特集の理解を深めるための26題
問題1
カテーテル関連血流感染症(CRBSI)を疑う状況でライン挿入部から多量の膿が出てきており,そのグラム染色でグラム陽性球菌を認めた.MRSAのライン感染を疑い,バンコマイシンを開始した.翌日,黄色ブドウ球菌が血液培養から陽性になった.次にすべきことは以下のいずれか.一つ選べ.
A CRPが10を超えていないかチェックする.
B エンドトキシンの測定
C 持続菌血症の有無の確認のため,再度血液培養を採取する.
D 白血球が10,000/μLを超えていないか確認する.
E セファゾリンにde-escalationする.
問題2
生チーズとデリカテッセンでのサンドイッチを多量に摂食する妊婦が頭痛と発熱で来院し,髄液穿刺でグラム陽性桿菌が多数認められた.治療薬として何を選択するか.2つ選べ.
A バンコマイシン
B セフトリアキソン
C アンピシリン
D メロペネム
E レボフロキサシン
問題3
急性骨髄性白血病で化学療法中の54歳男性.初回化学療法中に悪寒戦慄があり39℃の発熱をした.予防的抗菌薬投与はなし.身体所見では特記事項なし.バイタルサインは安定している.
血液検査:WBC 900/μL(好中球1%),Hb 9.0 g/dL,Plt 2.3万/mL,AST 45 IU/L,ALT 43 IU/L,BUN 34 mg/dL,Cre 1.1 mg/dL,CRP 2.3 mg/dL.
この病院でのアンチバイオグラムによると緑膿菌に対する感受性率は以下の通りだった.
ピペラシリン91%,セフタジジム85%,セフェピム92%,メロペネム69%,トブラマイシン93%,シプロフロキサシン72%
血液培養2セット,尿培養採取後の初期治療薬として適切なものはどれか?
A セフトリアキソン
B メロペネム
C アジスロマイシン
D セフェピム
E シプロフロキサシン
問題4
市中の腹腔内感染で嫌気性菌の関与を疑った場合に,エンピリカルに投薬する抗菌薬として不適切なものはどれか.1つ選べ.
A セフトリアキソン+メトロニダゾール
B セフトリアキソン+クリンダマイシン
C アンピシリン・スルバクタム
D メロペネム
E ピペラシリン・タゾバクタム
問題5
80歳男性.重症肺炎球菌性肺炎で挿管,人工呼吸器管理下で治療を受け6日目の患者.セフトリアキソンの投与が継続されていたが,本日より発熱を認め,いったん改善傾向にあった酸素化が悪化している.中心静脈ラインの刺入部に発赤がみられる.適切な検体を培養検査に提出したのち,経験的治療として選択すべき抗菌薬として,最も適切なものはどれか?
A セフトリアキソンの継続+バンコマイシン
B レボフロキサシン
C ピペラシリン・タゾバクタム+バンコマイシン
D メロペネム
E アミカシン
問題6
人工膝関節置換術後の60歳男性.術後2週間目より38.5℃の発熱,悪寒戦慄が出現した.創部の発赤と疼痛,腫脹を認める.
身体所見:血圧110/50 mmHg,脈拍120回/分,呼吸数25回/分,体温39℃,血液検査:WBC 15,000/μL(好中球90%)
創部の切開排膿と血液培養採取後に初期抗菌薬として選択すべき抗菌薬は以下のどれか.1つ選べ.
A バンコマイシンまたはテイコプラニン
B セファゾリン
C セフトリアキソン
D シプロフロキサシン
E アルベカシン
問題7
βラクタム系薬について,誤っているものはどれか.2つ選べ.
A βラクタム系薬は核酸合成阻害薬である.
B アミノペニシリンであるアンピシリンは一般にEscherichia coli に対する活性を有する.
C 第1世代セファロスポリン系抗菌薬であるセファゾリンは脳脊髄液への移行性が良好である.
D カルバペネム系抗菌薬はESBL産生菌に対する活性を有する.
E モノバクタム系抗菌薬はペニシリン系抗菌薬との交差アレルギーが存在する頻度が低い.
問題8
次の菌のうち,特別な耐性機序を獲得していない場合でも,レボフロキサシンの効果が乏しいと考えられるものはどれか.1つ選べ.
A Pseudomonas aeruginosa
B Legionella pneumophila
C Streptococcus pneumoniae
D Bacteroides fragilis group
E Klebsiella pneumoniae
問題9
アミノグリコシド系抗菌薬の投与が最も望ましいのはどの場合か.1つ選べ.
A 入院中に発症したMRSA肺炎
B 腸球菌による感染性心内膜炎
C 感受性が良好な緑膿菌による術後髄膜炎
D 入院中に発症した多剤耐性アシネトバクターによる肺炎
E MRSAによる中心静脈カテーテル関連血流感染
問題10
エリスロマイシン,クラリスロマイシンと比べて,アジスロマイシンにおいて特徴的なことは何か.
A 経口投与時の吸収は悪い.
B 非定型肺炎に対して,より臨床効果が高い.
C 半減期が長く,1日1回投与でよい.
D 副作用として,消化器症状が強い.
E CYPで代謝されるため,ほかの薬剤との相互作用が多い.
問題11
以下の抗菌薬のうちバイオアベイラビリティが極端に低いものはどれか.1つ選べ.
A アモキシシリン
B ドキシサイクリン
C ST合剤
D セフジニル
E リネゾリド
問題12
ペニシリンが第一選択の治療薬とならない場合は以下のどれか.
