今月の主題
「理解のための26題」
問題1
睡眠に伴う呼吸生理学的変化について,誤りを1つ選べ.
A:覚醒刺激の消失による分時換気量の低下
B:咽頭周囲筋の活動低下による上気道抵抗の上昇
C:二酸化炭素,低酸素吸入に対する換気応答の増加
D:機能的残気量の低下
E:呼吸補助筋の活動低下
問題2
48歳,男性.タクシー運転手としての業務中に,居眠り運転による追突事故を起こしたため,上司から睡眠呼吸障害のチェックを促され来院した.身長168 cm,体重58 kg,2カ月前の会社の健診では,パルスオキシメトリ法で3%ODI(酸素飽和度低下指数)8.1/時,エプワース眠気尺度では6点(正常範囲:0~10点).方針として正しいのはどれか.2つ選べ.
A:高血圧,脂質異常症,糖尿病の既往について病歴聴取する.
B:パルスオキシメトリ法で正常範囲なので,これ以上の検査は不要である.
C:精密検査により重症の睡眠呼吸障害が明らかになった場合,まずは半年間の減量指導を行う.
D:エプワース眠気尺度で正常範囲なので,無呼吸の回数にかかわらずCPAP治療の適応ではない.
E:終夜睡眠ポリグラフ検査を実施する.
問題3
睡眠呼吸障害に関して,誤りはどれか.2つ選べ.
A:心不全患者の過半数に睡眠呼吸障害を合併する.
B:重症閉塞性睡眠時無呼吸・低呼吸患者では心血管事故が対照群の倍以上となる.
C:肥満に伴う閉塞性無呼吸患者の治療の第一選択は減量である.
D:心不全に合併する中枢性無呼吸の治療には夜間酸素吸入が第一選択である
E:CPAPは中枢性睡眠時無呼吸を合併する心不全患者の予後を改善する.
問題4
閉塞型睡眠時無呼吸症の閉塞部位として最も頻度の高い気道はどこか.1つ選べ.
A:鼻
B:口腔
C:咽頭
D:喉頭
E:気管
問題5
中枢型無呼吸を生じやすくする要素でないものはどれか.1つ選べ.
A:肥満
B:低炭酸ガス血症性無呼吸閾値
C:覚醒
D:呼吸出力
E:化学感受性
問題6
睡眠に伴う呼吸障害についての記述で誤っているものはどれか.2つ選べ.
A:睡眠中に肺胞低換気になると高炭酸ガス血症をきたす.
B:睡眠中に低酸素血症があれば高炭酸ガス血症もある.
C:高炭酸ガス血症は死腔換気量の増加によって生ずる.
D:睡眠呼吸障害に合併する肺高血圧症は高炭酸ガス血症に起因する.
E:高炭酸ガス血症の呼吸管理としてNPPV(非侵襲的換気療法)が勧められる.
問題7
次のうち,間欠的低酸素よりも持続的低酸素との関連がより強いと考えられているものはどれか.1つ選べ.
A:NF-κB
B:グレリン
C:ヘモオキシゲナーゼI
D:チオレドキシン
E:アディポネクチン
問題8
女性の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に関して正しいのはどれか.2つ選べ.
A:閉経後に有病率が高まる.
B:顎顔面形態は発症リスクとならない.
C:肥満は発症リスクとならない.
D:生命予後の増悪因子となるエビデンスはない.
E:ホルモン補充療法が治療として用いられる.
問題9
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状・徴候として誤っているのはどれか.1つ選べ.
A:肥満
B:日中の過眠
C:夜間頻尿
D:低血圧
E:低酸素血症
問題10
終夜睡眠ポリソムノグラフィ(PSG)について正しいものはどれか.2つ選べ.
A:反復睡眠潜時検査(MSLT)を行う前夜にはPSGを行う.
B:睡眠関連てんかんなどが疑われる場合は脳波の誘導を増やす.
C:頤筋の筋緊張は深睡眠で消失する.
D:睡眠時無呼吸はプレッシャーセンサーで判定する.
E:PSGは睡眠時無呼吸を疑う患者の第一選択である.
問題11
2007年のアメリカ睡眠学会(AASM)による新しい判定マニュアルの判定基準で正しいものはどれか.1つ選べ.
A:無呼吸判定のためには鼻圧センサーのみを用いる.
B:イベントの持続時間は,最低5秒以上であれば無呼吸と判定してよい.
C:低呼吸判定の推奨基準ではイベント前の酸素飽和度から3%以上の低下としている.
D:低呼吸の判定の代替基準では,イベント前の酸素飽和度から3%以上の低下あるいは覚醒反応を伴うとしている.
E:呼吸努力の判定には食道内圧の測定が必要である.
問題12
メタボリックシンドロームの構成要素として誤っているのはどれか.1つ選べ.
A:内臓脂肪蓄積
B:心不全
C:血圧上昇
D:耐糖能異常
E:中性脂肪増加
問題13
睡眠呼吸障害と密接な関係が指摘されていないのはどれか.1つ選べ.
A:高血圧
B:動脈硬化
C:貧血
D:メタボリックシンドローム
E:鼻閉
問題14
在宅治療機器の保険適応で誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:持続性陽圧呼吸治療(CPAP)は,簡易無呼吸検査で無呼吸低呼吸指数(AHI)≧40,終夜睡眠ポリグラフ検査でAHI≧20の症例
B:在宅酸素療法は,慢性心不全患者で,医師によりNYHA III度以上の重症と認められ,睡眠ポリグラフ検査でAHI≧20の睡眠時のCheyne-Stokes呼吸が確認された症例
C:高度慢性呼吸不全のうち,在宅酸素療法導入時に動脈血酸素分圧55 mmHg以下の症例および動脈血酸素分圧60 mmHg以下で睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症をきたす症例
D:在宅人工呼吸とは,長期にわたり持続的に人工呼吸に依存せざるを得ず,かつ,安定した病状にある症例について,在宅において実施する人工呼吸療法をいう.対象となる患者は,病状が安定し,在宅での人工呼吸療法を行うことが適当と医師が認めた者とする.なお,睡眠時無呼吸症候群の患者は対象とならない.
