HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧50巻4号(2013年4月号) 特集の理解を深めるための25題
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特集の理解を深めるための25題


問題1

 喘ぎ様呼吸を見つけた場合,喘ぎ呼吸(agonal gasp)と窒息による重症換気不全を見分けるのに,最も有用な所見はどれか.1つ選べ.

A SpO2低下
B 呼吸補助筋動員の状態
C 呼吸回数
D 意識レベル
E 中心性チアノーゼ


問題2

症例:78歳男性
主訴:上腹部痛
既往歴に高血圧,糖尿病,脂質異常症,逆流性食道炎,胆石症あり.
今回,旅行先のホテルに滞在中,急に上腹部痛を自覚.訪問診療を依頼.冷汗(+).
バイタルサイン:血圧140/90 mmHg,脈拍120回/分,呼吸38回/分,体温36.3℃.
身体所見上,頸静脈圧の上昇(右心房から11 cmH2O)あり.心音でS3(3音),両側下肺野にlate-inspiratory cracklesを聴取.腹部は軟らかく圧痛なし.Murphy徴候陰性.
下記のうち最も可能性の高い診断はどれか.

A 胆石症
B 急性胆嚢炎
C 十二指腸潰瘍穿孔
D 左心不全を伴う急性心筋梗塞
E 急性膵炎


問題3

 次の記載で正しいものを2つ選べ.

A バイタルサインには,血圧,脈拍,呼吸数,体温が含まれ,意識状態や尿量などはその範疇に含まれない.
B 1,000 mL以上の出血は安静時に脈拍が10回/分以上増加する.
C ショックで頻呼吸を伴えば,敗血症を考慮して血液培養を最低2セット採取する.
D 意識障害,頻呼吸,白血球増多,低酸素血症,乏尿,代謝性アシドーシスの存在は,グラム陽性球菌による敗血症を疑う.
E 尿量は腎臓への血流の多寡を反映する.すなわち,主要臓器への循環血液量の良き指標となるので,ショックの症例は必要に応じフォーリーカテーテルを留置して計測する.


問題4

 外来受診の高齢患者で徐脈(<60回/分)を呈していた場合に鑑別に挙がらないものはどれか.1つ選べ.

A 右室梗塞
B 慢性心不全
C 高カリウム血症
D 甲状腺機能低下症
E 肺塞栓症


問題5

 突然の胸痛を主訴に受診した50歳男性.バイタルサインは血圧120/70 mmHg,脈拍80回/分 整,呼吸数24回/分,体温36.8℃,SpO2 92%.下記で急性冠症候群(ACS)の可能性を最も高める病歴は何か.

A 右肩・腕への放散痛がある
B 労作時に胸痛の悪化がある
C 発汗がある
D 吸気時に増悪する
E 対麻痺を伴う


問題6

症例:37歳男性
来院理由:朝から嘔吐と下痢が10回以上続いたために救急車で搬送された.
現病歴:4日前から風邪をひいて寝込んで食事をあまり摂っていなかった.朝から嘔気,嘔吐,下痢が出現し,水様性の嘔吐と下痢が10回以上続き,玄関口で倒れこんだために救急車で搬入された.食あたりするようなものは食べていないという.
既往歴:17歳 胃潰瘍,1型糖尿病でインスリン療法を受けている,27歳 アルコール性肝障害,34歳 両側大腿骨骨頭壊死
現症:意識 軽度見当識障害,体温36.9℃,呼吸数20回/分,脈拍119回/分,血圧109/32 mmHg.身体所見:上眼瞼結膜貧血なし,眼球結膜黄疸なし,心音清明で心雑音なし,呼吸音清明,腹部圧痛なし,下腿浮腫なし.
検査所見:尿所見;蛋白(3+),糖(+/-),ケトン体(+/-).血液所見;Hb 11.9 g/dL,Ht 35.6%,血小板11.3万/μL,白血球14,000/μL.血清生化学所見;血糖377 mg/dL,総蛋白7.4 g/dL,アルブミン3.3 g/dL,クレアチニン2.1 mg/dL,AST 150 IU/L,ALT 59 IU/L,LDH 798 IU/L.
この患者について次に行う検査として下記の選択肢から最も適切なものを選べ.

