HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧49巻10号(2012年10月号) 今月の主題「理解のための27題」
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今月の主題

「理解のための27題」


問題1

感染症診療の思考過程で,誤っているものを1つ選べ.

A:患者背景から,罹患する疾患の傾向を把握することができる.
B:罹患臓器が把握できれば,具体的な鑑別診断を考えることができる.
C:Empiric therapyで治療を開始しても改善がない場合に,検体を採取し微生物検査に提出する.
D:原因微生物判明後にdefinitive therapyへと変更して治療を最適化する.
E:経過観察の場合には,各臓器に特異的な指標を参考にする.


問題2

わが国で一般に感受性試験の判定に用いられている基準を決定している機関を1つ選べ.

A:厚生労働省
B:日本臨床微生物学会
C:日本臨床検査医学会
D:世界保健機関(WHO)
E:米国Clinical Laboratory and Standards Institute(CLSI)


問題3

急性喉頭蓋炎で最もよくみられる症状は何か.1つ選べ.

A:発熱
B:嚥下困難
C:吸気性喘鳴(ストライダー)
D:嗄声
E:耳痛


問題4

グラム染色で起炎菌がはっきりしない場合に抗菌薬を選択するうえで最も重要でない項目は次のうちどれか.1つ選べ.

A:喫煙歴
B:収縮期血圧
C:患者背景
D:呼吸副雑音の強さ
E:脱水の有無


問題5

無症候性細菌尿で,治療が必要となるのはいずれの場合か.2つ選べ.

A:ステロイドなどの免疫抑制剤内服中の患者
B:尿路カテーテル挿入中の脊椎損傷の患者
C:妊婦
D:前立腺手術前の患者
E:糖尿病患者


問題6

壊死性筋膜炎について正しいものを次から2つ選べ.

A:致死的疾患であるため,早期に診断することが重要である.
B:水疱や出血を伴ったり,赤紫色の変色などの皮膚所見に乏しければ否定できる.
C:起因菌が推定できない場合,メロペネム単独で初期治療を開始する.
D:抗菌薬の選択が予後に最も寄与する.
E:局所の所見に乏しくても,全身状態が悪ければ,壊死性筋膜炎を想定すべきである.


問題7

糖尿病性足病変への対応として最も適切なのはどれか.1つ選べ.

A:足壊疽の治療のためには細菌学的検査が重要であり,表面の拭い検体を培養に提出してからdebridementした.
B:糖尿病性足病変では,初期治療として全例で緑膿菌のカバーをしなくてはいけない.
C:2 cm×2 cm程度の病変があり,単純X線写真で骨に異常がなかったため,骨髄炎はないと判断した.
D:糖尿病性足病変の治療に下肢の血行再建術は有効ではない.
E:感染が合併していない足病変には抗菌薬の投与は不要であり,感染の予防効果も証明されていない.


問題8

以下の記述で正しくないものを2つ選べ.

A:プロトンポンプ阻害薬はClostridium difficile感染の危険因子である.
B:腹部大動脈の人工血管置換後の男性がサルモネラ腸炎にかかった場合,抗菌薬投与の適応である.
C:既往歴のない40歳男性が右下腿の蜂窩織炎で入院となった.入院後6日目に下痢を認めたため,便の細菌培養検査を提出した.
D:コレラは小腸型の腸管感染を起こす.
E:下腹部痛,血性下痢,テネスムス,38.5℃の発熱を認める患者に止痢剤のみを投与した.


問題9

不明熱に対するアプローチとして最も望ましいのはどれか.

A:膠原病を疑った場合,できるだけ多くの自己抗体検査を依頼する.
B:悪性腫瘍を疑った場合,できるだけ多くの腫瘍マーカー検査を依頼する.
C:バイタルサインが切迫した状態で,培養採取せずに経験的に抗菌薬治療を開始する.
D:側頭動脈炎を疑った場合,側頭動脈生検なしで経験的にステロイドを使用する.
E:病状が安定していれば原因と考えられる薬剤を中止する.


問題10

以下で下部消化管由来の嫌気性菌を想定した際に単独では使用できない抗菌薬はどれか.2つ選べ.