E:サーボ制御圧感知型人工呼吸器(ASV)は,NYHAIII度以上の肺うっ血を伴う心不全で,AHI≧20の睡眠時のCheyne-Stokes呼吸が確認された症例
問題15
呼吸器疾患の睡眠呼吸障害に関して,誤っているものを1つ選べ.
A:caudal tracheal tractionは上気道虚脱性を抑制する.
B:座位(立位)から臥位への姿勢変化により,機能的残気量は小さくなる.
C:呼吸器疾患の睡眠呼吸障害として,反復する一過性の低酸素血症がある.
D:COPDと中枢性睡眠時無呼吸低呼吸症候群の合併は,overlap症候群と呼ばれる.
E:夜間喘息発作では,睡眠障害症状のみを訴える場合がある.
問題16
脳血管障害と睡眠呼吸障害の記述に関して正しいのはどれか.2つ選べ.
A:脳血管障害の約10%に睡眠呼吸障害を合併する.
B:中・重症の睡眠時無呼吸症候群では脳血管障害の発症リスクが高くなる.
C:無呼吸型は閉塞性睡眠時無呼吸のほかに,Cheyne-Stokes型中枢性睡眠時無呼吸がある.
D:閉塞性睡眠時無呼吸を有する卵円孔開存例は,奇異性脳塞栓症の原因にならない.
E:脳血管障害患者ではCPAP(持続気道陽圧)療法のコンプライアンスが良好である.
問題17
睡眠時無呼吸症候群に最も併発しやすい精神疾患はどれか.1つ選べ.
A:パニック障害
B:うつ病
C:強迫性障害
D:外傷後ストレス障害(PTSD)
E:統合失調症
問題18
日中の過眠症状をきたしにくい疾患はどれか.1つ選べ.
A:ナルコレプシー
B:睡眠不足症候群
C:睡眠時無呼吸症候群
D:レム睡眠行動障害
E:周期性四肢運動障害
問題19
睡眠時無呼吸症候群に用いられるCPAP療法について正しいのはどれか.2つ選べ.
A:閉塞性無呼吸症候群の主たる治療法である.
B:治療の開始時には機器の選択と治療圧の設定が必要である.
C:社会保険基準による給付対象は簡易診断検査でAHI 20以上である.
D:Cheyne-Stokes呼吸患者ではCPAP療法の効果は期待できない.
E:CPAP療法の奏効機序は,加圧刺激による上気道筋緊張の回復である.
問題20
睡眠呼吸障害を有する疾患で,夜間に高二酸化炭素血症を呈しにくいものはどれか.1つ選べ.
A:肺結核後遺症
B:筋萎縮性側索硬化症
C:肥満低換気症候群
D:心不全に起因する中枢型睡眠時無呼吸症候群
E:慢性閉塞性肺疾患と閉塞型睡眠時無呼吸症候群の合併
問題21
睡眠呼吸障害を合併した慢性心不全患者の治療に関して正しいものはどれか.2つ選べ.
A:CPAP治療により長期的な予後の改善が認められている.
B:ASVの使用により長期的な予後の改善が認められている.
C:ASVはQOLの向上や心機能(左室駆出率)の改善が期待されているデバイスである.
D:Bi-level PAPやASVは保険診療上,心不全治療の保険適応となっている.
E:ASVはマスク式の人工呼吸器である.
問題22
OSASの治療について,誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:肥満症を伴うOSASには,食事療法,運動療法が有効である.
B:肥満症を伴うOSASに対する食事療法では,現体重の5~10%の減量を初期目標とする.
C:肥満症に対する治療薬マジンドールは,BMI 35 kg/m2以上が適応となり,投与期間は3カ月以内に限られている. D:慢性閉塞性肺疾患を合併したOSASには,酸素療法が第一選択になる.
E:体位依存性OSASは,側臥位での睡眠により無呼吸低呼吸指数(AHI)が軽減する.
問題23
小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群について正しいのはどれか.1つ選べ.
A:肥満があれば減量指導を行う.
B:注意欠陥多動性障害は無関係である.
C:免疫学的影響を考慮するとアデノイド扁桃摘除術の適応は5歳以上とすべきである.
D:全例に終夜睡眠ポリグラフィを行うべきである.
E:耳鼻科医との緊密な連携が重要である.
問題24
次の疾患の中で通常睡眠呼吸障害を伴わないものはどれか.1つ選べ.
A:Prader-Willi症候群
B:Down症候群
C:Duchenne型筋ジストロフィ
D:Bell麻痺
E:Pierre-Robin症候群
問題25
肺活量の低下を認めるが,喉咽頭機能障害は重症でない神経筋疾患の睡眠呼吸障害に対して第一選択になる治療法はどれか.1つ選べ.
A:非侵襲的陽圧換気(NPPV)療法
B:気管切開による人工呼吸療法
C:持続気道陽圧(CPAP)
D:酸素療法
E:催眠鎮静薬
問題26
高齢者のSDBで若年者に比べて減少するのはどれか.1つ選べ.
A:罹病率
B:女性の割合
C:肥満の関与
D:夜間頻尿
E:認知機能障害
(解答は本誌掲載) |