A 便培養
B プロカルシトニン検査
C 動脈血ガス採血
D 腹部エコー検査
E 腹部骨盤造影CT


問題7

 「失神」の患者が来院したときの対処で正しいものはどれか.1つ選べ.

A 58歳男性.数カ月前から動悸に気づいていたが放置.今日は排便時から動悸が始まり持続.その後トイレ内で失神,ERを受診.病歴を聴取しながらモニター心電図と静脈ライン確保を施行した.
B 80歳男性.いつもトイレで排便後に立ち上がったときに気を失うとのこと.一般外来を受診し,心原性失神など緊急性の高い疾患を検索したが,検査の結果これらの可能性が低そうなので,検査に異常を認めなかったことだけ伝えて帰宅させた.
C 25歳男性.今朝立った直後に失神し転倒したため来院.待合室での看護師のトリアージで食前の心窩部痛と黒色便の情報,血圧105/75 mmHg・脈拍110回/分 整とのことであった.血圧はさほど低くないと判断,歩いて診察室まで入ってもらった.
D 75歳男性.今朝咳嗽後に失神したため来院.高血圧や糖尿病・脂質異常症など冠血管危険因子はないが,最近脳梗塞をした友人がいたので心配で来院.高齢でありTIA(一過性脳虚血発作)の可能性が高いと判断,頭部MRIをすぐに行う指示をした.


問題8

 「しびれ」診療で正しいのはどれか.1つ選べ.

A 患者が「しびれ」を訴えれば,感覚障害を強く疑う.
B 「しびれ」に,運動麻痺を合併することはない.
C 動脈関連疾患で「しびれ」を生ずることは考えにくい.
D 救急の場においては,常に確定診断を目指す.
E 発症と経過は,「生命・機能予後のうえで重要な病態」を見逃さないために有用である.


問題9

 35歳女性.昼食でうどんを摂取した2時間後にジョギングをしたところ,顔面の腫脹に加え,蕁麻疹,息苦しさが出現したため来院した.これまで同様の食事を摂っても異常はなかった.
現症:体温36.5℃,呼吸数24回/分,脈拍108回/分,整,血圧90/70 mmHg,顔面は腫脹し発赤あり.会話は可能である.頸部に蕁麻疹を認める.気道の拘扼感あり.アドレナリン筋肉注射,酸素吸入および輸液で症状は回復した.
この疾患の予防として最も有効なのはどれか.1つ選べ.

A 減感作療法
B 食事後の運動制限
C 抗アレルギー薬投与
D 吸入用副腎皮質ステロイド投与
E 運動前の吸入用β受容体刺激薬投与


問題10

 脾摘後の敗血症の患者で問題となる原因微生物で最も頻度が高いものはどれか.

A 髄膜炎菌
B インフルエンザ桿菌(Haemophilus influenzae type b:Hib)
C 肺炎球菌
D Capnocytophaga canimosus
E マラリア


問題11

生来健康な42歳男性
主訴:咽頭痛
現病歴:3日前に39℃の発熱,咽頭痛があり,近医診療所を受診した.インフルエンザ迅速検査は陰性だったが,念のためオセルタミビルを処方された.来院当日になっても発熱が治まらず,咽頭痛が悪化し,声も嗄れてきた.つばも飲み込めない状態になったので夜間救急外来を受診した.
来院時身体所見:体温38.6℃,血圧101/70 mmHg,脈拍118回/分,SpO2 99%(room air),意識清明.開口障害1.5横指.オトガイ下から両側顎下部に圧痛を伴う著明な腫脹あり.stridorはなし.
この患者に対する初期治療として最も適切ではないものはどれか.1つ選べ.

