HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧49巻4号(2012年4月号) 今月の主題「理解のための30題」
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今月の主題

「理解のための30題」


問題 1

次のうち正しいものはどれか.1つ選べ.

A:神経救急・集中治療の対象疾患のほとんどは脳卒中である.
B:脳卒中の臨床像と病態は多様性に富み,非定型的な脳卒中や脳卒中と紛らわしい疾患も多い.
C:脳卒中の予後は合併症よりも脳卒中自体により規定される場合が多い.
D:蘇生の概念は,以前の心肺脳蘇生から心肺蘇生に移り変わった.
E:ICU入室の重症例では,該当疾患以外の専門ICU入室例の院内死亡率は,より門戸の広いgeneral ICU入室例と比べて良好である.


問題 2

神経救急患者の初療に当たり,最初に確認すべき所見はどれか.1つ選べ.

A:血圧
B:上気道閉塞の有無
C:Glasgow Coma Scale
D:瞳孔不同
E:血糖値


問題 3

意識障害について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:上行性網様体賦活系の障害で意識障害が起こる.
B:低血糖で片麻痺が起こりうる.
C:くも膜下出血は頭部CTで除外できる.
D:栄養状態が著しく悪い場合,ビタミンB1に先立ってブドウ糖を投与する.
E:項部硬直がない場合,中枢神経系感染症は否定的である.


問題 4

次のうち心原性失神を疑う病歴ではないものはどれか.1つ選べ.

A:仰臥位での失神
B:失神直前の呼吸困難
C:繰り返す失神
D:うっ血性心不全の既往歴
E:突然死の家族歴


問題 5

次のうち,緊急性の高い頭痛として適当でないのはどれか.1つ選べ.

A:58歳男性.5日前の午前2時頃に右眼窩に拍動性頭痛を認め,同5時頃に自然に軽快した.右眼の流涙と結膜充血を伴う.
B:55歳女性.前日午後8時20分頃突発する激しい頭痛で,嘔吐を伴い,その後も痛みが続いている.
C:23歳女性.3日前から拍動性頭痛があり,増悪し,嘔吐を伴い,本日全身の強直性痙攣が出現した.
D:68歳男性.5日前から右側に拍動性頭痛を自覚しており,増悪傾向で,側頭部に血管の怒張を認める.
E:35歳男性.4日前から38.5℃の発熱とともに拍動性頭痛があり,前日からわけのわからないことを言い始めた.


問題 6

45歳の女性.今朝起床時から右耳の閉塞感,回転性めまいがあり,安静にしていてもめまいが治まらないため来院した.めまいと右耳の閉塞感以外の神経症状は認めない.数年前から同様の発作を2カ月に1回程度反復している.この患者の診断として考えられるのは,以下のうちどれか.

A:前庭神経炎
B:めまいを伴う突発性難聴
C:Ménière病
D:良性発作性頭位めまい症
E:Wallnberg症候群


問題 7

軽症の上肢運動麻痺を調べる検査はどれか.2つ選べ.

A:上肢Barré徴候
B:第5指徴候
C:Hoover徴候
D:Mingazzini試験
E:Lasègue徴候


問題 8

16歳の男性.徹夜で試験勉強をした朝方に,初回の痙攣発作を起こして,救急搬送された.熱性痙攣はなく,その他の既往に特記事項はなく,内服薬もない.知能は正常で,その他に神経学的に異常を認めない.問診でしばしば朝起床後に上肢のピクツキがあったという.この症例の診断と今後の治療法の組み合わせで正しいものはどれか.1つ選べ.

A:進行性ミオクローヌスてんかん/フェニトイン
B:若年ミオクロニーてんかん/バルプロ酸
C:側頭葉てんかん/カルバマゼピン
D:特発性全般てんかん/ガバペンチン
E:パニック障害/ジアゼパム


問題 9

せん妄の原因としてよく見受けられる薬剤はどれか.2つ選べ.

A:ベンゾジアゼピン系薬物
B:抗うつ薬
C:セフェム系抗菌薬
D:プロトンポンプ阻害薬
E:H2受容体拮抗薬


問題 10

72歳男性.68歳時に胃がんのため胃全摘術を施行された.2カ月前から何となく元気がなく,食欲も低下していた.外にほとんど出ず,自室でぼうっとしていることが多くなった.1カ月前ぐらいから痩せが目立つようになっていた.夜眠れないといい,ワインを寝る前に飲むようになった.1週間前から急におかしなことを言うようになり,トイレの場所もわからなくなった.このため家族に「急にぼけてしまった」といわれて連れられてきた.身長165 cm,体重42 kg,血圧145/90 mmHg,脈拍85/分,体温37.5℃.話しかけてもほとんど返事がない.この患者でまず実施する対応として誤りを1つ選べ.

