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今月の主題

「理解のための20題」


問題01

78歳の男性,特に異常なく過ごしていたが,早朝トイレに行った際に突然の腹痛を自覚し来院した.来院時は左側腹部から鼠径部を痛がり,冷や汗もかいている.既往歴に特記すべきものはなく,内服薬もなし.
身体所見:血圧 167/80 mmHg,脈拍 80/分・不整,呼吸数 24回/分,SpO2 100%RA,眼瞼結膜貧血なし.
腹部は平坦,軟.腸蠕動音やや減弱,全般的に圧痛を訴える.腹膜刺激症状なし.手術痕なし.
検査所見:白血球12,000/ml,Hb 14.0 g/dl,AST 78 IU/l,ALT 36 IU/l,LDH 420 IU/l.尿潜血;強陽性,心電図;心房細動.
次の一手として適切なものはどれか.

A:腎尿管膀胱X線撮影(KUB)
B:造影CT
C:NSAIDs
D:ブスコパン®点滴
E:腹部エコー


問題02

中毒診療について正しいものを1つ選べ.

A:診察時にバイタルサインに異常がなく,全身状態に異常を認めない場合は,重症化する心配はない.
B:一酸化炭素中毒が疑われても,パルスオキシメータでSpO2が98%であれば,酸素投与は3 l程度でよい.
C:妊婦の薬物中毒でも,母体に問題がない程度の内服量であれば,胎児に悪影響を及ぼすことはない.
D:原則として中毒症例には胃洗浄を行うべきである.
E:活性炭内服の重篤な合併症として,誤嚥性肺炎がある.


問題03

敗血症性ショックに矛盾する所見はどれか.1つ選べ.

A:呼吸数の増加
B:頻脈
C:頸静脈圧(JVP)15 cmH2O(胸骨角より垂直距離が10 cm)
D:Livedo reticularis
E:Palpable purpura


問題04

46歳,女性.Basedow病に対して2カ月前よりチアマゾール(メルカゾール®)を処方されている.37.3℃の発熱と軽度の咽頭痛にて救急外来を受診.脈拍92/分,血圧118/72 mmHg,咽頭の軽度発赤以外に明らかな異常所見なし.WBC 800/ml(好中球37%,単球4%,リンパ球59%),RBC 452×104/ml,Hb 12.2 g/dl,Plt 17.4×104/ml.正しい対応はどれか.

A:経口第三世代セフェム系抗菌薬を処方し,翌日の血液内科受診を指示.
B:経口キノロン系抗菌薬を処方し,38℃以上になれば救急外来を受診するよう指示.
C:チアマゾールを中止.入院してバンコマイシンの点滴を開始.
D:チアマゾールを中止.入院してCAZ(モダシン®)の点滴を開始.
E:チアマゾールを中止.入院してABPC/SBT(ユナシンS®)の点滴を開始.


問題05

血液培養を採取すべき状況は以下のどれか.1つ選べ.

A:悪寒・戦慄が続く.
B:39℃で続いていた体温が37℃に下がるとともに意識状態や血行動態が不安定になった.
C:意識状態が低下し,悪心・嘔吐が始まった.
D:脳血管障害のリスクのない青年に,3週間にわたる微熱とともに突発性の片麻痺を認めた.
E:上記のすべて


問題06

次のうち,血液培養をとらなくてもよい状況はどれか.1つ選べ.

A:全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)でステロイド内服中の35歳,女性.バイタルサインは正常だが,原因不明の代謝性アシドーシスあり.
B:生来健康な45歳,男性.2日前からの微熱,咳,鼻汁,咽頭痛で受診,バイタルサインはすべて正常.
C:慢性腎不全で透析中の55歳,女性.6時間前からの意識障害で受診.血圧80/40 mmHg,脈拍90回/分,体温35.1℃,呼吸数22回/分.
D:糖尿病で通院中だが,血糖コントロールは不良な65歳,男性.2日前からの悪心,嘔吐,心窩部痛で受診.血圧110/60 mmHg,脈拍100回/分,体温37.5℃,呼吸数28回/分.
E:高血圧で通院中の75歳,男性.前日から食事がとれなくなり,歩けなくなったため受診.血圧100/60 mmHg,脈拍100回/分,体温36℃,呼吸数24回/分.


