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今月の主題

「理解のための25題」


問題1

不整脈の診断を行ううえで正しいものはどれか.1つ選べ.

A:自覚症状の問診のみで診断は100%可能である.
B:不整脈の心電図記録があれば,ほかの検査は必ずしも必要としない.
C:心臓電気生理検査は不整脈の診断に必須である.
D:失神や血圧低下をきたす不整脈では早急な対応が必要である.
E:Holter心電図や携帯型心電計は不整脈の診断に有用でない.


問題2

次の中から正しい記述を1つ選べ.

A:多くのKチャネルは,内向き電流である.
B:ジギタリスはNa+/K+交換ポンプ阻害薬である.
C:Naチャネル遮断薬は外向き電流を減少させる.
D:Caチャネル主導型の脱分極はNaチャネル主導型より伝導速度が遅い.
E:Naチャネル遮断薬では解離速度が速いほうが遮断作用は強力である.


問題3

カテーテルアブレーションにより不整脈再発防止が高い確率で期待できる不整脈はどれか.2つ選べ.

A:上室性期外収縮
B:torsades de pointes
C:房室結節リエントリー性頻拍
D:心房粗動
E:心室細動


問題4

16歳男子の心電図所見として精密検査が必要なものは次のどれか.1つ選べ.

A:洞徐脈
B:完全左脚ブロック
C:V2誘導の陰性T波
D:異所性心房調律
E:Wenckebach型2度房室ブロック


問題5

多発性心室性期外収縮を有する心筋梗塞後患者に対して生命予後を改善する抗不整脈薬はどれか.2つ選べ.

A:フレカイニド
B:メキシレチン
C:メトプロロール
D:アミオダロン
E:ベプリジル


問題6

非持続性心室頻拍に関する下記の記述で正しいのはどれか.2つ選べ.

A:急性心筋梗塞急性期に認められたものは予後不良因子である.
B:基礎心疾患のない例における無症候性のものでも積極的に治療対象となる.
C:陳旧性心筋梗塞における予後不良因子である.
D:基礎心疾患のある低心機能例では心臓電気生理学的検査でリスク評価を行う.
E:低心機能例ではIc群抗不整脈薬が選択される.


問題7

ESC・NASPEの分類における逆方向性典型的心房粗動の特徴について述べた文章のうち誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:狭部依存性心房粗動の約10%である.
B:この頻拍では,II,III,aVF,V6誘導で陽性となる場合が多い.
C:この頻拍は,三尖弁輪を右房中隔側を尾側から頭側に,右房自由壁を頭側から尾側に旋回している.
D:狭部を形成しているものは,三尖弁輪,下大静脈入口部およびeustachian valve/ridgeである.
E:一般的に心房レートは250~320/分くらいが多い.


問題8

28歳の男性.昨日から動悸が続くということで来院.血圧は120/72 mmHg,意識は清明で,症状は軽度の動悸のみ.心電図ではwide QRS tachycardiaを認めた(図1,本誌参照).誤りはどれか.2つ選べ.

A:若年であり,血行動態が安定しているため上室性頻拍の変行伝導の可能性が高い.
B:心電図では,房室解離が認められるため,心室頻拍と診断できる.
C:特発性右室起源心室頻拍の可能性が高い.
D:心電図では,心房捕捉現象が認められるため,心室頻拍と診断できる.
E:特発性左室起源心室頻拍の可能性が高い.


問題9

心房細動の発生要因としてイオンチャネルの異常が主要な役割を担うものはどれか.1つ選べ.

A:心膜炎
B:心筋梗塞
C:WPW症候群
D:Brugada症候群
E:睡眠時無呼吸症候群


問題10

不整脈源性右室心筋症(ARVC)で認められ難い所見を1つ選べ.

A:右室拡大
B:加算平均心電図における遅延電位陽性
C:僧帽弁閉鎖不全症
D:心電図右側胸部誘導における誘導ε(イプシロン)波と陰性T波
E:右室自由壁の脂肪浸潤


問題11

Brugada症候群において正しいのはどれか.1つ選べ.

A:左側胸部誘導におけるST上昇
B:男性に好発
C:遺伝子異常は検出されない
D:薬物療法が最も有効
E:無症候性の患者は少ない


問題12

QT延長症候群にみられる特徴的な心電図所見あるいは不整脈はどれか.1つ選べ.

A:イプシロン波(ε波)
B:V1~V3誘導でのST上昇
C:偽性心室頻拍
D:2方向性心室頻拍(bidirectional VT)
E:多形性心室頻拍(torsades de pointes)


問題13

64歳男性.3年前に下壁心筋梗塞を発症し,ただちに再灌流療法を受けた.現在NYHAI度.定期の心エコー図検査では,左室拡張末期径52 mm,下壁の壁運動が軽度低下しているが左室駆出分画は56%と保たれている.24時間心電図検査では心室期外収縮が頻発しており(1,200/日),非持続性心室頻拍を5回認めた(単形性で最長4連発).ACE阻害薬とアスピリンが投与されている.心拍数 72/分.血圧 124/68 mmHg.正しい対処はどれか.1つ選べ.

A:フレカイニドを投与する.
B:β遮断薬を投与する.
C:植込み型除細動器(ICD)を植え込む.
D:ピモベンダンを投与する.
E:アミオダロンを投与する.


