HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧49巻1号(2012年1月号) 今月の主題「理解のための28題」
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今月の主題

「理解のための28題」


問題1

70歳,男性.自宅にて突然卒倒し救急を要請した.救急隊到着時心肺停止状態でCPRを施行しつつERに入室した.ER入室時はCPAであり,モニター心電図上HR 40/minのPEAであった. 次のうち正しいものはどれか.

A:CPRを継続し,バソプレシン40単位を経静脈的に投与する.
B:バソプレシンが無効な場合,3~5分後にアドレナリンの追加投与を行う.
C:直ちにアトロピン0.5 mgを経静脈的に投与する.
D:アミオダロン150~300 mgの投与を考慮する.
E:直ちに重炭酸ナトリウムを投与する.


問題2

75歳,女性.50歳時から高血圧を指摘され降圧薬(カルシウム拮抗薬)の治療を受けてきた.また,69歳時より動悸症状を認めホルター心電図検査にて慢性心房細動と診断され,以後ワーファリンとβ遮断薬を追加され内服していた.1週間前から家族内トラブルから不眠となり,家庭内血圧でも起床時血圧が160-180/90-100 mmHgと上昇していた.今朝起床時より突然起座呼吸を認め救急車にて近医へ搬送され,胸部X線にて肺水腫と診断され緊急入院となった.入院時の血圧 168/90 mmHg,HR 138 bpm,SpO2 98%(3.0 l/m酸素マスク下)であった.また,心エコー検査にて左室収縮能はLVEF 68%,僧帽弁閉鎖不全症を中等度認めた. 入院後,直ちに投与すべき薬剤はどれか.1つ選べ.

A:プロプラノロール(β遮断薬)静脈内投与
B:フロセミド(利尿薬)静脈内投与
C:硝酸薬静脈内投与
D:ベラパミル静脈内投与
E:ジギタリス静脈内投与


問題3

経口心不全治療薬について推奨されないものを1つ選べ.

A:ループ利尿薬,ACE阻害薬が既に投与されているNYHA III度以上の重症患者に対する抗アルドステロン薬投与.
B:Class I群抗不整脈薬の長期経口使用.
C:洞調律の患者に対する少量ジギタリス投与.
D:無症状の左室収縮機能不全患者(ステージB)におけるβ遮断薬投与.
E:高血圧や糖尿病を有するステージAの患者に対するACE阻害薬の投与.


問題4

54歳の男性.激しい胸痛を主訴に発症から1時間で搬送された.心電図ではV1-V4でST上昇を認める.背景に糖尿病,高血圧,脂質異常症がある.救急室で投与すべきでない薬剤はどれか.1つ選べ.

A:アスピリンの咀嚼投与
B:ニトログリセリンの舌下投与
C:クロピドグレルの内服
D:塩酸モルヒネ
E:ワルファリン


問題5

冠攣縮性狭心症の治療薬として治療効果の乏しい薬剤を1つ選べ.

A:ACE阻害薬/ARB
B:β遮断薬
C:硝酸薬
D:カルシウム拮抗薬
E:ニコランジル


問題6

抗血小板薬治療において誤っているものを2つ選べ.

A:薬剤溶出性ステントでは,金属ステントよりも抗血小板薬使用期間が長くなった.
B:金属ステントを用いたPCI後には抗血小板薬は不要である.
C:薬剤溶出性ステントを用いたPCI後の抗血小板薬にはアスピリン+チエノピリジン系の2剤を用いる.
D:バイパス手術後にはアスピリン投与が推奨されている.
E:アスピリン+チエノピリジンの2剤抗血小板薬は,アスピリン単剤と比べ出血性合併症発生率は同等である.


問題7

次のうち誤りはどれか.1つ選べ.

