HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧49巻5号(2012年5月号) 今月の主題「理解のための22題」
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今月の主題

「理解のための22題」


問題1

次のなかで正しいものはどれか.2つ選べ.

A:食事療法は,糖尿病の診断と同時に開始する.
B:運動療法は,糖尿病の診断と同時に開始する.
C:薬物療法は,食事・運動療法の効果をみるため,治療開始後2~3カ月待たねばならない.
D:欧米では,糖尿病と診断されると生活習慣改善と同時にメトホルミン投与が勧められているが,わが国ではスルホニル尿素薬を開始する.
E:薬物療法を始めても,食事・運動療法だけに戻すことも可能な場合がある.


問題2

DPP 4阻害薬の投与で分泌が低下するホルモンはどれか.1つ選べ.

A:インスリン
B:ソマトスタチン
C:グルカゴン
D:GLP-1
E:GIP


問題3

DPP-4阻害薬は,インクレチンの作用を高めるため開発された糖尿病治療薬であるが,DPP-4阻害薬が作用する主要なインクレチンは以下のどれか.2つ選べ.

A:GIP
B:グルカゴン
C:GLP-2
D:GLP-1
E:ソマトスタチン


問題4

ビルダグリプチンについて正しいものはどれか.1つ選べ.

A:DPP-4と水素結合する.
B:通常は1日3回投与が必要である.
C:重度の肝機能障害患者へは慎重に投与する.
D:重度の腎機能障害患者へは慎重に投与する.
E:2012年2月現在,ほかの経口糖尿病薬との併用は保険適用でない.


問題5

GLP-1の作用として誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:インスリン分泌の促進
B:グルカゴン分泌抑制
C:消化管でのブドウ糖吸収抑制
D:膵β細胞の増殖促進
E:胃排泄運動の抑制


問題6

グリニド薬について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:持続性インスリン分泌促進薬であるSU薬との併用が特に有用である.
B:1型糖尿病患者に対してインスリン療法との併用でその効果が期待できる.
C:速効性持続型インスリン分泌促進薬であり,主に「食前の高血糖」を改善させてHbA1c値を強力に低下させる.
D:グリニド薬が適応となる症例は,膵β細胞機能がある程度保持されているような比較的早期の2型糖尿病患者である.
E:食後高血糖改善薬であるα-グルコシダーゼ阻害薬との併用は認められていない.


問題7

次の中から,本邦の保険診療上GLP-1アナログ製剤であるエキセナチド(バイエッタ®)と併用できない経口血糖降下薬を2つ選べ.

A:ビグアナイド系薬剤
B:SU薬
C:α-グルコシダーゼ阻害薬
D:チアゾリジン系薬剤
E:グリニド薬


問題8

αグルコシダーゼ阻害薬の使用を慎重に行うべき病態はどれか.1つ選べ.

A:インスリン初期分泌が低下している早期の2型糖尿病患者
B:心血管リスクを有する耐糖能異常(IGT)
C:肥満の2型糖尿病患者
D:強化インスリン療法を行っている1型糖尿病患者
E:腸閉塞の既往のある2型糖尿病患者


問題9

次のうち正しいものを1つ選べ.

A:チアゾリジン誘導体の代表的な副作用として,腹部膨満がある.
B:チアゾリジン誘導体の代表的な副作用として,乳酸アシドーシスがある.
C:チアゾリジン誘導体は脂肪細胞の核内受容体型転写因子PPARα に結合し,脂肪細胞の分化を促進する.
D:チアゾリジン誘導体のインスリン抵抗性改善メカニズムの一つとして,脂肪細胞の小型化に伴う悪玉アディポカインの一つアディポネクチンの分泌低下がある.
E:チアゾリジン誘導体は,2型糖尿病患者の心血管イベントに対する抑制効果が証明されている.


問題10

バイエッタにより期待される効果でないものはどれか.1つ選べ.

A:β細胞数の増加
B:胃内容物排出速度の遅延
C:体重減少効果
D:上気道炎リスク上昇
E:HbA1cの改善


問題11

次のうち,BOT(basal supported oral therapy)で正しいものを1つ選べ.

A:BOTのよい適応は1型糖尿病の若年者である.
B:BOT開始後,HbA1c(JDS値)は10%から8.5%に改善したので,そのまま外来で様子をみている.
C:BOTは糖尿病合併妊娠で血糖コントロールが悪い場合にも用いられる.
D:BOTと強化インスリン療法では,強化インスリン療法のほうが血糖コントロールに優れている.
E:BOTでは,主に超速効型インスリンが用いられる.


問題12

2型糖尿病患者におけるインスリン治療について正しい記載はどれか.1つ選べ.

A:インスリン依存状態になった場合にインスリン治療の適応となる.
B:経口糖尿病治療薬とインスリン治療の併用は行わない.
C:プレミクスドインスリンを1日3回使用することはない.
D:持効型インスリンアナログ製剤の1回注射によってHbA1c値で約2~3%の低下が期待できる.
E:血糖自己測定(SMBG)のデータを基にインスリン投与量の調整をすることは有用である.


問題13

インスリン製剤について誤っているのはどれか.2つ選べ.

A:速効型インスリンは食事の30分前に皮下注射する.
B:中間型インスリンは食事の60分前に皮下注射する.
C:超速効型インスリンは食事の30分前に皮下注射する.
D:混合型インスリンは静脈内投与しない.
E:超速効型インスリンは静脈内投与しない.


