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今月の主題

「理解のための27題」


問題01

急性心不全の診断・治療において正しいものを1つ選べ.

A:SwanGanzカテーテルの挿入は必須である.
B:左室駆出率が40%以下の場合はほとんど強心薬が必要である.
C:急性非代償性心不全では強心薬が必要なことがある.
D:急性心不全の入院時ではまず,利尿薬の静脈内投与が勧められる.
E:急性肺水腫ではKillip I型が多い.


問題02

心不全状態で最もBNP高値となりうる病態はどれか.1つ選べ.

A:腎不全
B:急性感染症
C:胃潰瘍
D:潰瘍性大腸炎
E:脳出血


問題03

35歳の男性.5歳時に心房中隔欠損症の診断で閉鎖術を施行歴あり.その後は無症状で経過し健康診断では軽度肝機能異常のみ指摘されていた.3カ月前から軽労作で息切れを生じるようになった.

生活歴:タバコ;5本/日×15年間,飲酒;ビール中瓶4本+日本酒2合/日×15年間.
家族歴:不明.そのほか:内服薬なし.先行する感冒様症状なし.
身体所見
:血圧105/80 mmHg,脈拍100/分 整,頸静脈怒張を認め,Ⅲ音ならびに心尖部に全収縮期雑音をLevineⅡ/Ⅵ聴取.下腿浮腫を認めた.
血液生化学所見
:UN 32 mg/dl,Cr 1.3 mg/dl,ALP 220 U/l,GOT 60 U/l,GPT 75 U/l,Bil 1.2 mg/dl.
心電図
:非特異的ST-T変化,心室性期外収縮の散発のみ.
心エコー
:びまん性の壁運動低下も局所壁運動の低下なし,駆出率:34%,MRⅡ°左室中隔・後壁厚とも11 mm.

心不全の原因として最も疑わしい基礎心疾患はどれか.1つ選べ.

A:虚血性心疾患
B:アルコール性心筋症
C:心筋炎後心筋症
D:肥大型心筋症
E:心房中隔欠損術後の晩期心不全発症


問題04

心不全診療に関して正しいものはどれか.1つ選べ.

A:Nohria分類のwet-warmは,うっ血なし・低灌流なしである.
B:Swan-Ganzカテーテルは,急性心不全患者には,禁忌がない限り挿入することが望ましい.
C:甲状腺中毒症は,高拍出性心不全をきたすことがある.
D:血圧=心拍出量×心拍数
E:UCGで収縮機能が保たれていれば心不全は否定できる.


問題05

心不全におけるBNPに関して間違っているものはどれか.1つ選べ.

A:ほとんどが心室から分泌される.
B:心不全の予後評価に役立つ.
C:年齢とともに低下する.
D:海外では心不全治療薬として用いられている.
E:心房細動では上昇していることが多い.


問題06

心不全の画像所見として不適切なものはどれか.1つ選べ.

A:右房圧,肺動脈収縮期圧,左室拡張末期圧,心拍出量などの血行動態の指標を心エコー図にて非侵襲的に推定できる.
B:E/E’<8は左室拡張末期圧上昇を示唆する.
C:心筋梗塞では遅延造影MRIにて心内膜下,または貫壁性の遅延造影を認める.
D:心不全治療後も左室流入血流速波形が拘束型を呈する症例の予後は不良である.
E:経胸壁心エコー図にて描出が困難な場合や感染性心内膜炎,人工弁機能不全などの診断においては経食道心エコー図が有用である.


問題07

心不全症例の治療に関して誤っている組み合わせを1つ選べ.

A:warm and wet―カルペリチド
B:cold and wet―ミルリノン
C:急性心原性肺水腫―非侵襲撃的陽圧呼吸(NIPPV)
D:拡張障害―ドブタミン
E:中枢型睡眠時無呼吸―夜間酸素療法


問題08

急性心不全治療におけるカテコラミン製剤について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:ドブタミンの初期投与量は5 mg/kg/分が妥当である.
B:b遮断薬投与中の場合,ドブタミン高用量投与が推奨される.
C:ノルエピネフリン初期投与量は,0.5 mg/kg/分が妥当である.
D:ホスホジエステラーゼ阻害薬の強心作用はドブタミンより弱いので,初期投与量は高用量で投与開始する.
E:ホスホジエステラーゼ阻害薬もアデニル酸シクラーゼ賦活薬も,虚血性の場合は不整脈などに注意して投与する.


