今月の主題
「理解のための28題」
問題1
神経診察を行ったところ,次の所見が得られた.
(1)嗄声,(2)左顔面の温痛覚低下,(3)左上肢の協調運動障害,(4)左Horner症候群,(5)右頸部以下,体幹・上下肢の温痛覚障害.
病巣診断はどれか.1つ選べ.
A:右視床
B:左中脳背側
C:右橋腹側
D:左延髄背外側
E:右頸髄半側
問題2
次の歩行障害について,原因疾患と異常な歩行の対応が誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:痙性片麻痺―引きずり歩行(はさみ脚歩行)
B:小脳性運動失調―酩酊歩行
C:心因性歩行障害―動揺歩行
D:Parkinson病―前傾位の小刻み歩行
E:筋ジストロフィー―鶏歩
問題3
片頭痛について正しいのはどれか.1つ選べ.
A:15歳以上の日本人の片頭痛の有病率は1.4%である.
B:前兆を有する頭痛は片頭痛と診断してよい.
C:片側に生じることが必須項目である.
D:光過敏・音過敏は診断基準の1つである.
E:前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛の診断基準は,前兆以外は同じである.
問題4
次の記述で誤っているものを1つ選べ.
A:Wallenberg症候群では運動麻痺はきたさない.
B:めまいをきたす脳卒中では,神経症状を伴うことが多い.
C:眼振のあるめまいで症状が激しいものは末梢性のめまいに多い.
D:眼振のあるめまいで中枢性めまいでは慣れの現象が起こりやすい.
E:高齢者の慢性的なめまいには,一部視力低下や筋力低下が関与している.
問題5
本態性振戦の標準的治療に用いられることの多い薬剤はどれか.2つ選べ.
A:クロニジン(α遮断薬)
B:プロプラノロール(β遮断薬)
C:トリヘキシフェニジル(抗コリン薬)
D:ハロペリドール(ドパミン遮断薬)
E:プリミドン(抗てんかん薬)
問題6
てんかんおよび失神を診断するうえで,最も重要なものは次のどれか.1つ選べ.
A:脳波検査
B:頭部CT
C:心電図
D:臥位および立位の血圧
E:詳細な病歴聴取と身体所見
問題7
頭部MRIがCTより優れている点を2つ選べ.
A:空間分解能
B:短い撮影時間
C:新鮮血腫の描出
D:超急性期の脳梗塞病変の描出
E:石灰化の描出
問題8
下記の代謝性脳症に関する文章で正しいのはどれか.1つ選べ.
A:asterixisは肝性昏睡に特徴的である.
B:敗血症に伴う脳症は多臓器不全が原因である.
C:橋中心髄鞘崩壊はアルコール依存症に伴う合併症である.
D:Wernicke脳症の眼球運動障害では水平方向の眼振が多い.
E:低血糖のみでは局在症状を認めない.
問題9
膠原病および関連の病態での神経障害に関する組み合わせで正しくないのはどれか.1つ選べ.
A:SLEの神経合併症――精神症状・痙攣
B:長期の関節リウマチ――環軸椎亜脱臼
C:神経Behçet病(急性型)――脳髄膜炎症状・脳幹症状 D:抗リン脂質抗体――脳梗塞
E:神経Sweet病の好発部位――基底核
問題10
甲状腺機能異常に関連しない神経徴候はどれか.1つ選べ.
A:認知症
B:しびれ
C:けいれん
D:筋萎縮
E:安静時振戦
問題11
髄膜癌腫症の診断で正しいものを1つ選べ.
A:髄液細胞診は陽性率が高い.
B:髄膜刺激徴候を欠く場合は否定してよい.
C:頭痛のない例は否定してよい.
D:髄液細胞診は繰り返し行う.
E:抗がん剤の髄注療法により長期生存が期待できる.
問題12
器質性精神障害について,誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:人格変化をきたし抑制欠如・焦燥を認める症例では,器質性躁病に準じた治療を行う.