A ヒドロコルチゾン200 mgを点滴投与し,そのまま翌朝まで経過観察する.
B アンピシリン/スルバクタムを1回3 g 6時間毎点滴投与を開始する.
C オンコールの耳鼻咽喉科医に速やかにコンサルトする.
D 気道閉塞に備えて麻酔科医に連絡しておく.
E 絶飲食にして補液を行う.


問題12

 壊死性筋膜炎の診断で最も有効なものはどれか?

A 血液検査
B 血液ガス分析
C X線検査
D CT検査
E 外科的試験切開


問題13

 肺癌にて外来化学療法中の65歳男性が背部痛を訴えて救急外来を受診した.痛みが強くて動けないと訴えている.以下で正しいものはどれか.1つ選べ.

A 下肢拳上は可能であったので,運動障害はないと判断した.
B 四肢の触覚はまったく問題がなく,感覚障害はないと判断した.
C 尿も便も出ているとのことだったので,膀胱直腸障害はないと判断した.
D X線写真で椎体の変形は認めなかったので,脊椎転移や脊髄圧迫症の可能性は低いと判断した.
E 脊髄圧迫症の可能性が否定できないので,緊急でMRIが撮影できる施設へ搬送した.


問題14

 肥大型心筋症について正しいのはどれか.1つ選べ.

A 肥大型心筋症において左室流出路狭窄の有無は予後に影響しない.
B 肥大型心筋症の突然死の原因の多くは拡張障害による心不全である.
C 閉塞性肥大型心筋症にβ遮断薬は禁忌である.
D 閉塞性肥大型心筋症において左室流出路狭窄の圧格差は利尿薬により減少する.
E 肥大型心筋症に心房細動が合併した場合,心血管予後に悪影響を与える.


問題15

 血球減少を伴う病態で最も緊急性が高いのはどれか.1つ選べ.

A 今朝から38.5℃の発熱と血圧低下あり.好中球数200/μL
B 10年の経過で進行した鉄欠乏性貧血あり.ヘモグロビン4.0 g/dL
C 胃潰瘍から活動性出血の疑いで頻脈あり.ヘモグロビン13.0 g/dL
D 再生不良性貧血で慢性的な血小板減少あり.血小板数1.0万/μL
E 胃癌で骨髄転移あり,全身性の出血傾向あり.血小板数7.7万/μL


問題16

 特に既往のない20歳女性が糖尿病性アシドーシスで来院した.
来院時血液ガス:pH 6.98,PCO2 12 mmHg,PO2 80 mmHg,HCO3 3 mEq/L,Na 132 mEq/L,Cl 92 mEq/L,血糖388 mg/dL
すぐに生理食塩水の大量輸液とインスリン持続点滴治療が始まった.
6時間後の血液ガス:pH 7.10,PCO2 27 mmHg,PO2 95 mmHg,HCO3 16 mEq/L,Na 140 mEq/L,Cl 112 mEq/L,血糖197 mg/dL
6時間後の血液ガスについて正しい記載を1つ選べ.

A アニオンギャップが開大している代謝性アシドーシスがある.
B アニオンギャップの開大していない代謝性アシドーシスと,呼吸性アルカローシスが合併している.
C アニオンギャップの開大していない代謝性アシドーシスに,呼吸性の代償が適切にされている.
D アニオンギャップの開大している代謝性アシドーシスと,呼吸性アルカローシスが合併している.
E アニオンギャップの開大していない代謝性アシドーシスに,呼吸性アシドーシスが合併している.


問題17

 緊急を要する高Ca血症の原因として頻度の高くないものはどれか.1つ選べ.

A 多発性骨髄腫
B 原発性副甲状腺機能亢進症
C ビタミンD中毒
D 悪性リンパ腫
E 慢性腎臓病ステージV


問題18

 次のうち血液培養が陽性でもコンタミネーションと考えられる場合はどれか.1つ選べ.