A:症状のない心房期外収縮は治療の必要はない.
B:心不全症例にI群抗不整脈薬は使用すべきではない.
C:心房細動による血栓塞栓症にバイアスピリン®は有用である.
D:発作性上室性頻拍発作では眼球圧迫は行ってはならない.
E:心房粗動の洞調律化でI群抗不整脈薬は心拍数を低下させる薬剤と併用する.


問題8

致死性心室性不整脈の薬物治療に関する記載で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:アミオダロン静注薬は即効性の高い薬剤である.
B:アミオダロン静注薬の副作用として頻度が高いのは間質性肺炎である.
C:ニフェカラントは心機能抑制作用のない薬剤である.
D:ニフェカラントの副作用として頻度が高いのは徐脈である.
E:リドカインは心室性不整脈に対する第一選択薬である.


問題9

次の降圧薬併用時の組み合わせのうち適切なのはどれか.1つ選べ.

A:ACE阻害薬+ARB
B:β遮断薬+ACE阻害薬
C:利尿薬+Ca拮抗薬
D:利尿薬+β遮断薬
E:β遮断薬+ARB


問題10

50歳男性,労作時の胸痛と息切れを自覚し受診.胸部聴診上は心尖部から胸骨左縁にかけての駆出性収縮期雑音を聴取した.本症例の僧帽弁弁尖レベルでのMモード心エコー図所見を図に示す.本症例において最初に使用すべき治療薬として適切なものを2つ選べ.

A:β遮断薬
B:硝酸薬
C:Ca拮抗薬
D:ACE阻害薬
E:抗アルドステロン薬

】 Mモード心エコー図所見


問題11

次の肺高血圧症の原因のうち,肺動脈性肺高血圧ではない疾患はどれか.1つ選べ.

A:特発性
B:膠原病性
C:先天性心疾患に伴う肺高血圧
D:左心疾患に伴う肺高血圧
E:薬剤による肺高血圧


問題12

TASCIIで間欠性跛行に対し,有効性が認められた薬剤は次のうちどれか?

A:アスピリン
B:クロピドグレル
C:シロスタゾール
D:プロスタグランディン
E:ダビガトラン


問題13

冠動脈疾患患者のLDLコレステロール目標は次のうちどれか.1つ選べ.

A:60 mg/dl以下
B:80 mg/dl以下
C:100 mg/dl以下
D:120 mg/dl以下
E:140 mg/dl以下


問題14

消化性潰瘍の既往のあるハイリスクの患者において,低用量アスピリン内服による潰瘍の再発を抑制する治療法あるいは薬剤はどれか.2つ選べ.

A:糖質ステロイド
B:H2受容体拮抗薬
C:粘膜防御因子増強薬
D:プロトンポンプ阻害薬
E:H. pylori 除菌


問題15

拡張型心筋症(左室駆出分画20%)と診断され外来通院していた患者が,数日前より出現した全身倦怠感を主訴に緊急受診した.血圧は80/66 mmHg,脈拍数は104回/分(整).下記の治療の中で行わないものを1つ選択せよ.

A:ドブタミン
B:ドーパミン
C:ノルアドレナリン
D:ドブタミンとミルリノンの併用
E:酸素投与と安静にて経過観察


問題16

慢性心不全における強心薬投与について正しい記述はどれか.1つ選べ.

A:生命予後を悪化するので,絶対禁忌である.
B:ジギタリス薬は洞調律の慢性心不全には使用しない.
C:血中濃度は低めに設定するほうがよい.
D:投与開始時には急速飽和を行う.
E:ピモベンダンはβ受容体刺激薬である.


問題17

血管拡張薬に関する記述で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:心原性肺水腫を改善するためには,まず利尿薬を投与しておく.
B:血管拡張薬を投与する場合,高用量から開始して適宜,減量する.
C:カルペリチドは静脈拡張作用のみを有し,前負荷軽減に最適の薬剤である.
D:ニコランジルはATP感受性Kチャネル開口作用による心筋虚血作用も有する.
E:硝酸薬はスプレー投与をした場合,静脈内投与した場合より血圧低下をきたしやすい.


