今月の主題
「理解のための26題」
問題1
病歴聴取と診断推論について正しいのはどれか.1つ選べ.
A:患者の話した言葉をそのまま受動的に聞きカルテに記入するのがよいカルテ記載である.
B:pertinent positiveとは,陽性情報を列記したものである.
C:患者の話を聞き始めた早い段階で診断仮説を作ることが重要である.
D:病歴聴取は情報を集める段階なのでなるべく多くの情報を集めることに集中する.
E:重大な疾患を見落とさないためには,commonな疾患から鑑別診断を考える.
問題2
身体診察について,正しいのはどれか.1つ選べ.
A:感度の高い身体所見は,陽性尤度比が高い.
B:一般的に,身体所見は病歴と比べて除外に役立つ.
C:身体所見は病歴と比べて,取る医師による判定の食い違いが多い.
D:スクリーニングを主な目的とする身体所見では,陽性尤度比が重要である.
E:複数の身体所見による事後割合の推定には,各所見の尤度比を次々掛け合わせればよい.
問題3
診断サポートツールについて誤っているのはどれか.
A:疾患の適切な拾い上げに使用される.
B:一般内科・プライマリケア外来診療に有用である.
C:診断に有用な項目のなかから統計的に有意なものだけを選んで作成する.
D:診断サポートツールの結果はあくまで医師の判断材料の1つとして用いる.
E:簡便であるため誰でも比較的に簡単に使用でき,結果の信頼性も高い.
問題4
全身性炎症反応症候群の該当基準に該当しない項目はどれか.1つ選べ.
A:体温>38℃または<36℃
B:呼吸数>20/minまたはPaCO2<32 mmHg
C:心拍数>90/min
D:白血球数>12,000/mm3または<4,000/mm3
E:血清CRP≧5 mg/dl
問題5
感染性心内膜炎の合併症である塞栓症を起こしやすいのはどの時期か.1つ選べ.
A:治療前
B:治療開始後
C:治療開始2週間まで
D:治療開始2週後から4週後まで
E:全治療期間
問題6
CPPDにおいて関節液を偏光顕微鏡で観察した際に認められる結晶はどれか.1つ選べ.
A:尿酸結晶
B:リン酸アンモニウムマグネシウム結晶
C:ピロリン酸カルシウム結晶
D:シスチン結晶
E:シュウ酸カルシウム結晶
問題7
関節リウマチ診断で手のX線写真に骨びらんなどの異常がない場合に,次の画像検査のうち診断を確定するのに有効といえない検査はどれか.1つ選べ.
A:超音波エコー
B:CT
C:MRI
D:骨シンチ
E:PET-CT
問題8
リウマチ性多発筋痛症に関して,正しいものを1つ選べ.
A:リウマチ性多発筋痛症は,中年男性に多くみられる疾患である.
B:リウマチ性多発筋痛症と高齢発症の関節リウマチの鑑別は,リウマチ因子で行う.
C:CRPやESRといった炎症反応が正常のリウマチ性多発筋痛症もある.
D:リウマチ性多発筋痛症はHLA-B27との関連が言われている.
E:リウマチ性多発筋痛症では,滑膜炎を認めない.
問題9
29歳男性.特に既往なし.娘の幼稚園の運動会での綱引き中に失神した.意識は1分後に回復した.その後,救急搬送された.父親に突然死の既往あり.診察時,この患者に認められる身体所見はどれか.
A:Valsalva手技で増強する収縮期雑音
B:Valsalva手技で減弱する収縮期雑音
C:吸気で増強する収縮期雑音
D:吸気で増強する拡張期雑音
E:呼気で増強する収縮期雑音
問題10
肺塞栓症の病歴または身体所見で誤っているのはどれか.1つ選べ.
A:血栓形成のリスク因子は,血流の停滞,血管内皮障害,血液凝固能の亢進に大別される.
B:咳嗽,血痰,失神がよくみられる症状である.
C:慢性肺血栓塞栓症の反復型では,突然の呼吸困難や胸痛を反復して認める.
D:慢性肺血栓塞栓症の潜伏型では,徐々に労作時の息切れが増悪することがある.
E:典型的な身体所見として,頻脈,頻呼吸,II音の肺動脈成分(II p)の亢進がある.
問題11
心不全患者において還流障害(compromised perfusion)を示唆する身体所見はどれか.
A:脈圧率の低下(脈圧/収縮期血圧<25%)
B:交互脈
C:症候性低血圧(起立性ではない)
D:精神症状
E:上記のすべて
問題12
73歳男性.既往歴なし,30本/日×53年の喫煙歴あり.慢性の労作時呼吸困難にて来院.症状は安静時に消失し,体位で増強あるいは改善することはない.身体診察所見では,全肺で呼吸音減弱を認めるのみである.確定診断に必要な検査を1つ選べ.
A:胸部CT検査
B:心エコー検査
C:ガリウムシンチグラフィ
D:呼吸機能検査
E:気道過敏性試験(アストグラフ)
問題13
症例:65歳男性.
主訴:浮腫.
現病歴:2年前の冬から,寒冷曝露により手指の皮膚が蒼白となり,暖めると赤くなってから元の皮膚色に戻る現象があった.半年前から下痢が続き,体重が減少していたが,数カ月前から下肢優位にむくみ始め,最近腹部が膨満してきた.少し前から,手指が腫れぼったく屈曲しにくい感じがある.