A:アンピシリン/スルバクタム
B:ピペラシリン/タゾバクタム
C:セフェピム
D:メロペネム
E:レボフロキサシン


問題11

細菌性髄膜炎に関して誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:古典的3徴(発熱,項部硬直,意識障害)が揃わない場合も多い.
B:脳ヘルニアの除外のため,腰椎穿刺の前に頭部CTを施行することは必須である.
C:Partially treated bacterial meningitisの髄液所見は,ウイルス性髄膜炎と類似することがある.
D:Empiric therapyとして,第3世代セフェム系抗菌薬とバンコマイシンを併用する.
E:副腎皮質ステロイドは,抗菌薬と同時あるいは直後に投与する.


問題12

敗血症性ショックの初期蘇生として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A:中心静脈圧を8~12 mmHgとなるよう輸液をしなければならない.
B:平均動脈圧が65 mmHgを上回るようにノルアドレナリンを使用した.
C:尿量が0.5 ml/kg/hrを下回ったため生理食塩水の投与を開始した.
D:中心静脈血酸素飽和度が70%を下回っていたため,ドブタミンの投与を開始した.
E:治療開始2時間後の乳酸クリアランスが10%を下回ったため,輸液を中止した.


問題13

発熱性好中球減少症(FN)でエンピリック治療に使用しない薬剤はどれか.2つ選べ.

A:ピペラシリン/タゾバクタム
B:セフトリアキソン
C:セフェピム
D:メロペネム
E:ミノサイクリン


問題14

脾臓に関する以下の記述のなかで,正しいものを1つ選べ.

A:脾臓は白脾髄,赤脾随ならびにmarginal zoneの3部から構成されており,その血流はほとんどがopen theoryによる経路をたどる.
B:脾臓の濾過機能は白脾髄に,抗原の認識などの免疫能は赤脾髄の機能に依存している.
C:脾臓で産生される免疫関連物質としては,properdinやtuftsinといったオプソニンとIgAがよく知られている.
D:脾臓摘出術後重症感染症の起因菌としては,肺炎球菌がその過半数を占め,その次に多いのが頻度順に髄膜炎菌,インフルエンザ菌である.
E:脾臓摘出術後重症感染症の予防にはワクチン接種が有効であり,外傷などの予定外脾臓摘出術の場合には,術後なるべく早期のワクチン接種が望ましい.


問題15

35歳の男性.特記すべき既往歴は認めない.2週間前に38℃の発熱があり,近医で抗菌薬が処方されていた.数日間は解熱していたが,その後再び倦怠感,発熱が出現し持続するため救急外来を受診した.体温39.5℃,脈拍106回/分,血圧128/72 mmHg,心尖部にLevine III/IVの収縮期雑音を聴取する.数年来放置した歯肉炎を認める以外,四肢末梢には異常所見は認めない. この患者に関して,正しいことはどれか.1つ選べ.

A:経胸壁心エコーで疣贅がなければ,心内膜炎は否定できる.
B:経食道心エコーで疣贅がなければ,心内膜炎は否定できる.
C:早急に広域スペクトラムの抗菌薬を投与し,血液培養2セット採取する.
D:眼底の所見を確認する.
E:治療期間は,抗菌薬投与の開始日を第1日目として考える.


問題16

結核について誤っているものを1つ選べ.

A:世界的にみて日本は結核の低蔓延国である.
B:新たに結核と診断される人の約40%は無症状である.
C:肺外結核を発見したときは,肺結核の合併,排菌の有無の評価が重要である.
D:新規結核の約80%は肺結核であり,その約半数で喀痰塗沫検査が陽性となる.
E:核酸増幅法は治療中の経過判定には用いない.


問題17

マラリアを疑い,検査を行うこととした.診断するうえで,最も重要な検査を選べ.

A:動脈血液ガス
B:血液塗抹ギムザ染色
C:胸部X線写真
D:尿検査
E:血糖


問題18

4月のあるとき,国会○○院予算委員会会期中に議員たちが次々に発熱,頭痛,咽頭痛というインフルエンザ様症状を訴えて来院してきた.発熱はあるが,全身状態は良好である.次のうち,行うべきではないのはどれか.1つ選べ.

A:胸部X線写真
B:皮疹やリンパ節腫脹,潰瘍性病変などの検索
C:アセトアミノフェンを処方.速やかに会議に戻り,国民に尽くすよう伝える.
D:感染症専門家への速やかな相談
E:患者の個室管理


問題19

グラム陰性桿菌感染症について正しい記載はどれか.1つ選べ.