問題09

A型ナトリウム利尿ペプチド(hANP)は,急性心不全の治療に有用性があるが,次のうち心不全症例における一般的なhANPの効果で正しくないものを2つ選べ.

A:前負荷軽減
B:後負荷軽減
C:心拍出量低下
D:アルドステロン抑制
E:心拍数増加作用


問題10

急性心不全患者の急性期治療として,KATPチャネル開口作用を有する血管拡張薬を1つ選べ.

A:hANP
B:硝酸薬
C:ニコランジル
D:カテコラミン
E:PDEⅢ阻害薬


問題11

心肺補助装置について誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:大動脈内バルンパンピング(IABP)は,後負荷を軽減する.
B:経皮的心肺補助(PCPS)は,後負荷を軽減する.
C:左室補助装置(LVAS)は,前負荷を軽減する.
D:経皮的心肺補助(PCPS)には,人工肺が必要である.
E:体内設置型補助人工心臓は,長期管理が可能である.


問題12

減塩により軽減されない心不全の増悪因子はどれか.1つ選べ.

A:高血圧
B:交感神経活性化
C:酸化ストレス
D:腎機能障害
E:徐脈


問題13

以下の利尿薬の頻度の高い副作用について正しい組み合わせはどれか.2つ選べ.

A:フロセミド――低カリウム血症,低カルシウム血症
B:トラセミド――低カリウム血症,低カルシウム血症
C: ヒドロクロロチアジド――低カリウム血症,低カルシウム血症
D:スピロノラクトン――高カリウム血症,女性化乳房,月経異常
E:エプレレノン――高カリウム血症,女性化乳房,月経異常


問題14

ACE阻害薬に関して,正しいのはどれか.1つ選べ.

A:心不全患者にはまずARBを用いる.
B:ACE阻害薬はブラジキニンの分解を抑制する.
C:収縮の保たれた心不全に関してもACE阻害薬のエビデンスは豊富である.
D:腎機能低下症例には禁忌である.
E:妊産婦には注意して使用する.


問題15

慢性心不全患者に対する薬物の治療指針として,本邦の慢性心不全治療ガイドライン(2005年改訂版)上,ClassⅠ(通常適応され,常に容認される)に該当しない治療はどれか.1つ選べ.

A:禁忌を除きすべての患者に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(無症状の患者も含む)
B:アンジオテンシン変換酵素阻害薬に認容性のない患者に対するアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の投与
C:頻脈性心房細動を有する患者にレートコントロールを目的としたジゴキシン投与
D:有症状の患者に対し予後の改善を目的としたβ遮断薬の導入
E:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬/アンジオテンシン変換酵素阻害薬との併用投与


問題16

心不全に対するβ遮断薬治療について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:心不全急性増悪の場合は,一度退院してから開始すべきである.
B:維持治療中に心不全悪化をきたした場合,直ちに中止し再開は控える.
C:糖尿病を合併した場合には耐糖能を悪化させるので,禁忌である.
D:腎機能低下例には血管拡張性β遮断薬を選択する.
E:忍容性は血漿BNP濃度を見ながら判断し,増量する.


問題17

心不全に対する抗凝固療法について,正しい選択肢を1つ選べ.

A:心不全の症例には全例抗凝固療法を施行すべきである.
B:抗凝固介入の適応は出血合併症の発症率,血栓イベントの予防効果および個別の症例に病態に応じて個別的に決定すべきである.
C:心房細動を合併した心不全症例は,すべて抗凝固介入すべきである.
D:日本人症例に対する適応の決定は,欧米のガイドラインを鵜呑みにして行うべきである.