問題18

抗血小板薬の適応について誤っているものを1つ選択せよ.

A:アスピリンは抗血小板薬である.
B:日本では多くの症例が抗血小板薬の恩恵を受けている.
C:クロピドグレルはプロドラッグである.
D:アスピリンの容量調節は不要である.
E:クロピドグレルはモニター下で使用する必要がない.


問題19

抗トロンビン薬のダビガトランについて正しいものを1つ選べ.

A:肝臓で代謝されるためCYPなどの代謝酵素の影響を受けやすい.
B:人工弁置換術後の患者にも投与することができる.
C:出血の合併症が起きた場合はビタミンKで効果をリバースできる.
D:血液透析中の患者には禁忌である.
E:ワルファリンからダビガトランへの切り替えにリスクはほとんどない.


問題20

わが国において,肺血栓塞栓症の適応でない薬剤はどれか.1つ選べ.

A:フォンダパリヌクス
B:ワルファリン
C:ダビガトラン
D:モンテプラーゼ(t-PA)
E:アルガトロバン


問題21

下記のβ遮断薬のなかで,心保護効果のエビデンスを有し,欧米の心不全治療ガイドラインで推奨されている薬剤を2つ選べ.

A:アテノロール
B:ビソプロロール
C:酒石酸メトプロロール
D:カルベジロール
E:プロプラノロール


問題22

下記のβ遮断薬のなかで,左室収縮機能不全を伴う慢性心不全の生命予後を改善するエビデンスのあるものはどれか.2つ選べ.

A:プロプラノロール
B:アテノロール
C:カルベジロール
D:ビソプロロール
E:アセブトロール


問題23

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)による咳について正しいのはどれか.

A:ACEI投与後数年してから生じる.
B:ACEIの中止後も数カ月遷延する.
C:ブラジキニンの分解促進による.
D:分泌物,血痰を伴うことが多い.
E:高齢者の誤嚥性肺炎予防効果の報告がある.


問題24

ACE阻害薬の投与が禁忌となるのはどれか.1つ選べ.

A:血清クレアチニン2.5 mg/dlの腎機能障害
B:両側腎動脈狭窄
C:慢性肝炎
D:心筋梗塞後心不全
E:気管支喘息


問題25

54歳男性.夜間胸痛で目が覚めるため来院した.日中労作時には症状は出現しない.これまでは年に数回であったが,最近は毎日のように胸痛が出現する.トレッドミル負荷試験は陰性であったが,24時間心電図では早朝4時頃に症状と一致してST上昇を認め,5分程で症状とともにSTも回復した.第一選択薬はどれか.

A:アスピリン
B:β遮断薬
C:カルシウム拮抗薬
D:ARB/ACE阻害薬
E:硝酸薬の頓用


問題26

カルシウム拮抗薬の抗不整脈薬脈作用として正しいのはどれか.1つ選べ.

A:ベラパミルは徐脈性心房細動のレートコントロールに有効である.
B:ジルチアゼムは陳旧性心筋梗塞後心室頻拍の停止に有効である.
C:ベプリジルは持続性心房細動の停止に有効である.
D:ベラパミルはQT延長作用がある.
E:ベプリジルは洞機能を促進する.


問題27

ループ利尿薬の副作用はどれか.1つ選べ.

A:高Na血症
B:低K血症
C:下腿浮腫の増悪
D:肺動脈圧の上昇
E:低血糖


問題28

抗アルドステロン薬について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:スピロノラクトンの副作用でみられる高K血症は,エプレレノンではみられない.
B:エプレレノンは性ステロイド受容体を強く遮断する.
C:抗アルドステロン薬は心臓だけでなく腎臓・血管などにも臓器保護作用がある.
D:心不全治療においてACE阻害薬やARBとの併用は副作用が多くなるため控えるべきである.
E:抗アルドステロン薬はNYHA II度以上の重症心不全でも有効である.


(解答は本誌掲載)