B:軽い意識障害ほど見分けにくいが,注意の移り変わりやすさ,気分の変動,時間経過の感覚の低下,言葉や計算の間違いなどで判断するとよい.
C:妄想の診断では,真実か,訂正可能か,了解可能かを確認することが重要である.
D:うつ状態にある患者には,自殺行動を惹起する可能性があるため,希死念慮について質問すべきではない.
E:せん妄の症例で,内服可能で興奮を伴わない場合,ミアンセリンやトラゾドンなどの抗うつ薬を用いる.
問題13
脳梗塞急性期の治療で正しいものはどれか.2つ選べ.
A:発症後24時間のアテローム血栓性硬塞に対するアスピリン内服療法
B:2時間前に意識不明で発見された脳梗塞患者に対するtPA常駐療法
C:発症後3日のアテローム血栓性硬塞に対するエダラボン点滴静注
D:発症後1日の心原性脳梗塞に対するオザグレル点滴静注
E:発症後2日目のアテローム血栓性硬塞に対するアルガトロバン点滴静注
問題14
75歳の男性.2日前から発熱を認めたため,近医で抗菌薬を処方された.今朝から意識混濁が出現したため,救急搬送となった.身長170 cm,体重65 kg.40℃の発熱,JCS II-20の意識障害,項部硬直とKernig徴候を認めた.血液所見:白血球19,850/μl(好中球95%,好酸球0%,好塩基球0%,単核球0%,リンパ球5%),CRP3.2 mg/dl(基準値0.2 mg/dl以下),髄液所見:圧300 mm H20,外観は黄色混濁,細胞数350/μl(単核球:多形核球=250:100),蛋白濃度300 mg/dl,糖濃度5 mg/dl(同時血糖180 mg/dl).
この患者に対して最も推奨される治療薬として正しいのはどれか.1つ選べ.
A:ACV(アシクロビル)30 mg/kg
B:PAPM/BP(パニペネム/ベタミプロン)1 g・6時間ごとまたはMEPM(メロペネム)2 g・8時間ごと
C:ABPC(アンピシリン)2 g・4時間ごと+CTRX(セフトリアキソン)2 g・12時間ごと+VCM 0.5 g・6時間ごと
D:AMPH-B(アムホテシリンB)1 mg/kg+5-FC(フルシトシン)100 mg/kg
E:INH(イソニアジド)300 mg+RFP(リファンピシン)600 mg+PZA(ピラジナミド)2 g+EB(エタンブトール)15 mg/kg
問題15
Lewy小体型認知症を疑わせる症状はどれか.1つ選べ.
A:高度の記憶障害
B:言語障害
C:鮮明な幻視
D:偽性球麻痺
E:社会的逸脱行為
問題16
次のうち,誤っている説明はどれか.2つ選べ.
A:行政的高次脳機能障害の診断基準では,認知症は含めない.
B:現在,支援コーディネーターは全国の都道府県に配置されている.
C:問題行動を引き起こしたときには,精神的に落ち着く翌日以降に指導する.
D:感情コントロールの低下や易怒性には,デパケン®やテグレトール®などの抗てんかん薬が効果的である.
E:自立支援法を利用した生活・就労支援サービスを受ける場合には,精神障害者手帳の申請が必須である.
問題17
多系統萎縮症よりParkinson病に多くみられる自律神経症候はどれか.2つ選べ.
A:起立性低血圧
B:臥位高血圧
C:便秘
D:蓄尿障害型排尿障害
E:喘鳴
問題18
脊椎・脊髄疾患に関して,誤っているものはどれか.2つ選べ.
A:頸椎症性神経根症は,肩甲部や上肢に放散する神経根痛が特徴的である.
B:頸椎症では,高次機能障害や脳神経障害は通常起こらない.
C:C5/6椎間の頸椎症では脊髄のC6髄節が障害される.
