HOME雑 誌medicinaバックナンバー一覧48巻5号(2011年5月号) 今月の主題「理解のための29題」
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今月の主題

「理解のための29題」


問題1

次の記述から正しいものを1つ選べ.

A:小腸で吸収されたコレステロール,脂肪酸はカイロミクロンとなる.
B:家族性高コレステロール血症(FH)はリポ蛋白リパーゼの欠損で起こる.
C:アポB-100は主としてカイロミクロン中に含まれる.
D:LDL受容体は腎臓に最も多く存在する.
E:リポ蛋白の中で最も小さい粒子はVLDL(超低比重リポ蛋白)である.


問題2

次のうち正しいのはどれか.1つ選べ.

A:small dense LDLは動脈硬化病変に防御的に働く.
B:高トリグリセライド血症はメタボリックシンドロームには稀である.
C:低HDL血症は動脈硬化性疾患リスクを低下させる.
D:レムナントはLDLから生じる.
E:血清LDL値の低下は動脈硬化性疾患リスクの低下につながる.


問題3

次のうち誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:正常血圧では動脈硬化は進行しない.
B:高血圧では血管壁での酸化LDLが増加する.
C:血管壁に対するずり応力の増加は動脈硬化を促進させる.
D:高血圧では血管内皮細胞での一酸化窒素が低下する.
E:血圧の上昇は頸動脈内膜肥厚を促進させる.


問題4

次のうち間違っているものはどれか.1つ選べ.

A:糖尿病患者では初期には大血管症は起こらない.
B:糖尿病患者では,高TG血症,低HDL血症といった動脈硬化を促進する危険因子が重複する.
C:糖尿病患者では,small dense LDL,酸化LDL,糖化LDLなど脂質代謝の質的異常をきたす.
D:食後高血糖,負荷後高血糖は冠動脈疾患の危険因子となる.
E:糖尿病患者において大血管障を予防するには,十分な血糖コントロールとともに,血清脂質,血圧,生活習慣を含めた総合的な管理が重要である.


問題5

喫煙と粥状動脈硬化の関係について,誤っているものを1つ選べ.

A:喫煙は内皮依存性血管拡張能を低下させる.
B:喫煙は血管内皮細胞の細胞接着の亢進を介して,白血球の内膜への侵入を増加させる.
C:喫煙により低HDL-C血症が生じるが,HDLの中でも小さなHDL3分画が減少する.
D:喫煙者から採取した血小板は自然凝集のみでなく,刺激による凝集能が亢進している.
E:タバコ煙修飾LDLはマクロファージに極めて取り込まれやすく,マクロファージを泡沫化させる.


問題6

頸動脈超音波検査に関する記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:高輝度プラークを有する症例は低輝度プラークを有す症例より脳血栓発症のリスクが高い.
B:内膜・中膜壁厚(IMT)は,プラークより普遍性が高い超音波検査指標である.
C:内膜・中膜壁厚(IMT)肥厚は脳血管疾患発症のリスクであるが,冠動脈疾患発症のリスクでない.
D:頸動脈内腔側高輝度層の厚さが内膜・中膜壁厚(IMT)として使用される.
E:内膜・中膜壁厚(IMT)は近位側と遠位側の測定値の平均が使用される.


問題7

64列マルチスライスCTによる冠動脈CT造影検査の適応として適切なものを1つ選べ.

A:ST上昇型急性心筋梗塞が疑われる症例
B:安定狭心症が疑われる症例
C:冠攣縮性狭心症が疑われる症例
D:CKD4期の慢性腎不全症例
E:検診目的の症例


問題8

血管機能検査について述べた下記の文章において,正しいものを1つ選べ.

A:PWVの原理は,血流伝播速度から血管弾性を推定する直接的硬化指数と言える.
B:CAVIの原理は,血管径の変化を観察することで血管弾性を推定する間接的指数と言える.
C:Stiffness parameter βは弾性動脈の局所的な口径変化をみる評価法である.
D:PWVの問題点として,閉塞性動脈硬化症では見かけ上数値が低下してしまうことが挙げられる.
E:いわゆる「血管年齢」を算出するのに,CAVIは適しているとは言えない.


問題9

脂質異常症治療薬の作用について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:スタチンはLDLコレステロールを低下させる.
B:フィブラートはHDLコレステロールを上昇させる.
C:エイコサペンタエン酸エチルは抗血栓作用をもつ.
D:エゼチミブは腸管内で胆汁酸と結合する.
E:プロブコールは抗酸化作用をもつ.


