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今月の主題

「理解のための26題」


問題1

呼吸不全の状態でも,肺胞気・動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)が正常の可能性のある疾患はどれか.1つ選べ.

A:COPD
B:喘息重積発作
C:肺炎
D:特発性肺線維症
E:ふぐ中毒


問題2

AaDO2が増加する低酸素血症の発生メカニズムはどれか.2つ選べ.

A:肺胞低換気
B:換気血流比不均等分布
C:低濃度酸素吸入
D:拡散障害
E:高地


問題3

53歳,女性.喫煙歴なし.思春期から脊椎の変形が進行,最近息切れが出現している.肺機能検査は,VC 0.85 l,%VC 35.7%,FEV1.0 0.60 l,FEV1.0% 73%.室内気吸入下の動脈血ガスは,pH 7.377,PaCO2 58.8 Torr,PaO2 65.4 Torr,HCO3 33.6 mmEq/lであった.正しい記述はどれか.1つ選べ.

A:動脈血ガス分析上は,急性呼吸性アシドーシスである.
B:肺胞気動脈血酸素分圧較差は,22.2である.
C:胸郭変形以外に肺の器質的障害の存在が示唆される.
D:PaCO2の上昇には,肺胞低換気のみが関与している.
E:非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の適応はない.


問題4

正しいのはどれか.1つ選べ.

A:代謝性アシドーシスでアニオンギャップが正常の時,重炭酸イオンの喪失が原因である.
B:慢性II型呼吸不全で代謝性代償がある患者では,酸塩基調節障害の補正は必要ない.
C:Strong ion difference(SID)と総塩基量(buffer base)は別の概念である.
D:乳酸アシドーシスには乳酸リンゲル液を輸液として使用しない.
E:人工呼吸器装着患者の代謝性アルカローシスは人工呼吸器からの離脱遅延の要因になる.


問題5

慢性閉塞性肺疾患(COPD)による呼吸不全に伴う肺高血圧症(PH)で誤りはどれか.1つ選べ.

A:肺血管床(肺実質)の約半分が失われても発症しないこともある.
B:PaO2で60 Torr(mmHg)未満になると発症しやすくなる.
C:低酸素性肺血管攣縮(HPV)は動脈血の酸素分圧低下に反応して起こる.
D:酸素療法を初めとする呼吸不全に対する治療が第一選択である.
E:プロスタサイクリン,エンドセリン拮抗薬などの肺血管拡張薬は実地臨床では推奨されない.


問題6

呼吸困難に関する記述のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:起坐呼吸は左心不全に特異的な所見である.
B:右大量胸水貯留をきたしている患者は右側臥位で呼吸困難が軽減する.
C:肺動脈塞栓症による呼吸困難では胸痛を伴うことは稀である.
D:呼吸困難の程度を表すBritish Medical Research Council(MRC)の質問票によりCOPDの死亡リスクの予測が可能である.
E:PaO2の低下を伴わない呼吸困難は不安などによる機能的異常によるものと考えてよい.


問題7

呼吸不全の身体所見を評価するに際し,正しい組み合わせを2つ選べ.

A:口すぼめ呼吸の意義―陽圧換気
B:ばち状指を認める疾患―COPD
C:連続性ラ音の聴取―気管支喘息と確定
D:捻髪音―強制呼気で誘発・増強
E:hepatojugular reflux―右心不全の徴候


問題8

以下の疾患より主に間質性陰影を呈する疾患を1つ選べ.

A:慢性好酸球性肺炎
B:細菌性肺炎
C:特発性器質化肺炎
D:癌性リンパ管症
E:細気管支肺胞上皮癌


問題9

閉塞性換気障害を呈する疾患はどれか.2つ選べ.

A:肺気腫
B:間質性肺炎
C:気管支喘息
D:胸膜ベンチ
E:呼吸中枢抑制


問題10

ALI/ARDSの治療について述べた以下の記述のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:ALI/ARDSの予後は近年改善傾向であると報告されている.
B:人工呼吸器関連肺損傷を防止するため,低容量換気が推奨されているが,換気量の低下による高二酸化炭素血症を避けるべきである.
C:副腎皮質ステロイドの有効性については大規模臨床試験で証明されている.
D:腸管の安静を保つためできる限り長期間中心静脈栄養を行うべきである.
E:水分バランスは脱水を避けるため,多少輸液過剰のほうが望ましい.


問題11

細菌性肺炎の起炎菌ではないものはどれか.1つ選べ.

A:モラクセラ・カタラーリス
B:クラミジア・ニューモニエ
C:レジオネラ
D:クレブシエラ
E:インフルエンザ菌


問題12

成人にウイルス性肺炎を起こすウイルスはどれか.2つ選べ.