問題14

抗不整脈薬の併用療法において,作用が拮抗(矛盾)するのはどれか.1つ選べ.

A:プロカインアミドとピルジカイニド
B:フレカイニドとビソプロロール
C:アミオダロンとカルベジロール
D:d,l-ソタロールとメキシチール
E:ジギタリスとベラパミル


問題15

心房細動の予後を改善する因子はどれか.2つ選べ.

A:洞調律維持
B:年齢
C:抗不整脈薬投与
D:ジギタリス製剤投与
E:ワルファリン投与


問題16

症例1,2(本誌参照)は12誘導心電図上,心房細動と診断されるが,それぞれ,心房細動の分類でどれに属すると考えられるか.また,症例1で必ず投与しなければならない薬剤,禁忌薬剤はなにか.症例1は分類,投与,禁忌の組み合わせで選択せよ(例:A,b,c).症例2は分類のみ選択せよ.

<心房細動の分類>
A:初発心房細動
B:発作性心房細動
C:持続性心房細動
D:永続性心房細動

<投与および禁忌薬剤>
A:Naチャネル遮断薬
B:Kチャネル遮断薬
C:Caチャネル遮断薬
D:β遮断薬
E:ワルファリン
F:アスピリン等の抗血小板薬
G:利尿薬
H:ARBまたはAC-I


問題17

次のなかでtorsade de pointesに対する治療薬はどれか.1つ選べ

A:ニフェカラント
B:リドカイン
C:硫酸マグネシウム
D:ピルジカイニド
E:アミオダロン


問題18

心房細動に対するカテーテルアブレーションの適応となりにくいのはどれか.2つ選べ.

A:抗不整脈薬無効
B:有症候性
C:手術適応のある僧帽弁閉鎖不全症の合併
D:左房内血栓
E:左室駆出率35%


問題19

恒久的心臓ペースメーカー植え込みの絶対適応となるのはどれか.1つ選べ.

A:覚醒時の心拍数が40前後で,起立時のめまい症状を頻回に訴える症例.
B:頸動脈洞マッサージによる意識消失発作で頭部外傷を合併した症例.
C:痛み刺激による血管迷走神経反射性失神を繰り返す症例.
D:左脚前枝ブロックを伴う頻脈性心房細動にβ遮断薬を投与したのち,5.2秒の心停止を認めた症例.
E:サルコイドーシス心筋症における高房室ブロックで無症状の症例.


問題20

ICDに関する以下の記述のうち正しいのはどれか.1つ選べ.

A:抗不整脈薬が有効な心室頻拍にはICD植え込みは必要ない.
B:電気生理学的検査により心室頻拍・心室細動が誘発されない陳旧性心筋梗塞症例にはICD植え込みは必要ない.
C:心機能正常例の心室頻拍においても,ICD植え込みはアミオダロン投与より生命予後を改善する.
D:EF≦35%,NYHAII,III度の心不全症例においては,不整脈の有無にかかわらず,ICD植え込みにより生命予後が改善する.
E:ICD植え込みにより,心室頻拍・心室細動は抑制され,QOLは改善する.


問題21

非弁膜症性心房細動による血栓塞栓症のリスク評価を行うためのCHADS2スコアにおけるリスクの中で,最もスコアの高いものはどれか.1つ選べ.

A:うっ血性心不全
B:高血圧
C:年齢>75歳
D:糖尿病
E:脳梗塞/一過性脳虚血発作の既往


問題22

非弁膜症性心房細動に合併した塞栓症に関する記述で,誤りはどれか.1つ選べ.

A:ワルファリンはアスピリンより有意に脳梗塞の発症率を下げた.
B:日本循環器学会ガイドライン2008ではワルファリン療法の適応がありワルファリンが禁忌でない患者への抗血小板療法はクラスIIIである.
C:本邦では,アスピリンが有効性を示した臨床試験はない.
D:ワルファリンは白色血栓の形成を抑制する.
E:ワルファリンは凝固能を低下させることにより血栓塞栓症を予防する.


問題23

ワルファリン内服患者について誤った対処はどれか.1つ選べ.

A:大腸癌に対する開腹手術のため手術日より4日前からワルファリン内服を中止としヘパリン投与に変更した.
B:ワルファリン内服を継続した状態で白内障の手術を行った.
C:貧血の精査として,生検はしない方針で上部消化管内視鏡検査をワルファリン内服継続下で行った.
D:胃十二指腸潰瘍予防のため,PPI(proton pump inhibitor)投与が勧められる.
E:ワルファリン内服下で抜歯を施行した.


問題24

58歳女性.右下腿骨折後ギプス固定され自宅療養中であった.外出しようとした矢先,突然の意識消失あり,家人にて救急要請され来院した.到着時,意識は回復していたが,呼吸困難を訴え血圧76/40 mmHg,心拍数102/分,呼吸数18/分,SpO2:92%(6Lマスク吸入下)とバイタルサインは不安定であった.この患者に対する検査結果として最も不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:PCO2の上昇
B:トロポニンT陽性
C:肺動脈内血栓
D:D-dimer高値
E:右脚ブロックの新規出現


問題25

次のうち,頻脈の原因となるのはどれか.2つ選べ.

A:甲状腺機能低下症
B:シロスタゾール
C:抗うつ薬
D:交感神経β遮断薬
E:低体温


(解答は本誌掲載)