問題10

脳卒中に関する最近のエビデンスについて以下の中から正しい記述を1つ選べ.

A:どのような治療法でも血清脂質値さえ下げれば脳卒中発症を抑制できる.
B:スタチンは脂質異常症のないハイリスク患者の脳卒中発症も減少させる.
C:低用量スタチンによる脳卒中の再発予防効果はエビデンスとして確立している
D:日本人におけるスタチンの脳卒中発症予防の大規模RCTは行われていない.
E:スタチンは特に脳出血の発症リスクを大幅に抑制する.


問題11

次の文章のうち適切なものはどれか.1つ選べ.

A:慢性腎臓病ではII a型表現型のの脂質異常症を呈する.
B:メタ解析では,スタチンによる糸球体濾過率(GFR)上昇が示されている.
C:フィブラート薬は,スタチンより蛋白尿改善効果が大きい.
D:LDLアフェレシスは蛋白尿を低下させない.
E:日本腎臓学会のガイドラインでは,慢性腎臓病におけるスタチン投与は推奨されていない.


問題12

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007に関して,誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:動脈硬化性疾患(冠動脈疾患,脳梗塞など)は,多因子疾患である.
B:高LDL-C血症以外の危険因子としては,高血圧,糖尿病,喫煙,高HDL-C血症,冠動脈疾患の家族歴,加齢などがある.
C:糖尿病を合併している場合は,カテゴリー分類としては高リスク群になる.
D:一次予防では,家族性高コレステロール血症や高リスク群ではない限り生活習慣の改善が重要である.
E:二次予防では,生活習慣の改善と同時に薬物療法が必要で,LDL-C 100 mg/dl未満を目標にする.


問題13

高コレステロール血症と高トリグリセリド血症両方を有する患者について,動脈硬化惹起性リポ蛋白のリスクをよく反映する指標として優れているものはどれか.2つ選べ.

A:LDLコレステロール
B:HDLコレステロール
C:non-HDLコレステロール
D:アポリポ蛋白B
E:レムナントリポ蛋白コレステロール


問題14

脂質に関する文章で正しいものを1つ選べ.

A:TG値は食事の影響を受けにくい.
B:カイロミクロンレムナントはカイロミクロンに比べて大型である.
C:Ⅲ型高脂血症はIDLが増加する代表的な疾患である.
D:small dense LDLはコレステロールに富む.
E:食後高脂血症の診断基準は確立されている.


問題15

低HDL血症の原因とならない疾患はどれか.1つ選べ.

A:Tangier病
B:アポ蛋白A-I異常症
C:LCAT異常症
D:糖尿病
E:CETP欠損症


問題16

虚血性心疾患に対する脂質低下療法について正しいものを2つ選べ.

A:冠動脈疾患の既往のある症例に対するLDLコレステロール(LDL-C)達成目標は120 mg/dl以下である.
B:MEGA studyは日本で施行されたスタチンの二次予防試験である.
C:スタチンは多面的効果(pleiotropic effect)を有する.
D:LDL-C低下療法による心血管イベント抑制効果は,科学的に証明されている.
E:急性冠症候群患者に対するスタチンの早期投与は禁忌である.


問題17

次の記述のなかで正しいものはどれか.2つ選べ.

A:スタチンを用いた積極的な脂質低下療法により,心原性脳塞栓症患者において脳卒中二次予防効果が期待できる.
B:スタチンを用いた積極的な脂質低下療法により,TIA(一過性脳虚血発作)患者において脳卒中二次予防効果が期待できる.
C:わが国の動脈硬化性疾患予防ガイドラインによれば,脳梗塞の既往のある患者に対するLDLコレステロール管理目標値は危険因子の数により決定される.
D:スタチンを用いた脂質低下療法による心血管イベントリスク低減効果を予測する際に,LDLコレステロール値に加え高感度CRP値も指標になりうる.
E:脳卒中既往例に対し,スタチンを用いた脂質低下療法を行った場合に生じる脳出血の発症率はLDLコレステロール低下度と相関する.


問題18

糖尿病と脂質異常症を合併する患者に関し,正しいのはどれか.2つ選べ.

A:糖尿病ではIV型の脂質異常症が多い.
B:スタチン+フェノフィブラートの組み合わせは,絶対禁忌である.
C:LDL-Cは140 mg/dl未満が推奨される.
D:2型糖尿病患者の冠動脈疾患発症の一番の危険因子はHbA1cである.
E:インスリンの作用不足は結果的に脂質異常症を引き起こす.


