HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧49巻7号(2012年7月号) 今月の主題「理解のための27題」
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今月の主題

「理解のための27題」


問題1

肝硬変症の説明として正しいものはどれか.1つ選べ.

A:本邦では肝硬変患者は男性より女性に多い.
B:肝硬変の形態学的分類にはWHOの分類が用いられている.
C:経皮的肝生検での肝硬変診断率はほぼ100%である.
D:低蛋白血症に対して芳香族アミノ酸製剤を投与する.
E:肝性脳症に対して高蛋白食を開始する.


問題2

日本消化器病学会の肝硬変診療ガイドラインについて正しい記述はどれか.2つ選べ.

A:専門家のコンセンサスに基づいて作成されている.
B:EBMの立場から保険診療の問題点が明確になっている.
C:大部分はわが国での臨床成績を反映したものである.
D:消化管出血の部分は欧米ガイドラインとの差が目立つ.
E:構成,形式は先行する欧米ガイドラインを踏襲している.


問題3

日本の肝硬変の成因別頻度について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:B型肝炎ウイルスによるものが最も多い.
B:B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの2つの成因で肝細胞癌合併肝硬変の約半数を占める.
C:非アルコール性脂肪肝炎による肝硬変は肝細胞癌を合併しない.
D:男性に比べて女性では原発性胆汁性肝硬変の頻度が高い.
E:非アルコール性脂肪肝炎の発症頻度は約10%である.


問題4

NASH肝硬変を疑う所見として適切でないのはどれか.1つ選べ.

A:高度の肥満
B:AST優位(AST>ALT)のトランスアミナーゼ上昇
C:血小板数低下
D:コリンエステラーゼ高値
E:ヒアルロン酸高値


問題5

非代償性肝硬変を示唆する病歴や所見で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:持続する口腔や眼の乾燥感
B:眼球結膜の黄染と尿の濃染
C:るいそうを呈する肝硬変患者の急激な体重増加と腹部膨満
D:代償性肝硬変患者における浮腫の出現
E:肝性口臭や羽ばたき振戦の出現


問題6

肝硬変を血液検査で診断しようとする場合,誤りはどれか.

A:診断予測式は肝硬変の成因別に作らなければならない.
B:肝硬変を血液生化学検査で診断できる確率は約20%である.
C:肝硬変に至る前の線維化(F2,F3)診断も可能になってきた.
D:肝硬変の診断において,肝生検にはサンプリングエラーが付きまとう.
E:肝硬変を血液生化学検査で診断する場合,検査値の受ける影響に注意する.


問題7

B型肝硬変,C型肝硬変のウイルスマーカーについて正しいのはどれか.2つ選べ.

A:HBV genotype Cはgenotype Bに比べ肝硬変や肝細胞癌を早期に発症し,予後不良である.
B:HBV core関連抗原は肝細胞内のcccDNA量を反映しており,核酸アナログ治療によりHBV DNAと同時期に消失する.
C:HCV抗体陽性は中和抗体であり,C型肝硬変では感染後長期間を経ているので陽性となる.
D:IFN治療効果はHCV genotype 1型では2型より低く,genotype 1bのcore領域,NS5A領域の遺伝子変異はウイルス側の治療予測因子となる.
E:宿主のIL-28B遺伝子座のminor allele(TG/GG)をもつ症例では,major alleleである(TT)症例に比してIFNが効きやすい.


問題8

超音波による肝硬変の診断において,特徴的でないものはどれか.1つ選べ.

A:肝表面の凹凸化
B:肝縁の鋭化
C:肝実質の粗雑化
D:脾腫
E:胆嚢壁肥厚


問題9

以下のうち,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:腹腔鏡検査は肝硬変の診断に有用である.
B:腹腔鏡下肝生検は,直視下に止血操作が可能なので,比較的安全である.
C:腹腔鏡によるステージ診断と肝生検組織所見によるステージ診断に乖離が生じることがある.
D:肝硬変の原因によって肝硬変の腹腔鏡所見は異なる.
E:腹腔鏡所見は肝生検組織所見よりも線維化の進行度が低く診断されることが多い.


問題10

肝硬変で起こる病態はどれか.2つ選べ.

A:心拍出量低下
B:末梢血管拡張
C:レニン-アンギオテンシン系亢進
D:肝内エンドセリン-1低下
E:Kupffer細胞機能亢進


問題11

門脈圧亢進症性胃症(PHG)について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:PHGでは炎症性変化は乏しい.
B:PHGは胃底部と胃体部に好発する.
C:PHGの重症度は門脈圧に相関する.
D:胃静脈瘤を有する症例ではPHGがよくみられる.
E:食道静脈瘤に対する硬化療法後や結紮術後にPHGの増悪がみられる.


問題12

腹水の診断について,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:肝硬変腹水の生成に腎でのNa・水再吸収亢進が関与している.
B:血清-腹水アルブミン濃度較差(SAAG)は腹水の原因が門脈圧亢進によるか否かの指標になる.
C:結核性腹膜炎による腹水のSAAGは通常,1.1 g/dl未満である.
D:特発性細菌性腹膜炎(SBP)の臨床症状として,発熱と腹痛は必発である.
E:腹腔内に外科的感染巣がなく,腹水多形核白血球数が250/mm3以上であれば培養結果を待たずにSBPの治療を開始する.


