特集の理解を深めるための25題
問題1
わが国の肺炎の現況に関して正しいものはどれか.1つ選べ.
A わが国では,肺炎は死因の第4位である.
B わが国では,特に若年者を中心とした肺炎に予後不良が指摘されている.
C わが国では,市中肺炎(CAP)と院内肺炎(HAP)の2分法の考え方で,十分な肺炎診療が可能である.
D わが国では,マクロライド系薬を中心とした抗菌薬治療が勧められている.
E 抗菌薬治療のほか,ワクチンを中心とした予防や感染制御の重要性が指摘されつつある.
問題2
かぜ症候群(急性気道感染症)のなかから肺炎を見つける際に,以下のうちで最も有用性が低い項目はどれか.
A かぜ症候群の病型分類
B 脈拍数
C 呼吸数
D 経皮的酸素飽和度
E 膿性痰の有無
問題3
市中肺炎の入院適応で誤っているものはどれか.1つ選べ.
A 基礎疾患に高度のCOPDと糖尿病があり,即日入院とした.
B 高齢者例で治療開始後72時間後の判定で,症状が増悪しているため入院とした.
C 認知症のため抗菌薬点滴の自己抜去の恐れがあり,入院とした.
D 高齢者患者は,特に基礎疾患の経過や過去の検査値を紹介状に書いた.
E 入院先には施設の適応基準があることを,本人・家族に十分説明した.
問題4
次のうち誤った記述を含むものを選べ.
A 肺炎球菌の典型的なグラム染色像はGPDC(グラム陽性双球菌)であり,周囲にhaloを伴うことや,ムコイド産生型という別の形態をとることもある.
B 喀痰を得にくい患者では,3%高張食塩水をネブライザーで吸入して排痰を促すことが有効である.
C 米国感染症学会/米国胸部疾患学会合同市中肺炎ガイドラインでは,喀痰グラム染色の有効性が否定されている.
D 肺炎診療において,治療開始翌日の喀痰グラム染色を行うことで,治療効果の判定に有用な所見を得ることができる.
E 喀痰グラム染色を行うときは,喀痰と唾液が混ざらないように標本を作成することが重要である.
問題5
急性心不全と肺炎の鑑別について,誤っているものを選べ.
A 胸部X線で鑑別ができる.
B 胸部X線は,仰臥位では通常の立位に比べ心陰影は拡大し,血管陰影が増強する.
C 右心不全が高度になると,肺うっ血は軽度かまたは消失し,肺野は黒くなる.
D BNPあるいはNT-proBNP測定が心不全の診断に有用である.
E COPDを併存している肺炎では,BNPは著しく増加するので注意が必要である.
問題6
36歳男性,肺炎疑い.胸部単純写真を提示する.病変部位はどこか.

A 中葉
B 左S1+2
C 左S6
D 舌区
E 左S10
問題7
非定型病原体が原因微生物として頻度の高い肺炎のタイプはどれか.1つ選べ.
A 市中肺炎
B 院内肺炎
C 誤嚥性肺炎
D 人工呼吸器関連肺炎
E 医療・介護関連肺炎
問題8
45歳の女性.約1週間前に温泉に行き,2日前より38℃以上の発熱,咳が出現し来院.胸部X線で右中下肺野の浸潤陰影と少量の胸水貯留を認め,白血球10,800/μL,CRP13.328 mg/dLから肺炎と診断した.意識清明,血圧102/78,脈拍98回/分,体温38.7℃,呼吸数18回/分,SpO292%,BUN18 mg/dL,レジオネラ尿中抗原検査は陽性である.
この患者に直ちに行うべき治療はどれか.
A 酸素療法
B ペニシリン系抗菌薬投与
C 補液
D 消炎鎮痛剤投与
E ニューキノロン系抗菌薬投与
問題9
院内肺炎について正しいのはどれか.1つ選べ.
A 原因菌は入院期間を問わず肺炎球菌が最も多い.
B 気管支肺胞洗浄などの侵襲的検査法による原因菌検索は必須である.
C 初期治療では基本的に全例で抗緑膿菌活性を有する抗菌薬を投与する.
D MRSAが喀痰から分離された場合は直ちに抗MRSA薬の投与を開始する.
E 治療開始前に採取した良質な喀痰の分離菌の情報をもとに抗菌薬のde-escalationを行う.
問題10
海外の治療歴が重要なリスクとなる院内肺炎の原因菌はどれか.1つ選べ.
A MRSA
B 多剤耐性緑膿菌(MDRP)
C 多剤耐性アシネトバクター
D Stenotrophomonas maltophilia
E ESBLs産生大腸菌
問題11
人工呼吸関連肺炎(VAP)に関連した記述のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.
A 臨床的肺炎スコア(CPIS)には,PaO2/FIO2比が含まれる.
B 気管支肺胞洗浄液のグラム染色は感度よりも特異度の高い検査である.
C 気管支肺胞洗浄液の定量培養で103 cfu/mLの細菌が検出されれば陽性である.
D 人工呼吸開始7日目に発症したVAPの原因菌としては,肺炎球菌が最頻である.
E ブドウ糖非発酵系グラム陰性桿菌群の治療期間は5日とする.
問題12
下記の項目で医療・介護関連肺炎の定義に含まれないものはどれか.1つ選べ.
A 長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している.
B 90日以内に病院を退院した.
C 多剤耐性菌感染をしている家族がいる.
D 介護を必要とする高齢者,身体障害者.
E 通院にて継続的に血管内治療(透析,抗菌薬,化学療法,免疫抑制薬等)を受けている.
問題13
医療・介護関連肺炎(NHCAP)の原因微生物で最も多いのはどれか.1つ選べ.