A:改訂長谷川式簡易知能スケール
B:血糖値の測定
C:MRI検査
D:使用薬物の確認
E:希死念慮の確認


問題 11

次の文章で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:視交叉よりも中枢側の病変では両眼性の視野異常を呈することが多い.
B:側頭動脈炎では失明の危険がある.
C:両耳側半盲は外側膝状体の病変に特徴的である.
D:Neuromyelitis opticaの診断にはアクアポリン-4抗体の検出が重要である.
E:視覚野前方の障害では,対側眼の耳側に半月状の視野欠損が出現する.


問題 12

54歳女性.生来健康であまり病院にかかることはなく,2週間前に風邪をひいた時にも自然に治った.しかし,数日前から左を向いた時に物が2重に見えるようになり,徐々に増悪するため受診した.診察上,図のような眼症状を認めた.検者の指を追視させたが右眼は正中より内側には向かなかった.その他に明らかな神経症状を認めなかった.
次のうち,最初にすべきことはどれか.

 眼症状

A:眼科に依頼し,眼球運動の精査を行う.
B:末梢血・血液生化学をスクリーニングし,糖尿病などをチェックする.
C:とりあえずMRIとMRAを至急で依頼する.
D:Fischer症候群を疑い,早急に髄液検査をする.
E:テンシロンテストを行い,重症筋無力症をルールアウトする.


問題 13

障害を受けると口唇音の発音が困難になる脳神経はどれか.1つ選べ.

A:顔面神経
B:舌咽神経
C:迷走神経
D:副神経
E:舌下神経


問題 14

65歳の男性.
主訴:意識障害,歩行困難.同居している家族によると前日から話しかけても会話が成立せず,本日は一人で歩くことができなくなっていたため,救急車で来院した.頭痛なし.先行感染なし.
既往歴:特記事項なし.
生活歴:飲酒量は2日で日本酒1升.食事もとらずに朝から飲んでいることが多かった.
一般身体所見:意識レベルはJCS I -3.体温35.4℃.血圧90/60 mmHg,脈整.
神経学的所見:項部硬直なし.眼球運動は全方向性に追視不能.顔面運動麻痺なし.感覚障害なし.指鼻試験では右でdysmetriaを認めた.
この患者で最も考えられる疾患はなにか.1つ選べ.

A:Wernicke脳症
B:小脳炎
C:甲状腺機能低下症
D:Guillain-Barré症候群
E:脳梗塞


問題 15

抗精神病薬が有効な病態はどれか.2つ選べ.

A:ミオクローヌス
B:片側バリズム
C:コレア
D:ジストニア
E:悪性症候群


問題 16

次の疾患のうち解離性感覚障害を示さないものを1つ選べ.

A:前脊髄動脈閉塞症
B:亜急性連合性脊髄変性症
C:脊髄空洞症
D:Brown-Séquard症候群
E:脊髄癆


問題 17

排尿反射を抑制していると考えられている部位はどれか.2つ選べ.

A:大脳皮質排尿中枢
B:線条体
C:橋排尿中枢
D:下腹神経
E:骨盤神経


問題 18

脳出血の治療について誤っているものを2つ選べ.

A:重症例においては,抗潰瘍薬の予防的投与が推奨される.
B:早発性(14日以内)のけいれん発作は再発しやすいため,抗てんかん薬の継続的治療が推奨される.
C:視床出血に対し血腫除去術は推奨されない.
D:肺塞栓予防のため弾性ストッキング,間欠的空気圧迫法が推奨される.
E:急性期の血圧上昇が高血圧性脳出血の診断根拠となる.


問題 19

破裂動脈瘤に対する外科治療に関して誤りを1つ選べ.

A:再破裂予防目的の降圧は,収縮期血圧90 mmHgを限度にすべきである.
B:全身状態が不安定な場合,外科治療よりも全身管理を優先すべきである.
C:重症例においては血管内治療を行うことが多い.
D:開頭クリッピング術やコイル塞栓術後の症例では,MRIは体内に金属が存在するため施行不可能である.
E:通常,奥行きに比べて入り口が大きな瘤に対しては,血管内治療(コイル塞栓術)が困難である.


問題 20

脳梗塞のt-PA治療が適応となる症例はどれか.1つ選べ.

A:痙攣後,右片麻痺を認め1時間で受診した68歳男性.
B:起床時右片麻痺を認め,2時間で来院した65歳男性.
C:右片麻痺発症1時間で受診した脳出血の既往のある70歳男性.
D:半年前に脳梗塞の既往のある発症1.5時間で受診した78歳男性.
E:心房細動でワルファリン服用中(PT-INR 1.73),1時間前に右片麻痺を生じた60歳男性.