A:グラム陰性桿菌感染症の治療原則は,βラクタム薬とアミノグリコシド薬の併用である.
B:ESBL産生腸内細菌感染症の第一選択薬は,カルバペネム系抗菌薬である.
C:多剤耐性緑膿菌の多くは保菌にとどまらず,感染症を発症し重症化する.
D:日本においては,多剤耐性アシネトバクターが多剤耐性緑膿菌より分離頻度が多く,大きな問題となっている.
E:多剤耐性グラム陰性桿菌に対しては,保菌の段階から積極的に抗菌薬治療を行う.


問題20

次より誤った選択肢を1つ選べ.

A:移植後の感染症は急激な経過をたどることがある.
B:病歴と所見は移植後の感染症の診断に役立つ.
C:移植後の感染症は時期により,細菌以外の感染症も積極的に考慮する必要がある.
D:移植後に感染症予防のための抗生剤が投与されている場合は目的としている感染症は起こらない.
E:移植後の感染症診断のために積極的な組織診断が必要なこともある.


問題21

35歳男性.HIV感染症にて抗HIV薬3剤(FTC/TDF+DRV/r)内服中.ウイルス量は検出感度未満で抑制された状態が3年間続いており,CD4値も512/μlと安定している.
前日からの発熱と呼吸苦にて救急外来受診. 血圧110/78 mmHg,心拍数110/分.体温38.2℃,呼吸回数20回/分,room airにてSpO2:92%
左下肺野にラ音があり,胸部X線上左下肺野の浸潤影を認めた.
今後の対応について,下記の中から正しいものを1つ選べ.

A:HIV感染症があるので入院中は接触感染対策を行う.
B:HIV感染症が判明しているので,市中肺炎の治療もエイズ拠点病院で行う必要がある.
C:HIV感染者なので,市中肺炎治療後も液性免疫不全を生じるため予防的抗菌薬を一定期間投与する必要がある.
D:内服を一旦中断した場合,再開時は急激な免疫反応を起こさないように抗HIV薬は1剤ずつ順番に開始する.
E:CD4値が高い状態で安定しており,現時点では非HIV感染者と同様に市中肺炎としての検査・治療を行う.


問題22

かかりつけの外来患者が中国の上海へ2年間赴任することになった.対応として,次のうち不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:英文で基礎疾患に関する診断書を作成して渡した.
B:インターネットなどで現地の医療情報を確認するよう伝えた.
C:渡航前に渡航外来を受診して予防相談をするように勧めた.
D:マラリア予防のためメフロキンを処方した.
E:渡航前に健康診断を受ける必要があることを伝えた.


問題23

次の疾患のうち,最適治療として,抗菌薬の併用療法が標準治療であるものはどれか.1つ選べ.

A:ペニシリン感受性肺炎球菌による肺炎
B:腸球菌による自己弁の感染性心内膜炎
C:大腸菌による尿路感染によるseptic shock
D:サルモネラによる細菌性腸炎
E:ヘルペス脳炎


問題24

重症肺炎にて入院した54歳男性.気管内挿管されICU管理となっていた.入院5日目に悪寒戦慄を伴う発熱を認め,このとき採取した血液培養2セットのうち1セット(好気・嫌気ボトル)から黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出された.抗菌薬投与期間を決めるために必要な検査として適切なものはどれか.1つ選べ.

A:追加の血液培養検査
B:経食道心エコー検査
C:眼底検査
D:腹部・骨盤造影CT
E:上記すべて


問題25

無症候性細菌尿の場合でも抗菌薬投与の適応となる患者背景・状況はどれか.2つ選べ.

A:妊婦
B:糖尿病
C:高齢者
D:尿道バルーン長期留置者
E:経尿道的前立腺切除術前


問題26

WHOの手指衛生5つのタイミングではないものはどれか.1つ選べ.

A:患者に触れる前
B:清潔/無菌操作の前
C:体液に曝露された場合
D:患者に触れた後
E:患者の周辺の環境や物品に触れた後


問題27

中心静脈カテーテル管理に関して正しいのはどれか.1つ選べ.

A:内頸静脈アプローチで最も血流感染症発生率が低い.
B:穿刺部位の剃毛が必要である.
C:クロルヘキシジン・銀サルファジアジンでコートされたカテーテルが導入されてからわが国の中心静脈関連血流感染症は減少している.
D:カテーテル挿入時はマキシマル・バリア・プリコーションが広く推奨されている.
E:カテーテルの内腔数と血流感染症の発生率は無関係である.


(解答は本誌掲載)