問題19

高TG血症・低HDLコレステロール血症を示す高血圧患者に対して,脂質代謝を考慮した降圧剤の選択で次のうち望ましくないものはどれか.2つ選べ.

A:α遮断薬
B:β遮断薬
C:利尿薬
D:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシン受容体拮抗薬
E:カルシウム(Ca)拮抗薬


問題20

透析患者の脂質異常症について正しいのはどれか.2つ選べ.

A:疫学調査では,LDL-C値が高いほど死亡率が高い.
B:疫学調査では,LDL-C高値は心筋梗塞の発症リスクである.
C:食後採血のnon-HDL-C値でも,治療指標として有用である.
D:疫学調査では,一般住民に比較して,高LDL血症の頻度が高い.
E:保存期CKD患者に比較してスタチンの心血管死亡の抑制効果が強い.


問題21

生活指導についての記述である.誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:高トリグリセライド血症の基本は摂取エネルギーの適正化である.
B:生活習慣の変更は3ヶ月実行すれば慣れる.
C:コレステロール摂取制限の目安はおよそ卵黄2個分である.
D:短期間の禁酒は診断にも役に立つ.
E:食物線維の摂取はHDLコレステロールを上昇させる.


問題22

腎機能異常のある患者においてスタチン投与禁忌となるものを2つ選べ.

A:妊婦
B:高齢者
C:甲状腺機能低下症の患者
D:マクロライド投与中の患者
E:フィブラート系薬投与中の患者


問題23

以下の脂質異常症治療薬のうち,横紋筋融解症の発症に特に注意しなければいけない薬剤はどれか.2つ選べ.

A:フィブラート製剤
B:高純度EPAエステル製剤
C:プロブコール
D:ニコチン酸製剤
E:エゼチミブ


問題24

高LDL-コレステロール血症の治療に関し,正しいものを選べ.

A:閉塞性動脈硬化症や内頸動脈狭窄症があれば,高リスク群として取り扱う.
B:スタチンによる治療は一次予防でも有用なので,生活指導で管理目標値に到達しなければ速やかに投薬を開始する.
C:スタチンによる治療効果は,一次予防に比べ,二次予防のほうが高い.
D:糖尿病におけるリスクとしての取り扱いは日本と米国で差異はない.
E:二次予防においては,"the lower, the better"の観点から,下げれば下げるほどよい.


問題25

IV型高脂血症の薬物療法において,第一選択とならない薬物はどれか.2つ選べ.

A:スタチン
B:フィブラート系
C:ニコチン酸系
D:EPA
E:エゼチミブ


問題26

家族性高コレステロール血症の症状のうち,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:皮膚結節性黄色腫
B:アキレス腱黄色腫
C:若年性冠動脈疾患
D:発疹性黄色腫
E:角膜輪


問題27

女性の脂質異常症に関する記述で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:女性のLDL-C値は閉経後男性より高値を示す.
B:閉経前の女性のHDL-C値は男性より低いが,閉経後は男性より高くなる.
C:TG値は全年齢にわたり男性より女性が高値である.
D:閉経前女性でも,スタチンによる冠動脈疾患一次予防効果が明らかにされている.
E:女性の冠動脈疾患死亡率は,閉経後男性より高くなる.


問題28

妻と2人暮らしの83歳の男性.身長165 cm, 体重50 kg.冠動脈疾患,脳血管障害の既往はなく,若年の冠動脈疾患の家族歴もない.ADLは自立しており,歩行に問題はないが,ほとんど外出することはない.現在タバコは吸っていない.食事は妻が作っている.高血圧症がありCa拮抗薬を内服している.健康診断で脂質異常症(総コレステロール250 mg/dl, 中性脂肪130 mg/dl, HDLコレステロール45 mg/dl)を指摘された. この患者の脂質管理について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:LDLコレステロール120 mg/dl を治療目標とする.
B:妻に厳格な食事療法を指導する.
C:散歩のほか積極的な外出を指導する.
D:速やかにスタチンを開始する.
E:薬物療法を開始したら3カ月後に効果と有害反応の確認を行う.


問題29

次の中から正しいものを2つ選べ.

A:日本における二次予防患者の脂質管理は一次予防患者のそれよりも不良である.
B:PCSK9の遺伝子異常は高中性脂肪血症を引き起こす.
C:PCSK9阻害薬は,VLDL受容体が分解されるのを阻害する薬である.
D:CETP阻害薬により,高頻度に肝障害が生じる.
E:MTP阻害薬には下痢の副作用がある.


(解答は本誌掲載)