今月の主題
「理解のための28題」
問題1
日本において1955(昭和30)年以降に摂取が増加し続けている食品はどれか.1つ選べ.
A:豆類
B:野菜類
C:穀類
D:肉類
E:甘味類
問題2
Aさん58歳男性.事務職.13年前から糖尿病.血糖コントロールと合併症の精査のため入院となる.
身体所見:身長173 cm,体重65 kg,BMI 21.7 kg/m2(最高体重44歳時83 kg),血圧146/89 mmHg.生化学所見:TP 7.1 g/dl,Alb 4.2 g/dl,BUN 18 mg/dl,Cr 0.8 mg/dl,Na 142 mmol/l,K 4.0 mmol/l,Cl 103 mmol/l,TC 202 mg/dl,TG 125 g/dl,K 4.1 mg/dl,HbA1c(JDS値) 9.7%,尿蛋白1.2 g/日,eGFR 72 ml/min/1.73 m2.薬物療法:インスリン22単位/日,イミダプリル(タナトリル®)5 mg/日,ディオバン(バルサルタン®)40 mg/日. Aさんの食事療法で正しいものを1つ選べ.
A:血糖コントロール不良のため指示エネルギーは1,200 kcal/日とする.
B:降圧薬を2剤服用しているため,塩分は制限しない.
C:腎症3B期のため,蛋白質は0.8~1.0 g/kg/日とする.
D:総コレステロール値,中性脂肪値からみて脂質は20 g/日とする.
E:カリウム値は正常なため,1日にバナナを3本程度食べてもよい.
問題3
栄養評価について正しいのはどれか.1つ選べ.
A:栄養評価は栄養処方と栄養治療の中間に位置する.
B:上腕周囲径は低蛋白栄養状態の指標である.
C:血清アルブミンは低蛋白エネルギー状態の指標である.
D:主観的包括的評価は最も複雑な栄養指標である.
E:栄養評価は患者のアウトカム指標となる.
問題4
成分栄養剤の適応疾患として,誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:癌化学療法患者
B:Crohn病
C:短腸症候群
D:放射線性腸炎
E:腸閉塞
問題5
貧血の原因となる必須微量元素はどれか.1つ選べ.
A:銅
B:ヨウ素
C:クロム
D:セレン
E:マンガン
問題6
45歳男性が,急性膵炎の診断で搬送されてきた.入院後直ちに中心静脈栄養療法が開始された.急性膵炎は血中アミラーゼ活性も徐々に低下し,入院7日目には腹痛も治まり,順調に回復していた.しかし,10日目ごろから意識レベルの低下および痙攣がみられた.測定した血液生化学,電解質濃度および動脈血ガス分析データは,AST 30 IU/l,ALT 25 IU/l,アミラーゼ200 IU/l,BUN 12 mg/dl,Cr 0.8 mg/dl,Ca 9 mg/dl,P 3 mg/dl,血糖値130 mg/dl,アンモニア60 μg/dl,乳酸40 mg/dl,ピルビン酸3 mg/dl,Na 140 mEq/l,K 3.9 mEq/l,Cl 98 mEq/l,pH 7.25,PCO2 40 mmHg,HCO3- 18 mEq/dl,浸透圧290 mOsm/lであった. 尿量は1日1,000~1,200 mlである.
患者の意識レベルの低下および痙攣に対する正しい診断はどれか.1つ選べ.
A:非ケトン性高浸透圧性高血糖
B:Wernicke脳症
C:テタニー
D:肝性脳症
E:尿毒症
問題7
逆流性食道炎で症状を改善させる因子はどれか.1つ選べ.
A:アルコール
B:カフェイン
C:香辛料
D:臥位
E:体重減少
問題8
脂肪肝増悪の原因とならないものはどれか.1つ選べ.
A:インスリン抵抗性
B:肥満
C:アンギオテンシンII1受容体拮抗薬
D:糖尿病
E:飽和脂肪酸の豊富な食事
問題9
肝硬変における蛋白質アミノ酸代謝異常について正しいのはどれか.1つ選べ.