問題18

重症心不全に対する両心室ペースメーカー療法の適応でガイドライン上適応になる基準で正しいものはどれか.2つ選べ.

A:十分な薬物療法を行っていても改善しないNYHA機能分類Ⅲ~Ⅳの慢性心不全
B:心電図上QRS幅<130 msec以下
C:右脚ブロックパターン
D:左室駆出率<35%以下
E:虚血性心疾患の既往


問題19

慢性心不全に対する在宅酸素療法について正しいものを1つ選べ.

A:閉塞型睡眠時無呼吸症候群に有効である.
B:中枢型睡眠時無呼吸症候群に有効である.
C:心不全の心機能および予後を改善する.
D:運動機能は改善しない.
E:睡眠時無呼吸の重症度がAHI 40以上の症例で適応となる.


問題20

以下の記述のうち,正しいものを2つ選べ.

A:虚血性心筋症に合併する僧帽弁閉鎖不全症の主な原因は弁輪拡大である.
B:虚血性僧帽弁閉鎖不全症は多くの場合,冠動脈バイパス術で軽快する.
C:拡張型心筋症に合併する僧帽弁逆流は予後不良因子である.
D:冠動脈狭窄を伴うものは心臓移植の適応とならない.
E:移植後遠隔期の予後を左右する代表的な合併症は,移植後冠動脈硬化症と悪性腫瘍,特にリンパ球増多症(PTLD)である.


問題21

肺水腫を合併した高血圧性緊急症で不適切な薬物治療はどれか.2つ選べ.

A:ニトログリセリン静脈内投与
B:ニフェジピンの舌下投与
C:カルペリチド持続点滴
D:利尿薬の静脈内投与
E:ニカルジピンのワンショット静注


問題22

急性心筋梗塞患者で1週間以内に新たな心雑音が出現し,心不全の増悪が認められた場合,考えるべき合併症はどれか.2つ選べ.

A:Dressler症候群
B:大動脈弁閉鎖不全
C:乳頭筋断裂
D:房室ブロック
E:心室中隔穿孔


問題23

心不全に伴った不整脈の薬物治療の適応がないものを1つ選べ.

A:症候性上室性期外収縮
B:持続性心室頻拍
C:無症候性期外収縮
D:頻発する非持続性心室頻拍
E:発作性上室性頻拍


問題24

重症心不全に対する急性血液浄化の適応条件として正しくないものを2つ選べ.

A:肺うっ血・肺水腫
B:高カリウム血症
C:無尿
D:貧血
E:低ナトリウム血症


問題25

心不全に合併する睡眠時無呼吸について正しいのはどれか.1つ選べ.

A:中枢性無呼吸に対する効果が最も優れている陽圧治療法はCPAPである.
B:在宅酸素療法の保険適応があるのはNYHA機能分類Ⅲ度以上の中枢性無呼吸である.
C:心不全に合併する閉塞性無呼吸と中枢性無呼吸の割合は約4:1である.
D:CPAPは中枢性無呼吸合併心不全患者の予後を改善する.
E:心不全に合併する中枢性無呼吸は高炭酸ガス血症が引き金となって発症する.


問題26

ジギタリスについて正しいものはどれか.2つ選べ.

A:迷走神経作用を増強する.
B:利尿作用をもつ.
C:陽性変時作用をもつ.
D:最も頻繁に出現する副作用は肝機能異常である.
E:副作用は高カリウム血症の際に出現しやすい.


問題27

和温療法について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A:和温療法の方法は,60℃の遠赤外線サウナ浴15分と,その後,安静保温を30分間行い,終了時に発汗に見合う水分を補給する.
B:和温療法は,血管内皮機能を改善させる.
C:和温療法は,重症大動脈弁狭窄症や閉塞性肥大型心筋症などの流出路狭窄疾患に対しては施行すべきでない.
D:和温療法は,心負荷がかかるため,重症の心不全患者では禁忌である.
E:和温療法により,心不全患者の生命予後が改善することが示唆されている.


(解答は本誌掲載)