今月の主題
「理解のための29題」
問題1
次のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.
A:下痢とは,糞便中の水分量が100 ml/日の状態を指す.
B:大腸に起因する下痢は小腸に起因する下痢に比べて糞便中の水分量が多くなる傾向にある.
C:甲状腺機能低下症では便秘を生じるが下痢は起きない.
D:脳腸相関と呼ばれる消化管運動調節にはセロトニンが関与している.
E:イリノテカンによって生じる下痢はプロスタグランジン産生亢進のみが原因とされる.
問題2
下記の障害で便秘をきたしにくいのはどれか.1つ選べ.
A:蠕動運動
B:胃結腸反射
C:小脳
D:排便反射
E:延髄・視床下部
問題3
下痢の診断の進め方において正しいものは次のどれか.1つ選べ.
A:下痢は主要な消化器症状であり,消化管検査を行うことが診断の早道である.
B:急性下痢は感染によることが多く,便培養を提出後に抗菌薬を投与する.
C:内視鏡検査は慢性下痢の鑑別診断における第1選択である.
D:慢性下痢の診断において,全身を診て考えることが重要である.
E:頻度の高い原因疾患を想定し,稀な疾患は当初は無視してもよい.
問題4
腸管の運動を抑制する薬剤はどれか.1つ選べ.
A:酸化マグネシウム
B:オピオイド系薬剤
C:フェノールフタレイン系薬剤
D:アントラキノン系薬剤
E:ジフェノール系薬剤
問題5
下痢の原因検索のために行われる便を材料とした検査と,その検査で異常が認められる原因疾患の組み合わせのうち,正しい組み合わせを2つ選べ.
A:CDチェック―偽膜性腸炎
B:Sudan III染色―乳糖不耐症
C:便中白血球―サルモネラ腸炎
D:外観が粘血便―アデノウイルス感染性腸炎
E:沈殿法による集卵―糞線虫症
問題6
75歳男性.3カ月ほど前から排便回数が減っており,時々血便を認めた.1週間前から排便がなく来院した.
来院時に行う検査および処置として誤っているものはどれか.
A:腹部X線検査
B:直腸診
C:血液検査
D:下剤の投与
E:腹部超音波検査
問題7
わが国において最も年間報告事件数の多い食中毒起因菌はどれか.1つ選べ.
A:サルモネラ
B:腸炎ビブリオ
C:ウェルシュ菌
D:腸管出血性大腸菌
E:カンピロバクター
問題8
35歳の男性,1週間前からの下痢と体重減少,腹痛を主訴に来院.本人の希望でHIV検査を施行したところスクリーニング・確認検査とも陽性でCD4が350/mlであった.
次の疾患のうち,この病態の鑑別疾患として考慮しなくてよいものはどれか.2つ選べ.
A:アメーバ赤痢
B:クリプトスポリジウム症
C:CMV腸炎
D:播種性MAC症
E:サルモネラ腸炎
問題9
82歳男性.脳梗塞後遺症のため胃瘻による経管栄養管理にて在宅介護されていたが,誤嚥性肺炎のため入院.広域セフェム系抗菌薬,クリンダマイシンの投与を継続中であったが,3日前より頻回の下痢,39℃台の発熱をきたした.下腹部に圧痛あり,WBC12,200/ml,CRP10.4 mg/dlと上昇を認めている.この患者への対応として正しいものはどれか.1つ選べ.
A:頻回の下痢に対し止痢薬を投与した.
B:ただちに便培養,C. difficile毒素検出キットを提出した. C:侵襲が高いため内視鏡検査は考慮しなかった.
D:C. difficile毒素陽性であったが,経口摂取不能な患者であったため,バンコマイシンの点滴投与を選択した.
E:患者ケアにかかわる医療従事者に対し,感染対策として速乾式アルコール製剤を推奨した.
問題10
潰瘍性大腸炎の臨床的重症度診断の項目に含まれないものはどれか.1つ選べ.
A:下痢の回数
B:貧血の程度
C:CRP
D:赤沈
E:発熱
問題11
次の下痢をきたす疾患のうち,内視鏡検査で正常にみえる粘膜からの生検が診断に有用でない疾患を2つ選べ.
A:大腸癌
B:好酸球性胃腸炎
C:collagenous colitis
D:消化管アミロイドーシス
E:慢性膵炎
問題12
急性下痢症の治療として誤っているのはどれか.2つ選べ.
A:嘔吐を伴っているため,経静脈的に補液を行った.
B:受診時に腹痛があったので直ちにブチルスコポラミンを投与した.
C:下痢が激しいためまずロペラミドを投与した.
D:細菌性腸炎が疑われたため,上級医と相談のうえ抗菌薬の投与を行った.
E:カンピロバクター腸炎と診断しクラリスロマイシンを投与した.
問題13
急性下痢症の食事療法,対応について正しいものを1つ選べ.
A:スポーツ飲料は下痢による脱水時の水・電解質補給に適している.
B:ノロウイルスは次亜塩素酸で失活する.
C:コレラは本邦の感染症法において2類に属する.
D:高ナトリウム血症性脱水に対して経口補水液(ORS)は有効でない.
E:高齢者の体液は体重の約60%である.
問題14
連用による薬物依存に注意を要するものはどれか.1つ選べ.
A:ロペラミド
B:コデインリン酸塩
C:ケイ酸アルミニウム
D:タンニン酸アルブミン
E:ベルベリン
問題15
機能性便秘について正しいものはどれか.2つ選べ.
