今月の主題
「理解のための25題」
問題1
診断仮説リストを想起するとき,誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:疾患の頻度は臨床の現場によって異なる.
B:患者の状態は刻々と変化していることを念頭におく.
C:疾患の頻度と重大性を考慮して優先順位をつける.
D:重大な疾患を見逃さないために,red flag signを日頃から意識する.
E:腹痛の患者全員に,腹部CTと上部消化管内視鏡を施行すべきである.
問題2
次の疾患で疝痛の原因になるのはどれか.2つ選べ.
A:十二指腸潰瘍穿孔
B:尿管結石
C:小腸イレウス
D:急性膵炎
E:上腸間膜動脈血栓症
問題3
感度80%,特異度60%の検査が陽性であった場合,有病率25%の疾患の検査後の確率を推定しようと考えている.以下のうち正しいものを1つ選べ.
A:この検査の尤度比は1.5である.
B:検査前オッズは0.5である.
C:検査後確率は0.8である.
D:検査後確率は0.4である.
E:検査後確率は0.2である.
問題4
次のうち正しいものはどれか.1つ選べ.
A:できるだけ多くの検査をして情報を集めることで正確な診断ができる.
B:鑑別診断の仮説は主として,検査結果から形成する.
C:鑑別仮説を検証するにはできるだけ多くの情報を集めたほうがよい.
D:血液検査では健常人でもいくらかは疾患の有無と関係なく異常値と判定される.
E:検査を多く行うことで自動的に鑑別仮説が生成される.
問題5
体重減少に関する記述で誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:6~12カ月間で5%以上の体重減少は直ちに精査すべきである.
B:膵癌や胃癌は,末期まで体重減少は起こらない.
C:高齢者の甲状腺機能亢進症は,体重減少や食思不振で発見されることが多い.
D:心内膜炎は体重減少をきたしうる.
E:副腎不全はほぼ全例に体重減少や全身倦怠感がみられる.
問題6
原発性副腎不全の臨床症候,検査所見として,ふさわしくないものはどれか.1つ選べ.
A:食欲増多
B:色素沈着
C:白斑
D:高カリウム血症
E:好酸球増多
問題7
次のうち嘔吐が主訴とならない疾患はどれか.1つ選べ.
A:放線冠ラクナ脳梗塞
B:緑内障発作
C:急性心筋梗塞
D:骨転移を伴う乳癌
E:尿路結石症
問題8
胃食道逆流症(GERD)について正しいものを2つ選べ.
A:問診にてGERDの定型症状を有し,GERD以外の胃・食道疾患の可能性が低いと考えられる患者においては,診断をより確定するために強力な酸分泌抑制薬であるPPI(プロトンポンプ阻害薬)を投与し,症状の変化を観察する診断的治療を行うことも実践的である.
B:胸やけは胸骨後方の灼熱感であり,GERDの主要症状であるが,心窩部痛などの上腹部症状は稀である.
C:慢性咳嗽は高頻度に起こるGERDの食道外合併症である.
D:自覚症状からは,逆流性食道炎,非びらん性胃食道逆流症,Barrett食道を診断することはできない.
E:ピロリ菌の除菌はGERD症状を増悪させるため,GERD症状を有する患者に行うべきではない.
問題9
以下の身体所見のなかで,虫垂炎の際に陽性とならない所見はどれか.1つ選べ.
A:Psoas 徴候(腸腰筋徴候)
B:Obturator 徴候(閉鎖筋徴候)
C:McBurney点圧痛
D:Rovsing徴候
E:Carnett徴候
問題10
感染性下痢症の原因として志賀毒素を産生し,溶血性尿毒症症候群(HUS)などを生じる病原微生物を2つ選べ.
A:赤痢菌
B:ノロウイルス
C:黄色ブドウ球菌
D:腸管出血性大腸菌
E:毒素原性大腸菌
問題11
便秘の診療について正しいものはどれか.1つ選べ.
A:毎日排便があれば,便秘とはいえない.
B:慢性の便秘なら,まず診断的治療として下剤を飲ませてみる.
C:問診では前医・他医の投薬履歴をもれなく聞く必要がある.
D:便秘主訴の初診時,診察前に全例腹部単純X線検査が必要である.
E:大腸内視鏡の検査時には所定時間で十分量の腸管洗浄剤を飲ませる.
問題12
血便をきたす次の疾患のうち,合併症としての出血性ショックのリスクが高い疾患はどれか.1つ選べ.
A:潰瘍性大腸炎
B:内痔核
C:虚血性腸炎
D:憩室出血
E:大腸癌
問題13
30歳女性.3日前から眼球結膜に黄染がある.血液検査でAST 250 IU/l, ALT 35 IU/l, ALP 125 IU/l, γ-GTP 60 IU/l, 総ビリルビン3.8 mg/dl, 直接ビリルビン0.5 mg/dlであった.以下のうち鑑別診断として不適切なものはどれか.2つ選べ.
A:心不全
B:総胆管結石
C:アルコール性肝炎
D:ビタミンB12欠乏
E:Basedow病
問題14
胃食道逆流症(GERD)の食道外症状として挙げられるものはどれか.1つ選べ.
A:下痢
B:放屁
C:関節痛
D:頭痛
E:喘鳴
問題15
NSAIDs起因性消化管病変について正しいのはどれか.2つ選べ.