問題07

78歳の男性.腰痛とふらつきを主訴に来院.診察上顔面蒼白と前立腺腫大を認めた.末梢血液では白血球数5,100/ml,Hb 4 g/dl,血小板数3.4×104/ml.末梢血液像では幼若な白血球と赤芽球を認めた.骨髄像を示す.考えられる疾患を1つ選べ.

A:悪性貧血
B:骨髄線維症
C:急性白血病
D:癌細胞の浸潤
E:悪性リンパ腫


問題08

プロテアソーム(NF-kB)阻害薬であるボルテゾミブ(bortezomib)による治療でよくみられる副作用はどれか.2つ選べ.

A:間質性肺炎
B:血小板減少
C:末梢神経障害
D:深部静脈血栓症


問題09

47歳女性,入院1年前から呼吸苦と原因不明の慢性の低酸素血症を認め在宅酸素を開始している.低酸素血症の精査のために入院.うつ病以外既往歴なし.喫煙歴なし.バイタルは血圧127/89 mmHg,脈拍97回/分,呼吸数18回/分,体温36.5℃,SpO2 85%(大気中).身体所見では頸静脈怒張なし,心音整で雑音なし,胸部呼吸音清明でラ音なし,下腿浮腫なし.胸部X線では異常を認めず.心エコー正常でシャントや肺高血圧を認めず.肺塞栓プロトコールのCTで肺塞栓を認めず,呼吸機能検査ではスパイロメトリーは正常だがDLcoのみ低下を認めた.
この患者に行う次のステップの検査のうち,適切でないものを1つ選べ.

A:肺換気・血流シンチグラム
B:高解像度CT
C:右心カテーテル(Swan-Ganzカテーテル)検査
D:血算
E:冠動脈造影


問題10

52歳の男性が高熱,意識障害で救急室に搬入されてきた.救急室で痙攣を起こし,尿量は減少している.血液検査の結果は以下の通りであった.
Hb7g/dl(分画で分裂赤血球多数),血小板14/ml,クレアチニン2.6 mg/dl,挿管して痙攣を治療したあとに次の治療計画は以下のうちどれがもっとも適当か.

A:敗血症の治療をプロトコールに沿って始める.
B:腰椎穿刺を行う.
C:血小板の輸血.
D:血漿交換を行う.
E:透析を開始する.


問題11

31歳女性.38℃台の発熱.数日後に紅斑性皮疹が四肢および体部に出現し,手足に関節痛が出現したため近医を受診する.検査の結果末梢血白血球数が2,700/mm3と低下,抗核抗体が陽性を示し紹介される.
身体所見では両側頬部に紅斑,四肢伸展側を中心に網状,レース状紅斑,左耳介後部のリンパ節に腫大が認められる.中手指節関節(metacarpophalangeal joint:MCP),近位指節間関節(proximal interphalangeal joint:PIP),手首,膝,足関節に腫脹と熱感がみられる.肝臓,脾臓は触知せず.検査データではWBC 6,800/mm3,赤沈35 mm/hr,CRP 0.4 mg/dl(<0.3 mg/dl).RF(-).ANA×40倍(<40)と弱陽性.抗DNA抗体,C3,C4,CH50値に異常はみられない.肝機能,腎機能,尿所見・沈渣は正常.皮疹,関節炎は数日後に消退した.
次のなかで最も可能性の高い診断はどれと考えられるか.

A:全身性エリテマトーデス
B:関節リウマチの初期
C:パルボウイルスB19関節炎
D:シェーグレン症候群
E:風疹性関節炎


問題12

側頭動脈炎で最もみられうる検査所見はどれか.2つ選べ.

A:抗核抗体陽性
B:赤沈上昇
C:CRP正常
D:補体低下
E:血小板上昇


問題13

痛み・しびれの診断について誤っているものを2つ選べ.