A:過去3カ月間,月に3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こる.
B:大腸内視鏡検査などで器質的疾患の除外が必要である.
C:鑑別疾患として,甲状腺機能亢進症,糖尿病,Parkinson病などが挙げられる.
D:大腸通過遅延型(slow transit constipation)や排便機能障害型(outlet obstruction)がある.
E:大腸通過遅延型(slow transit constipation)では,X線非透過性マーカー通過試験,直腸肛門内圧試験の両方に異常が認められる.
問題16
便秘患者が来院した時のアプローチとして誤っているものはどれか
A:結腸性の便秘と直腸性の便秘を区別する.
B:患者の便秘の訴えに応じて下剤を増量する.
C:便の性状を確認する.
D:食事における食物繊維の量を確認する.
E:肩の力を抜いてやや前屈みでいきむように指導する.
問題17
直腸粘膜脱の特徴について正しいのはどれか.1つ選べ.
A:排便後に腹痛は消失する.
B:便秘の症状が先行し,無痛性の大量出血をきたす.
C:排便時に過度ないきみ(straining)の習慣がある.
D:常染色体優性遺伝である.hMSH2など,DNAのミスマッチ修復遺伝子の異常が原因である.
E:病理組織にて非乾酪性類上皮性肉芽腫が特徴である.
問題18
便秘症の原因となる疾患について,不適切なものはどれか.1つ選べ.
A:Crohn病
B:大腸癌
C:アミロイドーシス
D:collagenous colitis
E:虚血性腸炎
問題19
症候性便秘の原因疾患はどれか.2つ選べ.
A:大腸癌
B:Crohn病
C:脳梗塞後遺症
D:直腸瘤
E:アミロイドーシス
問題20
下剤濫用の副作用として,誤っているものを1つ選べ.
A:低カリウム血症
B:高マグネシウム血症
C:呼吸性アルカローシス
D:大腸メラノーシス
E:酸性尿酸アンモニウム結石
問題21
24歳,女性.便秘と腹痛を主訴に来院した.腹痛は排便前に増強し,排便後軽減する傾向を認めた.臨床症状および諸検査により過敏性腸症候群と診断された.以下の治療薬のうち不適切なものはどれか.1つ選べ.
A:トリメブチン
B:ポリカルボフィルカルシウム
C:酸化マグネシウム
D:ピコスルファート
E:メペンゾラート
問題22
次の摘便・浣腸に関する記載のうち正しいものはどれか.1つ選べ.
A:摘便・浣腸時に重要なのは体位で,立位前屈位で施行するほうが,その後,患者が排便をするときすぐに便器に座れるので便利である.
B:グリセリン浣腸を事前に45℃に加温しておく.
C:摘便・浣腸開始時に重要なのは患者に対する説明とプライバシーの保護である.
D:通常の習慣性便秘の患者には,浣腸が第一選択である.
E:摘便時には硬便が多いときには,第2指のみならず,第3・4指も挿入して掻き出す.
問題23
高齢者の便秘の原因として考えにくいものはどれか.1つ選べ.
A:大腸癌
B:甲状腺機能亢進症
C:糖尿病
D:大腸憩室症
E:虚血性腸炎
問題24
女性の性周期において,便秘になりやすい時期は,どの時期か.1つ選べ.
A:月経時
B:月経後
C:排卵期
D:月経前
E:妊娠5カ月
問題25
55歳,男性,潰瘍性大腸炎発症後12年目に大腸全摘回腸肛門管吻合術を施行された.術後1年ほど経過して腹痛の出現とともに水様便の排泄が頻回となり来院した.直ちに行う検査として不適切なものはどれか.1つ選べ.
A:腹部CT検査
B:採血・尿検査
C:腹部超音波検査
D:バリウムによる下部消化管造影
E:下部消化管内視鏡検査
問題26
過敏性腸症候群(IBS)について正しいのはどれか.2つ選べ.
A:IBSの診断には内視鏡検査が必須である.
B:日本におけるIBSの頻度は,15%前後である.
C:IBSは一過性の病態である.
D:IBSの治療は,生活習慣の見直しから始める.
E:IBSからIBDに移行することがある.
問題27
化学療法に伴う便通異常で正しいのはどれか.1つ選べ.
A:抗癌剤による便通異常で多いのは便秘である.
B:重篤な便通異常でも感染の危険性はないため抗菌薬は使用しない.
C:下痢を認めた場合,十分な水分摂取または補液を行う.
D:CTC grade 3以上の下痢を認めても,次回の投与量は減量する必要はない.
E:下痢を認めたら直ちにロペラミドを投与する.
問題28
偽膜性大腸炎について正しいものはどれか.2つ選べ.
A:Klebsiella oxytoca菌の検出が診断に有用である.
B:Clostridium difficile菌の検出が診断に有用である.
C:Clostridium difficile毒素の検出が診断に有用である.
D:全身状態不良な入院患者に院内感染症として発症することが多い.
E:内視鏡検査の必要性は低い.
問題29
次のうち誤っているものを1つ選べ.
A:高カルシウム血症では便秘がみられる.
B:低カリウム血症でみられる便通異常は下痢である.
C:甲状腺機能亢進症の下痢にβブロッカーは有効である.
D:糖尿病にみられる下痢は細菌の異常増殖によって起こる.
E:アミロイドーシスにみられる便通異常はAA型よりAL型で多い.
(解答は本誌掲載) |