問題13

肝性脳症の誘因になりにくい薬剤はどれか.2つ選べ.

A:睡眠薬
B:鎮静薬
C:抗菌薬
D:胃粘膜保護薬
E:利尿薬


問題14

肝肺症候群について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:肝疾患,肺のガス交換障害,肺内血管拡張が3徴候である.
B:胸部X線写真撮影で特徴的な所見を呈する.
C:肺内血管拡張の評価に肺血管造影検査が必須である.
D:肝硬変患者が呼吸困難を訴えたら,肝肺症候群を考えてコントラスト心エコーを行う.
E:現在,肝移植が最も有効な治療法である.


問題15

肝硬変患者の栄養について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:肝硬変患者における蛋白栄養障害の頻度は低い.
B:蛋白栄養障害は肝硬変患者の予後を悪化させる.
C:蛋白栄養アセスメントは間接熱量測定で行う.
D:肝硬変患者の蛋白低栄養状態は利尿薬で治療する.
E:エネルギー低栄養状態は分岐鎖アミノ酸顆粒で治療する.


問題16

B型肝硬変の診断,治療について誤っているものを1つ選べ.

A:腹腔鏡像と肝生検組織像が乖離する場合がある.
B:ALT正常,HBV DNA量低値であれば治療適応はない.
C:核酸アナログ投与により肝発癌は抑制できる.
D:血小板数が低下しない症例も存在する.
E:核酸アナログ製剤の第1選択はエンテカビルである.


問題17

C型代償性肝硬変に対してペグインターフェロンα2a少量長期治療を行う場合,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:ゲノタイプ1b型は適応にならない.
B:90 μgを毎週投与する必要がある.
C:HCV RNAが陰性化しない場合には発癌抑止効果がない.
D:投与開始24週間目のAFP値の正常化が目標となる.
E:HCV RNA陰性化しない場合にはテラプレビルを加える.


問題18

C型慢性肝疾患の肝炎活動性に最も関与するのはどれか.1つ選べ.

A:銅
B:鉄
C:亜鉛
D:リン
E:マグネシウム


問題19

食道・胃静脈瘤について正しいのはどれか.2つ選べ.

A:食道・胃静脈瘤出血時にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与が有用である.
B:食道・胃静脈瘤の供血路や排出路を把握するには,3D-CTが有用である.
C:胃静脈瘤出血に対する第1選択の治療法は,cyanoacrylate系薬剤注入法である.
D:硬化療法(EIS)とは,Oリングを用いて静脈瘤を機械的に結紮する手技である.
E:APC地固め法はEVLに比し再発率が高い.


問題20

B-RTOについて誤った記述はどれか.2つ選べ.

A:本邦だけでなく欧米でも,胃静脈瘤の第一選択治療となっている.
B:B-RTO治療に使用する硬化剤は,エタノラミンオレートである.
C:胃静脈瘤のすべての症例でB-RTOは施行可能である.
D:B-RTO治療後の食道静脈瘤の増悪は必ず内視鏡でフォローする必要がある.
E:B-RTOの重篤な合併症に腎障害がある.


問題21

門脈血流量を減少させる薬剤はどれか.1つ選べ.

A:亜硝酸薬
B:インターフェロン
C:アンギオテンシンII受容体拮抗薬
D:β遮断薬
E:α1遮断薬


問題22

55歳,男性.大酒家で2年前より腹水が消長しており,半年前に肝性脳症が出現したことがある.2週間前より腹水,下腿浮腫があり,初診外来で利尿薬を処方されていたが,大量の下血が2回あり,夜間に救急外来を受診した.来院時,黄疸,女性化乳房,著明な腹水,クモ状血管腫を認めた.血圧88/56 mmHg,脈拍110/分.正しい記述はどれか.1つ選べ.

A:発熱,腹痛がなければ腹水試験穿刺は必要でない.
B:フロセミドやカンレノ酸カリウムは低カリウム血症の原因となる.
C:食塩摂取制限は食欲を減退させるので行わない.
D:直ちに腹水全量排液を行い,患者のQOL改善を計る.
E:血管確保のうえ,上部消化管内視鏡検査を行う.


問題23

肝腎症候群の病態において合致しないものはどれか.1つ選べ.

A:尿中ナトリウム低下
B:エンドトキシン血症
C:交感神経系の亢進
D:特発性細菌性腹膜炎の合併
E:中心静脈圧低下


問題24

肝硬変に伴う耐糖能障害に関して正しいのはどれか.1つ選べ.

A:空腹時血糖の著明な上昇がみられる.
B:糖尿病性網膜症などの合併症発生率がきわめて高い.
C:インスリン抵抗性を伴うことが多い.
D:厳格な食事・運動療法が勧められている.
E:インスリン抵抗性改善薬が第一選択薬である.


問題25

肝性脳症の治療について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:分岐鎖アミノ酸輸液
B:高蛋白食
C:合成二糖類
D:難吸収性抗菌薬
E:亜鉛製剤


問題26

部分的脾動脈塞栓療法(PSE)の合併症でないものはどれか.1つ選べ.

A:門脈血栓症
B:脾膿瘍
C:発熱
D:腹水
E:間質性肺炎


問題27

肝細胞癌と関連がないものを1つ選べ.

A:喫煙
B:慢性肝炎
C:肝硬変
D:DNAメチル化
E:経口避妊薬


(解答は本誌掲載)