A:粘膜内のプロスタグランジン産生の増加が関与している.
B:小腸病変の頻度は少ない.
C:高齢はNSAIDs起因性消化性潰瘍の危険因子の1つである.
D:消化管病変と腹部症状との相関は低い.
E:NSAIDs起因性消化性潰瘍の予防的治療としてプロスタグランジン製剤は有効でない.
問題16
60歳の男性.高血圧症,糖尿病があり加療中であったが,最近腰痛が出現したため非ステロイド系抗炎症薬を近医から処方された.2日前から黒色便を認めていたが放置していた.本日,出勤前に失神し救急車にて救急外来へ搬送された.来院時は顔面蒼白,血圧84/48 mmHg,脈拍136/分,来院直後に新鮮血を吐血した.また,腹部診察では上腹部に軽度の圧痛を認めたが腹膜刺激症状はなかった.直腸診では暗赤色便を認めた.
直ちに行うべき処置として正しいのはどれか.1つ選べ.
A:緊急上部消化管内視鏡
B:H2受容体拮抗薬の投与
C:経鼻胃管を挿入して胃洗浄を行う
D:静脈路を確保して細胞外液を輸液し循環動態を安定させる
E:起立性低血圧の有無を評価する
問題17
過敏性腸症候群を疑わせる症状はどれか.1つ選べ.
A:夜間に覚醒するほど強い腹痛
B:下痢の後に軽快する腹痛
C:嘔吐の後に軽快する腹部膨満感
D:体重減少を伴う腹部膨満感
E:食後の早期飽満感
問題18
30歳の生来健康な男性.2日前に友人の結婚式でフランス料理が出て,半生の鶏肉を食べた.昨日から38℃の発熱,悪寒・戦慄,腹痛,水様下痢(15回/日)を認めたため来院.海外渡航なし,動物との接触なし.結婚式に出席した友人のうち何人かも同様の症状という.血便なし.来院時血圧110/60 mmHg,脈拍110/分,呼吸数20/分,体温38.3℃.腹部全体に軽度の圧痛を認める.直腸診では異常なし.便中白血球陽性.便のグラム染色でカモメ状(W型)のグラム陰性菌を認める.
抗菌薬について以下のうち正しいのはどれか.1つ選べ.
A:抗菌薬の適応なし.
B:シプロフロキサシンを投与する.
C:経口第三世代セファロスポリンを投与する.
D:レボフロキサシンを投与する.
E:アジスロマイシンを投与する.
問題19
慢性便秘症に対する一般的な生活指導で,正しいものはどれか.1つ選べ.
A:食物繊維の少ない食事を勧める.
B:朝食を摂取せず夕食を多くとるように勧める.
C:市販の下剤を使用するよう勧める.
D:脂肪が10 g/日以下の食事をとるように勧める.
E:ウォーキングと水分補給を勧める.
問題20
初診時に潰瘍性大腸炎と鑑別診断のために検索の必要性が低い腸管感染症はどれか.1つ選べ.
A:大腸結核
B:アメーバ赤痢
C:カンピロバクター腸炎
D:サイトメガロウイルス腸炎
E:クロストリディウム・ディフィシル腸炎
問題21
大腸憩室症の予防となる最も有効な生活習慣はどれか.1つ選べ.
A:高脂肪食
B:食物繊維の摂取
C:カフェインの摂取
D:禁煙
E:飲酒
問題22
アルコール性肝障害で,正しいものを2つ選べ.
A:アルコール性肝障害の危険因子の1つに,アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の遺伝子多型があり,アセトアルデヒド処理能力の悪いALDH2活性欠損者に肝障害が多い.
B:女性は男性に比し,少ないアルコール量で重症なアルコール性肝障害になりやすい.
C:アルコール性肝障害における門脈圧亢進は,肝硬変に進行した場合のみに起こる.
D:アルコール性肝障害の肝機能異常(AST/ALT>1.0)の原因として,一部に,ピリドキサール5'-リン酸(ビタミンB6)欠乏のためALT合成が行われないことによる.
E:アルコール性肝障害治療の基本は禁酒であり,2週間行えば十分である.
問題23
胆石症について誤っているのはどれか.1つ選べ.
A:胆石溶解療法の適応はコレステロール結石である.
B:胆石発作の鎮痛のためにNSAIDsを投与すると,胆嚢炎になる可能性が減る.
C:無症候性胆石であっても糖尿病患者は予防的に胆嚢摘出術をしたほうがよい.
D:急性胆嚢炎は,発症してから早期に手術をしたほうがよい.
E:超音波検査はCTよりも胆嚢結石を発見する感度が高い.
問題24
急性膵炎重症度判定基準に用いられていない予後因子はどれか.1つ選べ.
A:LDH
B:CRP
C:血小板数
D:総カルシウム
E:アミラーゼ
問題25
慢性膵炎の療養指導と治療に関する記載で正しいものはどれか.1つ選べ.
A:慢性膵炎において,喫煙は膵癌の発生率を上昇させる.
B:慢性膵炎の代償期は平均2年と短期間である.
C:慢性膵炎の非代償期には,厳しい脂肪制限食が必要である.
D:膵性糖尿病の際のインスリン治療においては,比較的安定した血糖が得られ,低血糖発作は稀である.
E:慢性膵炎における消化酵素剤の投与はその効果が認められていない.
(解答は本誌掲載) |