A:血清アルブミン濃度の増加
B:分岐鎖アミノ酸濃度の低下
C:芳香族アミノ酸濃度の低下
D:筋肉量の増加
E:血液アンモニア濃度の低下
問題10
慢性膵炎非代償期に欠乏しやすい脂溶性ビタミンではないものはどれか.1つ選べ.
A:ビタミンA
B:ビタミンB
C:ビタミンE
D:ビタミンD
E:ビタミンK
問題11
炎症性腸疾患の栄養療法で正しいのはどれか.1つ選べ.
A:Crohn病の栄養療法は,薬物療法と併用せずに単独で行う.
B:Crohn病の静脈栄養施行時に脂肪乳剤を用いると,病態が悪化する.
C:在宅成分栄養法は,Crohn病の寛解維持に有用である.
D:活動期潰瘍性大腸炎は,成分栄養法により高率に寛解導入される.
E:寛解期潰瘍性大腸炎では,脂肪や水溶性食物繊維を制限する.
問題12
広範囲小腸切除後にみられる下痢の原因として正しいのはどれか.1つ選べ.
A:消化管通過時間の延長
B:胃酸分泌の低下
C:胆汁酸の再吸収低下
D:腸管内浸透圧の低下
E:腸管の消化管ホルモン分泌亢進
問題13
肥満症の食事療法で用いるフォーミュラ食の栄養成分のなかで,制限されているものはどれか.2つ選べ.
A:蛋白質
B:ビタミン
C:糖質
D:脂質
E:ミネラル
問題14
糖尿病の病態,食事療法について,正しいのはどれか.1つ選べ.
A:食事摂取された糖質は,腸管から吸収された後,直接大循環系に入る.
B:2型糖尿病患者では,膵β細胞の破壊によりインスリンが欠乏する.
C:わが国におけるメタボリック症候群の診断基準では,高血糖が必須条件である.
D:糖尿病患者の摂取エネルギー量は標準体重と身体活動量から計算される.
E:糖尿病患者では,糖質によるエネルギー摂取量を30%以下に制限する.
問題15
メタボリックシンドロームの診断基準に含まれないものはどれか.1つ選べ.
A:血圧
B:HDLコレステロール(HDL-C)
C:LDLコレステロール(LDL-C)
D:トリグリセリド(TG)
E:血糖
問題16
血清尿酸値を下げる作用を有する薬剤を2つ選べ.
A:抗悪性腫瘍薬
B:ロサルタン
C:フロセミド
D:フェノフィブラート
E:ニコチン酸
問題17
骨粗鬆症の予防と治療を目的としたカルシウムの1日摂取量はどのくらいか(50歳台女性を想定).1つ選べ.
A:400 mg
B:500 mg
C:600 mg
D:700 mg
E:800 mg
問題18
慢性閉塞性肺疾患(COPD)について誤っているのはどれか.1つ選べ.
A:体重減少は呼吸機能障害とは独立した予後因子である.
B:呼吸筋消費エネルギー量は増加する.
C:%IBW<90%の場合に栄養治療の適応となる.
D:肺過膨張を示す場合は1日4~6回の分食を指導する.
E:運動療法を行う場合は栄養補給療法を併用する.
問題19
保存期CKD患者において,食事療法として適切なものはどれか.2つ選べ.
A:1日標準体重当たり1.2 g以上の蛋白質摂取
B:1日標準体重当たり0.6~0.8 gの蛋白質摂取
C:脂質を中心とした十分なエネルギー摂取
D:炭水化物を中心とした十分なエネルギー摂取
E:1日10 gの食塩摂取
問題20
55歳,女性.35歳に糖尿病と診断され,経口糖尿病薬の内服を開始.45歳からインスリン自己注射を開始.50歳で増殖性網膜症・硝子体出血のため,光凝固術・硝子体手術を受けた.52歳時に持続的蛋白尿出現.その後,蛋白尿が増加するため,入院となった.
入院時現症:意識は清明.身長165.0 cm,体重70.5 kg.心拍数80/分.血圧180/98 mmHg.頭頸部・胸腹部に異常所見を認めず,下腿前面に浮腫を認める.
