縮の鑑別は困難である.
E 抗不整脈薬投与後に24時間の心室期外収縮が50%以上減少した場合は有効と判断する.
問題7
運動中に失神する可能性がある患者に実施するとしたら,好ましい運動負荷検査はどれか.1つ選べ.
A 6分間歩行
B 病院の階段昇降
C トレッドミル検査
D マスター2階段試験
E 自転車エルゴメーター検査
問題8
脱分極異常を反映する致死性不整脈の予知指標はどれか.1つ選べ.
A 心室レートポテンシャル
B T波オルタナンス
C QTディスパージョン
D 心拍バリアビリティ
E 心拍タービュランス
問題9
失神に関する記載のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.
A てんかん発作は,失神発作の原因となる.
B 一過性脳虚血発作は,失神発作の原因となる.
C 失神の原因で最も多くを占めるのは心原性失神である.
D 失神発作では,後遺症なく数分で自然に意識が回復する.
E 植込み型心電計は,血管迷走神経性失神の確定診断を目的として利用される.
問題10
Brugada症候群の特徴的心電図波形であるcoved型ST上昇の特徴と一致しない記述はどれか.1つ選べ.
A 通常より1肋間上のV2誘導でのcoved型ST上昇
B 発熱時のV2誘導でのcoved型ST上昇
C 発作性心房細動に対しピルジカイニド内服中のV1誘導でのcoved型ST上昇
D 夜間就寝中に認めたV2誘導でのcoved型ST上昇
E 90 bpmにおける心房ペーシング時のV1誘導でのcoved型ST上昇
問題11
先天性QT延長症候群,QT短縮症候群について正しいのはどれか.1つ選べ.
A 先天性QT延長症候群では,睡眠中や安静時に失神発作を起こす場合が多い.
B 先天性QT延長症候群の3型(LQT3)では,Naチャネル遮断薬のメキシレチンが有効である.
C 先天性QT延長症候群でQTcが500 ms以上の場合には,植込み型除細動器(ICD)の適応となる.
D QT短縮症候群では,家族性を認めることが多い.
E QT短縮症候群では,50%以上の症例で遺伝子変異が同定される.
問題12
致死性不整脈でないものはどれか.1つ選べ.
A WPW症候群に伴う心房細動
B 1:1房室伝導の心房粗動
C 洞不全症候群
D Mobitz II型2度房室ブロック
E Wenckebach型2度房室ブロック
問題13
42歳の男性.拡張型心筋症(左室駆出率32%)による心不全で通院中であったが,心拍数160/分の単形性心室頻拍による動悸を主訴に来院した.安定期の治療として誤りはどれか.1つ選べ.
A β遮断薬
B ピルジカイニド
C 植込み型除細動器(ICD)
D RAS抑制薬
E アミオダロン
問題14
心房細動における抗凝固療法について,以下のうち正しいものを1つ選べ.
A ワルファリン治療による脳卒中予防効果を十分に発揮させつつ,大出血の頻度を減らすためには高いTTRを保つ必要がある.
B 2種類の用量がある新規抗凝固薬は,降圧薬と同じようにまずは低用量から使ってみて,皮下出血などが起こらないようにすることが最も重要である.
C 新規抗凝固薬の共通する利点は頭蓋内出血が少ないことであるが,消化管出血が増加するとされる.
D カテーテルアブレーション治療を受けた患者において,症状の訴えがなく,毎月行っているHolter心電図で再発が捉えられなければ,根治と判断して抗凝固療法は止める.
E 抗凝固療法を開始後,少しでも皮下出血の訴えがあれば,処方量を減らして皮下出血を少なくして,患者の訴えが減るように心がけるのがトラブルを防ぐ基本である.
問題15
腎機能低下・透析症例に使用が困難な抗不整脈薬はどれか.1つ選べ.
A アプリンジン
B メキシレチン
C プロパフェノン
D プロプラノロール
E シベンゾリン
問題16
wide QRS頻拍に関して正しいものはどれか.1つ選べ.
A 左脚ブロック型のwide QRS頻拍は必ず心室頻拍と診断できる.
B 心室頻拍では必ず房室解離が確認できる.
C 左室特発性心室頻拍ではベラパミル投与により停止可能なことがある.
D 器質的心疾患を有する心室頻拍にはIc群抗不整脈薬が第一選択である.
E 変行伝導を伴う発作性上室性頻拍に対してアデノシン三リン酸(ATP)の投与は無効である.
問題17
心房細動のレートコントロール薬として誤っているものはどれか.1つ選べ.
A ジゴキシン
B ベラパミル
C ジルチアゼム
D ピルジカイニド
E ランジオロール
問題18
発作性心房細動の起源として,最も多い部位は下記のどれか.1つ選べ.
