HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧49巻12号(2012年11月号) 今月の主題「理解のための22題」
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今月の主題

「理解のための22題」


問題1

CKDと診断されるのはどれか.

A:感冒で近医受診し,検尿を行ったら蛋白尿が陽性であった.
B:会社の健康診断で蛋白尿(+)と言われたため,2週間後に診療所で再検したところ,蛋白尿が(2+)に増えていた.
C:上気道感染感染時,肉眼的血尿が出たが,軽快した.
D:65歳男性.人間ドックを受けたら,クレアチニンが1.0 mg/dlのため,説明医師から,eGFRを計算すると60 ml/min/1.73 m2を切っており,また蛋白尿も軽度あるため,禁煙指導や,血圧管理の指導を受けた.自宅に帰って今までの検診結果を確認したところ,昨年の結果もクレアチニン1.1 mg/dlであった.
E:糖尿病歴の長い女性.コントロールも悪い.3カ月前アルブミン尿が30 mg/gCrであった.降圧剤などの変更を行ったら,今回はアルブミン尿が30 mg/gCr未満であった.


問題2

CKDの重症度分類2012に関して,正しいものを2つ選べ.

A:CKDの重症度はGFRのみで決定される.
B:CKDの重症度には原疾患を記載する.
C:GFR 28 ml/分/1.73 m2,尿蛋白1.5 g/日の患者はCKDの重症度分類G3bA3である.
D:最近3カ月で1日尿蛋白が0.8 gから1.2 gと増加した患者は腎専門医に紹介する必要はない.
E:検尿で尿蛋白2+,血尿3+が持続する患者は,腎臓専門医に紹介する.


問題3

CKD患者に対する指導として不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:喫煙者に対する禁煙指導
B:服薬コンプライアンスを励行する指導
C:高血圧患者に対する減塩指導
D:肥満患者に対する減量指導
E:腎不全患者に対する高蛋白指導


問題4

腎疾患患者における現病歴,身体所見として正しいものを1つ選べ.

A:急速進行性腎炎症候群とは,急性に発症し,血尿,蛋白尿,高血圧,糸球体濾過量低下および水分とナトリウム貯留を呈する症候群である.
B:ネフローゼ症候群における急性腎障害は,腎前性急性腎障害である.
C:高カルシウム血症では,テタニーと筋痙攣(Trousseau徴候,Chvostek徴候)が特徴的である.
D:腎血管性高血圧の特徴は,若年者,急激な血圧上昇,腹部血管雑音,高カリウム血症である.
E:腎疾患患者の発熱の主原因は,薬剤性発熱である.


問題5

尿異常で血尿と蛋白尿を認めない腎疾患はどれか.1つ選べ.

A:ループス腎炎
B:急速進行性糸球体腎炎
C:糖尿病性腎症
D:急性糸球体腎炎
E:IgA腎症


問題6

腎尿細管間質性腎炎で増加しないのはどれか.1つ選べ.

A:尿中β2ミクログロブリン
B:尿中α1ミクログロブリン
C:尿中Bence-Jones蛋白
D:尿中アルブミン
E:尿糖


問題7

次の腎臓超音波検査所見で,CKDステージの進展と相関しないのはどれか.1つ選べ.

A:腎長径の短縮
B:皮質の菲薄化
C:Central echo complex(CEC)の拡張
D:Resistive index(RI)の上昇
E:実質超音波輝度の上昇


問題8

60歳男性.20年前から高血圧を指摘され,近医通院していた.アムロジピン5 mgで血圧コントロールされていたが,腎機能障害が徐々に進行しているため腎臓内科に紹介された

 身長165 cm,体重65 kg,血圧150/80 mmHg,心拍69/分,呼吸12/分,SpO2 98%
 身体学的所見に異常はない
 血液検査:WBC 4,500/μl,Hb 9.0 mg/dl,MCV 90 fl,Plt 14万/μl,Cr 2.0 mg/dl(eGFR 28.1 ml/分/1.73 m2),BUN 40 mg/dl,Alb 4 g/dl,Na 145 mEq/l,K 6.0 mEq/l,Cl 115 mEq/l,Ca 8.5 mg/dl,P 4.5 mg/dl,フェリチン100 ng/ml,抗核抗体<40倍,補体正常,免疫グロブリン異常なし.
 尿検査:pH 6.0,潜血(-),蛋白(1+),尿蛋白0.1 g/gCr,FENa 1.5%
 腎臓エコー:両側腎萎縮を認める.水腎症はない.

この患者の最初に行うべき治療として誤っているものを1つ選べ.

A:炭酸水素ナトリウムを開始する.
B:ポリスチレンスルホン酸カルシウムを開始する.
C:ARBを開始する.
D:ESAを開始する.
E:「塩分6 g,1,800 kcal,蛋白50 g,カリウム制限」の栄養指導を行う.


問題9

慢性腎臓病(CKD)における降圧療法について正しい記載を1つ選べ.

A:糖尿病例ではCa拮抗薬を第一選択とする.
B:正常蛋白尿の非糖尿病例ではRAS抑制薬のみを第一選択とする.
C:高度蛋白尿例では0.15 g/gCr未満を目標とする.
D:降圧目標は診察室血圧で120/70 mmHgとする.
E:定期的検査によりeGFRや血清Kの急激な変化がないかチェックする.


