HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧48巻13号(2011年12月号) 今月の主題「理解のための27題」
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今月の主題

「理解のための27題」


問題1

抗悪性腫瘍薬の臨床試験において最も重要なエンドポイントはどれか.1つ選べ.

A:腫瘍縮小効果
B:腫瘍縮小持続時間
C:疾患特異的生存期間
D:全生存期間
E:無増悪生存期間


問題2

がんと家庭医療/プライマリケアについて誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:初期乳がんのがんサバイバーのケアで,家庭医によるフォローとがんセンターでのフォローには再発や死亡,QOLには差がない.
B:プライマリケアの現場で65~74歳男性における嚥下困難の患者が食道がんである可能性は約10人に1人である.
C:プライマリケアの現場において,最終受診からの期間が3年以上の場合,そうでない患者に比べてがんの診断がつく可能性は1.3倍である.
D:プライマリケアの現場で,女性における直腸出血の患者が大腸がんである可能性は約50人に1人である.
E:糖尿病のある大腸がんの患者は,がんのない糖尿病患者に比べ糖尿病のコントロールが悪い.


問題3

以下に示すある患者の経過のうち,腫瘍内科医の役割と考えられるものを選べ.

A:便潜血反応陽性,CEA高値で紹介されてきた患者に,適切に問診と診察を行ったうえで,過不足のない初期検査計画を立てる.
B:CTで多発肝腫瘤像,下部消化管内視鏡でS状結腸に腫瘤が指摘された.病理検査を踏まえて(高分化型腺癌で,大腸がんとして矛盾しない.k-rasはmutantであった),FOLFOX+BEVによる薬物療法の方針を患者に説明し,実施する.
C:治療中の内科的な合併症(高血圧,蛋白尿など)に適切に対応する.
D:初期治療で肝転移はかなり縮小し,治療を継続していたが開始後約9カ月で増悪(PD)となった.肺転移に続いて,骨転移も出現した.ストロンチウムや照射,骨セメントなど他の手段のメリットとデメリットについても患者と相談のうえ,イリノテカンを含むセカンドライン化学療法とゾメタの併用を開始した.
E:上記の治療が無効となり,緩和療法の選択肢について改めて相談,ホスピスへ紹介した.


問題4

腫瘍内科医について誤っている記載はどれか.1つ選べ.

A:腫瘍内科医は抗がん剤を適切に投与することができる.
B:がん患者のプライマリケアから,積極的治療,緩和ケア,終末期医療まですべてを診療できる内科医であり,内科全般に広い知識と経験をもつべきである.
C:日本では普及していない専門科であるが,がん治療の進歩とともに今後急速にニーズが高まると予想される.
D:腫瘍内科医はエビデンスに基づく治療だけをする.
E:腫瘍内科医のトレーニング中は幅広く全がん種の症例の経験をすべきである.


問題5

「がん薬物療法専門医」を認定しているのは次のどの団体か.

A:日本医師会
B:日本癌学会
C:日本癌治療学会
D:日本内科学会
E:日本臨床腫瘍学会


問題6

日本で優先すべきがん予防対策に含まれない「リスク ― ターゲット」の組み合わせはどれか.1つ選べ.

A:喫煙 ― 子宮頸がん
B:運動不足 ― 結腸がん
C:アルコール ― 食道がん
D:飲料水中の砒素 ― 肺がん
E:高塩分食品 ― 胃がん


問題7

有効ながん検診と対象疾患の組み合わせで正しいのはどれか.2つ選べ.

A:便潜血検査 ― 大腸がん
B:ピロリ菌抗体検査 ― 胃がん
C:PET(positron emission tomography)検査 ― 肺がん
D:直腸指診 ― 直腸がん
E:乳房X線(マンモグラフィ)検査 ― 乳がん


問題8

男性,50歳未満,原発が不明な低分化がんの患者の診断における有用な検査はどれか.2つ選べ.