A:腰椎椎間板ヘルニアは,単根性障害で疼痛を主訴とする片側愁訴が多く,腰部脊柱管狭窄症は,多根性障害でしびれを主訴とする両側愁訴が多い.
B:痛みを伝える神経線維のうち,Ad線維は伝導が速く,部位局在の明確なぴりっとした鋭い痛みを伝える.
C:パーキンソンの患者の痛みの原因は,現病とは関係のない脊椎変形などによるものが多い.
D:明らかな感覚脱失があり,SEPが皮質成分まで正常に導出される場合はヒステリーである.
E:手根管症候群では,仕事のあとの痛みが特徴である.


問題14

高血圧患者で睡眠時無呼吸を疑う所見として適切でないものはどれか.1つ選べ.

A:夜間高血圧
B:肥満
C:白衣高血圧
D:診察室血圧正常の左室肥大
E:治療抵抗性早朝高血圧


問題15

頸静脈が怒張するのはどの場合か?

A:出血性胃潰瘍によるショック
B:腹部大動脈瘤破裂によるショック
C:アナフィラキシーショック
D:敗血症性ショック
E:肺塞栓症によるショック


問題16

心筋梗塞後の心室中隔穿孔に関して正しいのは次のうちどれか.1つ選べ.

A:PCIやtPAなど再灌流療法を受けた患者に多くみられる.
B:非貫壁性の心筋梗塞に多くみられる.
C:IABP(大動脈内バルーンパンピング)は禁忌である.
D:早期の手術が推奨されており,保存的内科治療よりも成績が良いとされている.


問題17

急性下痢症に対する抗菌薬投与について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:急性下痢症の多くは感染性であり,原則として抗菌薬を投与する.
B:細菌性下痢症が疑われれば,ただちに抗菌薬を投与する.
C:便培養で細菌感染が同定されれば,必ず抗菌薬を投与する.
D:非チフス性サルモネラや腸管出血性大腸菌O157が同定されれば,抗菌薬を投与する.
E:抗菌薬の有用性が確立している一部の細菌性腸炎および重症例で抗菌薬投与を考慮する.


問題18

60歳,男性.発熱,黄疸,右季肋部痛を主訴に来院.来院時,血圧 104/60 mmHg,脈拍 110/分,体温 38.8℃,意識清明,眼球結膜の黄染を認めた.腹部診察では右上腹部に圧痛を認めたが,反跳痛,筋性防御はなかった.血液検査では白血球 16,000/ml,ヘモグロビン 15.5 g/dl,ヘマトクリット 47%,血小板 12×104/ml,CRP 7.5 mg/dl,AST 320 IU/l,ALT 350 IU/l,ALP 550 IU/l,T-bil 4.0 mg/dl,アミラーゼ 200 IU/lであった.緊急腹部CTで総胆管内に14 mm大の結石影を認め,胆嚢,総胆管,肝内胆管の拡張を認めた.当直医は総胆管結石,胆管炎の診断で入院とし,血液培養を施行後に抗菌薬の投与を開始した.入院2時間後,患者は不穏状態となり,血圧は70/40 mmHgに低下した.ただちに行う処置として正しいのはどれか.1つ選べ.

A:意識障害の精査のため,頭部CTを撮影する.
B:抗菌薬の種類を変える.
C:生理食塩水,昇圧薬を投与してバイタルサインを安定させ,緊急内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)を行う.
D:蛋白分解酵素阻害薬の投与.
E:緊急開腹手術が必要なので外科にコンサルトする.


問題19

54歳,男性.検診受診歴なし.易疲労感で来院.喫煙40本/日,飲酒はビール1,000 ml/日.身長168 cm,体重73 kg,血圧138/84 mmHg.随時血糖346 mg/dl,HbA1c 10.3%,LDL-C 194 mg/dl,HDL-C 32 mg/dl,TG 427 mg/dl,尿蛋白強陽性,尿ケトン体陰性.この症例への初診時対応として適切なものはどれか.2つ選べ.

A:グリベンクラミド2.5 mg/日を投与する.
B:ロサルタンカリウム50 mg/日を投与する.
C:プラバスタチン5 mg/日を投与する.
D:ベザフィブラート400 mg/日を投与する.
E:バレニクリン酒石酸塩を勧める.


問題20

多毛をきたす状態として,正しくないものはどれか.1つ選べ.

A:デパケン内服
B:多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)
C:甲状腺機能低下症
D:フェニトイン内服
E:Cushing症候群


(解答は本誌掲載)