A:ロタウイルス
B:ライノウイルス
C:コロナウイルス
D:麻疹ウイルス
E:B型肝炎ウイルス


問題13

喘息急性増悪/発作における治療で誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:テオフィリン薬の点滴静注
B:ステロイドの全身投与
C:エピネフリン皮下注
D:長時間作用型β2刺激薬吸入
E:酸素吸入


問題14

気胸について正しい組み合わせはどれか.1つ選べ.

A:緊張性気胸―縦隔の気胸側への偏位
B:血気胸―打診で気胸側の鼓音
C:両側性気胸―急激な呼吸循環不全
D:続発性気胸―原因疾患は肺癌が最多
E:再膨張性肺水腫―虚脱発生72時間以降で減少


問題15

薬剤性肺炎の危険因子と考えられるものはどれか.2つ選べ.

A:喫煙
B:アトピー体質
C:ステロイドの投与
D:経気管支肺生検,胸腔鏡下肺生検
E:既存の肺線維症ないし間質性肺疾患


問題16

本文(p. 1409)で呈示した症例の治療として正しいものはどれか.2つ選べ.

A:アスピリン
B:ヘパリン
C:ワルファリン
D:tPA
E:副腎ステロイドホルモン


問題17

特発性肺線維症は進行性に徐々に悪化していき慢性呼吸不全の経過をとる疾患であるが,この疾患において肺機能の低下を抑制する薬剤はどれか.1つ選べ.

A:ステロイド
B:シクロフォスファミド
C:ピルフェニドン
D:コルヒチン
E:マクロライド


問題18

神経筋疾患の呼吸不全および緩和ケアで間違っているのはどれか.1つ選べ.

A:進行性のII型呼吸不全が多い.
B:NPPVが適用となることが多い.
C:フェンタニルを用いることが多い.
D:IPAPの導入圧は6~10 cmH2Oが多い.
E:侵襲的人工呼吸器の離脱は困難である.


問題19

COPDについて正しい記載はどれか.2つ選べ.

A:COPDにおける気流制限は非可逆性である.
B:わが国での推定患者数は約530万人である.
C:非気腫型よりも,気腫型のCOPDでは高二酸化炭素血症を来たしやすい.
D:長時間作用型気管支拡張薬が安定期治療の中心である.
E:COPDの治療は病期の進行度のみに基づいて決定する.


問題20

肺結核後遺症に伴う呼吸不全に関して誤りはどれか.1つ選べ.

A:肺結核治癒後の呼吸機能障害および肺循環障害が原因である.
B:拘束性換気障害によりII型呼吸不全をきたしやすい.
C:閉塞性換気障害を呈することは稀である.
D:COPDと比較して肺高血圧を合併しやすい.
E:酸素療法や非侵襲的人工呼吸管理が有用である.


問題21

酸素療法に関する記述で誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:ヘモグロビン酸素解離曲線は,pH・PCO2・温度によって変化する.
B:鼻カニューラで酸素を投与時,1回換気量が大きいほど吸入気酸素濃度が低下する.
C:ベンチュリマスクは低流量酸素供給システムである.
D:鼻カニューラで酸素を投与する場合,3 l/分まで加湿する必要はない.
E:変動型の呼吸同調装置は,固定型より酸素の節約効果が高い.


問題22

人工呼吸開始後に低血圧となった.考えられない病態はどれか.1つ選べ.

A:緊張性気胸
B:静脈還流の減少
C:Auto-PEEP
D:虚血性心疾患
E:人工呼吸器関連肺炎


問題23

NPPVの施行が最も推奨されるのは以下のどれか.2つ選べ.

A:顔面熱傷
B:心肺停止
C:COPD急性増悪
D:心原性肺水腫
E:頭部外傷による重症意識障害


問題24

呼吸不全に対する呼吸理学療法に関する記述のうち正しいのはどれか.1つ選べ.

A:呼吸管理,薬物治療のいずれも効果がない場合に行う治療である.
B:呼吸理学療法には医師は関わる必要はない.
C:廃用による関節拘縮は,胸郭では問題にならない.
D:排痰目的の呼吸介助は体位ドレナージと組み合わせて行う.
E:タッピングやバイブレーションは排痰の非薬物治療の第一選択である.


問題25

呼吸器疾患の栄養管理について正しいものはどれか.2つ選べ.

A:COPD患者の食事指導では分食を勧める.
B:COPD患者では筋蛋白量の減少は中等度以上の体重減少(%IBW<80%)で明らかになる.
C:安定期のCOPD患者では安静時エネルギー消費量は減少している.
D:高炭酸ガス血症があれば糖質中心の栄養補給を行う.
E:人工呼吸管理中であれば経腸栄養を行わない.


問題26

H1N1インフルエンザによる重症呼吸不全におけるECMO(体外式膜型人工肺)について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:妊婦は適応外である.
B:年齢により適応が決まる.
C:対応のできる施設に搬送する.
D:できるだけECMOは用いない.
E:通常の呼吸不全に比べECMOの成績は低い.


(解答は本誌掲載)