A 肺炎球菌
B インフルエンザ桿菌
C クレブシエラ
D 緑膿菌
E MRSA
問題14
次の医療・介護関連肺炎(NHCAP)の患者において,推奨される治療方針はどれか.1つ選べ.
92歳,男性,A-DROP 1点,ECOG-PS:3,90日以内に入院歴あり.
A 入院治療,スルバクタム/アンピシリン点滴
B 外来治療,モキシフロキサシン内服
C 入院治療,タゾバクタム/ピペラシリン点滴
D 外来治療,スルタミシリン+アジスロマイシン内服
E A~Dすべてありうる.
問題15
日本の高齢者施設での肺炎について正しいのはどれか.1つ選べ.
A 高齢者施設では,インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種率は高い.
B 原因微生物のほとんどをメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や緑膿菌などの多剤耐性菌が占めるため,すべての症例に対して多剤耐性菌をカバーする治療が必要である.
C 高齢者施設での肺炎のほとんどが誤嚥性肺炎であるため,ワクチンは無効である.
D 高齢者施設での肺炎予防には,口腔ケアとインフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチンの両接種が有効である.
E 最近では在宅での介護が推進され,高齢者施設の入所者は減少している.
問題16
在宅治療中の肺炎管理について,正しいものを2つ選べ.
A 在宅療養が継続できるか,医学的病状とともに介護力を評価しながら治療を行う.
B 治療中に状態が悪化した場合,入院医療となる.
C 在宅酸素療法は,酸素流量5 L/分が最大である.
D 個人情報保護の観点から,公式な文書以外の方法で,他事業所と情報共有をすることには問題がある.
E 患者宅でX線撮影を行うことは,法律上,可能である.
問題17
HIV/AIDS患者における呼吸器感染症について,正しい選択肢はどれか.2つ選べ.
A ニューモシスチス肺炎(PCP)はCD4陽性リンパ球数が500/μL以下の患者で発病しやすい.
B 両側肺野に多発結節影が認められた.画像所見からPCPは除外できる.
C HIV/AIDS患者ではPCP,結核症,細菌性肺炎の頻度が高い.
D 胸部画像検査で明らかな異常所見はなくとも,PCPや結核症は完全に否定できない.
E 急速に呼吸器症状が悪化する場合は,細菌性肺炎よりもPCPが疑われる.
問題18
重症肺炎に対するステロイド投与に関する記述として,正しい選択肢を1つ選べ.
A 重症肺炎の症例で肺炎球菌性肺炎が疑われる場合には,デキサメサゾンを抗菌薬に先行して投与すべきである.
B 200~300 mg/日のヒドロコルチゾンあるいはそれと等価のステロイド投与によって重症肺炎の死亡率を改善できる.
C 重症のニューモシスチス肺炎の症例ではステロイドを考慮すべきである.
D ステロイド投与により抗菌薬の効果が減弱する可能性があるため,ステロイドは投与すべきではない.
E ARDSに進展した重症肺炎にはステロイドパルス療法が有効である.
問題19
次の文章の中で,誤っているものはどれか.2つ選べ.
A 救急・集中治療領域で,最も感染巣として多いのは腹腔内感染である.
B エンドトキシン吸着の適応は,グラム陰性菌感染が疑われたSIRS(全身性炎症反応症候群)またはエンドトキシン血症である.
C エンドトキシン吸着療法は,人工呼吸管理を必要とする重症肺炎にも適応がある.
D エンドトキシン吸着療法は,腹腔内感染からの重症敗血症,敗血症性ショック症例で,循環系の改善を認めることが多い.
E ALI(急性肺障害)やARDS(急性呼吸窮迫症候群)に対するPMX-DHPによる効果発現機序はいくつか報告されている.
問題20
重症呼吸不全におけるECMO(体外式膜型人工肺)について正しいのはどれか.1つ選べ.
A 妊婦は適応外である.
B 導入時はVV(venovenous)ECMO から開始する.
C 対応のできる施設に搬送する.
D できるだけECMOは用いない.
E H1N1インフルエンザによる呼吸不全では成績が悪い.
問題21
肺炎球菌ポリサッカライドワクチンを接種しないほうがよいものはどれか.1つ選べ.
A 脾臓摘出後
B 慢性心不全
C 慢性閉塞性肺疾患
D 65歳以上の高齢者
E 1度接種して5年以内の人
問題22
誤嚥性肺炎の予防策として正しいものはどれか.
A 抗菌薬投与
B 口腔ケア
C 三環系抗うつ薬
D 抗コリン薬
E 経皮胃瘻造設術(PEG)
問題23
肺炎の原因菌診断について,あらかじめの予測が必要でないものを2つ選べ.
A 培養法
B グラム染色
C 尿中抗原の検出
D 血清抗体価の測定
E 網羅的細菌叢解析法
問題24
重症市中肺炎に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか.
A 抗菌薬治療の進歩により,ICU管理を必要とする肺炎は1%未満となった.
B 重症化の要因の1つに,慢性閉塞性肺疾患(COPD),アルコール依存,慢性心不全などの基礎疾患がある.
C 肺炎球菌とレジオネラによる肺炎の致死率は,他の菌による肺炎に比べて高い.
D β-ラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用療法はβ-ラクタム系抗菌薬の単独治療に比較して予後は良い.
E マクロライド系抗菌薬投与患者では,他の抗菌薬投与患者と比べて,心血管イベントの発生率やそれによる死亡率が高くなる傾向にある.
問題25
抗炎症性サイトカインはどれか.2つ選べ.
A IL-1
B IL-4
C IL-8
D IL-10
E TNF-α
(解答は本誌掲載) |