検査所見:尿蛋白4+,尿潜血 -,Hb 12.0 g/dl,TP 6.5 g/dl,Alb 3.8 g/dl,ALT 18 IU/l,AST 16 IU/l,Cr 0.8 g/dl,BUN 13 mg/dl,HbA1c(JDS値)7.5%,24時間クレアチニンクリアランス75 ml/分,eGFR 55.2 ml/分/1.73 m2,尿蛋白3.3 g/日であった.
この患者の栄養療法として適切なものを2つ選べ.
A:摂取カロリー 2,200 kcal/日
B:摂取蛋白質量 72 g/日
C:食塩摂取量 10 g/日
D:摂取カロリー 1,700 kcal/日
E:摂取蛋白質量 50 g/日
問題21
低栄養状態によって引き起こされる事象として誤っているものはどれか.1つ選べ.
A:入院期間の長期化
B:術後合併症の増加
C:医療費の高額化
D:動脈硬化性疾患の減少
E:総死亡率の増加
問題22
アルコール依存症の栄養療法で正しいものはどれか.1つ選べ.
A:ビタミン補充や電解質の補正はあまり必要とならない.
B:食欲を増すために調理酒,みりんなどを用いて調理するとよい.
C:味覚障害がある場合が多いので,濃い味を指導する.
D:糖尿病の治療は厳格な血糖コントロールが必要である.
E:例外を除き,高蛋白・高エネルギー食が基本となる.
問題23
59歳,女性.4カ月前から腹部に疝痛がみられ,水様性下痢が続いている.体重は8 kg減少した.腹部手術や婦人科疾患の既往はない.ヘリコバクター・ピロリ菌を除菌後から逆流性食道炎のためにプロトンポンプ阻害薬を服用している以外は,薬物などの常習的服用はなく,喫煙習慣や飲酒癖もない.大腸内視鏡検査で大腸粘膜に異常を認めなかったが,生検では広範囲にわたって粘膜下コラーゲン沈着と粘膜のリンパ球浸潤を伴った炎症がみられた.最も可能性が高い疾患はどれか.
A:コラーゲン性大腸炎
B:Crohn病
C:虚血性大腸炎
D:リンパ球性大腸炎
E:潰瘍性大腸炎
問題24
以下のうち,ビタミンB12 不足が生じがたいのはどれか.2つ選べ.
A:厳格な菜食主義の人
B:野菜嫌いで肉食を好む人
C:高齢者など,胃酸分泌の低い人
D:胃全摘後の人
E:左半結腸切除術後の人
問題25
褥瘡に関する栄養管理で正しいのはどれか.2つ選べ.
A:必要エネルギーの投与のみに留意すればよい.
B:どの症例に対しても一律の栄養管理で十分である.
C:医療チーム間での情報の共有が重要である.
D:褥瘡の発生因子として栄養障害の関与は限定されている.
E:褥瘡の発生には年齢よりも栄養障害の関与のほうが重要である.
問題26
誤嚥性肺炎の再発予防に適切でないものはどれか.1つ選べ.
A:脳血管障害の予防
B:口腔ケア
C:リハビリテーション
D:胃瘻
E:薬物療法
問題27
プレバイオティクス・プロバイオティクスとプレバイオティクスによる臨床効果として期待されているものを列挙した.誤っているものを1つ選べ.
A:侵襲時における腸内細菌叢の改善
B:腸閉塞の治療
C:短腸症候群に対する栄養改善
D:重症疾患における感染症の予防
E:アトピー性皮膚炎の予防と治療
問題28
機能性食品に関する記述として正しいものはどれか.1つ選べ.
A:機能性食品の多くは,その作用機序に関して科学的根拠が得られている.
B:血圧上昇抑制作用をもつ機能性食品の多くは,アンジオテンシン変換酵素(ACE)の阻害活性をもつペプチドを用いた製品である.
C:特定保健用食品として認可されたもので最も多いのは,高脂血症抑制作用を有する機能性食品である.
D:長期間絶食時の粘膜萎縮を予防する機能成分はアルギニンである.
E:血糖値上昇を防ぐ特定保健用食品のうち,食物繊維(難消化性デキストリン)は膵臓からのインスリン分泌を促進する作用がある.
(解答は本誌掲載) |