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今月の主題

「理解のための21題」


問題01

膵炎で正しいものはどれか.1つ選べ.

A:アミラーゼは急性膵炎の発症に中心的役割を果たす.
B:重症急性膵炎は稀であり,急性膵炎全体の5 %以下の頻度である.
C:慢性膵炎の診断に膵外分泌機能検査は必須である.
D:慢性膵炎に合併する糖尿病治療の原則はインスリン注射である.
E:自己免疫性膵炎は若い女性に多い疾患である.


問題02

急性膵炎の成因として,女性で最も頻度の高いのはどれか.1つ選べ.

A:アルコール
B:胆石
C:肥満
D:高脂血症
E:糖尿病


問題03

自己免疫性膵炎で最も合併頻度の高い疾患はどれか.1つ選べ.

A:喘息
B:膵癌
C:Sjögren症候群
D:糖尿病
E:慢性甲状腺炎


問題04

59歳,男性.夕食1時間後から腹痛を発症したため救急外来を受診した.軽度嘔気あるも嘔吐なし.理学所見で心窩部に強い圧痛あり.血液検査上,白血球増多と血清アミラーゼの軽度高値を認めた.肝および腎機能には異常なし.腹部単純X線写真では腸管ガス像がやや目立ち,腹部USを施行するも膵臓の明瞭な画像は得られなかった.次に行う検査方法として正しいものはどれか.1つ選べ.

A:上部消化管内視鏡検査
B:腹部CT検査
C:腹部血管造影
D:ERCP(超音波内視鏡)
E:EUS


問題05

慢性膵炎の診断に有効なのは,次のどれか.

A:血中アミラーゼ測定
B:腹部超音波検査
C:腹部X線CT
D:超音波内視鏡検査
E:MRCP


問題06

急性膵炎において,血中異常高値が最も長期に持続する膵酵素はどれか.1つ選べ.

A:総アミラーゼ
B:膵アミラーゼ
C:リパーゼ
D:トリプシン
E:エラスターゼ1


問題07

唾液腺型高アミラーゼ血症を認める疾患はどれか.1つ選べ.

A:アミラーゼ産生腫瘍
B:消化性潰瘍穿孔
C:マクロアミラーゼ血症
D:腎不全
E:腸間膜動脈血栓症


問題08

76歳,女性.突然の激しい心窩部痛と背部痛を主訴に来院した.上腹部に強い圧痛を認める.血液所見:赤血球440×104/ml,Hb16.5 g/dl,白血球18,000/ml,血小板18×104/ml,総ビリルビン4.2 mg/dl, AST 348 IU/l,ALT 124 IU/l,LDH 950 IU/l,血清アミラーゼ3,560 IU/l.初診医が次に行うべきことで適切なものはどれか.2つ選べ.

A:血中リパーゼの測定
B:腹部超音波検査
C:重症度判定
D:緊急ERCP/EST
E:高次医療施設への緊急搬送


問題09

55歳,男性.元来大酒家.大量飲酒した翌朝より強い上腹部痛が出現し,増悪傾向にあったため,救急搬送された.血圧96/60 mmHg,脈拍120/分・整,体温38.6℃,呼吸数30/分.腹部は膨満しており,全体に圧痛を認めた.末梢血では白血球増多(13,840/ml)があり,血小板減少(4.5×104/ml)を認めた.血液生化学ではTP 5.4 g/dl,Alb 2.8 g/dl,BUN 39 mg/dl,Cr 3.7 mg/dlであり,AST,ALTはいずれも正常であった.Ca 6.3 mg/dl,アミラーゼ763 U/l,CRP 15.4 mg/dl(正常値0.03 mg/dl未満),血糖 242 mg/dl.プロトロンビン時間16.1秒(PT-% 56%).動脈血で代謝性アシドーシスを認めた.来院後2時間でほとんど自尿が認められなかった.この症例の初期治療に対して,正しいものを1つ選べ.

A:尿量も低下しており,心不全や全身浮腫を起こさないように輸液は最小限にとどめ,利尿薬を使用する.
B:本症例の重症度は腹部造影CT検査を行わないと判定できない.
C:軽症例であり,必ずしも予防的抗菌薬投与は必要でない.
D:痛みに対してはペンタゾシン単独で持続静注した.
E:メシル酸ガベキセートをDIC治療量で投与する.


問題10

57歳,男性.昨夜,宴会で大量にアルコール摂取後,今朝方になって持続性で増強する上腹部痛が出現し,息苦しい感じがするとのことで救急搬送された.胸部X線検査では両側に軽度の胸水貯留が認められた.心電図には異常が認められなかった.腹部に圧痛を認めるも腹膜刺激徴候はない.腹部X線では遊離ガス像,Niveauは認められなかった.腹部超音波検査では胆石を認めなかったが,膵の腫大,膵周囲のfluid collectionが認められた.緊急検査で血清アミラーゼ値が872 IU/lと高値で,WBCは16,700/ml,CRP 16 mg/dlであった.急性膵炎と診断し,輸液を開始しながらもう一度検査所見をチェックした.急性膵炎の重症度を判定するために必要な検査項目として,不適当なものはどれか.1つ選べ.

A:血清BUN,Cr
B:血液ガス分析
C:血清リパーゼ
D:血清LDH
E:血小板数 F:血清Ca値


問題11

急性膵炎と診断したが,ICUがない.検査結果のうちで,それのみでも救急救命センターに搬送すべき条件はどれか.1つ選べ.