A:AFP(α-fetoprotein)
B:β-hCG(β-human chorionic gonadotropin)
C:CEA(carcinoembryonic antigen)
D:CA19-9(cancer antigen 19-9)
E:CA125(cancer antigen 125)


問題9

37歳の男性.腹痛で受診した.左鎖骨上窩にリンパ節腫大を触知,全身CTで後縦隔に3 cm大,後腹膜に7 cm大のリンパ節転移を認めた.上部消化管内視鏡,下部消化管内視鏡を行ったがいずれも異常なし.睾丸超音波では異常なし.HCG正常,AFP正常,LDHは271U/l と高値.左鎖骨上窩のリンパ節生検では低分化がん.Performance Status 1.次に進めるべきはどれか.1つ選べ.

A:PET/CT
B:カルボプラチン,パクリタキセルによる化学療法
C:ブレオマイシン,エトポシド,シスプラチンによる化学療法
D:S-1内服
E:さらなる免疫組織学的マーカーの検索


問題10

意識障害を呈する高カルシウム血症の治療で最初に行うべき治療はどれか.1つ選べ.

A:大量生理食塩液輸液
B:ビスホスホネート製剤の点滴静注
C:ステロイド
D:原疾患の治療
E:ループ利尿薬静注


問題11

次のうち,催吐性リスクが高度のがん薬物療法に対する制吐療法について,推奨されない薬物はどれか.1つ選べ.

A:グラニセトロン
B:デキサメタゾン
C:アプレピタント
D:パロノセトロン
E:メトクロプラミド


問題12

発熱性好中球減少症の治療選択において正しいものはどれか.1つ選べ.

A:常にバンコマイシンを用いるべきである.
B:セフトリアキソン単剤治療は選択肢の1つとなる.
C:βラクタム系抗菌薬にアミノグリコシドをルチンで併用する必要はない.
D:抗緑膿菌作用のある抗菌薬を用いることが原則である.
E:内服抗菌薬での治療は決して行わない.


問題13

2デルマトームを超える帯状疱疹に対する適切な初期治療はどれか.1つ選べ.

A:アシクロビル5%クリーム(ゾビラックス軟膏®)6回/日(3時間ごと)
B:アシクロビル800 mg×5回/日 経口
C:アシクロビル10 mg/kg静注,8時間ごと
D:ガンシクロビル5 mg/kg 静注×2回/日
E:ホスカルネット90 mg/kg 静注×2回/日


問題14

B型肝炎の再活性化について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:B型肝炎の再活性化は,化学療法などで免疫抑制状態になると生じることがある.
B:HBs抗原陽性患者に対しては核酸アナログの投与を考慮すべきである.
C:B型肝炎の再活性化による急性肝障害は劇症化することがある.
D:HBs抗原陰性,HBc抗体陽性患者においてもHBV DNA定量をモニタリングする必要がある.
E:いったん核酸アナログを開始すると,恒久的に継続しなければならない.


問題15

化学療法におけるB型肝炎の再活性化のリスク因子のうち誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:B型肝炎ウイルスHBs抗原が陽性である.
B:血液悪性腫瘍である.
C:リツキシマブ投与患者である.
D:ステロイドを併用する患者である.
E:女性である.


問題16

次の記述から正しいものを1つ選べ.

A:トラスツズマブはHER2陽性の乳がんと非小細胞肺がんに適応がある.
B:ベバシズマブは小分子化合物である.
C:EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんにおけるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の腫瘍縮小効果はEGFR遺伝子変異陰性の非小細胞肺がんと比べ非常に高い.
D:日本人非小細胞肺がん患者におけるEGFR遺伝子変異の陽性率は欧米人での頻度より低い.
E:抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(antibody-dependent cellular cytotoxicity:ADCC)による抗腫瘍効果は小分子化合物に特有の機能である.


問題17

分子標的薬による薬剤性肺障害で最も予後不良とされる病態はどれか.1つ選べ.

A:過敏性肺臓炎
B:急性好酸球性肺炎
C:通常型間質性肺炎
D:びまん性肺胞障害
E:器質化肺炎


問題18

次のうち正しいものを1つ選べ.

