HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧48巻7号(2011年7月号) 今月の主題「理解のための26題」
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今月の主題

「理解のための26題」


問題1

内科医の行う予防について,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:内科診療では,「1次予防」から「3次予防」のすべてに関わる.
B:検査を決定する前に,目の前の患者の検査前確率を推測することが重要である.
C:予防医療の最大の目標は,疾病を早期発見して早期治療することである.
D:検査特性(感度,特異度)を考慮して,検査を選択することが重要である.
E:予防効果の指標として,リスク比とともにリスク差も考慮する.


問題2

感染性心内膜炎の予防としての抗菌薬投与の対象となる事例はどれか.1つ選べ.
(基準は2008年の日本循環器学会などからなる合同研究班による「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)」に準拠する)

A:逆流のない僧帽弁逸脱患者の抜歯
B:感染性心内膜炎の既往を有する患者の中心静脈カテーテル挿入
C:機能的心雑音患者の経食道心エコー図
D:人工弁置換患者のインプラントの植え込み
E:冠動脈バイパス術後の扁桃摘出術


問題3

結核に関して正しいものを1つ選べ.

A:潜在性結核感染はlatent tuberculosis infection(LTBI)と呼ばれ,結核発病の積極的な化学予防の適応となる.
B:生物学的製剤を使用する際は結核再燃のリスクについて考慮しなくてもよい.
C:ステロイドの使用,腎不全は結核罹患のリスクにはならない.
D:日本では結核の診断には発赤,硬結のみを用いている.
E:LTBI患者では,生物学的製剤を使用する際には治療は特に必要ではない.


問題4

定期的な交換が推奨されている血管内カテーテルはどれか.1つ選べ.

A:中心静脈カテーテル
B:透析カテーテル
C:肺動脈カテーテル
D:成人の末梢静脈カテーテル
E:小児の末梢静脈カテーテル


問題5

以下の疾患で,薬剤(ワクチンを含む)を用いた予防が確立していないものを1つ選べ.

A:デング熱
B:A型肝炎
C:熱帯熱マラリア
D:狂犬病
E:黄熱


問題6

胃癌とH. pylori 感染の関係について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:H. pylori 除菌後は,胃癌発症は起こらない.
B:H. pylori 除菌成功後は,定期的な内視鏡検査は不要である.
C:早期胃癌内視鏡治療後の除菌例では,異所性再発率は減少しない.
D:胃癌発症のリスクである胃粘膜萎縮は,H. pylori 感染とは関係がない.
E:血清ペプシノゲン法陽性,血清H. pylori IgG抗体陽性例は胃癌の高リスク群である.


問題7

大腸内視鏡検査の適応として,不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:血便
B:便秘
C:便潜血検査2回中1回陽性
D:大腸ポリープ切除後
E:穿孔性腹膜炎


問題8

潰瘍性大腸炎について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:本邦における潰瘍性大腸炎の患者数は約3万人である.
B:内視鏡を用いたサーベイランスは潰瘍性大腸炎発症直後より行う.
C:生検にてdysplasiaと診断するのは容易である.
D:Crohn病と比較して瘻孔形成・大腸狭窄を合併しやすい.
E:生検でhigh grade dysplasiaが検出されれば外科手術適応となる.


問題9

抗ウイルス療法に関する記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:B型慢性肝炎に対する標準的治療はペグインターフェロン+リバビリン併用療法である.
B:B型肝硬変では,ラミブジンよりもインターフェロンのほうが肝発癌抑制効果は強い.
C:B型慢性肝炎は自然経過でウイルス量が減少しても肝発癌リスクは変わらない.
D:C型慢性肝炎は抗ウイルス療法が著効となると肝発癌が抑制される.
E:C型慢性肝炎には核酸アナログ製剤のエンテカビルが有効である.


問題10

瀉血治療に関して正しいものはどれか.1つ選べ.

A:肝硬変例には瀉血をすべきでない.
B:血色素値が11 g/dl以下となったら瀉血治療を休止する.
C:瀉血は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療の第一選択肢である.
D:インターフェロン(IFN)治療予定例には瀉血を行うべきでない.
E:瀉血治療開始後も鉄制限食は必要である.


問題11

ダビガトランの特徴で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:モニタリングが不要.
B:納豆を摂取してはならない.
C:半減期が長い.
D:大部分は肝臓で代謝される.
E:出血時はビタミンKを投与する.


問題12

不整脈死の原因となる基礎疾患として2番目に多い疾患はどれか.1つ選べ.

A:QT延長症候群
B:Brugada症候群
C:冠動脈疾患
D:心筋症
E:弁膜疾患


問題13

46歳の男性.1週間前から労作時の前胸部痛を自覚していたが,本日安静時でも同様の前胸部痛が10分間持続したため来院した.安静時心電図に異常を認めなかったが,冠動脈造影検査で左前下行枝近位部に90%狭窄を認めた.
嗜好歴:喫煙20本/日,26年間
身体所見:BMI 30 kg/m2,血圧168/92 mmHg,黄色腫認めず
生化学所見(空腹時):TC 250 mg/dl,TG 150 mg/dl,HDL-C 50 mg/dl,血糖150 mg/dl,HbA1c 8.0%
冠動脈イベント再発予防効果の高い治療法は以下のどれか.2つ選べ.

A:経皮的冠動脈形成術
B:スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)
C:ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
D:速効型インスリン
E:フィブラート製剤


問題14

抗血小板薬の使用について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:肺塞栓症には抗血小板薬を第一選択として投与する.
B:急性冠症候群の患者にはアスピリンの腸溶剤のほうが非腸溶剤よりも適している.
C:アスピリンの出血性の副作用は用量依存性に増加する.
D:クロピドグレルの安全性と有効性は同じチエノピリジン系薬物のチクロピジンと同等である.
E:シロスタゾールは狭心症の患者にもよい適応である.