A:年齢70歳以上
B:総蛋白6.0 g/dl以下
C:SIRS診断基準の3項目以上が陽性
D:出血傾向
E:LDH 700 IU/l以上


問題12

以下のうち,正しいものはどれか.2つ選べ.

A:急性膵炎の本態は,膵酵素が十二指腸内で活性化されることにある.
B:壊死性膵炎における膵感染は,bacterial translocationに起因する.
C:蛋白分解酵素阻害薬は,急性膵炎の重症度に応じて投与量を変更する.
D:予防的抗菌薬は,急性膵炎の重症度に応じて投与量を変更する.
E:予防的抗菌薬の第一選択は,第2世代以降のセフェム系抗菌薬である.


問題13

慢性膵炎患者における内視鏡的治療の適応にならないものを1つ選べ.

A:増大傾向の仮性膵嚢胞
B:黄疸をきたした胆管狭窄
C:保存的治療で改善しない膵性腹水
D:急性増悪を繰り返す主膵管狭窄
E:無症状の分枝膵管内膵石


問題14

慢性膵炎について,誤っているものを1つ選べ.

A:急性増悪発作を認める時期が間欠期である.
B:喫煙は,慢性膵炎の危険因子である.
C:蛋白分解酵素阻害薬は,経静脈的,経口的に投与される.
D:慢性膵炎診断時に糖尿病合併症例が存在する.
E:低脂肪食は慢性膵炎の進行阻止に有用である.


問題15

脂肪便を有する慢性膵炎の生活指導を含めた治療方針で誤りはどれか.1つ選べ.

A:禁酒指導
B:禁煙指導
C:体重管理
D:糖尿病対策
E:食事脂肪制限


問題16

膵性糖尿病について,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A:インスリン分泌が枯渇しているため,インスリン治療中断により1型糖尿病同様,容易にケトアシドーシスを起こす.
B:膵性糖尿病の治療は,脂肪制限食と消化酵素補充療法,インスリン治療が必要である.
C:消化酵素補充の効果が不十分である場合,H2-blockerやPPIの併用が有用である.
D:脂肪消化吸収障害は,膵リパーゼ分泌が正常の10%以下になると出現する.


問題17

慢性膵炎の死因別標準化死亡比で,最も高いものを1つ選べ.

A:肝硬変
B:肝癌
C:胃癌
D:大腸癌
E:膵癌


問題18

69歳,男性.家人に眼球結膜の黄染を指摘され来院した. 現病歴:1年前から口渇感と眼球の乾燥感を自覚している.1カ月前からときどき食後心窩部~背部に違和感を認めている.3日前から家人に眼球結膜の黄染を指摘され,今朝,皮膚黄染と黄褐色尿を自覚する.また,便も少し白っぽくなっている.全身がだるく,食欲もない. 既住歴・家族歴:特記すべきことなし.喫煙歴(-),飲酒(-). 現 症:意識は清明.身長162 cm,体重54 kg.体温36.2℃.臥位で脈拍86/分,整.血圧106/38 mmHg.皮膚黄染.心雑音なし.唾液腺と涙腺腫脹を認める.胸部はほぼ平坦で,肝・脾を触知しないが,心窩部に軽度圧痛を認める. 入院時検査所見:尿所見;蛋白(-),糖(-),尿ウロビリン(+),ビリルビン(+).血液所見;赤血球332×104/ml,Hb 10.2 g/dl,Ht 35.6%,白血球6,200/ml,血小板26×104/ml.プロトロンビン時間12秒(基準10~14).血清生化学所見;総蛋白8.5 g/dl,アルブミン4.1 g/dl,クレアチニン0.9 mg/dl,AST60単位(基準40以下),ALT66単位(基準35以下),LDH 460単位(基準~176,g-GTP 368単位(基準8~50),アルカリホスファターゼ〈ALP〉559単位(基準260以下),総ビリルビン5.8 mg/dl(直接ビリルビン4.9 mg/dl),CK35単位(基準10~40),血清アミラーゼ380単位(基準37~160),IgA 120 mg/dl(基準110~410),IgG 2,500 mg/dl(基準960~1,960),IgM 220 mg/dl(基準65~350). 免疫学的所見:CRP1.1 mg/dl(基準0.3以下),CA19-9 60単位(基準37以下).抗核抗体160倍(基準20以下),HBs抗原陰性,HCV抗体陰性. 造影CT写真(図1)とERCP写真(図2,3)を別に示す. 正しいのはどれか.1つ選べ.

A:急性ウイルス性肝炎(非B,非C)
B:慢性膵炎
C:自己免疫性膵炎
D:膵癌
E:胆管癌


問題19

自己免疫性膵炎の初期治療について正しいものはどれか.1つ選べ.

A:自然軽快する例はない.
B:全例でステロイド治療が適応となる.
C:糖尿病合併例では,インスリン治療が必須である.
D:黄疸例では胆道ドレナージが推奨される.
E:疑診例ではステロイドによる診断的治療を試みる.


問題20

自己免疫性膵炎ステロイド治療後の再燃予測に有用なマーカーはどれか.1つ選べ.

A:アミラーゼ
B:IgG4
C:アルカリホスファターゼ
D:HbA1c
E:抗ミトコンドリア抗体


問題21

自己免疫性膵炎に合併することが稀な病変はどれか.1つ選べ.

A:硬化性胆管炎
B:後腹膜線維症
C:唾液性腫大
D:リンパ節腫大
E:関節炎


(解答は本誌掲載)