A:がんに対する治療が奏効しなくなったときが緩和ケアを開始するタイミングである.
B:がん性疼痛に対してNSAIDsの効果が不十分でオピオイドを開始する際には,NSAIDsを中止すべきである.
C:オピオイドを開始する際に嘔気・嘔吐や便秘の予防薬を併用する.
D:モルヒネは呼吸抑制作用があるので,がん患者の呼吸困難緩和には不適切である.
E:がん患者の消化管運動低下で起こる嘔気に対してドパミン受容体拮抗薬が第一選択である.


問題19

入院を必要とする身体状態にある終末期がん患者に最も頻度の高い精神医学的問題はどれか.1つ選べ.

A:適応障害
B:うつ病
C:せん妄
D:予期性悪心・嘔吐
E:パニック障害


問題20

悪い知らせを伝えることについて適切なものはどれか.1つ選べ.

A:告知をするかどうか事前に家族と話し合う.
B:家族が告知に反対する場合はなぜ反対するのか話し合う.
C:なるべく詳細な情報を本人に伝える.
D:患者が告知を希望しない場合でも病名だけは伝える.
E:医療従事者は楽観的な態度を示すことが必要である.


問題21

第5次医療制度改革,がん対策基本法に関する記述のうち,正しい組み合わせを1つ選べ.
(1)地域連携クリティカルパスには複数の医療機関の役割分担,診療計画が記載される.
(2)地域の医療機関の機能や医師数が都道府県から住民に公表されることとなった.
(3)法制化に伴い地域がん登録がすべての都道府県で行われることとなった.
(4)医療機能の分化・連携の推進による切れ目のない医療の提供を図ることとされた.
(5)患者QOL向上のため在宅医療に優先して入院医療の充実を図ることとされた.

A:(1),(2),(3)
B:(1),(2),(4)
C:(2),(3),(4)
D:(1),(3),(5)
E:(1),(4),(5)


問題22

緩和ケアについて正しいものはどれか.1つ選べ.

A:緩和ケアは積極的治療に反応しなくなった患者に行われる苦痛緩和を中心としたケアである.
B:緩和ケア病棟は,予後が3カ月以内のがん患者しか入院できない.
C:抗がん治療を中止するときは,予後を正確に,限られた数字で伝えるのがよい.
D:抗がん治療の中止にあたっては,患者と家族の心の準備に合わせて,気持ちを聞きながら伝えるのがよい.
E:緩和ケア病棟を紹介するときは,もう治療の方法がないことをはっきりとした言葉で伝えるのがよい.


問題23

第2号被保険者の要介護認定の要件となる特定疾病のうち,適切でないものはどれか.1つ選べ.

A:脳血管疾患
B:初老期における認知症
C:脊柱管狭窄症
D:膵臓がん
E:慢性閉塞性肺疾患


問題24

がん医療情報を発信する際に,必ずしも記載の必要のないものはどれか.1つ選べ.

A:情報源
B:最終更新日
C:文責
D:自施設の経験症例
E:利益相反


問題25

次の診療の質の評価方法とDonabedianモデルにおける評価視点の分類のうち誤っている組み合わせはどれか.1つ選べ.

A:肺がん5年生存率―結果
B:放射線治療3Dシミュレータ装置の有無―構造
C:大腸がん手術におけるリンパ節郭清度―過程
D:肝がん手術の合併症の発生率―構造
E:乳房温存術後の放射線照射率―過程


問題26

がんサバイバーに頻度の高い心理社会的問題はどれか.1つ選べ.

A:離婚
B:うつ病
C:せん妄
D:再発不安
E:認知症


問題27

がんの医療現場における民間療法(補完代替医療)で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:民間療法(補完代替医療)を利用している患者は半数近くに上る.
B:健康食品・サプリメントの利用頻度が最も高い.
C:抗がん効果が証明された健康食品は現時点ではない.
D:健康食品と医薬品との相互作用は無視してよい.
E:医師と患者との間で民間療法(補完代替医療)の利用に関するコミュニケーションは十分にとられていない.


(解答は本誌掲載)