HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧49巻13号(2012年12月号) 今月の主題「理解のための21題」
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今月の主題

「理解のための21題」


問題1

日本および欧米諸国での急性心不全患者の既往歴で最も頻度の多い疾患はどれか.1つ選べ.

A:糖尿病
B:脂質代謝異常
C:高血圧症
D:慢性閉塞性肺疾患
E:心房細動


問題2

68歳の女性.夜間,突然の呼吸困難のため緊急搬入された.3年前に高血圧の診断を受けていたが放置していた.救急車搬送中よりマスクで酸素(5l/分)を投与されていた.搬入時に起座呼吸を認め,拡張早期奔馬調律を聴取,喘鳴が著明で泡沫状でピンク色の喀痰排出を認めた.体重の増加は軽度で浮腫を認めない.呼吸数30/分.脈拍128/分,整.血圧178/96 mmHg.動脈血ガス分析:pH 7.32,PaO2 62 Torr,PaCO2 45 Torr,SaO2 89%.胸部X線写真は両側肺門部を中心に蝶形陰影を認めた.初期診療として投与すべき薬剤はどれか.

A:ニトログリセリン
B:プロプラノロール
C:プレドニゾロン
D:フロセミド
E:モルヒネ


問題3

次のうち急性心不全と急性呼吸促迫症候群(ARDS)の鑑別に有用である症状もしくは兆候はどれか.2つ選べ.

A:肺水腫
B:頸静脈怒張
C:低酸素血症
D:湿性ラ音
E:III音聴取


問題4

Nohria-Stevenson分類の実際のうち,以下から正しいものはどれか.2つ選べ.

A:頸静脈怒張,心拍出量が保たれていたので,“wet-cold(profile C)”と考えた.
B:座位で頸静脈が観察され,手指の先端まで温かかったので,“wet-warm(profile B)”と評価した.
C:臥位で頸静脈が観察され,手指の先端まで温かかったので,“wet-warm(profile B)”と評価した.
D:頸静脈の観察が困難で聴診上II pが亢進し,手指は冷たく,血圧90/70 mmHgだったので“wet-cold(profile C)”と考えた.
E:夜中に突然の呼吸困難で覚醒,座位にて軽快した.翌日受診.受診時呼吸困難なく,血圧180/100 mmHg,末梢冷感あり,頸動脈拍動は触知容易であった.以上の所見から受診時は“dry-warm(profile A)”と判断した.


問題5

BNPの生理作用として正しくないものはどれか.1つ選べ.

A:強心作用
B:血管拡張作用
C:ナトリウム利尿作用
D:交感神経活性抑制作用
E:レニン・アンジオテンシン系抑制作用


問題6

64歳男性の心不全患者において以下のような心エコー指標が得られた.左室駆出率(EF)55%,拡張期径(Dd)50 mm,僧帽弁逆流(MR)peak velocity 6.0 m/sec,左室流出路-時間速度積分値(LVOT-VTI)15 cm,E/E’20, E 80 cm/sec,E’4 cm/sec,減速時間(DcT)200 ms,A 90 cm/sec.この患者につき正しいものはどれか.2つ選べ.

A:末梢血管抵抗(SVR)は上昇している
B:左房圧は正常.
C:左室収縮能は低下している.
D:右房圧は上昇している.
E:左室拡張能は低下している.


問題7

急性心不全におけるSwan-Ganzカテーテルによる血行動態モニタリングの適応として,不適切なものを1つ選べ.

A:ショックを伴う肺水腫
B:肺水腫が心原性か非心原性かが不確かな場合
C:通常の治療に反応しない心不全
D:利尿薬に反応良好な高血圧性左心不全
E:Nohria-Stevenson分類Cの心不全で,末梢循環不全の有無が不明な場合


問題8

急性心不全の治療において正しいものはどれか.1つ選べ.

A:急性心不全の治療において強心薬は原則,禁忌である.
B:cardiac failureに対しては原則,血管拡張薬で治療する.
C:クリニカルシナリオ1に対しては利尿薬は使用してはいけない.
D:クリニカルシナリオ2に対してはSwan-Gantzカテーテルを留置すべきである.
E:クリニカルシナリオ2の治療は利尿薬と血管拡張薬が中心となる.


問題9

75歳の女性.10年前より高血圧を指摘され近医で治療を受けていた.夜間就眠中に急激な呼吸困難が出現し,起座呼吸の状態で救急車で搬送された.来院時血圧は180/104 mmHg,心拍数110/分,呼吸数32/分,両肺野全体にcoarse cracklesを聴取し,心尖部には収縮期雑音を認めた.肝・脾は触知せず,下腿に浮腫は認めなかった.胸部X線では両側に高度の肺うっ血が認められた.救急室での最初の薬物治療として最も適切なのはどれか.

A:ドブタミン
B:フロセミド
C:カルペリチド
D:硝酸薬
E:PDE阻害薬


問題10

フロセミドの副作用はどれか.1つ選べ.

