HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧50巻6号(2013年6月号) 特集の理解を深めるための26題
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特集の理解を深めるための26題


問題1

動脈硬化巣において主として認められる細胞はどれか.1つ選べ.

A 肥満細胞
B 脂肪細胞
C 線維芽細胞
D マクロファージ
E 好中球


問題2

急性冠症候群の病理について,誤っている文章はどれか.1つ選べ.

A 急性冠症候群の多くは冠動脈の粥状硬化巣の破綻により血栓が形成されて発症する.
B 冠動脈プラークは,脂質成分や線維成分の多寡により脂質に富んだプラーク(AHA分類ではtype IV病変)や線維性プラーク(type III病変)などと表現されるが,前者は破綻しやすく不安定プラークとも呼ばれている.
C 心筋梗塞患者の冠動脈責任病変から吸引された血栓の構成成分は,血小板の凝集塊のみから成り,フィブリンや白血球,石灰化は認めない.
D 冠動脈プラークの破裂の原因としては,プラーク側の要因(脂質コアの大きさと成分,線維性被膜の厚さ,被膜の平滑筋細胞数・炎症細胞浸潤の程度など)と外的因子(心拍動,動脈壁への張力,攣縮)の関与が重視されている.
E 心筋梗塞の発症には,全身の炎症や易血栓性の血液なども発症に関与する可能性がある.したがって急性冠症候群の病態・治療・予防を考えるうえで,冠動脈全体,全身の血管あるいは患者全体に目を向けることが重要である.


問題3

動脈硬化を意識した病歴の聴取のポイントについて誤っているものはどれか.1つ選べ.

A 糖尿病患者では,無症候性心筋虚血が多く,問診の際に注意を要する.
B 受動喫煙により冠動脈疾患発症のリスクが有意に上昇する.
C 末梢動脈疾患合併患者では心血管疾患の発症率が有意に高い.
D 60歳未満発症の冠動脈疾患の家族歴は,独立した危険因子である.
E 従来知られている危険因子をすべて調整しても,家族歴は強いリスクとして残る.


問題4

以下の身体所見で,家族性高コレステロール血症(FH)のものではないものはどれか.

A 皮膚結節性黄色腫
B 角膜輪
C アキレス腱黄色腫
D 手掌線状黄色腫
E 手背伸筋群腱黄色腫


問題5

動脈硬化の検査に関する記述で正しいものを1つ選べ.

A LDL-CはFriedewald推計式での評価が推奨され,食後採血でもよいのが利点である.
B TGが高いときはnonHDL-Cが指標として推奨され,LDL-Cより約30 mg/dL低い.
C III型高脂血症の診断にはアガロースゲル電気泳動が有用である.
D cardio ankle vascular index(CAVI)は血圧の影響を強く受けるので,この点を改善した上腕-足首(ba)PWVが汎用される.
E 頸動脈の内膜-中膜複合体肥厚度(IMT)やプラークの所見は脳血管障害の予知因子とはならない.


問題6

高コレステロール血症をきたす疾患として誤りはどれか.1つ選べ.

A 甲状腺機能低下症
B 肝硬変
C 糖尿病
D 原発性胆汁性肝硬変
E ネフローゼ症候群


問題7

次の文章のうちから正しいものを2つ選べ.

A apoBは,HDLの主要な構成成分である.
B LDLよりHDLのほうが比重が大きい.
C 現状では,アポ蛋白を脂質異常症の管理指標とするためのガイドラインが本邦ではない.
D アガロースゲル電気泳動では,カイロミクロンは検出できない.
E アガロースゲル電気泳動とポリアクリルアミドゲル電気泳動では,リポ蛋白の泳動パターンは同じである.


問題8

次の説明で正しいのはどれか.1つ選べ.

A カイロミクロンレムナントは食後低下する.
B VLDLレムナントは食後増加する.
C RLP-Cはカイロミクロンレムナントを特異的に検出する.
D レムナントが増加するとHDL-Cも上昇する.
E small dense LDLはVLDLの異化促進により生成される.


問題9

高感度CRP,PTX3について正しいものはどれか.1つ選べ.

A 高感度CRP値3 mg/dL以上であれば10年間で心血管イベントが有意に発生する.
B 高感度CRPは古典的冠動脈危険因子と独立したマーカーである.
C JUPITER試験は,脂質代謝異常症かつ高感度CRP値2 mg/dL以上の患者群にスタチンを投与し,心血管イベントの抑制効果がみられるかどうかを検討した研究である.
D PTX3はCRPと同じpentraxin familyに属する.
E PTX3は肝臓で産生される.


問題10

アディポネクチンについて正しいものはどれか.1つ選べ.

A 内臓脂肪蓄積で増加する.
B 抗動脈硬化作用を示す.
C 血中濃度4 μg/mL以上となると冠動脈疾患のリスクが増加する.
D プラークを不安定化する方向に働く.
E 腎不全患者では低値となる.


問題11

high density lipoprotein(HDL)のEfflux機能が低下するのはどれか.1つ選べ.

A 冠動脈疾患
B シロスタゾール
C ピオグリタゾン
D ワイン
E コーヒー


問題12

頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)に関して正しいものはどれか.1つ選べ.

A 再現性が低い.
B コストが高い.
C 侵襲的である.
D 非定量的である.
E 心血管イベントの予測マーカーである.


問題13

血管内皮機能測定法として,最もよく用いられているものはどれか.1つ選べ.

