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今月の主題

「理解のための28題」


問題1

72歳,男性.慢性腎臓病(外来時のここ半年の平均血清Cr値 2.0 mg/dl),高血圧にて外来加療を受けていたが,誤嚥性肺炎にて入院.入院まで5日間食事がとれていなかった.入院時の血清Cr値 2.8 mg/dlで悪化あり,血清Na+値は132 mEq/lであったが,入院5日目には血清Na+は124 mEq/lまで低下した.意識レベルやバイタルサインに異常なし.入院後,体重は2 kg増加.この患者の低Na血症の原因として考えにくいものはどれか.1つ選べ.

A:1日1,500 mlの3号液投与
B:抗利尿ホルモン値 1.0 pg/ml(基準値 0.3~3.5 pg/ml)
C:高度体液量欠乏
D:塩分制限食
E:腎不全による尿希釈障害


問題2

血清K濃度の低下が起こりにくい病態はどれか.1つ選べ.

A:甲状腺機能亢進症
B:代謝性アルカローシス
C:糖尿病性ケトアシドーシス
D:インスリンの投与
E:ループ利尿薬使用


問題3

急激な酸の負荷に対する生体防御機構である緩衝系で,細胞外液のなかで最も重要な重炭酸緩衝系(BBS)に関する記述で,誤っているものを1つ選べ.

A:BBSが重要である理由の一つは,重炭酸イオンが量的に豊富で緩衝能が高いことにある.
B:BBSが重要である理由の一つは,pK値が他の緩衝物質(リン酸イオンなど)よりも生体のpHに近いことにある.
C:BBSが重要である理由の一つは,反応系のうち二酸化炭素が呼気中に即時に排泄され,緩衝反応が進行しやすいことにある.
D:BBSが有効に働くためには,換気能力が十分である必要がある.
E:BBSが有効に働くためには,末梢循環が十分である必要がある.


問題4

新規のホルモン線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)-23に関して,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:骨由来である.
B:P利尿をもたらす.
C:活性型ビタミンD投与によって抑制される.
D:1 α-水酸化酵素活性を抑制する.
E:24 α-水酸化酵素活性を上昇させる.


問題5

電解質異常とそれに関連した身体所見の組み合わせで誤りはどれか.1つ選べ.

A:低Na血症―意識障害
B:高Na血症―浮腫
C:低K血症―筋脱力
D:高K血症―徐脈
E:低Ca血症―テタニー


問題6

糖尿病性腎症の60歳台の男性が,定期外来に受診して,高K血症を指摘された.特に自覚症状はない.血圧 142/88 mmHg, 胸部聴診異常なし.下腿浮腫なし.動脈血液ガスおよび血清生化学検査所見を示す. pH 7.36,PaO2 98 Torr,PaCO2 33 Torr,HCO3-18 mEq/l,BUN 45 mg/dl,Cr 2.0 mg/dl,Na+ 136 mEq/l,K+ 5.8 mEq/l,Cl- 106 mEq/l. 以下のなかから,正しいものを2つ選べ.

A:アルカレミア
B:代謝性アシドーシス
C:アニオンギャップ増加
D:呼吸性アルカローシス
E:A-aDO2正常


問題7

65歳男性.1週間前に転倒して外傷性くも膜下出血の診断にて入院経過観察後,特に合併症を認めず退院となった.退院数日後より頭痛,食指不振を認め,来院前日より多動性出現,意識障害・不穏を認めるようになり,救急搬送となった.来院時,意識レベルはJCS I-3と意識障害を認めた.明らかな細胞外液量低下を疑う所見はなかった.神経学的巣症状の出現や頭部CT上,出血の増悪は認めなかった.血液検査にて血清Na+ 112 mEq/l, K+ 4.5 mEq/l, Cl- 74 mEq/l,血糖139 mg/dl, 血清浸透圧228 mOsm/lを示していた.尿化学検査では尿Na+ 90 mEq/l,尿K+ 50 mEq/l,尿浸透圧480 mOsm/lであった. 担当医は初期治療として輸液(1)を用いた.治療開始8時間後,Na+濃度は118 mEq/lとなった.意識レベルも改善している.尿Na++K+は70 mEq/lである.担当医は輸液を輸液(2)に変更した.
担当医が用いた輸液(1),(2)の組み合わせはどれか.

A:3%高張食塩水
B:生理食塩水
C:1号液(Na 90 mEq/l, K 0 mEq/l)
D:3号液(Na 50 mEq/l, K 20 mEq/l)
E:5%ブドウ糖液


問題8

血清K値の異常により起こる心電図変化で誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:低K血症ではT波が低くなり,QT時間が延長する.
B:低K血症ではジギタリス中毒が起こりやすくなる.
C:低K血症では頻脈性不整脈が起こりにくくなる.
D:高K血症ではテント状T波を認めることがある.
E:高度の高K血症では心停止をきたすことがある.