D:頸椎症では,できるかぎり早期の手術が必要である.
E:馬尾性間欠性跛行は,立位をとっただけでも症状が起こる.
問題19
次のうち多発性単神経障害をきたすものはどれか.1つ選べ.
A:糖尿病性神経障害
B:アルコール性神経障害
C:尿毒症性神経障害
D:血管炎性神経障害
E:癌性神経障害
問題20
複視の診療を行ううえで正しい記述はどれか.1つ選べ.
A:複視を訴える患者はなるべく早く神経内科に紹介する.
B:患者が複視を訴えても,診察で眼球運動制限が認められなければ病的な意義はない.
C:瞳孔異常を伴う動眼神経麻痺は無治療で治癒する可能性が高い.
D:側頭動脈炎が外眼筋麻痺の原因になることがある.
E:三叉神経痛に一致する痛みがあり,他覚的感覚障害が認められなければ,特発性を考えてよい.
問題21
多発筋炎で正しいのはどれか.1つ選べ.
A:高齢男性に多い.
B:半数でJo-1抗体が陽性となる.
C:呼吸筋が侵されることはない.
D:免疫グロブリン大量療法が有効である.
E:筋生検では筋束周囲の萎縮が見られる.
問題22
Parkinson病の初期症状として通常みられないものはどれか.1つ選べ.
A:静止時振戦
B:歯車様筋固縮
C:小刻み歩行
D:突進現象
E:ウエアリング・オフ症状
問題23
次の組み合わせの中で正しいものはどれか.1つ選べ.
A:傍腫瘍性小脳失調症――病初期からの小脳萎縮
B:多系統萎縮症――Hot cross bun sign
C:Creutzfeldt-Jacob病――拡散強調画像における小脳の高信号
D:脳表ヘモジデリン沈着症――小脳周囲のT2*強調画像高信号
E:ビタミンB12欠乏――脊髄前索のT2高信号
問題24
筋萎縮性側索硬化症(ALS)について誤っているのはどれか.2つ選べ.
A:ALSと頸椎症の鑑別は困難な場合がある.
B:ALS患者では,球麻痺症状は最後に出現する.
C:ALSは平均3~5年で呼吸不全に至る.
D:ALS患者の診療には多専門職種によるチーム医療が必要である.
E:「レスパイト入院」とは,長期的にALS患者を受け入れる入院である.
問題25
抗アセチルコリン受容体抗体陽性重症筋無力症の「陽性」臨床徴候を選べ.
A:筋緊張反応
B:線維束筋攣縮
C:遠位筋優位の筋力低下
D:四肢近位筋の筋萎縮
E:深部反射は正常~活発
問題26
視神経脊髄炎で特異的に陽性となる検査所見はどれか.1つ選べ.
A:髄液オリゴクローナルIgGバンド
B:髄液ミエリン塩基性蛋白
C:血清抗aquaporin4抗体
D:HLA-B51
E:血清抗アセチルコリンレセプター抗体
問題27
55歳の女性.生来健康であったが,6カ月前から頭痛,その後,右上下肢の軽微な脱力を自覚していた.今回,右上下肢の痙攣発作をきたし来院した.脳造影MRI前額断を図に示す.
最も可能性の高い診断はどれか.

A:上衣腫
B:転移性脳腫瘍
C:髄膜腫
D:乏突起神経膠腫
E:膠芽腫
問題28
77歳 女性.訪問診療初診時,歩行可だが首下がりを認めた.1年前に頸部痛のため整形外科を受診し,縦隔部腫瘍が発見され摘出術を受けている.SPO2 96% で眼瞼下垂はない.
在宅医療でまずなすべきことは何か.
A:眼瞼下垂の既往を聞く.
B:静脈採血する.
C:神経内科に紹介状を書く.
D:血液ガスを調べる.
E:テンシロンテストをする.
(解答は本誌掲載) |