A A群溶連菌による細菌性咽頭炎
B 肺炎球菌性肺炎
C 淋菌性尿道炎
D Streptococcus viridans による感染性心内膜炎
E 髄膜炎菌による細菌性髄膜炎
問題13
緑膿菌に対する抗菌活性をもたない抗菌薬はどれか.1つ選べ.
A シプロフロキサシン
B アミカシン
C アンピシリン・スルバクタム
D メロペネム
E ピペラシリン・タゾバクタム
問題14
以下の感染症で第1世代セファロスポリン薬が用いられないものを2つ選べ.
A メチシリン感受性黄色ブドウ球菌による蜂窩織炎
B 腸球菌による胆管炎
C A群溶血性連鎖球菌による壊死性筋膜炎
D 大腸菌による新生児髄膜炎
E 整形外科での膝人工関節置換術時の創部感染予防投与
問題15
次の疾患うち,セフォタキシム/セフトリアキソンが治療の第一選択として不適切な疾患はどれか.1つ選べ.
A 市中肺炎
B 淋菌感染症
C 細菌性髄膜炎
D 特発性細菌性腹膜炎
E カテーテル関連血流感染
問題16
セフェピムの選択に関して最も適したものはどれか.1つ選べ.
A セファゾリンへのアレルギー歴のある患者に対してセフェピムを使用した.
B ESBL産生のKlebsiella pneumoniae の菌血症に対して,セフェピムを使用した.
C 緑膿菌の関与が疑われる院内肺炎のエンピリカル治療として,セフェピムを使用した.
D MRSAのカテーテル関連血流感染症に対して,セフェピムを使用した.
E MSSAのカテーテル関連血流感染症に対して,セフェピムを使用した.
問題17
緑膿菌の耐性を誘導しやすい抗菌薬上位2種類はどれか.1つ選べ.
A ペニシリン系とグリコペプチド系
B ペニシリン系とセファロスポリン系
C ペニシリン系とキノロン系
D カルバペネム系とグリコペプチド系
E カルバペネム系とキノロン系
問題18
次のなかで正しいものはどれか.1つ選べ.
A シプロフロキサシンは肺炎球菌の活性に優れている.
B レボフロキサシンは嫌気性菌のカバーがある.
C モキシフロキサシンは緑膿菌に対する活性がキノロンのなかで最も優れている.
D キノロン系抗菌薬は全般的にバイオアベイラビリティが悪い.
E キノロン系抗菌薬は忍容性が高い薬物であり濫用されやすく,近年キノロン耐性菌の蔓延が問題となっている.
問題19
アミノグリコシド系抗菌薬について誤っているものを1つ選べ.
A 副作用として腎障害がある.
B 腎障害のある患者には初回投与量から通常の4分の1量に減量する.
C 5日以上投与する場合には血中濃度を測定し,therapeutic drug monitoring(TDM)を行う.
D 感受性があれば緑膿菌もカバーする.
E 嫌気性菌への活性はない.
問題20
MRSAによる椎体炎の患者.人工物は留置されていない.バンコマイシンによる治療を行う場合,最低限必要な治療期間はどれか.
A 1週間
B 2週間
C 8週間
D 解熱するまで
E CRPが陰性になるまで
問題21
農作業に従事している68歳女性が,11月中旬に3日前からの発熱を主訴に救急外来を受診した.身体所見では全身倦怠感が強く,両側後頸部と両側腋窩にリンパ節腫脹,体幹と四肢に境界不明瞭の散在する紅斑を認めた.臨床状況からリケッチア症も考慮された場合に適切な対処法は以下のうちどれか.1つ選べ.
A さらに病状が悪化したら平日の外来を受診するように勧める.
B 血清学的検査による確定診断を得てから治療する.
C 遺伝子学的検査による確定診断を得てから治療する.
D 外来にて,あるいは入院させ,テトラサイクリン系薬剤による治療を開始する.
E 広域スペクトラムのβラクタム系抗菌薬を使用し反応をみる.
問題22
次のMRSAによる感染症のうち,ダプトマイシンを使用してはいけないものはどれか.1つ選べ.
A 敗血症
B 骨髄炎
C 肺炎
D 右心系心内膜炎
E 深在性皮膚軟部組織感染症
問題23
アジスロマイシンについて間違っているものはどれか.1つ選べ .
A びまん性汎細気管支炎の第一選択薬である.
B アジスロマイシンはCOPDの安定期に長期投与すると急性増悪を減少させる.
C アジスロマイシンはCOPDの急性増悪期に投与すると膿性痰の減少,治療失敗例の減少効果がある.
D アジスロマイシンは日本では肺MAC症の保険適用がないため,肺MAC症での第一選択薬はクラリスロマイシンである.
E 非定型抗酸菌症では,クラリスロマイシンとアジスロマイシンの効果を比較したstudyはない.
問題24
細菌培養検査の結果,Staphylococcus aureus が同定されており,クリンダマイシンの使用を検討したい.細菌検査の結果,クリンダマイシンを使用する前にDテストが実施されているかを確認する必要がある組み合わせを選べ.
A CLDM S,EM S,CEZ S
B CLDM S,EM S,CEZ R
C CLDM R,EM R,CEZ R
D CLDM R,EM R,CEZ S
E CLDM S,EM R,CEZ S
問題25
メトロニダゾールで治療できない微生物はどれか.1つ選べ.
A Clostridium difficile
B 大腸菌
C 赤痢アメーバ
D Bacteroides fragilis
E Helicobacter pylori
問題26
ST合剤が第一選択となる疾患はどれか.2つ選べ.
A 緑膿菌菌血症
B Pneumocystis jirovecii 肺炎
C ノカルジア肺炎
D 腸球菌による尿路感染症
E 腸管穿孔に伴う2次性腹膜炎
(解答は本誌掲載) |