A 敗血症性ショックの患者で1日後に大腸菌陽性
B 感染性心内膜炎疑い患者で血液培養2セットともに黄色ブドウ球菌陽性
C 大腸穿孔で緊急手術となった患者で血液培養が1日後に嫌気性グラム陰性桿菌陽性
D 中心静脈カテーテル挿入されている患者の不明熱精査で,1日後と2日後にそれぞれ血液培養で表皮ブドウ球菌陽性
E 発熱精査目的で入院し,末梢ルートなしの状態で3日目に血液培養2セット中1セットでバシラス陽性


問題19

 61歳男性.糖尿病および高血圧の歴があり,20分ほど続いた右半身麻痺を主訴に外来受診.現在,麻痺は消失しており,神経学的所見に異常を認めない.血圧152/78 mmHg,脈拍78回/分 整,体温36.5℃,呼吸数16回/分.最も妥当と考えられる対応は,以下のうちどれか.1つ選べ.

A 精査の適応はなく,帰宅させる.
B 降圧剤の調整を行い,帰宅させる.
C 頭部CTの予約をとり,帰宅させる.
D 緊急で入院させる.
E 頭部CTを含めた精査を直ちに行う.


問題20

 単独で,胸水ドレナージの適応となる所見はどれか.2つ選べ.

A 多房性胸水
B 胸水のpH 7.30
C 胸水のLDH 500 IU/L
D 胸水のグルコース70 mg/dL
E 胸水のグラム染色で菌が見える


問題21

 急性胆管炎の診断基準(2013年改訂)に含まれていない所見・因子はどれか.1つ選べ.

A 腹痛
B 発熱
C 黄疸
D 肝機能異常(血液生化学検査)
E 胆管病変の画像所見


問題22

 消化管出血に関する記述で正しいものを1つ選べ.

A 低血圧,頻脈を伴う血便患者おいて,経鼻胃管から血液が吸引されなかったので上部消化管出血は否定できる.
B 他疾患で入院中の患者が消化管出血をきたした場合,死亡のリスクは外来で受診する消化管出血の患者のそれと変わらない.
C 腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術を受けた既往のある患者が,黒色便を主訴に外来を受診した.バイタルサインは安定していたので,2日後に内視鏡検査を予定しプロトンポンプ阻害薬を処方し帰宅させた.
D 急性膵炎に膵仮性嚢胞を合併し,中心静脈栄養を受けている患者が吐血した.仮性動脈瘤からの出血も疑われたので,緊急造影CTの準備をした.
E 高血圧,狭心症で加療中の73歳男性が吐血のため救急外来に搬送された.緊急内視鏡で胃体部後壁に露出血管から拍動性の出血を伴う潰瘍を認め,クリップにて止血した.止血ができたので,術後のモニターは不要と判断し,一般病棟へ入院とした.


問題23

 外傷初期診療で正しいものを2つ選べ.

A Primary surveyでは傷病者の生理学的評価が終了してから治療を行う.
B 「死の3徴」の一つである低体温を防ぐために早期から保温する.
C 外傷患者のショックでは,まず閉塞性ショックを考える.
D 出血性ショックを見たら大量血胸,腹腔内出血,骨盤骨折を検索する.
E 身体所見で緊張性気胸を疑ったら,胸部X線写真で確認する.


問題24

 リスクコミュニケーションにおいて最も重要性の低いアイテムは何か.1つ選べ.

A 対話
B ゼロリスク信仰の回避
C 雄弁
D 各論的議論
E 信頼


問題25

 以下の記載のうち正しいものを2つ選べ.

A 「入院させてほしい」などの要求には,毅然として応じられないことを述べるべきである.
B たとえ患者の希望にすべて沿うことができない場合でも,患者の希望に対して共感の意を伝えることはコミュニケーション上有益なことである.
C コミュニケーションにおけるエラーは医学的エラーに比べて減らすことが難しい.
D 正式なコンサルテーションが難しい場合は,居合わせた専門医への相談で代用することが有用である.
E 救急外来から専門医へのコンサルテーションは,救急患者のケアに参加してもらうプロセスであり,コンサルテーションした時点で自分の仕事が終了するわけではない.


(解答は本誌掲載)