A Endo-PAT
B flow-mediated dilation(FMD)
C プレチスモグラフィ
D pulse wave velocity(PWV)
E Augmentation Index(AI)


問題14

48歳男性.健診で,肥満(BMI 31 kg/m2),高血圧(155/92 mmHg),糖尿病HbA1c 7.6%(JDS).蛋白尿(+)を指摘.喫煙あり.精査と治療を希望して来院.まず,減量を指示,食事療法を開始した.以後,経時的にみるべき非侵襲的生理的検査法として適切でないものはどれか.2つ選べ.

A 頸動超音波検査
B baPWV(上腕-足首脈波伝搬速度)
C CAVI(心臓-足首血管指数)
D 血管内皮機能FMD(flow mediated dilatation)
E アプノモニター


問題15

心臓CT血管造影のよい適応として正しいものはどれか.1つ選べ.

A 慢性腎臓病を有する患者の冠動脈疾患のスクリーニング
B 冠危険因子を有さない30歳台女性で非典型的な胸痛を呈する場合
C 胸痛を呈する50歳台男性で運動負荷判定不能の場合
D 心房細動患者の冠動脈疾患のスクリーニング
E 高血圧,脂質異常症,喫煙を有する70歳男性で労作時の胸痛発作が頻発する場合


問題16

一次予防患者において,絶対リスクを考慮しなくても,より厳格なLDLコレステロールの低下療法を考慮すべき病態はどれか.2つ選べ.

A 肥満
B 慢性腎臓病(CKD)
C 脳出血
D 喫煙
E 2型糖尿病


問題17

動脈硬化症予防における生活習慣への介入について正しいのはどれか.1つ選べ.

A 受動喫煙の冠動脈疾患発症リスクは疫学調査のメタ解析では認められていない.
B 動脈硬化予防には脂肪制限食よりも低炭水化物食がよい.
C 有酸素運動にはLDLコレステロール低下効果が証明されている.
D 冠動脈疾患の予防のためにアルコールを積極的に摂取したほうがよい.
E 大豆製品には動脈硬化の予防効果が認められている.


問題18

急性心筋梗塞を発症し緊急入院となった43歳男性.入院後,速やかに緊急冠動脈造影と引き続きprimary PCI(直接的経皮的冠動脈形成術)が施行され,合併症もなく現在は退院に向けて包括的心臓リハビリテーション実施中である.以前より脂質異常症を指摘されているが未治療. 身体所見:身長172 cm,体重68 kg,臍周囲長79 cm,血圧126/78 mmHg.入院時血液生化学(入院翌日の空腹時採血):総コレステロール186 mg/dL,LDL-C(Friedewald式)135 mg/dL,中性脂肪64 mg/dL,HDL-C 38 mg/dL,空腹時血糖値96 mg/dL. 本症例の脂質管理目標を設定するためのリスク層別化に関係がないのはどれか.1つ選べ.

A 頸動脈超音波検査
B 75 g経口糖負荷試験
C 軟X線アキレス腱撮影
D 運動耐容能
E 腎糸球体濾過率


問題19

高トリグリセライド血症に対して適切でない薬剤はどれか.

A ベザフィブラート
B ニセリトロール
C イコサペント酸エチル
D ω-3脂肪酸エチル
E コレスチミド


問題20

低HDL-C血症をきたさないものを次から1つ選べ.

A アルコール摂取
B 喫煙
C 慢性腎不全
D 2型糖尿病
E メタボリックシンドローム


問題21

脂質異常症(高脂血症)の治療薬に関して誤りはどれか.1つ選べ.

A コレステロール吸収阻害薬エゼチミブはNPC1L1を阻害する.
B エゼチミブはLDL受容体が欠損する家族性高コレステロール血症ホモ接合体にも有効である.
C EPA・DHA製剤はLDLコレステロールを低下させる.
D EPAは血小板凝集抑制作用を有する.
E EPA・DHA製剤は心血管イベント抑制効果を有する.


問題22

次の文章で正しいのはどれか.1つ選べ.

A 家庭血圧における高血圧の基準は135/85 mmHg以上である.
B 診察室血圧182/98 mmHg,家庭血圧124/78 mmHgの場合,降圧薬治療を開始する.
C 動脈硬化疾患予防においてβ遮断薬はカルシウム拮抗薬より抗動脈硬化作用が強い.
D 24時間自由行動下血圧測定は保険診療では認められていない.
E ほかに心血管危険因子を有さないI度高血圧は,1年間の生活習慣修正後に降圧薬を開始する.


問題23

グリコアルブミン(GA)が偽性高値をきたす疾患はどれか.1つ選べ.

A 甲状腺機能亢進症
B ネフローゼ症候群
C ステロイド投与
D 肥満症
E 肝硬変


問題24

デキストラン硫酸セルロースカラムを用いたLDLアフェレーシス施行にあたり,禁忌となる薬剤を1つ選べ.

A α遮断薬
B アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)
C アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)
D カルシウム拮抗薬
E β遮断薬


問題25

73歳女性.症状はなかったが頸部超音波エコー検査で左頸動脈狭窄症が疑われ血管撮影を行った(図1).治療方針として最も適切なのはどれか.1つ選べ.

A 内膜剥離術
B ステント治療
C 抗血小板薬と脂質異常症改善薬を含む内科的治療
D 食事療法
E 運動療法

図1 左頸動脈所見

問題26

PADの治療について,正しいものを2つ選べ.

A 重症虚血肢に対しては運動療法が有用である.
B 間欠性跛行に対しては血行再建術が第一選択である.
C 重症虚血肢の膝窩動脈以下のバイパスは自家静脈を使用する.
D 大動脈両側大腿動脈バイパス術では人工血管を使用する.
E 大腿動脈の血管内治療はバルーン拡張が唯一である.


(解答は本誌掲載)