問題9

腫瘍から分泌される体液性骨吸収因子による高Ca血症(HHM)の診断において,検査AのPTHrPカットオフ値は0.5 pmol/l,検査Bのカットオフ値は1.1 pmol/lである.この違いが意味することは次のどれか.1つ選べ.

A:検査Aの感度は,検査Bの感度より低い.
B:検査Aの特異度は,検査Bの特異度より高い.
C:検査Aと検査Bの感度・特異度は,それぞれ同値である.
D:検査AによるHHMの過剰診断は,検査Bによる過剰診断より多い.
E:検査AによるHHMの見落としは,検査Bによる見落としより多い.


問題10

85歳女性,独居.高血圧に対して近医よりサイアザイド系利尿薬が2週間前より開始されていた.昏睡状態であるのを家族が発見,救急要請.救急車で病院に搬送中に強直間代性痙攣あり.血圧,脈拍は正常.浮腫もなし.検査所見にて,Na+ 113 mEq/l, K+ 2.8 mEq/l, BUN 13 mg/dl, Cre 0.6 mg/dlであった.頭部CTにて異常なし.対応として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A:3%NaClを1 ml/kg/hrで開始する.
B:可能なら,治療前に尿中Na, K, Cl,尿浸透圧,血清浸透圧を測定する.
C:治療開始後24時間後に採血を行い,Na濃度を再検査する.
D:Kを補充する.
E:サイアザイド系利尿薬を中止する.


問題11

45歳,女性.糖尿病による慢性腎臓病(ステージ3)で通院しているが,高K血症の傾向がある.身体所見:血圧158/82 mmHg,身体所見上,特に異常なし.血清生化学所見:Na+ 134 mEq/l,K+ 5.8 mEq/l,Cl- 110 mEq/l,HCO3- 16 mEq/l,BUN 35 mg/dl,Cr 2.5 mg/dl. この患者に対する高カリウム血症の治療として,最も不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:K制限食
B:ループ利尿薬投与
C:重炭酸ナトリウム投与
D:フロリネフ投与
E:イオン交換樹脂の使用


問題12

代謝性アシドーシスの治療について正しい記述はどれか.1つ選べ.

A:低K血症を伴ったアシドーシスの場合,アルカリ製剤投与を優先的に行う.
B:糖尿病性ケトアシドーシスでは,まずアルカリ製剤投与でアシドーシスを補正する.
C:代謝性アルカローシスのK補正には,塩化カリウムを用いる.
D:糖尿病性ケトアシドーシスの治療では,血清Na補正が重要である.
E:乳酸アシドーシス治療では第1にアルカリ製剤投与を考慮する.


問題13

次のCa・P・Mg代謝異常に関する記述のうち,正しいものを1つ選べ.

A:Ca 9.8 mg/dl,P 3.2 mg/dl,Alb 2.6 g/dlは正Ca血症である.
B:活性型ビタミンD投与中,尿Ca/尿Cr比が0.5であったので,そのまま同量処方とした.
C:補正Ca 7.8 mg/dlと低めであったが,インタクトPTH 28 pg/mlと正常範囲(10~65 pg/ml)だったので,副甲状腺機能低下はないと判断した.
D:PTHやFGF-23はP利尿ホルモンであり,それらの亢進により低P血症が惹起されうる.
E:Cr 1.0~1.5 mg/dl程度の軽度腎機能障害であれば,下剤として酸化Mgを通常量投与しても高Mg血症をきたすことはない.


問題14

以下の文章のうち,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:測定した検査値が正常であれば,基本的に電解質の補正は不要である.
B:甲状腺機能亢進症に伴う低K性周期性四肢麻痺では,できるだけKの投与速度を速くする.
C:高Na血症の患者では,電解質異常を増悪させないために輸液は5%ブドウ糖液で開始する.
D:K異常単独では意識障害をきたさない.
E:原因不明の代謝性アシドーシスでは中毒の可能性を考慮する.


問題15

以下の動脈血液ガス所見について,発症している病態に合致するものをすべて選択せよ. pH 7.45,PaO2 80 mmHg,PCO2 20 mmHg,HCO3- 12 mEq/l.生化学所見:Na+ 150 mEq/l,K+ 3.7 mEq/l,Cl- 100 mEq/l.

A:呼吸性アシドーシス
B:呼吸性アルカローシス
C:代謝性アシドーシス
D:代謝性アルカローシス
E:すべて該当しない.


問題16

保存期腎不全患者の酸塩基・電解質異常について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:IV型尿細管性アシドーシスを合併すると,低カリウム血症になりやすい.
B:腎不全末期になると,不揮発酸が蓄積してアニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスを呈する.
C:腎不全初期~中期にかけて,アニオンギャップが正常の代謝性アシドーシスを呈することが多い.
D:腎不全患者にとって,低K血症が最も多い電解質異常である.
E:腎不全患者は糸球体濾過量が低下するだけで,尿細管機能は末期まで保たれる.


問題17

サイアザイド系利尿薬による電解質異常について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:低K血症
B:低Mg血症
C:低Ca血症
D:低Na血症
E:低Cl血症


問題18

糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧性高血糖状態などの高血糖緊急症の治療で,第1に優先すべきものはどれか.1つ選べ.