身体診察所見:手指の皮膚は緊張し張った状態.より近位の皮膚には明らかな異常を認めない.聴診では肺底部後腋窩線上にinspiratory fine cracklesを聴取する.
本症例の診断,評価において関連性,有用性の低い所見,検査はどれか.1つ選べ.
A:毛細血管拡張
B:ばち状指
C:空腸吸引液培養
D:抗核抗体
E:拡散能
問題14
潰瘍性大腸炎の発症や再燃の抑制因子として報告されているものはどれか.2つ選べ.
A:喫煙
B:虫垂切除
C:NSAIDs投与
D:動物性脂肪摂取
E:Crohn病の家族歴
問題15
虫垂炎に対する診断予測ツールとして有名なAlvarado Score(MANTLES Score)の項目に含まれているものはどれか.2つ選べ.
A:右下腹部痛の自覚
B:食欲不振
C:38℃以上の発熱
D:白血球数10,000/μl以上
E:CT画像における虫垂の腫大
問題16
82歳男性.発熱,嘔吐,右季肋部痛を主訴に受診.来院時,体温38.6℃,血圧76/50 mmHg,意識レベルはやや低下していた.腹部超音波検査を施行したところ,胆石と肝内胆管の拡張を認めた.適切な処置はどれか.2つ選べ.
A:緊急胆嚢摘出術の適応である.
B:緊急に経皮的胆道ドレナージを試みる.
C:緊急に内視鏡的胆道ドレナージを試みる.
D:広域の抗菌薬を使用し保存的に経過をみる.
E:まずは入院とし,後日MRCPなど精査をすすめる.
問題17
尿路感染症に関して以下のもので正しい選択肢はどれか.1つ選べ.
A:排尿時痛の症状があれば,膀胱炎と確定診断できる.
B:尿試験紙法が陰性であれば,尿路感染は否定できる.
C:無症候性細菌尿は,すべて治療の適応にならない.
D:50歳以下の男性の膀胱炎は頻度が低い.
E:尿培養からコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が検出された場合には,コンタミネーションと考えてよい.
問題18
排尿困難を主訴とする疾患のうち,発熱を伴うものはどれか.1つ選べ.
A:尿道炎
B:膀胱がん
C:前立腺肥大症
D:膀胱炎
E:急性細菌性前立腺炎
問題19
以下の症状のうち,骨盤内炎症性疾患(PID)の患者にみられる臨床症状の特徴として,最も合致しないものを1つ選べ.
A:両下腹部痛
B:発熱
C:帯下の増加
D:嘔吐
E:排尿時痛
問題20
血小板減少単独の臨床症状として間違っているものはどれか.1つ選べ.
A:脳出血
B:消化管出血
C:皮下出血
D:頬粘膜出血
E:関節内血腫
問題21
リンパ節腫脹の鑑別診断を考える際に有用でないものはどれか.1つ選べ.
A:年齢
B:リンパ節の部位
C:リンパ節の大きさ
D:胸部X線
E:可溶性インターロイキン2受容体
問題22
甲状腺機能低下症で通常認められない症状はどれか.1つ選べ.
A:発汗低下
B:皮膚乾燥
C:耐暑性低下
D:全身倦怠感
E:巨舌
問題23
慢性原発性副腎不全症で認められる症状で正しいものはどれか.1つ選べ.
A:低血圧は原発性より続発性副腎不全で頻度が高い.
B:男性では腋毛や恥毛の脱落を認める.
C:低血糖は原発性副腎不全の特徴である.
D:色素沈着は原発性より続発性副腎不全で頻度が高い.
E:Addison病で認められる色素沈着はステロイド補充により改善する.
問題24
腰部脊柱管狭症に伴う間欠跛行と鑑別が必要な疾患はどれか.1つ選べ.
A:糖尿病
B:末梢動脈疾患/閉塞性動脈硬化症
C:狭心症
D:変形性膝関節症
E:脳梗塞
問題25
髄膜炎のときに認められる神経所見はどれか.2つ選べ.
A:Romberg徴候
B:Babinski徴候
C:項部硬直
D:Kernig徴候
E:Horner徴候
問題26
87歳,もともと健康な女性.入院7日前より39.0℃の発熱をきたし,近医受診.CRP高値と乾性咳嗽が認められたが,胸部X線では明らかな肺炎所見を認めなかったため,気管支炎の診断でクラリスロマイシンを処方され帰宅した.入院3日前までにも38℃台の発熱が持続し,抗菌薬をレボフロキサシンに変更されたが,徐々に活気の低下が目立ち紹介入院となった.発熱,活気低下,軽度の乾性咳嗽および頭痛以外にははっきりした自覚症状はなく,咽頭痛,関節痛,腹痛なども訴えはなかった.よく聞くとjaw claudicationが存在した.
身体所見:血圧140/75 mmHg,脈拍122回/分,呼吸数22回/分,発熱38.8℃,酸素飽和度97%(RA),意識清明,結膜貧血なし,咽頭正常,側頭動脈硬結なし.頸部軟でJolt accentuationなし.Kernig徴候なし.胸部ラ音なし.心音異常なし.腹部異常なし.四肢および皮膚にも異常認めない
血液検査:WBC 15,000/μl,CRP 14 mg/dl,そのほか特異的な異常なし.
診断を確定するため,あるいは治療の優先順位の最も低いものはどれか.
A:血液培養をとる
B:頭部MRIをとる
C:生検を考慮する
D:プレドニンの早期投与を考慮する
E:抗菌薬を静脈注射で投与する
(解答は本誌掲載) |