問題15

喫煙と心血管疾患に関して誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:ニコチン依存症は趣味や嗜好ではなく薬物依存の病気である.
B:禁煙は心筋梗塞発症の予防には有効であるが,再発予防にはならない.
C:喫煙の影響は全死因の17%に及ぶと推測される.
D:喫煙の人体に対する影響として,COHb(一酸化ヘモグロビン)増加による臓器の低酸素化がある.
E:バレニクリンは離脱症状だけでなく喫煙による満足感も抑制する.


問題16

虚血性心疾患に対する心臓リハビリテーションで有効性が証明されていないものは次のどれか.1つ選べ.

A:最高酸素摂取量の増加
B:健康関連QOLの改善
C:総死亡の減少
D:心死亡の減少
E:心室性期外収縮の減少


問題17

静脈血栓塞栓症の薬物的予防法に用いられる薬剤として適していないのは次のうちどれか.1つ選べ.

A:未分画ヘパリン
B:アスピリン
C:フォンダパリヌクス
D:エノキサパリン
E:ワルファリン


問題18

下大静脈フィルターや抗凝固療法に関して次のうち,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:静脈血栓塞栓症を有する患者のうち,抗凝固療法の禁忌例,抗凝固療法の合併症ないし副作用発現例は永久型下大静脈フィルターのClass Iの適応となる.
B:下大静脈フィルター留置に伴う合併症の主なものは血栓症である.
C:PREPIC試験では,下大静脈フィルター留置群において肺血栓塞栓症や深部静脈血栓症の再発は有意に減少した.
D:本邦ではエビデンスはないが,ワルファリンの至適用量はPT-INR 1.5~2.5が推奨されている.
E:静脈血栓症の危険因子が可逆的である場合,ワルファリンの投与は3カ月間継続することが推奨されている.


問題19

径3 cmの腹部大動脈瘤をもつ患者の外来における診療方針で誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:降圧目標は収縮期血圧で120 mmHgとし,β遮断薬を第一選択薬とする.
B:軽度のものも含めて,運動は基本的に禁止する.
C:喫煙は瘤の拡大,破裂と関係が深いので,禁煙指導を行う.
D:半年~1年に一回の腹部CT検査を行う.
E:大動脈瘤径が5 cm以上,また0.5 cm/年以上増大する場合は手術適応と考える.


問題20

次の記述のうち,脳動脈瘤破裂の危険因子とされているものはどれか.2つ選べ.

A:喫煙
B:男性
C:飲酒
D:心疾患
E:糖尿病


問題21

頸部頸動脈狭窄について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:超音波診断における低輝度プラークは安定したプラークと考えられる.
B:血管造影上,潰瘍を有する病変は安定したプラークと考えられる.
C:内科治療としては抗血小板薬が第一選択である.
D:頸動脈内膜剥離術は症候性高度狭窄に対して有効である.
E:頸動脈ステント留置術は保険適応ではない.


問題22

脳梗塞二次予防で誤っている記載はどれか.1つ選べ.

A:高血圧,慢性心房細動を有する78歳の心原性脳塞栓症患者.ワルファリンコントロール目標をPT-INR 1.6~2.6とした.
B:脳出血既往のある80歳.左放線冠にラクナ梗塞を発症した.二次予防として出血性合併症が少ないシロスタゾールを選択した.
C:糖尿病,脂質代謝異常を有する76歳.右中大脳動脈狭窄症が原因と考えられるアテローム血栓性脳梗塞を発症した.二次予防としてクロピドグレルを選択し,糖尿病,脂質代謝異常のコントロールを行った.
D:高血圧,陳旧性心筋梗塞既往があり,アスピリン内服中の68歳.右内包後脚にラクナ梗塞を発症した.高リスクであるためアスピリンにクロピドグレルを加え治療し,脳血流を保つため最低1年間は降圧を行わない方針とした.
E:慢性心房細動を有する心原性脳塞栓症既往の66歳.外来で抗凝固療法としてワルファリンコントロール中.前月のPT-INRが1.3であったためワルファリン増量したところ,今月はPT-INRが3.8であった.抗凝固療法をダビガトランに変更した.


問題23

COPD患者の肺機能低下を抑制するのはどれか.1つ選べ.

A:禁煙
B:呼吸リハビリテーション
C:短時間作用性β2刺激薬
D:長時間作用性β2刺激薬
E:吸入ステロイド


問題24

糖尿病患者に対して積極的に運動療法を行う際に禁忌とすべき症例を2つ選べ.

A:空腹時血糖200 mg/dl以上の高血糖で尿ケトン陰性
B:増殖網膜症による眼底出血
C:重症糖尿病性腎症(血清クレアチニン:男性2.5 mg/dl以上,女性2.0 mg/dl以上)
D:インスリン治療中
E:トレッドミル負荷検査陽性の狭心症


問題25

慢性腎臓病(CKD)とメタボリック症候群(MS)や肥満の関連について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:MSではCKDの有病率が高い.
B:内臓肥満は足細胞(podocyte)に障害を与える.
C:CKD患者が減量すると尿蛋白は減る.
D:CKD患者が減量すると血圧は下がる.
E:CKD患者が減量するとクレアチニンクリアランス(CCr)は上昇する.


問題26

初発のうつ症状の改善がみられた後の抗うつ薬投与について適切なものはどれか.1つ選べ.

A:症状の改善がみられた時点で漸減していく.
B:症状が消失した時点で中止する.
C:症状が消失した時点から漸減して中止していく.
D:症状が消失した時点で投与量を半減し維持療法を行う.
E:症状が消失した後4~9カ月間は同量の抗うつ薬を継続する.


(解答は本誌掲載)