A:補液
B:インスリン投与
C:Na補充
D:K補充
E:P補充


問題19

24歳,女性.1年前から続発性無月経,6カ月前より腋毛・恥毛の脱落,乳輪の色素脱失,全身倦怠感,食欲低下,体重減少,便秘,嗄声,耐寒能の低下,下肢浮腫(non pitting)を自覚.1週間前から嘔気を認め,精査目的で内科外来受診. 身体所見:血圧78/50 mmHg.血液・血清生化学所見:白血球4,300/μl(分画 好中球60%,好酸球15%,リンパ球20%,単球5%,血小板21×104/μl,ヘモグロビン10.0 g/dl),Na+ 127 mEq/l,K+ 4.0 mEq/l,Cl- 91 mEq/l,AST 50 IU/l,ALT 60 IU/l,Cr 0.9 mg/dl,T-chol 290 mg/dl,CPK 320 IU/l,血糖69 mg/dl. 最初に投与してはいけない薬剤はどれか.1つ選べ.

A:コルチゾール
B:女性ホルモン
C:甲状腺ホルモン
D:加糖リンゲル液
E:制吐薬


問題20

67歳,男性.一昨夕からの腹痛と繰り返す嘔吐があり,受診.虫垂切除術の既往あり.嘔吐物は茶色い腸液様で,発症時より排ガス,排便なく,排尿も少ない.腹部超音波検査ではto and fro signを認めた.体温36.8℃,血圧94/70 mmHg,脈拍116/分.この患者の採血結果として適当でないものはどれか.1つ選べ.

A:血清Na+ 128 mEq/l
B:血清K+ 5.3 mEq/l
C:Hb 17.1 g/dl
D:BUN 48 mg/dl
E:Cr 1.8 mg/dl


問題21

低栄養患者に対する高カロリー輸液の初期の処方で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:グルコースの投与量を控える.
B:アミノ酸の投与量を控える.
C:脂肪乳剤は使用しない.
D:Kの投与量を控える.
E:水分は十分に投与する.


問題22

ADH分泌不適合症候群(SIADH)に関する記載のうち,正しいものはどれか.1つ選べ.

A:正常では血漿浸透圧ギャップ(実測血漿浸透圧―血漿浸透圧予測値)が10 mOsm/kgH2O以上である.
B:antidiuretic hormone(ADH)が基準値範囲内であればSIADHは否定的である.
C:高尿酸血症では偽性低Na血症を呈することがある.
D:ループ利尿薬の投与では腎での自由水再吸収が亢進し,SIADHをきたす.
E:急性尿細管壊死を呈すると,SIADHの診断は困難である.


問題23

甘草による低K血症の機序はどれか.1つ選べ.

A:コルチゾールをコルチゾンに変換する酵素(11 β-HSD2)を阻害する.
B:コルチコステロンをアルドステロンに変換する酵素(CYP11B2)を活性化する.
C:遠位尿細管でのK再吸収を抑制する.
D:集合尿細管でのK排泄を促進する.
E:腸管でのK吸収を阻害する.


問題24

胃薬・下剤による高Mg血症に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選べ.

A:1.5 g/日程度の通常量の酸化マグネシウムでは高Mg血症は起こらない.
B:高Mg血症の症状はテタニー症状と似る.
C:高齢者では若年者に比べ,高Mg血症のリスクが低い.
D:高Mg血症による徐脈性不整脈などの症状に対して,Ca製剤(カルチコール®)の初期投与が有効である.
E:軽度脱水気味であったが,便秘が続いていたので,酸化マグネシウムを増量し長期服用とした.


問題25

カチオンギャップが小さい経腸栄養剤の投与で認められるのはどれか.1つ選べ.

A:代謝性アシドーシス
B:代謝性アルカローシス
C:呼吸性アルカローシス
D:呼吸性アシドーシス
E:上記のいずれでもない.


問題26

75歳,女性.骨粗鬆症に対してカルシウム製剤,慢性便秘症に対して酸化マグネシウム製剤の処方を受けていた.また,友人に勧められて,2週間前からCaを含有するサプリメントの内服を始めていた.数日前から全身倦怠感,悪心を自覚したため,受診となった.予想される異常所見として適切でない所見を1つ選べ.

A:高Ca血症
B:低PTH血症
C:血中HCO3-値低値
D:血清Cr値上昇
E:脱水症の身体所見


問題27

急性高P腎症のリスクファクターはどれか.2つ選べ.

A:男性
B:糖尿病
C:高血圧
D:脂質異常症
E:カルシウム拮抗薬


問題28

次の低P血症性疾患のうち,線維芽細胞増殖因子(FGF)23高値となる疾患はどれか.2つ選べ

A:吸収不良症候群
B:ビタミンD欠乏性くる病
C:腫瘍性骨軟化症
D:先天性Fanconi症候群
E:X染色体優性低P血症性くる病/骨軟化症


(解答は本誌掲載)