A:高Na血症
B:低K血症
C:下腿浮腫の増悪
D:肺動脈圧の上昇
E:腎機能障害


問題11

急性心不全において低灌流を示唆する所見はどれか.2つ選べ.

A:四肢冷感
B:腹水
C:肝頸静脈逆流
D:低Na血症
E:起座呼吸


問題12

急性心不全に伴う心室不整脈に対する治療について誤った記述はどれか.1つ選べ.

A:電気的除細動後に心室頻拍を繰り返すためアミオダロンを投与した.
B:単発の心室期外収縮が繰り返し出現したが経過観察した.
C:QT延長よりtorsades de pointesとなり自然停止したが再発予防のためマグネシウムを投与した.
D:右脚ブロックおよび下方軸の心室頻拍でありベラパミルを投与した.
E:心室頻拍に対しニフェカラントを投与し,洞調律へ復帰後,QTcが0.48であったため投与を継続した.


問題13

心原性ショックの治療法として不適切なものはどれか.2つ選べ.

A:抗菌薬の使用
B:大動脈バルーンパンピング
C:カテコラミンの使用
D:利尿薬の使用
E:経皮的心肺補助法


問題14

心原性ショックに対する植え込み型補助人工心臓の適応で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:32歳の劇症型心筋炎
B:70歳の左冠動脈主幹部(LMT)ショック
C:55歳の拡張型心筋症の急性増悪
D:56歳の維持透析患者に合併した虚血性心筋症の急性増悪
E:21歳のDuchenne型筋ジストロフィーによる心筋症の急性増悪


問題15

急性心不全の初期対応に当たり,注意するべき点で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:クリニカルシナリオ(CS)とは,病態把握においては心不全治療のいずれの時期においても有用である.
B:呼吸不全を伴うCS1に対する初期治療の第一選択薬は利尿薬である.
C:クリニカルシナリオで治療を開始した後は,何度もアセスメントを行い軌道修正が必要である.
D:クリニカルシナリオとは,採血や心エコーなど,多くの指標を含めた初期評価方法である.
E:クリニカルシナリオとは,血圧を用いた指標であり,多くの急性期疾患においても有用である.


問題16

急性心不全体液貯留患者の治療薬として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A:トルバプタン
B:カルペリチド
C:トラセミド
D:ドブタミン
E:スピロノラクトン


問題17

クリニカルシナリオ3に分類される急性心不全の所見として認める頻度の最も低いものはどれか.1つ選べ

A:浮腫
B:低ナトリウム血症
C:四肢冷感
D:胸痛
E:乏尿


問題18

急性冠症候群に伴う急性心不全治療について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:非侵襲的陽圧換気は禁忌である.
B:心不全状態では経皮的冠動脈インターベンションは施行できない.
C:虚血が原因のポンプ失調例には大動脈内バルーンポンプ法が有効である.
D:ニトログリセリン静注薬は血圧にかかわらず使用できる.
E:心原性ショック例にはカテコラミンを用いる.


問題19

68歳の男性.4時間持続する胸痛を主訴に救急外来を受診した.心電図上II,III,aVfでSTの上昇を認め,トロポニンT陽性であったため,急性心筋梗塞の診断で緊急カテーテル検査が行われた.右冠動脈近位部に完全閉塞病変を認めたため,同部位に経皮的冠動脈形成・ステント留置術が行われ,右冠動脈の血流は改善した.術後もともと140 mmHgであった収縮期血圧が90 mmHgまで低下し,利尿が得られなくなった.心電図で右側前胸部誘導のST上昇を,心エコーで右室収縮能の高度低下を認めた.この患者に対する治療で正しいものはどれか.2つ選べ.

A:補液負荷をすることにより,血圧および心拍出量の上昇が期待できる.
B:積極的に利尿薬を投与し,利尿を図るべきである.
C:血管拡張薬を投与し,冠血流の改善を図るべきである.
D:血圧の低下が遷延し無尿となった際には,強心薬の投与や血液濾過を考慮すべきである.
E:急性期であっても持続性心室頻拍が認められた際には,植え込み型除細動器の植え込みを考慮すべきである.


問題20

慢性心不全患者のケアについて,誤った記述はどれか.1つ選べ.

A:心不全増悪による再入院の要因として,塩分・水分制限の不徹底がある.
B:入院早期から心不全管理および再入院予防について患者教育を実施する.
C:心不全患者および家族・介護者に対する教育・カウンセリングでは,症状のモニタリングと管理の1つとして,体重の自己測定を指導する.
D:患者教育は医師と看護師のみで行うことが望ましい
E:高齢者の場合,厳格な塩分制限の食事は食欲低下となり,低栄養状態を招く.


問題21

左室収縮機能の低下した慢性心不全において長期予後改善のために推奨されていない薬剤はどれか.2つ選べ.

A:ACE阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
B:β遮断薬
C:Ca拮抗薬
D:抗アルドステロン薬
E:PDE阻害薬


(解答は本誌掲載)