問題10

45歳男性,20歳時に慢性糸球体腎炎を発症し,現在は血清クレアチニン値2.5 mg/dl,eGFR 28 ml/分,Hb値9.0 mg/dl,MCV 95 fl,MCH 90 pg,血清鉄濃度110 μg/dl,TSAT 25%,フェリチン120 ng/ml,血中エリスロポエチン濃度20 mIU/mlであった.消化管出血などの合併は認めない. この患者の貧血治療で正しい選択薬はどれか.1つ選べ.

A:鉄剤
B:ビタミンB12
C:エリスロポエチン製剤
D:エリスロポエチン製剤と鉄剤の同時投与
E:葉酸


問題11

以下の文章で正しいのはどれか.

A:痛風腎は透析導入の原因として多い.
B:尿酸の排泄経路は尿中排泄がほとんどである.
C:腎機能低下により尿中尿酸排泄量は増加する.
D:尿酸排泄促進薬はURAT1輸送体を抑制する.
E:アロプリノールは肝代謝を受ける.


問題12

慢性腎臓病(CKD)の脂質異常症について正しいのはどれか.2つ選べ.

A:脂質異常症は腎障害進行因子ではない.
B:CKD患者のLDLコレステロールの管理目標は140 mg/dl未満である.
C:スタチン治療は,尿蛋白減少効果とGFR低下抑制の効果がある.
D:スタチン間で腎保護作用の程度に差がある可能性がある.
E:保存期腎機能低下患者では,スタチン治療は心血管疾患の発症を予防しない.


問題13

CKDステージ4の患者でPTH分泌を抑制するものはどれか.2つ選べ.

A:活性型ビタミンD
B:FGF 23
C:高P血症
D:低Ca血症
E:アルカリフォスファターゼ


問題14

生活習慣病の予防のためには週23エクササイズ(Exercise=Mets×時間)の運動(活動)が推奨されている.これは体重60 kgの人ではおよそ何kcalに相当するか.1つ選べ.

A:600
B:1,400
C:2,000
D:3,500
E:6,000


問題15

経口吸着炭について,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:経口吸着炭は,インドキシル硫酸を腸管から便中に排泄させる.
B:経口吸着炭は,食事由来の蛋白から生成される尿毒症物質を除去するため,食直後に投与する.
C:新規に透析療法に導入される糖尿病腎症は,全患者の50%以上を占める.
D:経口吸着炭は,推算GFRが低下してから投与しても十分な効果が期待できる.
E:経口吸着炭は,腎障害のみならず,心血管疾患の抑制効果が期待できる.


問題16

糖尿病性腎症治療薬として今後期待されている薬剤ではないものを以下から2つ選べ.

A:Bardoxolone methyl
B:Rituximab
C:Eculizmab
D:Paricalcitol
E:Pirfenidone


問題17

日本人成人例における腎生検で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:病因分類はIgA腎症が最も多い.
B:臨床診断は慢性腎炎症候群が最も多い.
C:高齢者は成人腎生検例の10%未満である.
D:成人IgA腎症の男女比は,ほぼ1:1である.
E:高齢者は成人ネフローゼ症候群の約40%を占める.


問題18

急速進行性腎炎の確定診断のために必要な検査はどれか.2つ選べ.

A:MPO-ANCA
B:PR3-ANCA
C:検尿
D:尿素窒素
E:血清クレアチニン


問題19

薬剤性腎障害をきたす薬剤の臨床的特徴として正しいものはどれか.1つ選べ.

A:抗リウマチ薬であるブシラミンは尿細管壊死を起こすことが特徴である.
B:肝排泄性の薬剤では腎障害を起こすことはない.
C:高齢者では,心血管内カテーテル,手術などの操作の歴がなくても,抗凝固薬投与のみでコレステロール塞栓症を発症することがある.
D:ヨード系造影剤による腎障害の発症率は腎機能低下者と健常人で差がない.
E:薬剤性腎障害は薬剤の種類にかかわらず原因薬剤中止で速やかに改善する.


問題20

ネフローゼ症候群について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:糖尿病性腎症がネフローゼ症候群の原因となることはない.
B:ネフローゼ症候群では塩分8 g/日,摂取エネルギーと蛋白はできる限り減らすことが推奨される.
C:ループ系利尿薬とチアジド系利尿薬は高カリウム血症を起こしやすい.
D:体液量を管理するうえで利尿薬を投与する際は,尿量のみならず体重測定も重要である.
E:ネフローゼ症候群では血栓症の合併は稀である.


問題21

糖尿病性腎症の第2期の尿蛋白(尿アルブミン)はどれか.1つ選べ.

A:尿蛋白定性で±以上
B:尿蛋白定性で1+以上
C:尿中アルブミン値で30~299 mg/gCr
D:尿中アルブミン値で300 mg/gCr以上
E:尿中蛋白定量で1.0 g/gCr以上


問題22

1日尿蛋白量0.7 g, eGFR 55 ml/分/1.73 m2を呈する32歳の女性患者に対し腎生検を施行し,蛍光抗体法でIgA腎症と診断した.光顕所見では,総糸球体12個のうち,全節性硬化を3個に,細胞性半月体を2個に,癒着を3個に認めた. この患者で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:臨床的重症度(C-Grade)はIIである.
B:組織学的重症度(H-Grade)はIII A/Cである.
C:透析導入リスクは高リスク群である.
D:ステロイド療法は適応とならない.
E:蛋白質摂取量は0.8~1.0 g/kg標準体重/日とする.


(解答は本誌掲載)