問題14

インスリン療法について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:責任インスリンとは血糖自己測定を行った時点の測定値に最も影響を及ぼすインスリンのことである.
B:現在,日本では超速効型インスリンは4種類販売されている.
C:食後の追加インスリンに相当するものが超速効型・速効型インスリンである.
D:網膜症の進行例でも血糖コントロールが不良であれば,急速な血糖是正が望ましい.
E:インスリン治療は経口糖尿病薬が無効な時に使用を考えればよく,早期の導入の必要はない.


問題15

CSIIの適応や使用方法で間違いはどれか.1つ選べ.

A:CSIIの良い適応は著明な「暁現象(早朝の血糖値上昇)」,夜間の低血糖,血糖値変動が大きい,頻回インスリン注射療法にもかかわらず満足する血糖値管理ができない症例である.
B:皮膚刺入部周囲の炎症リスクは,(1)HbA1c高値例,(2)女性,(3)肥満症例が挙げられ,皮膚の細菌数には関係しない.
C:皮膚刺入部の針やエラスチックチューブ針(金属針は体内に残らない)の交換は通常2~3日に1回行われる.
D:早朝の「暁現象」に合わせ,3:00~7:00頃に一日で最も多いベース設定になる.起床が遅い症例は暁現象の時刻も遅らせる.
E:CSII使用者の多くはパートナーとの性行動の妨げになると感じている.


問題16

1型糖尿病患者に対するインスリン療法で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:インスリン強化療法は,患者本人が自己血糖測定を併用し,食事,血糖値に応じてインスリン投与量を自主的に調節する方法である.
B:速効型インスリン(レギュラーインスリン)は食直前注射が基本である.
C:妊婦に対するグラルギン,デテミル使用の安全性は確立されていない.
D:2型糖尿病患者と同様,厳格な食事療法が基本である.
E:カーボカウント法は食事カロリーに合わせてインスリン投与量を決める方法である.


問題17

糖尿病合併妊娠について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:妊娠中の血糖コントロールに食事療法は必要ない.
B:妊娠中のスルホニル尿素薬の使用は胎児に安全である.
C:子宮内環境は児の将来の生活習慣病の発症に影響する.
D:妊娠中のインスリン療法は持続皮下インスリン注入療法(CSII)である.
E:妊娠末期は非妊娠時に比べ,必要インスリン量が増加する.


問題18

急性期の血糖管理について適切な記述はどれか.1つ選べ.

A:1型糖尿病患者では血糖が安定しないので血糖に応じた血糖スライディングスケールを用いる.
B:術後は食事量が安定しないので,主食摂取量に応じ食直後にインスリン量を変化させ皮下注射する食事スライディングスケールを用いる.
C:1,800ルールとは1,800を1日使用インスリン総量で除し速効型インスリン1単位で低下する血糖値を概算する方法である.
D:術後は早めに高カロリーの設定で栄養管理する.
E:心筋梗塞後に血糖を100 mg/dl程度にした場合に200 mg/dl程度より死亡率は半減する.


問題19

次の選択肢の中から正しいものを1つ選べ.

A:糖尿病の合併は,心血管病の発症リスクを50倍に上昇する.
B:DPP4は蛋白質リン酸化酵素である.
C:GLP-1受容体の発現部位は膵臓に限局する.
D:DPP4には膜結合型と分泌型の2種類のタイプがある.
E:血管新生ケモカインVEGFはDPP4によって分解され不活性化される.


問題20

次のうち誤っているものを2つ選べ.

A:2010年末の統計調査によれば,わが国の透析患者の原因腎疾患で最も多いのは,糖尿病性腎症である.
B:糖尿病性腎症の顕性腎症期の目標血圧は125/75 mmHg未満である.
C:ARBは糖尿病性腎症すべての病期において,その進行を遅らせる可能性があることが報告されている.
D:腎障害患者にARBを投与した時,高カリウム血症を発症する恐れがあり,十分に気を配る必要がある.
E:両側腎動脈狭窄症を合併している患者には,レニン・アンギオテンシン系阻害薬は慎重投与の対象となる.


問題21

糖尿病網膜症に対する高血圧治療として,正しくないものはどれか.1つ選べ.

A:減塩目標値は6 g/日未満である.
B:糖尿病合併高血圧の降圧目標は130/80 mmHg未満である.
C:ACE阻害薬およびARBによる糖尿病網膜症抑制効果が報告されている.
D:ARB使用後,血清クレアチニンが30%以上上昇する場合は専門医への紹介も考慮する.
E:ACE阻害薬は空咳の副作用があるので,ARBが使用できないときのみ選択する.


問題22

65歳の男性,肥満があり40歳時に2型糖尿病の診断となり通院中であった.1年前からHMG-CoA阻害薬(スタチン)内服中であるが,高トリグリセリド血症が続くため,フィブラート製剤を追加した.1週間前から感冒様症状が出現したが自宅で経過をみていたところ,昨日から全身に筋肉痛が出現,尿が赤褐色となったため来院.
この患者で異常を認めないと考えられる検査項目はどれか.1つ選べ.

A:AST
B:CK
C:血中ミオグロビン
D:尿中ミオグロビン
E:尿中赤血球


(解答は本誌掲載)