問題 21

脳静脈血栓症に関して正しいものはどれか.2つ選べ.

A:脳静脈血栓症の症状として頭痛のみの場合がある.
B:脳静脈血栓症が出血性梗塞を呈することは少ない.
C:静脈内血栓はT1強調画像で低信号となる.
D:脳静脈血栓症の急性期治療はヘパリン持続静注を行う.
E:出血性梗塞が認められた場合は,直ちにヘパリン投与を中止する必要がある.


問題 22

以下の鎮静薬で最も強い抗痙攣作用を有する薬剤はどれか.1つ選べ.

A:ミダゾラム
B:チオペンタール
C:イソフルラン
D:デクスメデトミジン
E:プロポフォール


問題 23

重症筋無力症の経過中にクリーゼとなる頻度とクリーゼに伴う死亡率の組み合わせで最も適切な値はどれか.1つ選べ.

A:クリーゼの頻度80%,死亡率20%
B:クリーゼの頻度40%,死亡率5%
C:クリーゼの頻度40%,死亡率0%
D:クリーゼの頻度10%,死亡率5%
E:クリーゼの頻度10%,死亡率0%


問題 24

Guillain-Barré症候群について,誤っているものはどれか.2つ選べ.

A:ステロイドパルス療法は一般に有効でない.
B:軸索型は予後が悪い.
C:急性期の治療として,免疫グロブリン静注,血漿交換が有効である.
D:感染後7日以内に発症することが多い.
E:発症時,髄液の蛋白細胞解離が必ず現れる.


問題 25

髄膜炎の検査,治療について正しいのはどれか.2つ選べ.

A:脳ヘルニアの徴候があっても髄液検査を施行する.
B:細菌性髄膜炎では,原因菌が未確定時でも経験的治療を開始する.
C:クリプトコッカス髄膜炎の診断がついたら初日からアムホテリシンBを直ちに0.7~1.0 mg/kg/日投与する.
D:HSV脳炎が疑われたら初日からアシクロビル10 mg/kg/回を8時間ごとに投与する.
E:結核性髄膜炎が疑われたらイソニアジド,リファンピシン,ピラジナミドで治療を開始する.


問題 26

多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎(NMO)の急性期治療として正しいものはどれか.1つ選べ.

A:NMOではステロイドパルス療法は無効であるので,血液浄化療法を行う.
B:MSでは血漿交換療法は無効であるので行わない.
C:NMOではステロイドパルス療法後のプレドニゾロンはできるだけ短期に終了する.
D:MS,NMOとも再発と診断した場合には,ステロイドパルス療法を行う.
E:NMOを疑った場合,抗AQP4抗体の結果が判明するまで,治療は行わないのが望ましい.


問題 27

70歳の男性.5年前に一過性心房細動を指摘され,ワルファリン内服中.本人が自転車走行中に誤って転倒.左側頭部強打し,頭皮裂創から持続性の出血あり.意識障害認め,救急搬送された.来院時意識GCS1/E2/V4/M,瞳孔左3 mm 右2 mm,気道は保たれているが下顎呼吸あり,血圧80/50 mmHg,頭部以外には明かな外傷を認めない.初療として最もふさわしいのはどれか.2つ選べ.

A:切迫するDを宣言し,頭部CT施行前に脳神経外科医を呼集する.
B:緊急で頭部CTを施行する.
C:気管挿管する.
D:ワルファリンのリバースを行う.
E:末梢静脈路を確保し急速輸液を行う.


問題 28

74歳男性.頸椎後縦靱帯骨化症を以前に他医で指摘されていたが,階段で転倒して頭部をぶつけてから四肢麻痺を認め,来院した.来院時,四肢の自動運動は認められなかったが,肛門周囲の知覚は保たれていた.全身精査の結果,四肢麻痺は頭部外傷によるものではなく,脊髄損傷によるものと診断された. この患者の麻痺の程度をFrankel分類で表すとどれか.1つ選べ.

A:Frankel A
B:Frankel B
C:Frankel C
D:Frankel D
E:Frankel E


問題 29

転移性脊椎腫瘍に特徴的な単純X線所見はどれか.1つ選べ.

A:椎間板腔の狭少化
B:椎弓辺縁の不整像
C:椎体の魚椎様変形
D:椎体の楔状変形
E:椎弓根輪の消失


問題 30

有機リン中毒においてみられやすい症状または所見はどれか.2つ選べ.

A:縮瞳
B:口渇
C:散瞳
D:便秘
E:筋攣縮


(解答は本誌掲載)