A 肺動脈
B 肺静脈
C 上大静脈
D 冠静脈洞
E crista terminalis(分界稜)
問題19
通常型心房粗動の検査・治療で適切でないものはどれか.
A 12誘導心電図の下壁誘導で鋸歯状波を確認
B 経食道心臓超音波検査
C メキシレチン
D 抗凝固療法
E カテーテル心筋焼灼術
問題20
Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群に伴う上室頻拍の予防を目的として投与する薬剤として,適切なものはどれか.2つ選べ.
A アデノシン三リン酸二ナトリウム(ATP)
B ベラパミル
C アプリンジン
D ピルジカイニド
E メトプロロール
問題21
非持続性心室頻拍に関して正しいものを1つ選べ.
A 無症状であれば治療しなくてよい.
B 失神を伴う時はすぐにICD植込みを考慮する.
C 治療目的は,非持続性心室頻拍の抑制である.
D 低心機能患者は,突然死リスクが高い.
E 心室頻拍/細動の誘発は,突然死を予知する検査として精度が高い.
問題22
特発性心室頻拍のなかでその機序がすべてリエントリー性であるものはどれか.1つ選べ.
A 右室流出路心室頻拍
B 肺動脈起源心室頻拍
C 僧帽弁輪起源心室頻拍
D べラパミル感受性左室心室頻拍
E 乳頭筋心室頻拍
問題23
日本循環器学会のガイドラインにおいてICDの適応がClass Iとなる症例はどれか.2つ選べ.
A 急性冠症候群の急性期(発症48時間以内)に心室細動が認められた症例
B 健康診断にて明らかなBrugada型心電図(coved型)を指摘されていた心停止蘇生例
C 血圧低下を伴う心室頻拍が確認されてはいるが,進行がんのため余命が12カ月以上見込めない肥大型心筋症の症例
D 十分な薬物治療を行ってもNYHA IIの拡張型心筋症で,左室駆出率は35%以下であり,非持続性心室頻拍も認められている症例
E 心筋梗塞の既往はあるが,左室駆出率50%かつ心不全症状はNYHAクラスIで,原因不明の失神も認められていない症例
問題24
頻回に繰り返す心室頻拍(VT)・心室細動(VF)に対する診断・治療として正しいのはどれか.1つ選べ.
A Brugada症候群に対してはIc群薬が有効である.
B 先天性QT延長症候群に対してはIII群薬が有効である.
C 頻回の心室細動に対してカテーテルアブレーションは無効である.
D 器質的心疾患に起因する場合はアミオダロンの静注が有効である.
E 発作の発生パターンから抗不整脈薬の催不整脈作用を推察することは不可能である.
問題25
ペースメーカーの適応について正しいものはどれか.1つ選べ.
A 覚醒時に完全房室ブロックが認められても,症状がない場合にはペースメーカー植込み適応はない.
B Mobitz II型2度房室ブロックにはペースメーカー植込み適応はない.
C 心停止による失神が薬剤による場合,ペースメーカー植込み適応はない.
D 洞機能回復時間の延長を認めない洞不全症候群にはペースメーカー植え込み適応はない.
E 3秒の心停止が認められても,自覚症状のない洞不全症候群にはペースメーカー植込み適応はない.
問題26
高度QT延長からのtorsades de pointesを起こす可能性が高い抗不整脈薬はどれか.1つ選べ.
A ピルジカイニド
B ソタロール
C ランジオロール
D ベラパミル
E メキシレチン
問題27
不整脈診療について,下記のうち誤りを1つ選べ.
A 器質的心疾患を有さない心室期外収縮が予後良好であることを説明することは,患者の不安を解消し,症状改善にもつながる可能性がある.
B 器質的心疾患を有さない心房期外収縮では,疲労,ストレス,喫煙,飲酒,カフェイン摂取などが期外収縮増加に寄与していないかを問診で確認することが重要である.
C 運動や精神的興奮で誘発される心室性不整脈に対して,β遮断薬は最も適している抗不整脈薬の一つである.
D 虚血性心疾患を背景とする心室期外収縮に対して,ピルジカイニドは最も適している抗不整脈薬の一つである.
E 植込み型除細動器(ICD)の植込み後は,除細動を要する心室性不整脈が最後に出現してから6カ月の間は運動を制限すべきである.
問題28
老化に伴って増加する不整脈はどれか.1つ選べ.
A Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群に伴う発作性上室性頻拍
B 心房細動
C Brugada症候群
D 先天性QT延長症候群
E Wenckebach型II度房室ブロック
(解答は本誌掲載) |